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ロックマンX~5つの希望~

作者:setuna
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第四十七話 復活

ハンターベースの医務室といえば、酷く殺風景なレイアウトだが、不思議なことに、この部屋は暖かい雰囲気を醸し出していた。
窓際に添えた花のせいかもしれない。
サンダーソニアの花がさりげなく飾られているのが綺麗であった。
ルインが殺風景な雰囲気を緩和させようと、さしたものだ。
医務室にはエックスとゼロが眠っている。
搬送時は危篤状態だった彼らもゲイトの処置により、危険な状態は脱した。
眠っている2人。
しかし、しばらくしてエックスが目を覚ました。

エックス「ここは…医務室?」

ゼロ「ぐっ…」

エックスが呟いたのと同時にゼロも身体を動かす。
彼の眠りは浅くはなかったが、少しずつ意識を覚醒させていく。
ベッドから出ると、互いに安堵の笑みを浮かべたが、しばらくしてもう1人の戦士を思い出した。

ゼロ「アクセル…」

脳裏に浮かぶのは、くしゃくしゃの泣き顔をした戦士の姿。
















































ノアズパーク。
ホーネックと別れたエックス達は、森の最深部まで疾走した。
メカニロイドの鳥達の鳴き声が高く、戦場の戦士の怒号の如く激しい。
機械で造られた人工の島。
だが、動物の脳を継いだ機械達は、鋭敏な神経回路を以って、危険を察していた。
3人が駆ける前方には、イレギュラー化したメカニロイドがいる。

エックス『ゼロ』

巨大な鋏を持つイレギュラー、クラブズ-Yだ。
エックスがチャージショットで体勢を崩すと、ゼロが跳躍し、クラブズ-Yを一刀を以って斬殺した。

アクセル『流石!!』

アクセルが歓声を上げた。
紅の剣士は眼光そのままに先を見遣った。

ゼロ『この先に強力な反応がある。恐らく騒動の元凶だな』

アクセル『そうだね。急ごう!!』

奥を目指して走っていく。
その最中、アクセルはふと既視感を覚えた。
もう少し、もう少しと、走っていくのは初めてではないような気がする。
考える間に、最深部へ到達し、アクセルは物々しい施設の中に入っていく。
暗い通路を抜け、開いた扉の向こうを見る。

アクセル『…前にもこんなことが…』

瞬間に、空の一点がキラリと光った。

エックス『アクセル!!』

咄嗟に回避し、上空から光が降り注ぐ。
キャノン砲から放たれた高エネルギー弾であった。

アクセル『くっ…』

先刻踏み締めていた大地は罅割れ、黒く焼け焦げている。
破壊された床の罅割れから黒煙がたなびいていた。

エックス『誰だ!!?』

空を見上げると、逆光を浴びた人影が見えた。

『クククク…また会えたなエックス』

エックス『貴様は…VAVA!!』

忘れもしない。
かつてのシグマの反乱とドップラー博士の事件にて、破壊の限りを尽くした強敵。
3人は一斉に武器を構えた。
しかしアクセルには見たこともない相手である。

アクセル『(誰?)』

ゼロ『元特A級ハンター…今は俺達の敵…お尋ね者のイレギュラーだ』

そのやり取りにVAVAは不敵な笑みを浮かべた。

VAVA『再びお前達と見(まみ)える時を待ち侘びたぞ……あの時の借りを今ここで返してやろう…』

VAVAのキャノン砲が戦いの火蓋を切って捨てたように激しい音を立てた。

ゼロ『ふん…ふざけるなよイレギュラーめ』

高みから降り立ったVAVAにセイバーの斬撃を繰り出す。
袈裟懸けに振った剣は、VAVAの装甲に激しい火花を上げた。
しかしVAVAは苦痛にのけ反るどころか、嘲るような笑みを浮かべていた。

ゼロ『なっ!!?』

愕然となりながら、ゼロはVAVAを見つめる。
渾身の一撃は、VAVAを倒すどころか、毛ほどのダメージを与えることすら出来なかった。
見開いた瞳に、狂戦士が嘲笑う顔が映る。

VAVA『フッ…お前も変わらないなゼロ。』

キャノン砲からエネルギー弾を放つ。
至近距離でまともに攻撃を受けたゼロは弓なりにのけ反り、卒倒した。

エックス『ゼロ!!』

呼び掛けた直後、エックスも同じ運命を辿る。
追尾式のエネルギー弾がエックスの腹部をしたたかに撃った。

アクセル『エックス!!』

瞳に怒りを宿し、アクセルがバレットを構えた。
VAVAは攻撃を止め、余裕の表情でアクセルを見据えた。

VAVA『そうだ坊や…撃ってみるがいい』

あまりに余裕。
アクセルはハラワタが煮え繰り返った。

アクセル『馬鹿にして…後悔しても知らないからな!!』

銃声を響かせ、すかさず撃ち続ける。
真正面を向き、全く隙だらけの相手にアクセルは容赦なくショットを当てる。
鳴り続ける銃声にこちらが耳鳴りを起こしそうだ。
しかし、VAVAには傷1つ付かない。

アクセル『そんな…どうして…何で効かないの!!?』

VAVA『力が違いすぎるだけだ。俺とお前達との…な。』

言いながら、VAVAは攻撃を返す。
青白い砲弾が、アクセルの胸に炸裂し、倒れ伏した。

VAVA『フン…拍子抜けだな…あの時俺を倒した奴がこんなザマとは…それとも俺が強くなり過ぎたのか?』

近くに転がっているゼロを踏み付ける。
ヘッドパーツがミシリ、と嫌な音を立てた。

アクセル『止めろ!!』

痛みから覚めたアクセルが高く叫んだ。
VAVAはアクセルに視線を遣ると、ほくそ笑む。

VAVA『ふはは……、流石は新世代型の試作品だな』

アクセル『なんだと…!!?』

アクセルの胸を嫌悪感が満たす。
“試作品”、“プロトタイプ”と呼ばれるのは例え事実でも不愉快であった。
そうとも知らずVAVAは語り続けた。

VAVA『未完成品とはいえ、仮にも新世代型…。シグマウィルスは効かないようだな』

ようやく気付く。
エックスとゼロがたった一撃で倒れたままである理由に。

アクセル『シグマウィルス…?お前、エックスとゼロに何をしたんだ!!』

VAVA『何、簡単なことだ。俺の兵装にシグマウィルスを仕込んでいたんだよ。あらゆるレプリロイドをイレギュラー化させる最強のウィルスプログラム…お前でも知っているだろう?』

シグマウィルス。
そのせいで、多くのレプリロイドが犠牲となった。
エックスとゼロは他のレプリロイドとは比較にならないほどの対ウィルス性能を持つが、新世代型ではないために、全くの無傷というわけにはいかない。
アクセルは新世代型に備わった能力で、ウィルスを無効果することが出来た。

VAVA『ウィルスにはレプリロイドの能力を飛躍的に高める力がある…尤も、破壊の方向にだがな。しかし、この俺には相応しい力だ。そう思わないかゼロ?』

足元が動くと、苦痛に顔を歪めたゼロが、口元だけ皮肉げに笑っていた。

ゼロ『またシグマについたのか…相変わらずシグマの犬だな。』

VAVA『どうやらお前は忘れているようだなゼロ。俺は誰にも従わないことを』

VAVAがゼロの頭部を粉砕せんほどに足に力を込めた。

ゼロ『ぐっ!!』

アクセル『ゼロ!!』

VAVA『こいつだけの心配でいいのか?』

キャノン砲からエネルギー弾を放ち、エックスにぶつける。
エックスが苦痛に呻く声が聞こえた。

アクセル『エックス!!…止めて!止めてよ!!』

VAVA『いじらしいな坊や』

VAVAはゼロから足を離して、興味深そうにアクセルに見入った。
それはいじらしさに感動したわけではなく、健気な少年をどうやっていたぶろうかという、残虐な嗜好によるものであった。

VAVA『こいつらが傷つくのが辛いか?自分の痛みには耐えられても、こいつらが死ぬのは耐えられないか?』

アクセルの顔が蒼白になる。
職務上、常日頃意識しなければならない“死”が間近に迫っていることを知る。
しかも、自分が憧れる2人に。
答えずともアクセルの表情がハッキリと答えを代弁していた。
VAVAのバイザーで隠された表情が笑ったように見えた。

VAVA『ならば、取引をしようじゃないか』

アクセル『取引…!?』

VAVA『お前が俺の命令を聞くと誓えば、エックスとゼロを助けてやってもいいぞ』

エックス『止めろアクセル!!』

ゼロ『そいつの言うことを聞くな!!』

VAVA『まだ無駄口を叩けるようだな』

エックスとゼロが反射的に叫んだ瞬間に、エネルギー弾が2人に炸裂し、2人を壁に叩きつけた。

アクセル『分かった!!分かったから2人を殺さないで!!』

VAVA『いい判断だ坊や』

キャノン砲を下ろすと、そっとアクセルに歩み寄るとその手をアクセルの身体に翳す。
すると、アクセルの身体が光に包まれていく。

エックス『アクセル…行くな…』

転送の光。
行き先は恐らく敵の巣窟。
アクセルは泣き笑いの表情を浮かべていた。
それは2人が助かった安堵感と、捕われることへの屈辱であった。
イレギュラーを憎む彼は、イレギュラーの見本のような戦士の手中に収まることを、死を選ぶほどに恥だと思っている。
彼がイレギュラーに屈したのは2人を救うためだ。
そうでなければ、これほどまでにあっさりと受け入れるはずがない。

エックス『(行くな…行くんじゃない!!)』

声が苦痛によって出せないエックスが胸中で叫んだ。
ゼロも同じように、止めるように震える手を伸ばしていた。
普段素直じゃないくせに、こんな時だけ本心を見せる。
それが酷く悔しかった。
光は止み、虚空だけが残る。
消え失せる寸前に、“助けて”と言っているようなアクセルの顔が、馬鹿に鮮やかに刻まれていた。
これがノアズパークでの出来事の記憶であった。 
 

 
後書き
VAVAはX1のように序盤無敵です。 
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