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ロックマンX~5つの希望~

作者:setuna
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第四十九話 宿命

純白の輝きを纏うアクセルは、ルインの知るアクセルとは比較にならない程の機動力で襲い掛かる。
バレットの銃弾を弾こうにも、それが間に合わない程の弾が放たれ、ルインの装甲を削っていく。
今のアクセルの残虐さは相当なもので、かつての仲間に、容赦なく銃弾を浴びせていく。

ルイン「っ…」

アクセル「ふふ…」

膝をついたルインにアクセルは満足そうに笑うと、バレットを軽やかに収めた。

アクセル「サンフラワードを倒した時はやるなと思ったんだけど…大したことないね」

アクセルはこともあろうにサンフラワードの残骸を踏み砕いた。

ルイン「アクセル…」

無邪気な笑顔だ。
まるでルインがよく知るアクセルのようだ。
彼と共に過ごした記憶が走馬灯のように脳裏を駆け巡る。

ルイン「どうして…こんなことを…」

アクセル「ん?それは僕が使命に目覚めたからさ」

ルイン「使命…?」

明るい笑顔を浮かべながら、アクセルはキッパリと言い切る。

アクセル「エックスとゼロを倒す。それが僕の使命なんだ」

ルイン「そんな…馬鹿なことを言わないで!!」

アクセル「本当だよ」

アクセルの表情には、使命を背負った悲壮感も、達成を願う希望も見えない。
まるで今からピクニックに出掛けるような無邪気な表情を浮かべていた。

アクセル「まあ、僕も最初は知らなかったんだけどね。でもこうやってあの人から本来の力を引き出してもらった時、僕はハッキリと悟ったんだ。僕はエックスとゼロを…殺すために、そして全てを無にするために造り出されたんだよ」

ルイン「そんな…」

このままアクセルを生かしておいたら世界が滅ぼされてしまう。
エックスとゼロは確かに強いが、戦い方を知られているアクセルに勝てるかどうか疑問が残る。

アクセル「そうだ、2人は元気?」

ルイン「さあね…答える義理なんか…ない!!」

近寄ってくるアクセルにルインは凄まじい速度でセイバーを振るう。
並大抵の戦闘型レプリロイドでは回避不可能である一撃。

アクセル「うわっ!!?」

予想外の攻撃にアクセルは慌てて飛びのいた。
何とかギリギリで回避したことで胸部のコアに僅かな傷が入るだけで済んだ。

アクセル「危なかった…」

安堵の溜め息を吐きながら、アクセルは再びバレットを取り出す。
少しでも反応が遅れていたら真っ二つにされていた。
流石はエックスとゼロと並び称されたイレギュラーハンターだ。

ルイン「分かったよアクセル…あなたが、イレギュラーと化し、世界を無にしようというなら、イレギュラーハンターとしてあなたを討つ!!」

普段の彼女からは考えられないくらいの鋭い眼光をアクセルにぶつける。
高い戦闘力を持つ者のみが放てる威圧感にアクセルは上等な獲物に歓喜の表情を浮かべて舌なめずりする。

アクセル「成る程ね。今までは本気じゃなかったってわけ…安心したよ。こうもアッサリだとつまんないからさ」

アクセルがバレットを構えた。
ルインもまた、セイバーからバスターに変形させる。
一触即発。
そんな、ピリピリとした空気を感じさせた。
どちらかが動けば、戦闘が開始されるだろう。
ルインとアクセルもどちらも歴戦の戦士。
双方の殺気と緊張が高まっていく。
両者が引き金を引こうとした瞬間。
アクセルに向けて蒼いエネルギー弾…チャージショットが放たれた。

ルイン「え!!?」

アクセル「なっ!?」

ルインは予想外のことに目を見開き、アクセルは目を見開きながらも咄嗟に回避し、チャージショットが放たれた位置を見遣ると…。

ルイン「エックス!!ゼロ!!」

エックスとゼロの姿があった。
2人は鋭い視線で純白のボディのレプリロイド…変わり果てたアクセルを見つめている。
アクセルは一瞬、“見られてしまった”という表情を浮かべた。
しかし何故狼狽したかも分からず、殆ど無意識のうちに感情を処理すると、すぐに笑顔に戻っていた。

アクセル「やあ、エックス。それにゼロも。2人に会えて嬉しいよ」

エックスとゼロの2人は即座に今のアクセルの異常さを見抜く。
ルインはバスターを握り締める手に力を込めた。
常に冷静なゼロが、掠れた声でアクセルに問う。

ゼロ「アクセル…。まさかお前までイレギュラー化したのか……?」

アクセル「僕はプロトタイプだけど、新世代型はイレギュラー化しないよ。そんなことも分かんない?」

表情には出していないが、酷く動揺しているゼロを小馬鹿にしたような言い方である。

エックス「何故こんなことを…」

アクセル「もう決まっていたことなんだよ。僕が生まれた時からね。僕はエックスとゼロを殺すために生まれたんだ。ずっと忘れていたけどね。旧き英雄を超えることこそが、僕の使命なんだ。2人を倒して僕は完璧な存在になるんだ」

ルイン「完璧な存在なんて…馬鹿馬鹿しい…!!」

エックス「落ち着くんだルイン!!アクセルはシグマに操られているだけだ」

ゼロ「元凶はシグマに決まっている。」

アクセルの姿をしたイレギュラーを忌ま忌ましそうに見つめるルインにエックスが宥め、ゼロが元凶はシグマだと断言する。

アクセル「あーあ。ホントに頭固いんだから」

彼は溜め息を吐いて馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに肩を竦めた。
人を馬鹿にしたような態度はかつてのアクセルにも見られたが、憎らしいと感じたのはこれが初めてだ。
昔の微笑ましさはまるで存在しない。
アクセルは言い捨てて、自らを転送の光に包み込んだ。

エックス「アクセル!!」

アクセル「クライマックスはこれからだからさ。お楽しみは最後まで取っておくよ」

行き先はシグマのアジトだ。
直感だが、もう間違いないだろう。

アクセル「じゃあね!!」

エックス「待て!!」

呼び止めたエックスの目の前で姿が消えた。
伸ばした手が、虚空を掴んでいた。

エックス「……………」

虚しい腕を凝視するエックスに…。

ルイン「どうして…こうなっちゃったんだろう……」

エックスの隣のルインの悲しげな呟きが響き渡った。 
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