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『曹徳の奮闘記』改訂版

作者:零戦
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第四十四話





「………連合軍の陣地が騒がしいな」

「そらそうやろなぁ。何せ、ウチらのところに陛下がおるんやしな」

 俺の呟きに霞が答えた。

「連合軍が出撃してきますッ!!」

 兵士からの報告に俺は無言で頷いた。




「何故陛下がいるんですのッ!?」

 陣地から出てきた袁紹の第一声はそれだった。

「それは袁紹。貴様の悪事を暴いたからだッ!! 連れてこい」

 俺はそう叫んで、兵士に『  』を連れて来るように言う。

 『  』は直ぐに俺のところに連れて来られた。

 捕らえた当初は派手な服装をしていたが、今ではボロボロになっていた。

「そんな奴が何ですの?」

「……気付かないのか袁紹? この男の顔に見覚えはないか?」

「…………ッ!?」

 ……気付いたな。

「………気付いたようだな袁紹。」

 俺はニヤリと笑う。

 もうかなりニコヤカな笑みだ。

「………恐いくらいじゃがのぅ……」

 零がポツリと呟いた。

「お前に董卓と袁術を討てと命令をして、共に朝廷の実権を握ろうとした宦官で十常侍の張譲だッ!!」

バキィッ!!

「ヒイィッ!!」

 俺は張譲を袁紹がいる方向に蹴った。

「…………」

 転がってくる張譲を袁紹は避ける。

「え、袁紹。儂を早く助けるんだッ!!」

 縄で縛られた張譲が叫ぶ。

「……麗羽、どういう事かしら? まさか私達を騙したというの?」

 怒りに満ちた曹操が袁紹に歩み寄る。

「な、何を仰いますのッ!? わ、私はこんな浮浪者は知りませんわッ!!」

 ……張譲を捨てたな。

「悪いが袁紹。既に張譲から全て喋っている」

 そこへ、陛下が言う。

「政治の実権を握りたいからと言って宦官の言うことを聞くとは何事だッ!!」

「は、はッ!!」

 袁紹は思わず頭を下げた。

 流石に袁紹も陛下には勝てないか。

「それに曹操。貴様はそれを知っておきながら知らない振りをするのはどういう了見だ?」

 陛下が曹操を睨む。

「……申し訳ありません。ですが確実な証拠は無かったので真実かどうかは分かりませんでした」

 曹操が謝る。

 まぁ実際は、名声と力を付けるために霞を狙っていたらしい。

 ………霞は渡さんからな曹操。

「……まぁよい。しかし、これで漢王朝は滅亡じゃな」

「へ、陛下?」

 陛下の言葉に、皆が目を点にした。

「此度の原因は全て余の責任じゃ。よって、余は張譲の処刑後に皇帝を退く。これで漢王朝は滅亡じゃ」

 ………まさか陛下は……。

「一ヶ月の期間を与える。それから誰が皇帝の座につくか争え」

『……………』

 誰一人、発言をしない。

「反董卓・袁術連合は解散せよッ!! これが余の最後の命令じゃッ!!」

『はッ!!』

 その言葉に皆は思わず頭を下げた。




 こうして、不本意ながらも董卓・袁術軍は反董卓・袁術連合を解散させて一応ながら撃ち破った。




―――玉座―――

「陛下、宜しいのですかあのような事を言って……」

 洛陽に戻ってから陛下に聞いた。

「………仕方ない。漢王朝は既に限界だ。今更立て直そうにも無理に等しい。なら一度、全てを破壊してから新たに作ればいい」

 陛下は疲れたように言う。

「………しかし、一番困るのは民だ。民は私を恨むだろうな。史上最低な皇帝として歴史に残るだろう」

「陛下……」

「私は陛下を辞めるんだ。陛下はいい」

「ですが、今はまだ陛下です」

「……そうか、王双は面白いな」

「そうですか?」

「あぁ」




 それから袁術軍は南陽に帰還した………けど。

「……何でこんな多いんだ?」

 袁術軍には董卓軍の兵士もいた。

「しゃあないで長門。涼州は馬謄が治めているから帰りたい奴だけ帰らしたんやしな」

 霞が言う。

 董卓軍は、此度の責任を取るとして袁術軍に吸収されていた。

 ただ、故郷に帰りたい奴は除隊させている。

 将で除隊したい奴は一人もいなかったがな。

 董卓は何故か賈駆と一緒にメイド服を着て、女官となっていた。(賈駆は軍師も兼任している)

 あぁそれと、捕らえた捕虜は全て釈放した。

 勿論、顔良や陸遜、呂蒙、公孫賛らもだ。

 ……ただ、公孫賛の部下は劉備軍の傘下に入っていたせいか、劉備の思想に憧れた兵士が続出して半数近くの兵士が公孫賛から離脱していた。

 ………もの凄く悲しすぎるわ……。

 幽州へ帰る時、泣いてたからな。

「………ま、頑張ってくれ」

 俺はそう呟いた。




 
 

 
後書き
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