SAO:孤独の剣聖
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二十三話
前書き
告知した通り最初の二十三話は二十二話へと引っ付けました。
話しが飛んだ?と思う方は二十二話を読み返してください
1時間ほどだろうか唐突にボスが目の前から消えた。俺はようやく意識が覚醒していく。
「終わったのか…?」
歓声は上がらなかった…全員が意気消沈しており倒れるように床に座り込んでいた
俺もボスの攻撃を何度か掠っていたらしくすでにHPはレッドゾーンだった
「…何人やられた?」
クラインがかすれた声で質問する。
「…十四人死んだ」
「うそだろ…」
キリトがマップで確認した事実を述べる。その言葉に答えたエギルだけでなく周りのプレイヤーからは絶望の色しか見えない。
まだ七十五層…この上にまだ二十五層もあると考えると今後どれほどの犠牲がでるのか計り知れない、暗鬱とした空気が立ち込める
俺はちらりと一人の人物を見る
(あんたはそれでも尚そんな顔をするんだな…)
ヒースクリフ…ついぞボスの攻撃の半分を一人で受け切ったのにも関わらずただ毅然とし自らのギルドのメンバーたちを慈しむかのように眺める
ボス攻略時何度か見たことがある表情を俺は見たことある。
何も考えていないときはその表情に疑問も何も浮かばなかった、しかし今はその表情に恐怖の感情しか思い浮かばない。
ヒースクリフのことは信用してるし信頼している、しかし疑念が払いきれない。そう思っているとひとつの黒い影がヒースクリフのもとに突撃した
(キリト!?)
キリトはそのままヒースクリフに対しソードスキル・レイジスパイクを放つ。ヒースクリフも咄嗟の反応で盾を構えるがそれを読んでいたキリトが軌道を変え剣をやつの胸に突き立てる。するとキリトとヒースクリフの中間に紫色のシステムカラー”Immortal Object”が表示された。
「……」
それを見た俺はあぁやっぱりそうなのか、と諦観してしまった
(あんたはやっぱり…)
「…茅場晶彦」
俺の言葉はその姿を見破ったキリトが口にした。
「参考までに気づいた理由を教えてもらえるかな」
否定はしなかった。つまりはそういうことなのだろう
キリトは俺と同じく七十五層での決闘によるシステムオーバーアシストに気づき疑問を感じたという
ヒースクリフ…茅場は苦笑し
「あれは誤算だった。予定では九十五層まえ正体を明かすつもりはなかったのだがな」
そういい他のプレイヤーを見まわし
「確かに私が茅場晶彦だ。付け加えればこのゲームの最終ボスでもある」
と自分の正体を明かす。その場が凍りつく。最強のプレイヤーがラスボスとなるのだ。誰一人として言葉を発しようとはしない
その時、血盟騎士団幹部の一人の男が立ち上がり
「俺たちの忠誠―希望を…よくも、よくも!」
そう言い茅場へと武器を振り上げ突撃する。その動きに茅場は武器を構えるでもなく盾を構えるでもなくただ左手を動かし現れたウィンドウを操作していた。
直後突撃したその男の動きが止まり落下する
「うっ…!」
俺も体が硬直するのを感じその場に釘付けになる。立っているのは茅場とキリトだけだった。それ以外は全員麻痺状態へとされていた
キリトがここで全員殺して隠蔽する気か?という質問に首を振り否定し
「予定を変更し最上層の”紅玉宮”にて君たちを待つ。私が育てた血盟騎士団や攻略組のプレイヤーたちなら私のもとに辿りつけるさ…だがその前に…」
といい剣を黒曜石の床に突き立て
「キリト君、」君には私の正体を看破した報奨を与えなくてはな、チャンスをあげよう今この場で一対一をし私に勝てばゲームクリアとし全プレイヤーがこの世界からログアウトできる。…どうかな?」
これは余裕の表れだろう。負けないといった絶対の自信があるからこその提案ここは引くべきところであるはずだがキリトは
「ふざけるな…いいだろう決着を着けよう」
そういい頷く
「ごめんな、ここで逃げるわけにはいかないんだ…必ず勝つ、勝ってこの世界を終わらせる」
キリトはアスナの方に振り向き謝り、約束する
「解かった。信じてる」
アスナもその言葉を信じ頷く
キリトはエギルの方を向き
「エギル、今まで剣士クラスのサポートサンキューな。知ってたぜ、お前が儲けのほとんどを中層ゾーンのプレイヤーにつぎ込んでたこと」
次にクラインを見る
「クライン。…あの時お前を置いて行って悪かった。ずっと後悔していた」
キリトのその言葉に二人が目に雫をためる
そして俺の方を向く
「ジン。…お前には感謝してもしたりない。お前のおかげで今俺は生きてるんだと思う…」
キリトのその言葉に俺は少し笑い返事をする
「俺もお前と同じだよ。お前がいなかったらここにはいなかったよ。…いいからあいつに勝ってこい、保証してやるお前はソードアートオンライン中最強のプレイヤーだ。」
俺の言葉に少しの微笑みと頷きで返す。キリトは二本の剣を抜き茅場の方を向きなおす
「悪いが一つだけ頼みがある…もし俺が死んだらアスナを自殺できないよう計らってほしい」
「よかろう」
キリトの頼みを茅場は了承する
キリトは自分が死闘を行う直前でも自分より愛おしい人のために気を使っていた
(お前は俺と違って人のためにすべてをかけれる。そういうやつだよ…)
俺はキリトに憧れているのだろう。キリトの内面の強さ、自分ではできないその生き方に
(俺はお前のようになりたかった…)
茅場はウィンドウを操作する
やつの目の前に不死属性解除を知らせるメッセージと共に二人のHPがクリーンヒット一発で全損するところまで減った
これは決闘ではない死闘…つまり殺し合いだ始まりの合図などはない
「殺す…!」
その言葉と共にキリトは床をけり茅場へと突撃し剣を振るう
その剣を茅場は盾で難なく受け止める
茅場はソードアートオンライン全てのスキルを把握していると思われる。それを本能で感じているキリトはスキルを一切使用することなく高速の剣を振るった
俺にも残像が見えるそれほどまでに速い剣激だった…しかしやつはそれすらもガードしてしまう
(怖いな…本当に怖いよ、あんた…)
俺はまた震えていた。覚悟を決めたはずなのに…やつは俺の覚悟すら容易く瓦礫させるそんな恐ろしさを出していた
(それを正面から受けているキリトは大丈夫なのか…)
そう考えたその瞬間
「くそぉ!」
キリトはソードスキルを放つ。分かっているはずなのに…やつにソードスキルは意味がないことを
奴の口元が歪む。勝利を確信した笑み
キリトが最後の一撃を放たれる直前俺は動き出す影を見た
(くそ!なんでお前が…!)
キリトの攻撃がやつの盾に命中し直後その剣が砕け散り
「さらばだ―キリト君」
茅場がキリトへと剣を振り下ろすその直前先ほどの影…アスナが二人の間に割って入った
突然の出来事にキリト、茅場の二人が目を見開く。しかし茅場のその攻撃は止められないだろう。ついに剣が振り下ろされる
「えっ…?」
そのとぼけた声は誰もが切られただろうと思われていたアスナの声だった
「最後の最後まで世話が焼ける二人だな…」
俺はアスナが駈け出した直後なぜかはわからないが動けるようになったのを感じすぐさま駈け出したのだった。そして剣が振り下ろされる寸前アスナの腕を引っ張り俺とアスナの位置を変えた
つまりアスナの代わりに俺が切られたのだ
「こんなことなら回復しとくんだったな…」
その場にいる全プレイヤーが呆然とする中、軽口を叩きながら俺はウィンドウを操作する
俺のHPはウィンドウを操作し終わる前には0になっていた。
もうすぐ俺の体は砕け散るだろう
俺はキリトに視線を向け
「後は頼んだぜ。キリト」
今までで一番の笑顔でそう言いウィンドウの決定ボタンを押す
(託すぜ、俺の全てを…)
薄れゆく意識の中俺は自身のアイテム”傾国の剣”がキリトに送られたことをメッセージで確認していた…
そしてついに俺の姿が砕け散った
後書き
視点がバラバラでごめんなさい。
雰囲気を楽しんでもらえたらと…
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