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とある異世界の交差物語(クロスオーバー)

作者:鉄龍王
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第8話 二人の鬼、出会いを語る

 
前書き
今回は土方と千鶴の昔話にしました。今回は名前だけですがあの人を出しました。

それではどうぞ 

 
銀行強盗の事件から1週間がたった。それから千鶴は姫神、吹寄という同年代の友人を得、歳は違うが御坂、家長、白井、佐天、初春という友人もできた。無論土方もこの事を知っていた。

そして、その土方はというと……

「土方先生~やっと補習全部終わりました~…」

「おう、ご苦労さん。これに懲りたらサボりなんてするなよ」

「うへ~~~い……」


まるで死人のような声を出すのは今まで溜まっていた補習の授業を受けていた上条だった。彼はつい先ほどまで国語を初め数学、英語、社会、理科の五教科、超能力のレポートをまとめ、最後に今までサボっていた事への反省文100枚を書かされていたのだ。その彼の担当をしていたのが言うまでもなく副担任となった土方だった

「って!俺は別にサボってたわけじゃなくてですね……!」

上条は何とか弁解しようとするが言い切る前に土方が待ったをかけた

「そっから先は喋るな。誰が聞いてるかわからないんだぞ?」

「はい………」

「上や~ん。相変わらず補習の地獄めぐりだにゃ~」

そんな上条に付き添っているのは土御門。学園都市の裏側を知る人物であり、必要悪の協会(ネセサリウス)のメンバーでもある男。いつもの彼なら上条の補習には付き合わないのだが、今回はある理由があった。

「土方先生、ひとつ聞きたいことがあるけどいいかにゃ~?」

「なんだ土御門?改まって……」

土方が眉を歪めていると土御門はサングラスをかけ直し目を鋭くしながらこう言い放った

「元・新撰組副長の土方歳三殿が何故こんな所にいるのか聞きたくてね」

「「っ!!」」

「それから、雪村千鶴ちゃん………あの子も幕末の人間って可能性があるらしいじゃないか?え?土方先生…いや…元・新撰組副長……土方歳三殿…?」

土方と上条は目を大きく開いた。彼の正体を知ってるのは千鶴を除けば上条と御坂、カエル顔の医者…冥土返し(ヘブンキャンセラー)だけ……土方は土御門に一気に警戒し、常に隠し持っていた刀を取り出し、土御門に問いかける

「土御門……何故そのことを知ってる。場合によっちゃ…」

今の彼の顔は先程までの教師の顔ではない。かつて…あの狂った幕末の戦乱を駆け抜け、群狼達を束ねた“鬼の副長”の顔になった

「土方先生!ちょっと落ち着いて!!土御門!お前もきちんと説明しろ!!」

上条は一気に冷や汗を流しながらも何とか土方を説得し、土御門に説明を求めた

「にゃ~これは失礼しました土方先生。俺は魔術師…いや土方先生にわかりやすく言うなら陰陽師。それも魔術結社…必要悪の協会(ネセサリウス)、そしてこの学園都市のスパイなんだにゃ~」

「「…………」」

「あれ~?なんでそんな胡散臭いモノを見るような眼で見るのかにゃ~?」

「お前のその恰好が胡散臭いからだ」

「そんな喋り方をしてるお前をスパイだって誰が信じるんだよ?」

「え~~~……?」

「まあいい……お前が悪党ってわけじゃない事は分かったが胡散臭い事に変わりはないからな」

「ちょっ!土方先生!!それは幾らなんでもあんまりだにゃ~!」

「うるせぇっ!!元々手前ぇが俺に怪しまれるような言動するからだろうが!!」

「うん。今回はどう考えてもお前が悪いぞ土御門……」

「にゃー!!上やん、それはあんまりだにゃー!!」

と、このような徐々にくだらない問答を繰り返して約30分

「はぁ……まぁいい。それで?結局お前は何を聞きたいんだ?」

「おー!すっかり忘れてたにゃー!!俺が聞きたい事は…」



土方たちが奇妙な語りあいをしている丁度その頃



「土方さ……じゃない、土方先生と私の出会い?」



場所はいつものファミレス。千鶴にこの話をするのは美琴、カナの二人。いつものメンバーである白井、初春、佐天の三人は事情があると言ってそれぞれ風紀委員(ジャッジメント)支部、自宅のマンションに帰宅し、残りの3人はそれぞれの恋話(コイバナ)に発展した。カナは自分の幼馴染の少年、美琴は……自分があの少年に恋心を抱いていることを未だに認めていないので見送りとなった。

ちなみに千鶴が幕末の人間であることはカナを含め、白井、初春、佐天も知っている。千鶴がうっかり漏らしてしまい、4人に追及され、話せるところは話したが、初めは白井達学園都市組は信じてくれなかったがカナは『そんなの関係ないよ。生まれた時代が違っても千鶴さんは私たちの友達だよ?』それを聞いた千鶴は涙目になりながらカナをぎゅっと抱きしめ、『ありがとう、カナちゃん…』と漏らし、成り行きを見ていた白井達も千鶴の言葉を信じることにしたのだ。


というわけで最終的に千鶴の恋話(コイバナ)が始まり、カナは千鶴と土方の出会いを聞き出した。

「はい。千鶴さんと土方先生の恋人疑惑は他校の私たちの間でも結構有名ですよ?」

「ええ!?」

「ああ、そう言えばそんな話が結構話題になってますね」

「そうなの!?」

意外な事実に驚く千鶴を置いて二人はニヤニヤと笑みを浮かべ、自分のことは棚に上げある質問をする

「「という訳で……」」



ところ戻って上条たちの学校の職員室



「…土方先生と千鶴ちゃんの出会いを聞かせて欲しいにゃ~」

ニヤニヤとした土御門の笑顔が土方に詰め寄るがその前に…


---ジャキンッ---


土御門の鼻先にいつの間にか抜いた刀を向ける土方

「斬られたいのか?土御門……」

土方の眼は本気で斬ると語っていた

「い、嫌だにゃ~土方先生ちょっとした遊び心にゃ~っというかその刀、何処から出したんですか?」

「ほ~なら土御門…こんな言葉を知ってるか?“好奇心は猫を殺す”って言葉を……あと刀は護身用として常にスーツの裏に隠してる」

「にゃーーーー!!!俺の人生絶体絶命!?てかそれだったら何で刀がスーツからはみ出てないの!?」

「心配すんな。“ご都合主義”というヤツだ」

「それはメタ発言だからアウトですにゃーーー!!?」

「アンタら楽しそうだな…」

このままだと面倒な展開になると判断した上条は土方と土御門の間に割って入った

「ま、まぁまぁ土方先生。俺も土御門ほどじゃないけどちょっと気になっていたんですよ。」

「ん?」

「確か新選組って女が入ることは禁止だったはずなのに、どうして雪村も一緒だったのかなと思いましてね」

「……」

上条の質問に流石の土方も即答することが出来なかった。新選組と千鶴との出会い…これを語るには色々面倒な事も話さなくてはいけない。
一方、ファミレスで千鶴も同じことを考えている。しかし此処で変に引き延ばせば後々面倒になるのである程度は話す事にした。

「そうだね。私が京都に向かったのは幕府の命で向かった父様を探すためだったの。着いた時には雪が降り始めた時期で、その時は浪人に絡まれてたのよ」

「浪人に?それは何で?」

「当時の京都は治安は最悪でね……昼も夜も人が死ぬ………それが幕末の京都の当たり前の日常だった。私自身もね、浪人に絡まれて腰につけてた小太刀……“小通連”を寄越せって言われてね」

「な、何で……」

「理由何てなかったと思うよ。京都にやって来た浪人たちは大体名を上げるため、便乗することが目的の人間が多かったからね。やっぱりわかる人間はわかるみたいでね…私の小通連は私の家に代々伝わる小太刀はかなりの値になるのはわかるみたいなのよ」

「腐ってるわねそいつ等…」

「当時は戦う力も無かった私はなんとか浪人の隙を突いて逃げることが出来たんだけど、そこでまた別の浪人に襲われたのよ…」

千鶴は此処で嘘をついた。千鶴と千鶴の小太刀を狙う浪人を襲ったのは別の浪人ではなく人の手で造られた哀れな人外達…

千鶴もここからが本題だということか一度眼を閉じ、呟いた

「今にして思えば、あの夜の出会いこそが…私の運命を大きく変えた瞬間だった」

「「………」」

美琴とカナは生つばを呑みながら千鶴の話に耳を傾けた

「その浪人たちは斬り合いを始めてね、結果は後から来た浪人が私を狙ってきた浪人を斬り殺して私を狙ってきたの、私もここで死ぬと覚悟を決めて目を閉じたらやって来たのが…」

「土方さんってこと?」

「そう、でも助けに来たわけじゃないよ?どっちかて言うとその浪人たちを追ってきただけだからね」

「え?そうなの?」

「そう、そして初めて土方さんに会った時は…」

『運のない奴だ…いいか、逃げるなよ?背を向ければ…斬る』

「と言われながら刀を向けられてね、あの時の土方さんの目は本気で斬る目だったね」

「「えええええぇぇぇぇぇっ!!?」」

「でもね?あの時の私は今にも殺されるかもしれない状況だったのにあの時の土方さん、“美しい”って思ったの」

「な、なんで?」
美琴には理解できなかった。今はお互い引かれ合っているのは分かるが、初対面でいきなり殺されかけた時にも関わらず、見惚れていたなどと言われても理解が出来なかった

「あの時の土方さんね、髪を長く伸ばしてたの。なびく漆黒の髪、ひらひらと舞う雪が月明かりに照らされる姿に息を呑んだ。あれはまるで……狂い咲きの桜に見えたな……」

そういった千鶴は頬を赤く染め、土方との出会いを思い出していた。そんな千鶴を見て美琴もカナも少々呆れていた。“恋は盲目”というが、そんな状況でも惚気る千鶴には色んな意味で勝てないと悟った二人だった。


一方上条達の方も土方と千鶴の出会いを聞かされた。長話になるということで土方が上条たちに缶コーヒーを渡していた

「それじゃあ、土方先生は雪村とはその時の出会いで一目惚れしたんですか?」

「なわけねぇだろ?出会った当初は当時協力関係にあった綱道さんを探すための手段にすぎない…そう思ってた。だがその後、池田屋を始め…俺たち新選組は“ある”男たちと戦うようになった」

「ある男たちって…やっぱり長州の桂小五郎、薩摩の西郷隆盛のことですか?」

「いや違う。確かにあいつらも驚異だったが、新選組(おれたち)にとって一番の強敵だったのは自らを“鬼”と名乗った薩摩の志士…風間千景ともう一人、歴史の表舞台には決して姿を見せなかった攘夷派最強の人斬り……緋村抜刀斎!」


「風間…千景」

「緋村、抜刀斎

土御門も上条も…土方が『強敵』と評したその二人に戦慄を覚えた。

「抜刀斎には幕府の要人を始め、新選組(おれたち)の多くの仲間が斬られた。そして風間の奴は…“千鶴を嫁に寄越せ”と言ってきやがった」

「「ぶふぅぅぅぅぅ!?」」

土方から自分たちの予想の斜め上の事実を教えられ、上条と土御門は口に含んでいたコーヒーを噴き出した。

「げほっ!げほっ!ひ、土方先生…それ、マジですか?」

「ああマジだ。風間と千鶴は遠縁になるがある血筋の同族でな。風間は自分の血を濃く残すために千鶴を狙ってきた」

「成程ね…でもそんな奴は土方先生が倒したんじゃないのか?」

土御門の尤もな疑問を投げるが土方は缶に残っていたコーヒーを飲み干し、こう答えた

「お前の言う通りなら苦労はしなかったさ……だが実際風間の野郎との戦いは熾烈を極めた。あいつとの戦いは何度も命を落としかけた」

「そ、そんなにですか?」

「ああ、こっちが刀を両手で振るっているにも関わらず相手は片手だ。それでも何とか生き残って戦い続けた」

「「………」」

土方の強敵の告白に何も言えなかった。そんな相手とは会いたくないとさえ思うくらいだ。

「最終決戦の鳥羽伏見の最中(さなか)薩長軍(やつら)に錦の御旗が挙げられて向こうは官軍。幕府軍(おれたち)は賊軍扱い……その戦いの最中に古株の一人だった源さん…六番隊組長の井上源三郎を失った。あの人の最期を見届けたのが……千鶴だった。

後になって分かったが総大将の徳川慶喜は直属の家臣数名だけを連れて、あの時、あの戦場で戦い続けた何万の兵達を見捨てて尻尾を巻いて、江戸に逃げ帰った……そこから負け戦が始まった。甲府の戦いで新八と原田は脱退。俺達の大将だった近藤さんは打ち首にされ、目の前で多くの仲間も死んだ。だがそれでも、千鶴も…生き残った俺たちも諦めなかった。“誠の武士”として最後まで諦めなかった。抜刀斎は戦争の途中で姿を消し、風間とは蝦夷で本当の意味の一騎打ちをしていたが、あの変な女に邪魔されて……この世界に来ちまったってことだ」


「そうだったんですか……」

上条は気まずい表情で呟いた。戦争なんて経験はないししたくもない。だが目の前のこの男はそんな苦しい戦いを生き抜いたんだ。下手な言葉は土方に対する侮辱だと感じたため、俯いてしまった。

そんな上条に察したのか土方は苦笑しながら

「まあ、幕末(むかし)の話は此処までだ。これからの新しい時代を担っていくのはお前ら若い連中の仕事だ。俺はせっかく生き残ったこの命で…お前らの重荷を少しでも減らす……それが俺の今の仕事だ」

「「………」」

上条と土御門も土方に何かを感じたのか何も言えなかった。


しばらくすると土方の携帯が鳴り響いた。仕事かと携帯を見れば発信先をみると“雪村千鶴”と表示されていた

「千鶴、どうした?なにかあったの…」

『土方さん!助けてください!!』

「千鶴!?どうした千鶴!?何があった!?」

『土方さん!学園都市に羅刹が…羅刹が現れました!!』

「何ぃ!?」
 
 

 
後書き
なかなか新しい章に入るのが難しいです。今回と次回をかけて新たな章に進めようと考えています 
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