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戦国異伝

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第百八十六話 国崩しその十二

「それに対して織田家は」
「十八万はいます」
 忍がこう言って来た。
「少なくとも」
「それだけいるか」
「左様です」
「それでもまだ後方に兵を置いておる」
 領内を収めそして予備戦力としてだ。
「それでも十八万だ」
「その十八万の大軍でこちらに来ておりますな」
 ここでこう言ったのは元春だった。
「それに対して我等は三万」
「まともにやっては勝てぬな」
「では兄上」
 元春が言うことはというと。
「ここは夜襲を仕掛けますか」
「それしかないか」
「六倍です」
 それだけの数の差があるからだというのだ。
「ですから」
「戦となると夜襲しかないな」
「はい、それでは」
「御主はどう思うか」
 隆元は元春の話を聞いてから末弟の考えを問うた。
「ここはどうすべきじゃ」
「はい、兄上の仰る通り」
 元春のことである。
「戦を仕掛けるとなりますと」
「夜襲しかないか」
「はい、やはり」
 彼もこう言うのだった、隆景も。
「それしかありませぬ」
「そして戦はどうする」
「するしかありませぬ」
 ここは、というのだ。
「何もせずに帰ったのでは毛利家の名折れです」
「そして備前の国人達もな」
「備前だけでなく話は美作や因幡にも及びます」
 そうした周りの国にもというのだ。
「ですから」
「ここはじゃな」
「戦をするしかありませぬ」
「ここで何もせぬでは備前や美作の国人達が織田家につく」
「特にあの者が、ですな」
 元春はここでだ、顔を顰めさせてこう言った。
「宇喜多が」
「あ奴がのう」
「あ奴は信用出来ませぬ」
 元春だけではない、隆景も隆景もだ。二人もまた彼のことについては実に忌々しげにこう言うのだった。
「そうじゃな、宇喜多直家は」
「あの者は」
「除くべきじゃったが」
「それが出来ませんでした」
「我等には忠義を誓っておる」
「備前の者の中で真っ先にこちらにつきました」
 毛利家にというのだ。
「残念じゃがあ奴は頭がよい」
「機を見る目があります」
「ですから」
「除けませんでした」
「しかしじゃ」
 それでもだというのだ。
「我等に心から従ってはおらぬ」
「はい、ですから」
「少しでもおかしな素振りを見せれば」
「その時は」
「すぐに」
「そうじゃ、消す」
 隆元もそのつもりだった、宇喜多については。 
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