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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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九校戦編〈下〉
  九校戦四日目(4)×正午での一高と三高

「凄いじゃない、一真君!これは快挙よ!」

背中をバシバシと何度も叩かれた一真(ゼロ)は、少し興奮しすぎと思いながら小柄な会長さんの腕力は外見で痛くはないが、この身体は借り物なんですけどと言いたい程のゼロだった。今頃名無しである本体は背中に違和感を感じているはず。

「会長、落ち着いて下さい」

「あっ、ごめんごめん」

自分がはしゃぎ過ぎている、という自覚できる程度には冷静さを残していたが会長はすぐに叩くのをやめた。けど、一真(ゼロ)を解放するつもりはなかった。

「でも、本当に凄い!一、二、三位を独占するなんて!」

「優勝したのも準優勝したのも三位に入ったのも全部選手で、俺ではないですよ」

「もちろん北山さんも明智さんも滝川さんも凄いわ!皆、よくやってくれました」

『ありがとうございます』

生徒会長から満面の笑みで労われ、スピード・シューティング一年女子チームは、緊張しながらも声を揃えて一礼した。

「しかし同時に、君の功績も確かなものだ。間違いなく快挙だよ」

会長ほど興奮していないものの、上機嫌な顔で渡辺先輩が称賛の環に加わった。

「はぁ、ありがとうございます」

「なんだ、張り合いのない。今回の出場選手上位独占という快挙に、エンジニアとしても君の腕が大きく貢献しているという点は、我々皆が認識を共有しているところだぞ」

渡辺先輩の発言で、雫達は一言加えて言った。

「渡辺先輩、確かに自分でも信じられませんが・・・・」

「何だか急に魔法が上手くなったって錯覚しそうですが・・・・」

「「ここにいる一真さんは分身体で自立支援型AIゼロですよ?」」

そう言った二人は、一真(ゼロ)だと言ってから渡辺先輩も会長も驚きの顔をしてから確かにと言う顔をしていた。それに本体である一真は名無しとして選手に出場しているから、実際に調整をしたのは一真本人ではなくゼロが全てやった事だ。

「今まで気付かなかったけど、ゼロさんなの?」

「俺はゼロですが、それが何か?調整したのは全部ゼロである「私」ですから」

器はゼロであるが、人格や感情と容姿は借り物のような感じなので本体と見分けが付かないと言っていた。特に雫が使った魔法については、大学の方から『インデックス』に正式採用するかもしれないとの打診があった。市原先輩が言った事で、会長は目を見開き、渡辺先輩は絶句し、雫は硬直した。インデックスの正式名称は『国立魔法大学編纂・魔法大全・固有名称インデックス』で国立魔法大学が作成している魔法の百科事典に収録された魔法の固有名称の一覧表の事である。ここに採用されるという事
は、既存魔法の亜種として魔法大全に収録されるのではなく、大学が正式に認めた新種魔法として独立した見出しがつけられるという事を意味する。魔法開発に従事する国内研究者にとって、一つの目標とされている名誉なのである。

「そうですか。開発者名の問い合わせには、蒼い翼研究者である織斑一真様の名で回答しておいて下さい」

「蒼い翼研究者?何よそれ?」

「現在の一真様の立ち位置は、蒼い翼から派遣された調査員であり医者でありカウンセラーであり、いろいろと面倒なので。これを最初に考えたのは、一真様の部下が考えついたのを一真様がゼロである「私」と共に開発した事にすれば問題はないかと。それに本体ではない以上、「私」が独断で決める事ではありません」

「まあ確かに一真君はいろいろと立ち位置が変わっているからかしたね。今は保留としておいて本体である一真君で決める事になるわね、あとはスピード・シューティング準々決勝からのがとても楽しみでしょうがないわ。確か男子の方で行われるのよね?」

そう言いながら、スケジュールを確認する会長と市原先輩であったが雫達も名無しさんの活躍を見たいと思い、ほのかのレースを見たら男子スピード・シューティングの方を見に行くために予定を組んでいる。深雪達もそう思いながら、名無しが使うであろうエレメンツを予想していた。第一高校スピード・シューティング一年生女子チームの成績は、他校でも波紋を呼んでいた。特に「今年こそ覇権奪取」の意気込みで九校戦に乗り込み、女子バトル・ボードの事故で残念とチャンスと思えたが新人戦で現れた蒼い翼特別推薦枠で選手として出ている名無しというふざけた名前もそうだが、過剰反応をしていた第三高校でも女子スピード・シューティングの成績で絶句状態であった。

「じゃあ将輝、一高のアレは、彼女達の個人技能によるものではないって事か?」

三高が使っている会議室には、二十人いる新人選手全員が集まりその視線の全てを向けていた。

「確かに、優勝した北山って子の魔法力は卓越していた。あれなら優勝するのも納得できる。だが他の二人は、それほど飛び抜けて優れているという感じは受けなかった。魔法力だけなら、二位、三位まで独占されるという結果にはならなかったはずだ」

「それに、バトル・ボードは今のところウチが優位だけど、一高に突如現れた蒼い翼特別推薦枠を取った選手のお陰で一高と三高に差がかなり開くと思うよ。一高のレベルが今年の一年だけ特に高いとは思えないけど、名無しだけは要注意だね。ハンデ有りであれだけの実力を持っているんだから」

ここまでのバトル・ボードの成績は、三高男子が二名出場していずれも予選突破、女子も二名出場して一名予選突破。これに対して一高は男子が三名全てレースを終えて一名が予選突破して女子も一名突破したが、一高名無しが予選突破した事で男子決勝から出場する事になる。

「ジョージの言う通りだ。選手のレベルでは負けてないが、その名無しだけは格上でとてもじゃないが高校生レベルを超えている。実際名無しの持つデバイスも確認されていない。一高の者でそれ以外の要因もあるだろう」

「一条君、吉祥寺君、それって・・・・何だと思う?」

スピード・シューティングの準決勝、三位決定戦で一高に連敗した女子選手の問いに、将輝と吉祥寺は愛・コンタクトで互いの意見が一致していた。

「エンジニア、だと思う。多分、女子のスピード・シューティングについたエンジニアが、相当な凄腕だったんじゃないかな」

「賛成だ。ジョージ、あの優勝選手のデバイス・・・・気付いたか?」

「ウン、あれは、汎用型だったね」

「そんな・・・・だって、照準補助がついてましたよ?」

「そうよ!小銃形態の汎用型デバイスなんて聞いた事ないわ!」

「確かに。どのメーカーのカタログでも、そんなの見た事ないぜ?」

一条と吉祥寺以外の者達は、反論ばかりだった。あとは小銃形態の汎用型デバイス何て技術は、市販されてないしそれも考えるが一条は言う。

「市販はされてないが、照準補助と汎用型を一体化したデバイスの実例はある」

「マジかよ・・・・」

一条の言葉に呆然とする者もいるし、誰もが信じられないとも言う者もいる。去年の夏にドイツのデュッセンドルフで汎用型CADに特化型CAD用の照準補助システムを繋げた試作品が発表された事を伝えるとほとんど最新技術じゃないかと言う。一条も調べ直すまで知らなかったようだけど、そうだったから皆も知る訳がない。吉祥寺が知っていたからブレーンだと言うが、吉祥寺が知る情報と現実であったのとは違う物でもあった。

「デュッセンドルフで公表された試作品は、実用に耐えるレベルじゃなかったはずなんだ。動作は鈍いし、精度は低いし、本当に『ただ繋げただけ』の、技術的な意味しかない実験品だった」

「しかし今回、一高の北山選手が使ったデバイスは、特化型にも劣らぬ速度と精度と、系統の異なる起動式を処理するという汎用型の長所を兼ね備えた物だった。それが全て、エンジニアの腕で実現しているのだとしたら・・・・到底高校生のレベルではない。名無しとそのエンジニアは一種の化け物だ。午後からの男子スピード・シューティングでも名無しが出るという事は、相当実力が無ければ優勝は確実だ。ハンデがあったとしてもだ」

「将輝、お前がそこまで言う相手かよ・・・・」

「一人のエンジニアが全ての競技を担当する事は物理的に不可能だけど・・・・」

「そいつが担当する競技は、今後も苦戦を免れないだろう。少なくとも、デバイス面で二、三世代のハンデを負っていると考えて臨むべきだ。名無しに関してもだ、競技に出場する名無しは実力に関しても上の上だと思う。俺が相手したとしても勝てるかは分からない」

一条と吉祥寺が言う通り、デバイスも実力もエンジニアで左右される面でもあるし名無しが出る競技は要注意と言いながらであった。ライバル校の主力選手に化け物呼ばわりをされた事に本体と分身体は、風の精霊によって聞いていたので一条と対面したら絶対に化け物と言った事をこの場で謝罪しろと言いたいくらいだと思った。昼食を食べた後に本体は男子スピード・シューティングのところにいて、分身体はほのかのレースを見に来た。約束の為でもあるが、終わったらすぐに男子スピード・シューティングを見に行けるようにした。 
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