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魔法科高校~黒衣の人間主神~

作者:黒鐡
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九校戦編〈上〉
  懇親会というパーティー

俺達一行はなぜ前々日の午前中などという早い到着時間を予定していたのかは、夕方に予定されているパーティーの為である。高校生のパーティーだからもちろんアルコールは無しで、これから勝敗を競う相手と一同に会する立食パーティーはプレ開会式の性格が強く例年、和やかさより緊張感の方が目につく。

「だから本当は出たくないのよね、これ・・・・・」

会長であるあるまじき放言を、俺は礼儀正しく聞かないようにした。選手兼技術スタッフ何で、競技場内で活躍する正規メンバーとしてパーティーには出席しなければならない。俺はいつもの上着ではなく、一科生が着る上着を新調して着ていたのだった。パーティーのドレスコードは各学校の制服で、これのために一から創ったブレザーを着ていた俺だったが、呼ぶ者が現れるまで会場の外で待機していた。会場の外というより、懇親会控室だったけど。

「そのブレザーはどうしたんだ?随分とマッチしているようだが」

「このためだけに一から作ったんですよ。二科生のブレザーではない事ぐらいは知ってますから」

「まあそうなんだけど、懇親会には私のお父さんやお母さんが来るから。私もだけど十師族の者にとっては目立ちたくないんだけどなぁ~」

と会長が言うが俺的にはしょうがないと思うが、ここで思わぬ人物がこちらにやってきたのだった。

「こちらに織斑一真様と織斑深雪様はいらっしゃいますでしょうか?」

「俺と深雪がそうですが、何か用・・・・葉山さんか」

「お久しぶりでございます、真夜様がお呼びでございます」

「何でお母さんが一真君と深雪さんを呼んでるのかしら?」

そう言われても俺と深雪は呼ばれているからしょうがないから、しばらく一高の者たちを待たせて俺達は来賓室の方に向かった。来賓席のドアが開いた後にそこにいたのは、真夜と深夜と穂波さんがいた。それと烈がいたけど。

「真夜様、一真様と深雪様をお連れいたしました」

「ご苦労様。久しぶりね、一真さんと深雪さん。7月18日の発足式以来ね。それとここはVIPだけが使われる部屋だからいつも通りで構わないわよ?」

「それならいいんだが、これから懇親会というパーティーやるだろう?俺と深雪も一高生徒として出席するんだが」

「私から考えがあるんだ『烈か、で?考えとは何だ』ここに零家の零達也と零雪音と織斑家現当主の織斑一真様を私の客として紹介させてほしいのだ」

あーなるほどな、ここには織斑家の深夜がいるし、ここで零家の者が来たらさぞ盛り上がるだろうな。俺を含めた三人分を分身させてそれぞれを操作するのは、ゼロに任せるが織斑家当主は俺になっているからな。一真じゃなくて一夏の方がいいんじゃねえのと提案したら、それでいいわねと全員一致した。深雪も分身体を出すが、雪音の方は中にいるティアが代わりに喋るかもしれないので負担はない。早速俺は分身体を出した後に零達也と織斑一夏はスーツ姿となり、零雪音はドレス姿となったけどね。そして準備完了となったので、俺は控室に戻るが分身を遠隔コントロールするので負担はあるがまあしょうがない。

「一真君、早かったわね。何かあったの?」

「いえ。俺の父と母が来ているので、ご挨拶に行ってました。ここに織斑家当主と零家当主が揃ってたので」

そう言うと会長は声を小さくして、もしかして織斑家当主は一真君?と質問してきたので静かに頷いてから分身体を出したので負担が大きいのですよと言った。それだけで納得したけど、分身体を創り出した負担がどれほど大きいかは分からないが、まあいいとして俺と深雪は行く準備を整えていた。蒼太と沙紀も俺らと共に行くので、護衛時のスーツ姿となった。

「そろそろ時間よ。懇親会といえども勝負相手との顔合わせ。さあ、行きましょうか」

先程の後ろ向きな態度と打って変わって、何故か晴れ晴れとした表情で一同に促した。いつの間に気分転換されたのかは知らないが、ここに会長の親が来ているが関係ないだろう。たぶん来賓で挨拶程度だと思うし、深夜と真夜もドレス着ていたけど姉妹揃ってなのか一瞬分からなかったけどオーラで理解した。九校戦参加者は選手だけで三百六十名。裏方を含めると四百名を超えるらしい。全員出席が建前とはいえ、様々な理由をつけてパーティーを欠席する者は決して少なくない。俺と深雪も去年までは来賓としてこのパーティーに出席していた。その時は織斑一夏と織斑深夜と織斑雪音として参加していた。懇親会は出席数三百人から四百人の、ちょっとした大規模なもんだがな。会場も必然的に大きな会場であり、ホテル側のスタッフもそれなりの人数が必要でホテル専従スタッフや軍基地にいる応援だけでは賄えない。なので、俺達のような明らかアルバイトだと思わせる若者が給仕服に身を包んで会場内を行き来している。

「お飲物はいかがですか?」

「ん?ああエリカか、関係者というのはこういう事か。その服装よく似合っているじゃないか、それと化粧もなかなかだな」

「やっぱし?私もそう思うんだけど、ミキがコスプレだって言うからさ。それによく見ているじゃない、こういう大人風の化粧しないといけないからね」

「まあ俺はすぐに見分けるスキルも持っているんでな、ドリンクをもらおうか。蒼太も飲め、命令だ」

「命令ならしょうがないですね、いただきます」

そう言っている間にエリカからドリンクを二つもらった、一口飲むとこちらにやって来る気配が二つ。壁際にいたためにすぐに俺を見つけてきた深雪と沙紀だった、二人ともドリンクを持っている。俺も本当は酒が飲みたいがこんなところで飲む訳にもいかないからな。エリカの化粧も大人びたメイクをしているのは、すぐに気付いた事だし他のコンパニオンに負けてないくらいの美貌を持っていた。美月は一緒ではないから、もしかして裏方かなと思った。

「ハイ、エリカ。可愛い格好をしているじゃない、関係者とはこの事ね」

「そう言う事。ねっ、可愛いでしょ?一真君もこの格好似合うって言ってくれたしね」

まあ俺らの拠点D×Dにはメイドが働いているが、まさにこんな格好である。ま、こちらは仕事という任務で来ているからな。嫁もいるし、今回の任務は俺と深雪だけでやらせてもらう事だ。エリカが着ているのもメイド風な制服を着ていて、たまにフワリと広がったスカートを揺らしてみせたのだった。

「お兄様は一発で見抜きますからね、それにパーティーで呼ばれる時は私もエリカみたいな化粧もするわよ」

「深雪も化粧しているってのがバレバレなのか~。でもこの制服コスプレだって言われるんだけど」

「それってコスプレなの?十分制服に見えるけど」

「あたしも一真君も違うと言っているけど、男子からしたらそう見えるらしいよ」

「男子から?それはレオか」

「アイツじゃその程度の事さえ言えないって。ミキよ、コスプレって口走ったのは。しっかりお仕置きしといてやったけど」

「ミキ?」

俺達の会話ではあったが深雪には知らないキーワードが出てきたので、深雪は疑問符を浮かべてからそう質問した。誰?と質問したら深雪は知らないからか、呟くと同時に走り出したのだった。トレイを持ったまま、ドリンクをこぼさずに走り去って行ったのでバランス感覚が余程優れているなと思った。

「恐らくだけど幹比古を呼びに行ったのだと思う、そういえば知らないんだったな。吉田幹比古で、定期試験の理論で第三位を取った同じクラスメイトだ」

「ああそれでエリカは呼びに行ったのですね、それと蒼太さんも飲んでますね」

「俺が命令した。沙紀も飲まないのか?パーティーにはドリンク持ってないと不自然に見えるからな」

そう言った後に空間から他の給仕から、ドリンクを取ってから沙紀に渡したのだった。沙紀もしょうがないな~という顔をしながら、深雪と共に乾杯をしていたから俺と蒼太も一緒に乾杯をした。でも俺の飲み物だけノンアルコールからアルコールにしたのだった。これに関しては深雪達もしょうがないと思いながらだったけど精神年齢は大人だし、肉体年齢も同じだからな。

「エリカとは幼馴染らしい。深雪は幹比古に会った事ないから、紹介するつもりで連れてくるんじゃないのか?」

「それなら納得しますね。ですが、給仕服で初対面で会うのもどうかと」

俺も同感だなと思ったが、吉田家と千葉家については俺が一喝しといたんで問題ないだろう。エリカも幹比古もこれを見てこいと言われたと思うが、その前に零家当主として注意だけだが。

「深雪、ここにいたの」

「一真さんも、ご一緒だったんですね」

エリカの姿が消えた方向を見ていたので、こちらに来る気配が分からなかったがすぐに理解した。

「雫、わざわざ探しに来てくれたの?」

「ほのかに雫もいつも一緒何だな」

この二人はいつも二人でワンセットという感じだし、行動も一緒だった気がする。

「友達だから、それに別行動する理由もないし」

「そりゃそうだな」

何か愚問だった気がしたので、照れた様子もなかった。俺が二人を呼び捨てにしたのは、顔合わせの時にそうなった。まあ自動的に俺が教鞭を振るう事になったからあちらはさん付けでこちらは呼び捨てでいいと、エイミィからの助言でそうなったようなもんだったな。

「そんで?他の皆はどこにいるんだ?」

訊ねたのは俺だったが、あまり気乗りしない声だった。いくら二科生とはいえ、バスでの出来事で俺を見るだけで顔を青くするからなのか。

「あそこよ。何だか一真さんの事を怖がっているみたいなの」

「まああの時の後遺症だろうに、俺を怒らせるからああなったんだから。精神干渉系のだから、もう少し時間が必要だろう」

ほのかが指差す方を見てみると、慌てて目を逸らしたり顔を青くしたりしていた男子生徒の集団がいた。バスの事件後に感謝を言わないで文句ばかり言った馬鹿者共達だからな、チームメイトの一年女子はそんな顔をせずにこちらを見ていたが一塊に固まっていた。

「まああれだけの事をやってお兄様に感謝の言葉もなかったのだから、しょうがないとはいえ。余程『死神の眼』によって恐れられているのかもしれないわ」

「そういえば『死神の眼』って何なの?」

ほのかがそう質問してきたので、俺の代わりに深雪が答えた。四葉家前代当主が使っていた『死神の刃』の改良版で、精神干渉系の系統外魔法である。相手の精神に強力な「死」のイメージの与える魔法で、「死」のイメージを与えられた者はそのイメージのシンボルを実際に見ることでイメージが何倍にも増幅されて肉体に作用し、死に至る。というのを睨んだり殺気を込めて睨む事だけで首と胴体が切り離されるという幻覚を見るんだと説明したのだった。

「それはしょうがないわね、深雪の側に寄りたくても一真さんの眼で睨まれたらまた幻覚が見えると思っているんだわ。だから近付かないんだと思う」

「それとエイミィ達もこっちに寄って来ないのは、蒼太達が目を光らせているからかもしれないな」

そう言うとエイミィ達は、こちらを見てもおいでおいでと手を振っている。俺や深雪に対してだと思うが、男子諸君はそうは思っていない様子だ。

「同じ一高生で、しかもチームメイトなのに。でもまあ織斑君の眼で睨まれた男子達は皆嫌な顔をしているのよね」

「千代田先輩」

花音がグラスを片手に俺達の輪の中に入ってきた。その後ろには同じようにグラスを持っている五十里がいた。

「分かっていたとしても、織斑君が解決したのを感謝しないでそうなったのを一年男子は自業自得だと思うよ。僕だったら素直に感謝すると思うよ、花音」

「それでもまあ理解あっての事だけど、さすがにもう反省しているんだから輪に入っても大丈夫なんじゃないの。啓」

千代田と五十里は互いの事を名前で呼び合っていたけど、許嫁だからなのかな。まあこっちも長い時間過ごしてきたと思うが、一番解決方法がある。それは深雪達を行かせる事だ。

「まあ俺の眼をそう簡単に克服は出来ないから、深雪。皆の所へ行っておいで、チームワークは大切だ。その内一年男子も俺の眼からの恐怖が無くなる事だろうからな。エイミィ達にも簡単でいいから俺の都合を話してきなさい。後で俺の部屋に来るがいい、ルームメイトは蒼太だからな」

選手兼エンジニアなので、護衛者の蒼太と一緒になったのは会長が割り当ててくれたのであろう。そう言うと沙紀はエイミィ達のところへ行こうと促すと、雫とほのかも一緒に行ったのだった。

「大人の対応ね。でもまあその通りかもしれないけど」

そう言ったけど、こちらに来た委員長が五十里先輩の事を探していたと言ってこの場から離れて行く。どうやら中条先輩が探していたそうで、もうすぐ来賓挨拶があるからそれまでに戻って来いと言った。あと烈の挨拶もあるからだと言ってな。

「そのブレザーよく似合っているじゃないか。一真君が一科生になるかもしれないからかな」

「ええまあ、二回しか着ないブレザーですが記念にと言われて新調しました。ですが俺が二科生にしたので、一科生になるのはあり得ませんよ」

そう言ってから他校の幹部と少し話をしてくると言い、行ってしまったがまあいいだろう。どうせこちらに幹比古が来るんだから、俺と蒼太はしばらく壁際で待機していたらやっと来たのだった。

「あれ?深雪は?」

「クラスメイトの所に行かせた。後で俺の部屋に来るからその時にでも挨拶するがいい」

「あ、うん」

俺のセリフは前者がエリカで後者は幹比古に対するもの。幹比古の反応は、残念よりホッとしていたけどな。

「その服装は良く似合っているじゃないか、幹比古ももっと胸を張れ。それと俺がいない間はずっと練習していたと聞いたが上達したか?」

「う、うん。事故後よりも考え方を変えてやっているから、結構うまくいってるよ。それとこの格好で初対面の人に会うのはどうかと思うんだけど」

「ホテルの従業員なら、十分似合っているぞ」

幹比古の服装は、白いシャツに黒の蝶ネクタイと黒のベルトをしていた。エリカも黒のワンピースに白いエプロンに頭に白いヘッドドレスを付けていた。俺的に見れば執事とメイドという感じではある。

「ほら一真君だってそう言っているから、自意識過剰なのよ。ミキは」

「僕の名前は幹比古だ」

初対面時にカットされた部分がここで起こる場面かと思うと、ホテルの従業員がここで喧嘩しててもいいのか?幹比古は自分の姿が余程気に入らないらしいし、旧家出身の彼には、使用人と同じ格好をするという事で抵抗感があるようだ。レオと美月は接客が出来ない事は知っている。

「レオ達は裏方か?」

「まあねえ~。美月もこの格好は嫌なんだって、実はミキと気が合うのかしら」

「僕の名前は幹比古だ!」

「了解りょーかい『大声でケンカするほど暇なようだな?あとで怒られるぞ』それはまずいわね」

という事で、レオは厨房で力仕事、美月は皿洗いをしているそうだ。二人とも機械操作が得意な訳だし、今の時代に倉庫の出し入れも食器の洗浄も人手を使わない方法でやっている事は知っている。俺達の家にはそれが一切ないが、細かい部分まで人の手より機械が代わりを務める。だからあの二人は、裏でキッチン用オートメーションを操作しているという事なのだろうな。

「それより千葉家と吉田家の方に一喝したそうだぞ?俺の友人からな」

「なるほどね~。だから本来なら親が無理強いされた結果になるはずが、自分の意思で来れた訳なのか」

「僕もだよ。まさか自分の意思で行けるとは夢にも思わなかった、ありがとう一真」

「まあな、それよりここでサボってないでとっとと仕事して来い。また後で話せるんだからな」

そう言ったら二人とも、それぞれの仕事に戻って行った。本来なら親に無理強いされてエリカが幹比古に八つ当たりをするはずが、零家から千葉家と吉田家に無理強いさせようとするなという厳重注意をしたからだ。そうする事で、親が子の意思を尊重しろとな。総勢四百人の立食パーティーとなれば、料理を用意するテーブルも中央に一つという訳にはいかない。下っ端共は料理を食いまくってたが、俺はエリカ達と別れた後に壁際に蒼太と一緒に深雪の方向を見ていた。今深雪は、真由美に声がかかりクラスメイトと別れ、生徒会メンバーと同行していた。

『深雪は今現在は、生徒会メンバーと一緒に腹の探り合いか』

『そうですわお兄様。少し休みたいのですが、生徒会役員なのでしょうがないと思いますけど』

『深雪様があまり無理されないように、雪音様の方では座っているそうです』

『俺としては、一真様の方が無理をしている。何たって二人分を遠隔から操作しているもんさ』

脳量子波でそう会話していると、深雪は淑やかな笑みをしていて談笑している会長達だが、相手は第一高校にとっては最大ライバルと言ってもいいくらいだ。第三高校の生徒会役員と話している間に後ろからこっそりと呟いき合っていた。先輩の情報を傾け、戦力分析に勤しんでいるとあれば、尚武の校風を掲げる第三高校。上級生も感涙にむせたかもしれんが、深雪に向かい視線を向けていた。

「見ろよ一条、あの子、超カワイクねぇ?」

「超って、お前・・・・何時の時代の高校生だ」

「うるせーな。おめーには聞いてねーよ。なっ、なっ、一条、どう思う?」

「何サカってるんだよ・・・・無駄無駄。あんな美少女、高嶺の花もいいトコだろ。お前じゃ相手にされないって」

「つくづくるせーな。俺じゃダメでも、一条ならイケるかもしれねーじゃんか。なんせ一条は顔良し腕良し、その上十師族の跡取りなんだからよ。そしたら俺にもお近づきになるチャンスくらい巡ってくるだろ」

「なに威張って情けない事言ってんだよ・・・・・」

実態は、このような会話が交わされていたのであった。まあ実に高校生らしいと言えない事もないが、陰口で叩くバカ野郎には失礼な者もいるんだな。それに聞こえているからお前らを消しても構わないが、それだけはやめておこう。

「将輝、どうしたんだい?」

ただ、その輪の中心にいた男子生徒は、盛り上げる仲間に応えも返さず、じっと話題の子である深雪を見詰めていた。甘いマスク、というより凛々しい顔立ち。若武者風の美男子、という古風な形容が違和感なく当てはまる容貌だ。180はある身長に広い肩幅を引き締まった腰、長い脚・・・・第三高校一年生、一条将輝は確かにチームメイトの言う通り、女性が好みそうな外見をしていた。

「・・・・将輝?」

「・・・・ジョージ、お前、あの子の事、知っているか?」

ジョージというのはあだ名、外見は完全なモンゴロイドで本名も純和風な吉祥寺真紅郎というその生徒は、将輝の質問に考える素振りと見せずに即答した。

「え?ああ、制服で分かると思うけど、一高の一年生だよ。名前は織斑深雪。出場科目はアイス・ピラーズ・ブレイクとミラージ・バットで、一高のエースらしい」

「げっ、才色兼備って奴?」

大袈裟に抑け反るチームメイトを尻目に、一条将輝はポツリと呟きを漏らした。

「織斑深雪、か・・・・・」

その声に、ジョージと呼ばれた男子生徒が意外感と好奇心のブレンドされた視線を向けた。

「珍しいね?将輝が女の子に興味を示すなんて」

「そう言や、そうだよな」

「一条の場合は、女の子から寄ってくるからな。ガツガツする必要何て無いんだろ」

「贅沢なんだよ、コイツは」

段々「モテナイ男の八つ当たり」の様相を呈して来たが、将輝は黙り込んだまま応えない。ただ、露骨にならないように、時々視線を外しながら深雪を見詰めていただけだったが、その視線は熱が込められてからクラスメイトが叩かれる姿を見た。いつの間にいたのか、深雪がその生徒を見ていた。

「何だテメエ!」

「私は織斑深雪様の護衛をしております、蒼い翼から派遣された護衛者でございます。私らの要人に対して、その視線や深雪様について話されるのであればもう少し小さな声でお話する事をおススメ致します。じゃないとあなた達ごと消す運命と忠告をさせて頂きます」

そう一礼した後に、沙紀は深雪のところに戻っていったら第三高校のクラスメイトは蒼い翼という言葉で絶句していた。それは一条も同じこと、蒼い翼から派遣されたという事は強い権限持ちな者だと思いながらも、一条は深雪に対する視線をしていた。来賓の挨拶が始まり、今日の主役たちは世慣れない高校生らしく、食事の手を止め、談笑を中断し、必要以上に真面目な態度で大人たちの声に耳を傾けていた。俺と蒼太は、脳量子波で来賓者の中にいる烈たちと話していたが、零家と織斑家紹介は烈の挨拶後に紹介するそうだ。

「壇上に出てくる魔法界の名士はほとんど見た事あるな」

「そうですね、まあその時は零家の者として接したと思われます」

俺達は既に知っているが、それぞれの激励の言葉や訓示が消化されていきいよいよ烈の出番となった。当時は「最高にして最巧」と謳われ、「トリック・スター」の異名を持っていたし、今でも現役並みのトリックスターでもやるんじゃねえのかと俺は予想していた。

「続きましてかつて世界最強と目され、二十年前に第一線を退けた後も九校戦をご支援くださっております。久島閣下よりお言葉を頂戴します」

俺と蒼太は待ってましたと思い、暗くなった。俺らはいつも会っているから、別に緊張してないが会場内にいる高校生全員にとっては九島老師と登壇を待つ。そして現れた人物の姿に、俺らはまたかよと言いたいくらいの悪ふざけだった。眩しさを和らげたライトの下に現れたのは、パーティードレスを纏った金髪の女性が出現した事により会場内はざわめきが広がったが、あれは精神干渉系統のでこの前俺が使った視線を女性に向けさせるというのだ。衝撃を受けたのは、俺達以外の無数の囁きが交わされるが、壇上にいるのは烈じゃなかったのかとか、なぜ若い女性が代わりに姿を見せたのか何かのトラブルがあり名代として派遣されたのか。とかであった。

『烈、この前の意趣返しか?』

『まあな。でもこれについて気付いているのは数人と言ったところですな』

『そりゃそうだろうよ』

壇上にいるのは女性だけではないし、その後ろにいるだけで魔法というより手品だしな。俺でも使える精神干渉系統の魔法で俺も使った事はあるが、一高のメンバーでもパニックになっている。会場全てを覆う大規模な魔法を発動させて、意識を金髪美女に吸い寄せられているという感じだ。目立つのを用意して、人の注意を逸らすという事は自然現象でもあるかもしれない。俺の分身体は烈がいる隣奥にいたけどな。悪戯成功させた少年のような笑顔だったが、老師なんだから悪ふざけはやめろと言いたいくらいだ。烈の囁きを受けてから、ドレス姿の女性は横へどいたと思えばライトが烈を照らしてから大きなどよめきが起こるからかほとどんの者にとっては烈本人が突如空中から現れたように見えた事だろうな。烈は上機嫌のまま、俺の方向を向いていたがすぐに挨拶を始めた。

「まずは、悪ふざけに突き合わせた事を謝罪する。今のはちょっとした余興だ。魔法というより手品の類いだ。だが、手品のタネに気付いた者は私の見た所四人だけだった。つまりもし私がテロリストで、来賓に紛れて毒ガスなり爆弾を仕掛けたとしても、それを阻むべく行動を起こす事が出来たのは四人だけだ、という事だ」

声はマイクを通さなくとも、九十とは信じられないほど若々しいものであり、烈が何を言いだすのか何を言いたいのか大勢の高校生が興味津々の態で耳を傾けていた。それを聞いたほとんどが、烈の口調は強くなった訳でもないが会場は一気に静粛されたのだった。

「魔法を学ぶ若人諸君。魔法とは手段であって、それ自体が目的ではない。その事を思い出して欲しくて、私はこのような悪戯を仕掛けた。私が今用いた魔法は、規模こそ大きいものの、強度は極めて低い。魔法力の面から見れば、低ランクの魔法でしかない。だが君達はその弱い魔法に惑わされ、私がこの場に現れると分かっていたにも拘わらず、私を認識できなかった。魔法を磨く事はもちろん大切だ。魔法力を向上させる為の努力は決して怠ってはならない。しかしそれだけでは不十分だと言う事を肝に銘じて欲しい。使い方を謝った大魔法は、使い方を工夫した小魔法に劣るのだ。明後日からの九校戦は、魔法を競う場でありそれ以上に魔法の使い方を競う場だと言う事を覚えておいてもらいたい。魔法を学ぶ若人諸君。私は諸君の工夫を楽しみにしている」

聴衆の全員が手を叩いた。残念ながら、一斉に手を叩く者と声に出さずに笑い続けた。魔法の等級(ランク)よりも、魔法の使い方が重要というその考え方はランク至上主義の今の魔法師社会の在り方に異議を唱えるものだ。魔法は使い方次第でそれは即ち魔法をあくまで道具と割り切っている事を意味している。この国の魔法師社会の頂点から二番目であるが、今の魔法師社会の在り方に逆らう事を勧めるというのは表であり裏では魔法師社会を零家と共に十師族を束ねている者の一人。

「次は私から紹介をさせて頂きたい盟友を紹介させてもらおう。こちらに来てくだされ」

いきなり老師からまたマイクで話始めたので、また壇上の方に目を向けると四人の男女が烈が呼んだ者に対して誰?と全員思ったに違いない。俺と深雪は黙って壇上にいる俺達の意識を向けたのだった。司会者も台本にはない事だったので、烈に向けるが烈は既に壇上に上がった者達を来させたのだった。

「私から紹介をさせて頂きたいのだが、この御方達は私よりも偉い御方達なので、失礼のない事を言わせてもらう。まずはこの二人を紹介させてもらおう、蒼い翼本社社長兼CEOをしている零達也様と社長令嬢をしている零雪音様だ。この二人は零達也様は零家当主をしていて、零雪音様は主に表には出ない貴重な御方だ」

零家の事を紹介された達也=俺と雪音=深雪は簡単な挨拶を始めたのだったが、司会者も会場内全員が驚愕していた。零家の者が表で堂々と現れた事などないからか、写真撮影をしようとしたが零家の二人は写真を撮ろうとした者たちを首絞めながら宙に浮かせた。烈がそこまでだと言ったら記者らしき者を放した俺だった。

「零家の者に許可なく写真を撮ろうとは言語道断と言いたいところだ、貴様ら死にたいのか?まあいいとして、俺の友人をこの場で紹介させてもらう。織斑家当主をしている織斑一夏と織斑深夜だ、この二人は俺達ととても良く繋がりを持っている。それと俺や烈と同じくとても強い権限を持っているからな」

本当は一真だけど、ここにいるけど一夏というのは前に使用した名前だ。そいつらの紹介を終えた後に烈と共に壇上奥に消えて行ったのだった。その後懇親会というパーティーが終えた後に、俺らは烈のところに行った後に分身体を本体に戻した後に消費したのか倒れそうになった。まああれだけ遠隔操作する事はあまりなかったと思う。 
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