ソードアート・オンライン ~呪われた魔剣~
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神風と流星
Chapter1:始まりの風
Data.10 四人パーティー
「なん、とか……間に合った……」
「つ、疲れたあ……」
時刻は午後四時ピッタリ。俺とシズクはギリギリ会議の開始に間に合ったことに安堵し、へたり込んでいた。
「その様子だと行ってきたみたいだな」
座って息を整える俺の隣に座ってきたのは、全身地味目の服装でコーディネートされた髪の長い男。つまりキリトだ。
「一応な。死にそうになったけど」
「そんなに難しいクエだったか、アレ?」
「色々あったんだよ、色々な。詳しくはおそらく後日配布されるであろうアルゴの攻略本を読め」
俺は既にメッセージでアルゴに今日のクエのことは伝えてある。数日中に調べ上げて出版してくれるだろう。
「ルリくん、キリトくん、会議始まるよ」
シズクのその言葉で俺たちは話を一旦やめ、昨日と同じく噴水広場の中心に立つディアベルの話に耳を傾けた。
会議は概ね順調に進み、いよいよ魔の時間がやってきた。
あのコミュ力が有り余っているアホ騎士が、こんなことを言い出したのだ。
「――――それじゃ、早速だけど、これから実際の攻略会議を始めたいと思う!何はともあれ、レイドの形を作らないと役割分担も出来ないからね。みんな、まずは仲間や近くにいる人と、パーティを組んでみてくれ」
「なっ……!」
横で嫌そうな声をあげてしまったキリトにも、今回ばかりは俺も賛成だ。
今ディアベルが言ったことは現実世界に置き換えると、あの伝説の『はーい。それじゃあみんなで班作ってねー』というやつに相当する。班って何だよ藩の間違いじゃねえの?歴史に名を残せばいいの?
こういうのは自然と他人とコミュニケーションが取れるディアベルみたいな奴にとっては何でもないことなんだろうが、コンビニの店員さん相手ですらロクに目も合わせられないような人種(主にキリト)や、『あ、俺、仲間とかそういうのいいんで。孤独を愛してるんで』みたいなちょっとアレな奴(つまり俺だ)にはかなり厳しいことなのだ。
(だが、今回は――――!)
そう、今回は。今回はまだ大丈夫だ。何故なら――――
「ねえルリくん。他にどんな人と組もっか?」
この純真無垢な瞳で一切の躊躇なく俺を仲間として確定するコミュ力A⁺⁺の天使がいるからだ!
「そうだな……どうしようか」
横でキョロキョロしてるキリトを誘ってやってもいいんだが……面白いしもうちょっと放っておこう。
「あ!あの子!昨日の子じゃないかな!」
そう叫ぶシズクの指す方向を見ると、なるほど確かにあのフーデッドケープは昨日の女剣士のものだ。
「あの子誘おう!うん、そうしよう!」
「は!?ちょっと待て正気か!?昨日の態度見てたろ!?あいつ協調性とか欠片もねえ奴だぞ?そんな奴とパーティなんて組んだら――――」
「でもあの子強いよ?たぶんだけど、技の正確さならルリくんと同レベルじゃないかな?」
「……マジで?」
自慢だが、俺の攻撃の正確さは三本のナイフをすべて正確に同じ軌道で、しかも馬鹿でかいドラゴンの小さな目を狙えるくらいにはいい。
その俺と同レベルということは、通常の雑魚Mobへの攻撃はほぼ全弾クリティカル叩き出せるくらいだ。つまりかなり凄い。
「うーん……でも、何でお前があいつの強さなんて知ってるんだ?」
「だって何回かダンジョンで見かけたし」
「……そんな素振り昨日は見せなかったよな?」
「あっちは気付いてさえいなかっただろうからね。知らない振りしてた方が楽かと思って」
こいつ、バカだバカだと思っていたが、もしかしたら頭いいのかもしれない。
「じゃあ三人目はあいつにするか……」
「うん。じゃあ声かけてくるねっ!」
シズクはそう言って向こうに駆け出していった。まあコミュ力高いあいつなら大丈夫だろう。さて、俺はもう一つの問題を片付けるか。
「で、さっきから恨みがましい目で睨んできているキリトくん。何の用かな?」
「……爆発しろ」
「キリトはソロでやるのか!流石だなあ!」
「うわああああああああ!!!!!!!じょ、ジョークだから!頼むからお前のパーティに入れてくれ!」
俺に逆らおうなどとは千年早い。
「……はあ。ったく、仕方ねえなあ」
「流石ルリ!天才!最強!美少女!」
「ははは、そんなに褒めるな……って、あれ?何か一つおかしかったような……」
「気のせいだ気のせい!ほら、そんなことより早くパーティ申請しちゃおうぜ!」
むう。上手く誤魔化されたような気もするが、まあいいだろう。
その後シズクも女剣士の勧誘に成功したらしく、これで俺たちのパーティは四人になった。
それとこのフードを被った女剣士の名前だが……どうやらアスナというらしい。パーティに加わった時点で視界の右上端のHPバーに表示されたのだが、本人はそのことを知らないようで(パーティを組んだのは初めてのようだ)、普通に自己紹介していた。
そんなパーティ結成後も、たった四人しかいないから雑魚散らしの手伝いなんて役割を押し付けられたりしてアスナがキレそうになったりとなんやかんやあったが、何とか無事に会議は終わった。
「それじゃルリ、シズク。また明日な」
「じゃあね、シズクちゃん、ルリちゃ――――くん」
アスナが一瞬『~ちゃん』と言いそうになったが、言わなかったのでセーフとしよう。
あの二人はこれから連れだってどこかに行くらしく、ここで別れた。で、俺達はと言うと――――
「本当にいいのか?」
「うん。新しく部屋を借りるより安上がりだし効率的だからね」
――――何故か、一緒の部屋で一泊することになっていた。
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