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ハイスクール・DM

作者:龍牙
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8話

「廃棄された教会か……」

 周辺の地図を一瞥しながら駒王町で堕天使が潜んでいそうな場所を推測する。やはり、堕天使の嗜好から考えると可能性として高いのは今は廃棄された教会だ。

 そして、テーブルの上に置かれた地図を囲んで話し合っているのは、キングとクロス、ブルースを含むアウトレイジの中での上位の実力者達。

「やつ等の目的が何かは知らないけどな……詩乃を傷つけてくれた落とし前は付けさせる!!!」

 先ずは四季を含むアウトレイジ達によるこの町に居る堕天使の隠れ家へのカチコミ。……キングだけでも泣いて謝るであろう戦力差だが、場合によっては“最強戦力”でグレゴリの本部へカチコミをかけるかもしれないのだから。

「(場合によっては)目指すは最低でも堕天使幹部全員の9分殺し!!!」

 四季の掛け声に『オーッ!!!』と久し振りに暴れられるのが理由なのか盛り上がる一同。この時、アザゼルを含むグレゴリの幹部は背筋が寒くなるのを感じていた。……はっきり言って、アウトレイジの皆さん最近暴れてなくて退屈していた様子だった。

 まあ、この後のグレゴリ本部への襲撃は飽く迄今回の堕天使の行動と目的次第だが……取り合えず、仲間が詩乃を狙った時点で四季の中で連中の死刑は確定だった。主に詩乃の安全のために。

「まあ、今は連中の始末よりも詩乃の“裏社会見学”だな」

「ああ。あの娘もオレ達の世界に巻き込まれた以上は必要だからな」

「適当なハグレ悪魔は?」

「丁度この辺で行方不明が増えている。間違いなくハグレ悪魔がいるな。四季、お前の力を改めて見せる良い機会だ」

「ああ」

 ブルースの言葉に同意する四季。場所を調べておくと言われたので、一日も有れば下調べには十分だろう。直接的な戦闘だけでなく、ブルースはこう言った調査の面でも優れている。

「まあ、オレ達が居る所で好き勝手してくれたんだ……。ソイツには魔王よりも恐ろしい相手に喧嘩売ったって事を思い知らせてから地獄に叩き落してやれ」

「当然」

 凶悪な笑みと共に告げられるブルースの言葉に同意する四季。はっきり言ってこのメンバーが揃って敵対すれば現魔王も『どうしてこうなった!?』と絶叫するレベルの戦力である。

「そう言う訳で……オレは詩乃の様子を見てくるから、後は襲撃までいつも通りだ」

 そう言って部屋を出て行く四季。……話し合いも終わった事で、残されたメンバーはテーブルの上に置かれたカレーパンへと手を伸ばした。なお、四季以外のアウトレイジ達が狩ったはぐれ悪魔の賞金にはこうしてカレーパン代にも使われている。






(オレは詩乃の事で何度後悔するんだろうな?)

 布団に寝かせている詩乃の側にすわり、改めてそう思う。これで三回目……何故気付かなかったのだろうと思う。……四季がサーゼクスを嫌う理由が詩乃を無理矢理眷属にしようとした上級悪魔に有ると言うのに、

(何でオレはあの時、あいつ等の言葉に従った?)

 そもそも、会長なら兎も角サーゼクスの妹相手ならば幾らでも敵対して良かった筈だ。……それだけの理由があるのだから。

(何でオレは……詩乃を態々連れて行った?)

 木場が何と言おうが無理矢理にでも己の意思を押し通せばよかった。あの場で叩き潰した所で学校での四季の評価からすれば大差ないはずだ。……木場程度の相手ならば、神器(セイクリッド・ギア)モードを使わないでも敵ですらないはずだ。
 そもそも、最初から四季達アウトレイジ側の人間だと会長を通じて悪魔側に対して言っておくのを優先するべきだった。

(サーゼクス……直接何かされた訳じゃ無いが、何処までもお前とオレは敵対しなきゃならない運命に有るみたいだな)

 態々こっちから歩み寄ってやる理由は無い。売られた喧嘩なんて此方から歩み寄ったら舐められるだけだ。

「……四……季……」

「詩乃。大丈夫、オレは此処に居るから」

 自分だけじゃない、此処にはキング達も居る。上級悪魔どころか神や魔王……場合によっては無限と夢幻が来ても十分に撃退できるだけの戦力が此処にはいる。

「……怖い……。……でも……なんで……?」

「(QED……)分からない」

 記憶自体をQEDが忘れさせていたのだろう。己の宿主の精神に負担をかけないために。考えられるのは悪魔の翼だが……

(こればっかりは推測するしかないか。流石に数年前にQED消し炭にされた上級悪魔の事を教えてくれ、なんて言えないしな)

 何処までも自分は無力だと思う。

(何処まで弱くて無力なんだよ……オレは)

 微かに脳裏に浮かぶ赤き血(ザ・ヒート)を持った金色の髪の少年の姿。あの日から力を渇望し続けた。アウトレイジの仲間となって与えられた力や、赤き血(ザ・ヒート)の力を使いこなせる様になったとは言え、まだ自分は無力だ。そう思わずには居られない。

「ごめん……守るって誓ったはずなのに、オレが無力で」

 思わずそんな言葉が零れる。自分が彼女の側に居て良いのか……捨てた筈の迷いは再び四季の心を捉え始めていた。
 だが、それは同時により強い力を望む為の燃料にもなる。神器が所有者の思いに応えると言うのならば、彼の神器であるアウトレイジの書の目覚めに合わせて覚醒した赤き血(ザ・ヒート)も彼の力への渇望にあわせて眠っていた力を目覚めさせようとしていた。
 
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