美しき異形達
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第二十九話 旅のはじまりその九
「その前からもさ」
「旅行楽しんできたのね」
「千葉とかにも行ったよ」
その行った場所の話もする。
「楽しかったよ」
「千葉っていうと」
「ララミー牧場とかさ」
「確か牛乳とかソーセージの」
「ああ、あそこに行ってさ」
そしてというのだ。
「実際に乳製品とかお肉とか楽しんだよ。あとさ」
「あと?」
「孤児院の皆で、院長さんと一緒にさ」
その時にというのだ。
「北海道も行ったよ」
「ああ、北海道にも行ったの」
「函館に小樽、札幌ってさ」
「何か修学旅行みたいね」
「実際にそうだったよ」
修学旅行だったというのだ、まさに。
「皆で行ってしかも院長さん達が引率だったからさ」
「修学旅行みたいな感じで行ったのね」
「それで楽しかったよ」
「札幌ね」
札幌のことをだ、裕香はこう言った。
「ラーメンとか?」
「美味かったぜ」
食べた人間の言葉だった、薊はにかっとした笑顔で裕香に言った。
「あそこのラーメン」
「名物だしね」
「スープカレーとかも食ったしさ、あと羊も」
「ジンギスカン鍋ね」
「あれも美味しかったぜ」
薊はジンギスカン鍋についても笑顔で語った。
「匂いがまたいいんだよ」
「羊の匂いって癖があるのよね」
「その癖がさ」
かえって、というのだ。
「いいんだよ」
「うん、マトンって美味しいよね」
その味がとだ、裕香も応える。
「安いしカロリーも少なくて」
「最高のお肉の一つだと思うぜ、あたしも」
「何故か日本では人気ない感じだけれどね」
「あたしは好きだよ、それにうちの学校だとさ」
八条学園の話にもなる。
「寮でもよく出るし食堂のメニューでも多いよな」
「特に食堂でよね」
「羊料理のメニューかなり多いぜ」
「日本はともかくとして」
マトンの匂いに抵抗がある人が多い日本人のことである、その癖のある匂いがどうしてもというのである。
「他の国だとね」
「違うんだよな」
「本当に肉食文化だとどの国も食べるから」
それもポピュラーにだ。
「オーストラリアとか」
「あの国な」
「ええ、ニュージーランドもそうだし」
オーストラリアの兄弟国のこの国もだ。
「他の国もね」
「イスラムが有名だよな」
「ええ、あの辺りはお肉っていうと羊だから」
「それで、だよな」
「うちの学校イスラム圏から来てる人も多いのよ」
その羊料理の本場である。
「だからね」
「羊料理も充実してるんだな」
「そうなの、それで北海道だけれど」
「ジンギスカン鍋最高だったぜ。ただな」
「ただ?」
「あの羊肉な」
ここでだ、薊は少し複雑な顔になってこう言った。
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