ロックマンX~5つの希望~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第五十二話 蒼と朱
前書き
最後のステージ。
ブースター・フォレストに向かおうとするエックスだが…。
エックスがルインと共にブースター・フォレストに向かおうとした時、彼女からの提案に、しばらく呆然としていた。
エックス「え…?」
ルイン「お願いエックス。ルナの傍にいてあげて欲しいの」
ルインはもう一度繰り返して、エックスの瞳を覗き込んだ。
彼女からの提案はこうだ。
“自分1人でブースター・フォレストに向かうからエックスはルナを頼む”と。
エックス「…どうしてそんなことを?」
ルイン「…ルナ…アクセルのイレギュラー化で凄く落ち込んでた。元々、イレギュラー化しないはずの新世代型レプリロイドがイレギュラー化したことによる不安に加えてアクセルまでイレギュラー化してしまったから…そのショックは図り知れない」
エックス「……」
確かに今まで、自信に満ちていたルナがあそこまで落ち込んでいたのは見たことがない。
ルインの言いたいことは分かったが、腑に落ちないことがある。
ルナはルインの親友で、ルナの気持ちはルインが誰よりも知っている。
新世代と旧世代の差はあっても、共に人間からレプリロイドとなった2人の絆はエックスとゼロと同じくらい誰にも断ち切れない程に。
ルイン「ルナの今の気持ちは私よりもエックスの方が分かるんじゃない?私も前にイレギュラー化して、エックス達と戦った。」
その言葉で思い出す。
かつて、ゲイトが起こしたナイトメアウィルス事件。
シグマにゲイトが殺されたと思った彼女はナイトメアウィルスを限界以上まで吸収し、異常なまでのパワーアップと引き換えにイレギュラーとなって自分達に刃を向けた。
あの時の状況と今の状況は限りなく似ている。
エックス「(もし、アクセルが俺達に銃を向けてきたら、俺はアクセルを撃つことが出来るのだろうか…)」
自分達の知るアクセルならば、シグマの都合のよい駒となって世界に害を為す存在となるより、破壊された方がマシだと思うだろう。
しかし、心が納得出来るかと言われれば納得出来ないだろう。
ルイン「エックス…ルナのことをお願い。アクセルのことは、エックスが1番よく知っているし…私はまだあのアクセルを受け入れる自信がまだないから…」
エックス「…………」
ルイン「ルナは今、凄く苦しんでる。助けてあげたいけど、私にはその自信がない…エックスならきっとルナを慰められるよ」
エックス「……分かった」
頷くまで、いくらか悩んだ。
エックスは自分にルナを慰める力などあるのか?
この時点で疑問に感じる。
ルナのことを誰よりも知るのは、共通点を持つルインとアクセルに他ならない。
何より、彼女を1人で出撃させるのが不安であった。
だからこそ、心配が自然と口をついた。
エックス「ルイン…どうか無事で…」
ルイン「…任せて」
互いに抱擁を交わし、2人は別々の場所に向かう。
エックスはルナの元へ、そしてルインはブースター・フォレストへ。
そしてゼロとレイヤーが帰還し、アイリスが2人を迎えた。
レイヤーはゼロとアイリスに気を利かせ、部屋を後にした。
アイリス「ゼロ…アクセルのことだけど…」
ゼロ「なんだ?」
アイリス「何とか元のアクセルに戻せないのかしら…」
ゼロ「分からん。前にルインがイレギュラー化して元に戻ったという前例はあるが、あれはウィルスの過剰吸収が原因だったからな。アクセルの時とは似ているようで違う」
あの時のアクセルの言葉を信じるなら、アクセルもかつての自分と同じ“本来の自分”がいるのだ。
ウィルスで一時的に人格を上書きされたルインとは違う。
恐らくは記憶喪失のために新たに生まれた仮の人格なのだろう。
アイリス「…どうにもならないのかしら……また、大切な仲間がいなくなる…」
アイリスの脳裏に遠い昔、苦楽を共にしたレプリフォースの同志と、兄の姿が過ぎった。
ゼロ「…………」
ゼロもアイリスが今はもう完全に壊滅してしまったレプリフォースのことを思い出していることに気付いたために無言だ。
アイリス「ごめんなさい…。ゼロやみんなが戦ってくれているのに、こんな弱気な発言ばかりして…」
ゼロ「気にするな。お前は1人じゃない」
アイリス「ええ。独りぼっちはとても辛いものね。でも、私にはゼロやみんながいる。だから1人じゃないわよね…」
ゼロ「ああ」
アイリス「今のアクセルは独りぼっちなのよね…イレギュラーの人格に乗っ取られて、世界を傷つけようとしている…何とか助けてあげたい。戦えない私が言っても仕方ないけど…」
ゼロ「全ての元凶はシグマだ」
シグマがあのイレギュラーのアクセルの人格を引き出したのは、まず間違いないだろう。
ゼロ「今度こそ奴を倒す。そして奴との永い戦いもこれで終わりだ」
アイリス「ええ…私は一緒に戦うことは出来ないけれど。心はいつでもあなた達と一緒にいるわ。」
ゼロはアイリスの言葉に頷くと、壁に背を預けて目を閉じた。
次の戦いに備えるために。
ページ上へ戻る