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戦国異伝

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第百八十六話 国崩しその七

 信長にだ、あらためてこう言ったのだった。
「この顕如感服しました」
「そう言ってくれるか、そしてじゃ」
「そしてとは」
「うむ、御主達の力も借りたい」
 ここでだ、信長は顕如に言った。
「政に加わってくれるか」
「それがし達も」
「相談役としてな。それにな」
「それにですか」
「そうじゃ、そしてじゃ」
 雑賀も見て言う。
「御主には織田家に加わってくれるか」
「それがしが織田家に」
「服の色はそのままでよい」
 具足や旗の色もというのだ。
「灰色でな」
「そのうえで織田家で」
「天下泰平の為に戦ってくれるか」
 即ち天下布武の為にというのだ。
「そうしてくれるか」
「右大臣殿のお誘いなら」
 雑賀は信長と顕如の話を聞いて感銘を受けていた、信長のその心を知ってだ。それならばだった。
「それがしも」
「うむ、そう言ってくれるか」
「はい、是非」
 そしてというのだった。
「そして」
「そしてじゃな」
「天下泰平の為に戦わせてもらいます」
「そうしてもらえると何よりじゃ。それに」
 信長はあらためて顕如に顔を向けて彼にも言った。
「御主もな」
「拙僧もですか」
「これから色々と話を聞きたい」
 こう言うのだった。
「是非な」
「先程まで敵であった拙僧に」
「確かに御主は敵じゃった」
 しかしというのだ。
「それでも常に民のことを考えその才は見事じゃ」
「だからですか」
「これからは色々と話を聞きたい」
「そしてですな」
「天下を治めることに役立てたい、よいか」
 こう顕如に問うのだった。
「これからは」
「天下の為ですな」
「天下万民の為な」
 是非にというのだ。
「そうしたい、よいか」
「民の為ならば」
 それならばだった、顕如も。
 確かな顔になり頭を垂れてだ、こう信長に答えた。
「及ばずながら」
「そう言ってくれるか」
「そうさせて頂きます」
 こうして顕如も雑賀達も信長の家臣となった、顕如は御伽衆であるが。信長は本願寺を降しこのことも決めたうえでだった。
 石山のことを収めた、織田家と本願寺の激しい戦はこれで完全に終わった。しかし信長はまだ止まる訳にはいかなかった。
 すぐにだ、家臣達にこう言った。
「ではな」
「はい、次は」
「いよいよですな」
「西に向かう」
 そうするというのだ。
「そしてじゃ」
「毛利を攻め」
「降しますか」
「まずは姫路に向かいじゃ」
 そうしてというのだ。
「それからじゃ」
「そこから西に」
「攻めていくと」
「山陽、そしてじゃ」
 それにというのだ。
「山陰にもじゃ。猿」
「はい」
 羽柴は仇名を呼ばれすぐに主に応えた。 
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