ひねくれヒーロー
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
恐怖には限度がない
苦痛には限度があるが、恐怖には限度がない。
—プルニウス—
********************************************
恐怖には限度がない
◆◇◆コン◆◇◆
シュロとデイダラか・・・どう戦うんだろう
ナルトと共に鉄柵に身を預け観戦する
所々鉄柵が溶けかかっているものもあるが・・・多分大丈夫
身構える2人、シュロはすでに蜂を出現させている
「油女一族のシュロ・・・聞いたことがあるな
分家の出身ながらその才は本家に勝るとも劣らずと」
解説役のネジの声が聞こえてくる
名家出身だけあって他の一族のことも詳しいんだな
「ええボクも聞いたことがあります
・・・週一度、午後三時に大広場で愛の告白を叫ぶ・・・熱い人物だと!」
油女一族っていうより、そっちのが有名なんだろうな・・・
「確かルーキーでも上位の実力者だそうだが・・・頭は良くないらしい」
いや、頭は良いよ?
暗記が嫌いなだけであって悪くはないんだよ
「その言葉、撤回しろ」
イカリがネジに詰め寄る
そうだよな、事実だと言えども頭良くないとか言われて怒らないわけないよな
「あいつは頭が良くないんじゃない、変なんだ」
「・・・そうか」
・・・
「なぁコン、イカリがおかしいってば」
「・・・放っておこう」
「さーて、ダラーさんや覚悟は良いかい?オレは出来てる」
スズメバチが威嚇行動をとりつつシュロの周囲を飛ぶ
「ふぅん?蟲なんかでオイラに勝てると思ってんのか?」
粘土の蜘蛛がばら撒かれる
「おいおい・・・油女一族は皆、蟲しか使わないとでも?」
「何・・・?」
「風遁・真空玉!」
口から複数の風の玉を吹き出し、粘土の蜘蛛たちを吹き飛ばした
「あの術・・・」
「養父さんの術だな・・・ケンカで覚えたか」
御父さんボクに娘さんを下さいからの娘はやらんパターンでケンカしてるもんな・・・
「木の葉剛力旋風!」
驚異的な速さで繰り出された強烈な後ろ回し蹴り・・・デイダラは避けずに吹っ飛ばされた
あいつ、わざと受けたとしてもあれじゃ、衝撃が殺せないぞ
「・・・起き上がってこないね」
「うん・・・」
壁に穴があくほどめり込んでいる
普通の相手ならこれで勝利を確信できるのだが・・・デイダラ、わざと負けたか?
「・・・起き上がってきませんね・・・勝者、油女シュロ!」
小南がデイダラを回収して介抱している
しかしすぐに起き上がってこちらへ笑いかけた
・・・やっぱりわざとかー
「・・・イカリーコーン、なんか知らんけど勝ったー」
とりあえずハイタッチ
「オメデトー」
何の考えがあっての中忍試験なんだか
参加してる意味があるのか?
あっさり試合が終わってしまったため皆次の試合を待ちかねている
次の試合は誰と誰だ——サクラとイノか
長くなるな
そう考えているとリーが話しかけてくる
「流石はガイ先生のご友人、シナイ上忍の弟子!
素晴らしい体術でした!」
「お?ありがとな先輩!
蟲を使わなくて助かったぜ」
「そういえば油女一族でしたね
どうして蟲を使わなかったのですか?」
「・・・肉を食いちぎるからコイツラ・・・グロいんだ」
・・・スズメバチって怖いよな
一度スズメバチの捕食風景を見たが・・・恐怖しか感じなかった
「可愛い時は、可愛いんだがな・・・」
はちみつ好きだし
そう言いつつ蜂の頭を撫でる・・・あ、噛まれた
サクラとイノの女の戦いから目をそむけ、蜂を愛でることにした
はちみつをチロチロと舐める姿は愛らしい
女同士の戦いその1が終わり、女同士の戦いその2が始まる
テンテン対テマリが始まった・・・がこちらもあっさりと決着がついてしまう
テマリの勝ち、だからといって敗者に鞭打つ真似はどうかと思うが・・・
そして次の試合は——イカリ対カイことサソリだった
◆◇◆イカリ◆◇◆
イレギュラー同士がつぶし合う、コン以外は原作に影響が出ない組み合わせだな
まぁ小南とシノが戦ったがここも原作と変わりなかったな
「さて・・・どうしたものか・・・」
シュロやコンと違って火力がないからな、どうやっても長期戦を覚悟すべきか・・・
デイダラのように真面目に戦わないという可能性もある
難しいな、とりあえず口寄せでチャクラ刀を取り出しておく
「なんだあの刀・・・変な形だってば」
「あれはチャクラ刀って言って、チャクラを流し込んで切れ味を上げる効果をもった刀だ
あの刀を使えばチャクラ糸や術を斬ることも可能になる」
「へー!」
思わず笑みがこぼれる
ナルトもコンも、楽しそうだな
まぁ試合に集中しますか
印を組みチャクラを込める
「霧隠れの術!」
濃霧を発生させ姿を隠す
今のうちに出来ることをしておかないと、そう思いつつ起爆札を各所に仕掛ける
・・・何の行動も起こされないことが怖い
何を考えているのやら
「ちょ、霧で何にも見えないじゃないー!」
「霧隠れの術だから仕方ないよ」
「木の葉の忍びが霧隠れの術を使うって変じゃん?」
「イカリは元々霧の出身だから仕方ないよ」
・・・霧、解いた方が良いのかなぁ
「おい」
「!」
目の前にサソリが現れる
気配はしなかったのに・・・!一応私は感知系なんだけどな・・・
流石は暁と言ったところか
「お前・・・霧の、出身なんだって?」
「・・・あぁ、戦災孤児でな」
「さっきのシュロも、お前も・・・邪神さまご執心のコンってガキも
俺等と似たようなもんか?」
ジャシン様の、ご執心?
確かコンは木の葉に来る前は湯隠れで療養していたと聞いたが・・・
そのときに飛段と接触してあるのか?
デイダラの時のように、変装した飛段?だが何故ジャシンさま?
「何の話だ?」
さっぱり理解できない
そういうと低く笑いながら、仕掛けた起爆札を糸で外していく
・・・こうもあっさりとばれると、自分の未熟さが痛感してしまう
「お前らも、記憶があるんだろう?別の歴史を辿った自分の記憶が、よ・・・」
記憶?!
まさか、こいつら・・・
「前の歴史じゃ、あの小娘に負けちまったが・・・まぁ良い
今度は弟子でも取って・・・俺の芸術を伝えるだけだ、永遠にナ」
小娘、サクラのことか!?
ならこいつは原作通りサクラと戦い死に、記憶だけ憑依したのか?
サソリだけじゃない、小南もそうなのか、デイダラはどうなんだ?!
暁全員が記憶を持っているのか?!
「フフッ・・・そう睨むなよ・・・
そうだな、デイダラ以外は全員ってところだな
・・・鬼鮫は、テメェのことを覚えているぜ?」
聞きたくない名前
私を殺した男の名
「!」
干柿 鬼鮫
鬼鮫、迫る鮫肌、削れる肉の感覚、痛み、恐怖、無慈悲な目
思いだすのはそれらばかり
傷跡なんてないのに、斬られたはずの場所が痛む
覚えてるだって・・・?
やめてくれ・・・お願いだから、殺さないでくれ
ちがう、ちがう
俺は・・・
私は、スパイなんかじゃない!
「霧が晴れたわ!」
「・・・なんだあいつら、棒立ちで何してんだ・・・?」
体に力が入らない
怖い、どうしようもなく、恐い
あぁ、誰か、先生、コン、シュロ・・・寒い・・・助けて
◆◇◆コン◆◇◆
霧が晴れて、棒立ちだった2人
イカリが座り込んだと思ったらサソリはすぐにギブアップした
「ふん、これ以上やっても無駄だな・・・おい試験官、オレの負けだ」
「・・・霧の中で何があったか知りませんが・・・それで良いんですね?ごほっ
ならば勝者志村イカリ!」
様子がおかしい
シュロはすでにイカリのもとへ駆け寄っている
オレはありったけの毛布を借り、大慌てでイカリの元へ向かう
イカリの体は冷え切っていて爪の色も変色していた
毛布で包み、シュロに抱きかかえられて医務室へ向かう
寒い、恐いと呟くイカリの手を握り締めるシュロを置いて調理場へ赴く
内側から温めなければ、そう思って簡単なスープを作って持っていく
イカリが壊れる、そう思ったら酷く恐ろしかった
何か自分に出来ることを、そう考えてもオレじゃ何が出来るのか、全く分からない
どうすればいいんだろう
スープを持っているから医務室の扉が開けられない
仕方なく一度床に置いてから扉をゆっくり開く
ベッドの上で、シュロとイカリが抱き合っていた
イカリは泣きながら何度もシュロの名を呼んで、シュロは彼女を抱きしめながら・・・ずっと頷いていた
決して立ち入ることは出来ないと、オレなんかが2人を邪魔してはいけないと思えるほどの・・・
強烈な疎外感
気配を消したまま医務室から遠ざかる
すれ違った医療班の人にスープを託し、1人塔を彷徨う
オレじゃ何も出来ないし、イカリにはシュロがいる
シュロがいればイカリは持ち直す
オレがいたところでどうなる
冷たい壁に背中を預け、座り込む
「・・・オレ、何やってるんだろ・・・」
分からない
何がそんなにショックだったのか
分からない
自分のやりたいことが分からない
死にたくない、だけど、忍びになりたい、でも、この体は忍の仕事は耐えられない
神殿で大人しく生活していても、30になる前に死ぬだろうと言われてきた
パルコの尾のおかげで体力は持ち直しているけれど、長くは生きられない
だけど忍になりたいという気持ちは変わらない
忍になって生きる
ただの我が儘、本当に死にたくなければ養生してれば良い
下忍に合格して、シュロやイカリと任務をこなしてずっと心に引っかかっていた
あの二人は長生きできる
シュロが語ったように、子供を作り、ひ孫の代まで生きることが可能だろう
だけど、そのときオレはいない
オレはあの二人とともに生きれない
あの二人の世界に・・・オレはいらない
「淋しいのかしら」
影が差した
「・・・小南・・・!」
顔を上げると小南がいた
変装は解かれ、髪飾りが風で揺れている
「目的は果たしたからね、お別れを言いに来たの
・・・分かるわ、貴方の気持ち」
隣に座り、肩が抱き寄せられる
頬に手をあてられ、なだめるように優しく話しかけられる
「貴方は知ってるわよね?
私が仲間と三人で行動していたこと・・・
他の2人は目に見えない絆があって、それは男の友情と言われるものだった
私には到底入り込めない絆・・・
貴方の場合は男女の情愛、そして貴方は友と見られていない
ただの庇護欲で守られているだけの存在」
頭を撫でられる
心臓の音が聞こえるほど近い
ゆっくりと頬を撫でる手が、顔を持ちあげ視線を合わせられる
「そしてただの足手まとい」
知ってる
声に出さず呟いた
「・・・お互い、淋しいわね
これ以上2人と一緒にいられないと思ったなら・・・私の元へいらっしゃい
一緒にあの御方と生きましょう」
悲しげに微笑まれ、手を握られる
今この手を握り返せば、あの御方とやらの元へ連れて行かれるのだろうか
酷く、魅力的な誘いだと感じ———
「そこまでだ」
一陣の風が吹き、声が響き渡る
一瞬で風景が変わったこの場所は、塔ではなく、小南の紙で作られた部屋
オレはいつの間にこんなところにいたのだろう
「まじらず、シナイ・・・」
小南の顔が醜く歪んだ
さっきまであんなに優しい顔だったのに
「私の生徒に手を出すな」
やっぱりシナイ先生は眩しかった
************************************************
あっさり終わって腑に落ちないシュロ
傷を抉られたイカリ
両親の秘め事を見てしまった幼子の気分なコン
天使は、神は統計上悪魔よりも人を殺しているものな小南
べつにデコが光ってるわけじゃないよ眩しいシナイちゃん
ページ上へ戻る