ホモセクシャル
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第二章
「同性愛を認めようという動きも」
「あるのですか」
「牧師様の世界でも」
「これまでの否定ではなく」
「罪とするのではなく」
「そうです、認められずとも」
それでもだというのだ。
「黙認することもです」
「それもあると」
「有り得ることだと」
「そうです、様々な議論が出ていまして」
どうにもというのだ。
「軍の同性愛の問題もです」
「どうにも言えない」
「そうなってきていますか」
「確かに私は受け入れられないのですが」
牧師であるジョーンズはだ、それはどうしてもだった。
だがそれでもだ、彼は言うのだった。やはり難しい顔で。
「少なくとも同性愛者だからといって処分はどうでしょうか」
「それは、ですか」
「出来ないですか」
「私はそこまではと思っています」
同性愛者とカミングアウトした軍人が除隊処分となったがそれは、というのだ。
「同性愛を認め難いですが」
「除隊までは、ですか」
「すべきではありませんか」
「合衆国憲法では思想信条の自由が保障されています」
これが明記されている、だからこそアメリカは自由の国と言えるのである。これはアメリカの誇りでもある。
「これを脅かしては」
「合衆国ではない」
「だからこそ」
「私は牧師ですが」
とにかくジョーンズはここからは離れない、どうしても。
しかしだ、それと共に彼は合衆国市民だ。だからこう言うのだ。
「合衆国市民でありその憲法を尊重します」
「聖書と共にですね」
「それを」
「そうです、ですから」
それ故にというのだ。
「私はです」
「除隊はやり過ぎですか」
「合衆国の信条に反するが故に」
「聖書と憲法のどちらが大事かという問題にもなります」
ここでもう一つ厄介な問題が話に出た、どちらがより大事なのかと。
「果たして」
「いや、それは」
「聖書は尊いです」
「あまりにも」
将校達陸海空に海兵隊、沿岸警備隊の五軍も彼等もこのことには戸惑いを感じた。そして悩む声で述べるのだった。
「しかし我等は合衆国市民です」
「ですからその憲法は絶対です」
「そして合衆国の信条も」
「自由の国であるという」
「自由は法によって守られています」
このことも言うジョーンズだった。
「法のない自由は無法、カオスに過ぎません」
「弱者が強者に虐げられる社会ですね」
「そうした社会になりますね」
「法は人を守るものです」
特に力のない者をだ、ジョーンズはアブナア叔父アメリカ開拓時代を舞台にした老探偵のことの様に話した。
「それがなくては」
「自由はない」
「無法になりますね」
「無法と自由は違います」
似ている様でだ、実は違うというのだ。
「アナーキズムは真の自由ではないのです」
「ただ荒れ狂うだけで」
「無法者だけが支配する社会ですね」
「暴動が常態化している社会です」
それが法のない社会だというのだ。
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