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舞台は急転

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第二章


第二章

「ここまで来たら逃げるの赦さないからね」
「見せてもらうわよ」
「わかったわ」
 あまりにも言われるので遂に自分でも乗ってきた有美だった。
「そこまで言うのなら。見せてあげるわよ」
「よしっ、決めたわね」
「二言はないわね」
「女に二言はないわ」
 腕を組んで断言する有美だった。
「絶対にね」
「よしっ、その言葉忘れないわよ」
「それでどうするの?」
「どうやるのかしら」
「とりあえず。西園寺範人君」
 隣のクラスの人間の名前を出してきた。
「彼だけれどね」
「ああ、あの子ね」
「あの子がどうかしたの?」
「今フリーよね」
 そのこともまた言う有美だった。
「彼、ゲットしてみせるわよ」
「へえ、これはまた大きく出たわね」
「彼氏ゲットね」
「そうよ。見ていなさい」
 またしても断言してみせたのだった。
「脚だけじゃないんだからね」
「言うわねえ」
「大した自信って言うべきかしら」
 皆有美のその言葉を聞いて期待するような笑みを見せた。何はともあれ彼女はその西園寺範人を彼氏にすることにしたのだった。まずは隣のクラスに行き普通を装ってそのクラスにいる友人の一人に気軽に声をかけたのであった。
 そこでさりげなく範人の側を通る。彼女より少し背が高く何処か女の子のような顔をした柔和なその子の横を通る。通り過ぎたところですっと笑う。
 そのうえでその友人のところに行き。さりげなくを装って話し掛けるのであった。
「ねえ佳恵」
「どうしたの?有美」
「ほら、この前の話」
 言いながらちらりと彼の方を見る。その時彼も自分を見ているのがわかった。
 だが今は何も言わない。あえて何も言わずその友人の佳恵と話をするのであった。
「あの携帯小説だったっけ」
「ああ、あれね」
 当然ながら彼女の真意には気付いていない佳恵は何気なくそれに応えた。
「あれ、どうだったかしら」
「面白かったわよ」
 にこにことして佳恵に話すのであった。
「どんなのかしらって思ったら」
「普通の恋愛話だったでしょ」
「そうね。高校生同士の恋愛」
 ここで言葉を少しだけ高くさせたのであった。
「何か携帯小説っていったらどぎつい感じがしたけれどあれはね」
「いい感じだったでしょ?本当に純愛で」
「やっぱり純愛よね」
 また言葉を高くさせた。
「読むのはね。それよね」
「そうそう」
 話しながらまたちらりと範人を見る。見れば彼もまた自分の友達と話をしながら有美の方を時々見ている。どうやら話も聞いているようである。
「それよ。有り得ないようなハードなストーリーよりもね」
「ああしたのがいいわよね」
「よかったわ。有美が携帯小説読んでくれて」
「そんなに?」
「ええ。絶対合うって思っていたのよ」
 佳恵は相変わらず有美の本心には気付かず話をするのだった。
「だからね。今度はね」
「ええ」
「これなんかね」
 自分の携帯を取り出して説明する佳恵だった。
「どうかしら」
「それね」
「ええ。これがまたね」
 携帯小説の話をしていく。その間にも有美は時々範人を見るが相変わらず彼女の方を時々見ている。まずはそのことに満足する有美であった。
「まずはこれでよしよ」
「これでよしって?」
「あんた何もしていないじゃない」
 その様子をさりげなく見ていたクラスメイト達が有美に言う。彼女達は今は学校の屋上でサンドイッチやミルクでお昼を食べながら話をしていた。空が実に澄み切った奇麗な青になっている。
「携帯小説の話してただけで」
「西園寺君の横通ったけれどね」
「あれよ」
 有美は言った。
「あれなのよ」
「あれって!?」
「あれだけで!?」
「そう、まずはあれでいいのよ」
 それぞれサンドイッチやパンや牛乳を飲みながら驚いた顔になるクラスメイト達に対して述べる。彼女はカレーパンを美味しそうに食べている。
「あれでね」
「あれでいいって」
「前通っただけで」
「ほら、今の私」
 微笑んで皆に言ってきた。
「どうかしら」
「どうかしらって」
「いつもと同じじゃない」
「ねえ」
 皆普段と何一つ変わらない彼女の外見を見て言う。その黒いハイソックスも同じだ。相変わらずその奇麗な脚をさらに目立つものにさせている。
 
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