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万華鏡の連鎖

作者:fw187
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宇宙戦艦ヤマト異伝
  無人艦と凍結弾

 星の女神は無数の異世界、多元宇宙《パラレルワールド》を訪れた。
 様々な選択肢を試す為、幾度も時を遡り、可能性の種を蒔いている。
 太陽系防衛戦が展開中の異分岐、複製世界《レプリカ》も大海の一滴に過ぎぬ。
 原型《オリジナル》の世界に於いて、地球防衛軍は無人艦隊を建造したが。
 水晶都市《クリスタル・シティ》中核の侵攻軍、暗黒星雲帝国艦隊に撃滅された。

 外惑星連合軍が組織され、航宙宇宙軍の覇権に挑んだ時空体系に於いても。
 無人戦闘艇母艦《オルカ》、無人戦闘艦《ヴァルキリー》を配備している。
 女神は膨大な要素を組み合わせ、或る複製世界の蓋然性を高めた。
 皮肉な事に、太陽黒点の大規模な活性化に起因する地球環境の激変が。
 太陽系の同胞が相撃つ動乱を未然に防ぎ、新たな歴史への転回点となった。

 平行宇宙の惑星CB-8、極寒の荒地と化した地球の姿が。
 第1次外惑星動乱を眼前に控える太陽系で、現実化した。
 氷河期に匹敵する惑星規模の寒冷化、異常気象が地球を席捲。
 過酷な自然環境は人類の生存を許さず、二者択一を迫られた。

 一時的に地球を放棄して全人類を避難させるには、時間が足りない。
 航宙宇宙軍の総力を挙げても、焼け石に水。
 火星も月も収容能力は限られており、大多数を見殺しにする選択を迫られたが。
 救いの手を差し伸べたのは、外惑星連合軍だった。

 宇宙に対する適応性の向上した彼等は、宇宙人国家連合の基礎を築いた。
 地球人は更に謎の渡り鳥、《ムルキラ》の助けを得る事に成功した。
 星間宇宙を吹き渡る風に乗りて歩む者に導かれ、避難民達は地球型の惑星に到達。
 汎銀河人の祖となり、銀河連邦成立の端緒となった。

 第1次外惑星動乱は発生せず、歴史が転換された。
 シャチ達も巨大な宇宙水槽、《ノアの箱舟》に移され複数の惑星に移住。
 様々な環境に適応を遂げ、子孫達が増殖を遂げている。
 生体脳の実験を強行、無人戦闘艦を建造する者は現れておらぬ。


 メローラ姫からの放送で記憶の封印が解除され、派遣軍を編成。
 次元の壁を越える為、無人艦の急造が決定した。
 ラザルス構成員となった犠牲者12名は脳内情報の複写、移植を容認。
 シャチ達も特殊音声、訓練士を介し協力を申し出てくれた。

 最先端の技術が投入され史実と異なる複製、人造生体脳を試作。
 次元航行の際に艦体の損傷、劣化が懸念される。
 修理の際には艦外活動が必要となり、作業員は絶対真空に曝される。
 遠隔操作の補修手段が検討され、サイボーグの同行は不可欠と判断された。

 科学者達は極寒の衛星エリヌス仕様の改造体オグ、作業体《K》の経験を基に研究を推進。
 仮装巡洋艦バジリスクの乗組員が、多数の志願者の中から補助要員として最適と判断された。
 太陽系唯一の《陸戦隊》タナトス戦闘団、仮装巡洋艦の乗組員も脳内情報を提供。
 優秀な航宙士達の思考様式、経験値を備える特製作業体が同行する事となった。

 航宙宇宙軍の緒方中尉は事故を免れ、膨大な避難民の誘導に尽力。
 婚約者の緒方優と共に地球を離れ、土星の衛星タイタン経由で新天地を求めた。
 天王星の衛星エリヌス開発に携わり、ジャムナ誕生後に他の星系へ移住。
 プロクシマ星系の第一惑星ケイロン定住後、緒方中尉の娘は銀河系進出に多大な役割を果たした。

 掃海艇に警告を送信した《K》と異なり、人工培養の作業体《サイボーグ》が無人艦に搭乗。
 万一の事態に備え通称オグ隊長以下12名が艦外活動、補修作業の準備を整えている。
 戦闘管理システム開発は航宙宇宙軍、外惑星連合軍が全面的に協力。
 妨害電波に満たされた宇宙空間で、効果が実証された。

 オルカ・キラー戦隊、指揮母艦と戦闘艇の連係攻撃は瞬く間に数百隻の敵艦を撃破。
 精神感応能力《テレパシー》としか思えぬ意思疎通能力、阿吽の《呼吸》を見せ付けた。
 ヴァルキリー装備の破壊光線、多重共鳴衝撃波も戦闘宙域を一掃。
 三惑星連合軍の有人艦隊に戦力回復、休養に充てる貴重な時間的余裕が与えられた。


 無限艦隊は新たな援軍に手を焼き、《ヒュプノ・クリスタル》を投入。
 超巨大宇宙要塞オールドマン指揮中枢、ログ・ファンザー大尉の意識を蝕んだ強敵である。
 強力な催眠暗示波を操り、生体脳を強制支配する破壊工作員は無人艦隊の天敵。
 戦術指揮回路は敵に操られ同士討ち、防衛戦力の激減に至る危険を察知した。

 無人艦は戦闘宙域から後退、有人艦隊に通報し後背援護を担当。
 月の地下要塞に運び込まれ、効果的な戦術指揮と運用補佐に廻る。
 ガミラス艦隊、ガトランティス、地球の連合軍が再び最前線を担った。
 有人艦隊と無限艦隊の攻防は互角の展開が続き、数十日間に渡る膠着状態を維持。
 徐々に疲労が蓄積され、眼に見えて運動量が落ち始める。
 衛軍は焦慮に耐え、希望を棄てずに闘い続けた。


 或る異世界に於ける銀河系第一位、エイバアド軍は機械生命の種族を滅ぼしている。
 総勢1億の地球軍と戦い、母星と共に姿を消した。
 炭素=水素系種族エリダヌ調査団の報告、超映動が終了した其の時。
 出席者全員の精神平面に想定外の思考、遠隔心話が響いた。

(ヒンラート博士の思考様式、挑戦の気概を喪わない姿勢を賞賛します。
 別働隊が跳航の瞬間、2千万前後の乗組員は超空間に退避させました。
 彼等の勇気に敬意を表し、4次元時空連続体に帰還を援けます。
 皆様の世界に、祝福を」
 荒唐無稽と思われていた仮説が、出席者全員の眼前で実証された。
 独立星域≪イースター・ゾーン≫出身の指揮官、タルイ率いる乗組員が現れたのだ。

 無限の宇宙には、想像を遙かに超える存在が実在する。
 炭素=水素系種族の筆頭エリダヌ人、地球人(エスピーヌン)達は再度の接触を試みた。
 勇者達の命を救ってくれた恩人、女神に感謝の詞を届ける為に。
 ヒンラート博士の精神的把握法、挑戦の姿勢は有益と認められたが。
 次元跳航《ディメンション・ワープ》、時間跳躍《タイム・リープ》の実験は悉く失敗に終わった。
 哲学種族ヒロト人、弗素系種族、珪素系種族も有益な助言は提供し得なかったが。
 タルイ副戦団長と最大の理解者、リンゲ・サン戦団長は強硬に実験の継続を唱えた。

 想像力を駆使、思い付く限りの荒唐無稽な方法も地道に試し続けた末に。
 次元断層が生じ、太陽系防衛戦の続く複製世界に繋がったのだ。
 エネルギー奪取弾を携え、瞬送装置も備える地球戦団数千隻が現れた。
 宇宙空間は絶対零度の故、熱量を奪えば凍結し戦闘不能と化す。
 防御力場は外部からの影響を遮断するが、内部の熱が流失の事態を阻む機能は無い。
 合理的な判断、発想の転換は高く評価される。
 自艦のエネルギーが減り、枯渇する事も無いのだ。
 次元断層に落ち込んだ宇宙戦艦ヤマトも、エネルギーを周囲の空間に吸収され艦橋の照明が消えた。
 スターシャの援助が無ければ、遭難した可能性が高い。


 地球戦団の瞬送装置は跳航《ワープ》と異なり、人間を転送の場合に狂気となる確率が高いそうだが。
 小型の瞬送連絡装置で瞬間物質移送装置と同様、手榴弾を転送する分には何の問題も無い。
 再び真田志郎率いる地球人科学者、マッド・サイエンティスト達の出番となった。
 彼等は瞳を輝かせ舌舐め擦りし、エネルギー奪取弾を分解し構造を研究。
 エネルギー奪取弾の製造施設を設計、量産準備も整え稼働を開始する。

 三惑星連合軍は嘗ての第5番惑星、小惑星帯≪アステロイド・ベルト≫を奪還。
 寸暇を惜しみ、防衛線の再構築を急いだ。
 エネルギー吸収防御壁、エネルギー奪取弾を備える戦闘衛星≪デス・スター≫も配置。
 鋼鉄の砦を築くが、戦線の悪い予感は的中した。
 伝説の電脳機械人《ポスビ》が操る破片船、フラグメント・シップに装備される時間バリア。
 ≪相対時間フィールド≫を投入してきたのだ。


 最大80時間先の未来へと力場内部を時間移動させ得る、相対時間フィールド。
 時間の壁に隔てられた無限艦隊には、エネルギー奪取弾も無効であった。

 対抗策は点射、多数の火砲を1点に集中するピン・ポイント砲撃である。
 エネルギー転換の許容量を超える過負荷が、瞬間的に生じれば。
 相対時間フィールド貫通、破壊を為し得る。
 卓越した集団運動が再び、太陽系防衛戦の要諦となった。

 イースター・ゾーン出身の副戦団長、タルイ統率の勇者達。
 火星ガミラス、水星テラ、金星ガトランティス連合軍も奮闘を重ねるが。
 膨大な損害を省みず、雲霞の如く後続の敵艦が出現。
 波状攻撃に曝され、地球衛星軌道に絶対防衛線を敷いた我々の前に。
 伝説の天使が、舞い降りた。 
 

 
後書き
航宙宇宙軍シリーズ、大好きです。
『燃える傾斜』にも、感銘を受けました。 
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