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エクシリアmore -過ちを犯したからこそ足掻くRPG-

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挿話 帰れない事情

/Alvin

 捕まってた連中をイバルとフェイが応急手当して。さて、ここで問題が浮上した。

 まさかカラハ・シャールだけじゃなく山向こうのラーラ・トラヴィスからも民を徴収してると来た。あの、ラ・シュガル国中治安ワースト1位の土地から。よーしゃねーなナハティガル。

「トラヴィス?」

 そっか。フェイはエレンピオス出身だから知らねえんだっけ。

「バーミア峡谷を越えた先にある六家の領地だ。首都はラーラ・トラヴィス。俺が前に寄った時にはもう人身売買が横行してた」
「そう、なの」
「トラヴィス領は霧雨域という霊勢下にあるため、視界が悪く、昼でも発光樹が燈っている街です。どんよりした空気が街を包み、人を知らず無気力にさせるような、そんな土地でございます」

 解説サンキュー、執事サン。

「霊勢の偏りって、ふしぎ、って驚いていいことばっかりじゃないのね――」

 余裕のあるエレンピオス人からすりゃあ、土地ごとに天候が違うってのはドキワク要素だ。フェイも今日まで素直にハシャいでたろーに、今回の件は堪えただろう。

「ま、大自然には逆らえねえかんな。まずは目先の問題をどうにかしようや。執事サン、トラヴィスの領民、どうするんだ?」

 そう。ごく小規模だが、ここの連中は難民。俺たちアルクノアと立場は変わらないんだ。

「何故だ。故郷に帰せばいいだろう」
「あーほっ。無理に決まってんだろ。売った連中は身内を売るくらい生活がひっ迫してんだぜ。んな状態で帰して、売った側も売られた側も元通りに暮らせると思うか?」
「ぐぬ」

 考えて物言え、バカ正直巫子。

「カラハ・シャールに救護所を設けますか?」
「それはだめだ。トラヴィスの民を庇護するのはトラヴィスの領主でなければならない。売られて行った者のほうがいい生活をしているという認識が広まれば、ラーラ・トラヴィスでますます人身売買が横行する」
「それだ! そのトラヴィスの領主は何をしてるんだ。自分の領地の民だろうがっ」
「……トラヴィス家は2年前に大火に遭われてから断絶状態なのですよ。家人の生き残りはおりません。だからこそラーラ・トラヴィスではこのような犯罪が罷り通っているのでしょう」
「トラヴィス家の人じゃない人が領主サマになっちゃいけないの?」
「緊急時には分家や姻戚から中継ぎの当主を引っ張ってくる事もありますが。トラヴィスの場合、一族郎党が一時に亡くなられてしまいましたので、領主の座は宙ぶらりんなのです」

 裏じゃ自称親戚が血みどろの領主争奪戦やってんだろーなー。あー、胸くそ悪くなるほどリアルに想像できたわ。くそ。ちょい前にジランドの奴に実家の近況吹き込まれたせいだ。

「とりあえずは病院へ。ここの人々はシャール家の軍を出して迎えに来させよう」
「畏まりました。カラハ・シャールに戻り次第、手配いたします」

 クレインとローエンが歩き出した。なりゆきだからか知らないが、ヴィクトルとイバルも。となれば俺も付いて行かざるをえないわけでして。

 一度だけトラヴィスの難民をふり返った。

「帰る故郷が無くなんのと、故郷があっても帰れねえのは、どっちのほうが辛いんだろうな……」
「アル?」
「いや、何でもねえよ。行こうぜ」 
 

 
後書き
 たまにこうやって番外編を挟みます。 
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