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凡人? 天才? それとも……。

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第十二話【はじまりのところ】

 
前書き
遅くなりました。すみません。
最近、家に猫が入ってきまして可愛かった。 

 
 第三話 遊技



 凛との同居を隠しながら生活していて数日が経った。そして今日は待ちに待った部活見学の日なのである! いやー、楽しみだ。最近、同居を始めてから例の悩み事を考える余裕がなくなったおかげで、ある面では気持ちが楽になった。さあ、どこに行こうかな?
 周りのみんなは各自の友達同士でどこに行こうか話し合っている。もう部活を決めている人はさっさと教室を出ている。
「快はどこへ行く?」
 周りの楽しげなみんなが少しうらやましくなり、これから帰る予定であろう快に話を振る。
「生徒会執行部に呼ばれているから生徒会の方へ行くかなぁ」
「そっか。快は生徒会に入る予定か。快にしては意外だな」
 ゲームを鞄にしまいながら、快がこちらを不思議そうに見る。そして教室の時計を見る。
「今日はバイトじゃないのかぁ? こんな時間までいると遅刻するって言ってなかったかぁ?」
 ああ、快が不思議そうに見ていたのに納得した。そういつもは授業が終わってすぐに教室か出るのは、他の誰でもない俺だからか。流石にバイトせずに一人暮らしはちょっとね。と言ってもバイト先は知り合いのお店なんだけどね。
「ふふふ、実は今日は休みもらえたんだ。店長がさ、学生の本分はお金稼ぎじゃないって」
 自慢げに話してみる。
「おお! それはよかったなぁ! ってことは今から暇なんだよなぁ? よっしゃ、ギャルゲしようぜ! 大地じゃないとできないことが山ほど溜まっててさぁ」
 反応が想像していた反応とあまりにも違っていて驚いてしまう。
「て、てか、快は生徒会に呼ばれているんだろ? それに部活見学をするために———」
「ああ、会長に呼ばれていたのを忘れってたなぁ。しまったしまった、それじゃ、行ってくるわぁ!」
 快は話を遮り、鞄を抱える。
「おい、人の話しは最後まで聞ぃ————!」
 結局、快は俺の話しを聞く耳持たないまま教室を出る。ため息が自然に零れる。

   ☆

 結局、一人で回ることになってしまった。加藤君を誘ってみたが加藤君も中学の先輩に誘われて陸上と水泳部にそれと茶華道部に、えっと美術部も! 取り敢えず、いろんなところに引っ張り凧の状態である。凜や陽奈も考えたが口が滑って陽奈に同居しているのが、ばれた後のことを考えてやめた。
 前は走り回っていた廊下も今じゃ文化部の呼び込みなどで賑わっている。
『ねぇ、そこの僕? 演劇なんかに興味ないかな?』
 演劇部の部室らしきものの前を通る際に演劇部員の先輩に声を掛けられる。更に演劇部の紹介文のチラシを渡される。勢いに負けて、頷いてしまう。先輩は、笑うと部室の中に案内してくれる。
『一名様ご招待!』
『『ようこそ、演劇部へ!』』
 演劇部の部室に入ると、そこは自分の想像よりもきれいに掃除してあった。正面にある大きな机。その上には劇で使うであろう台本と衣装デザインの書かれているイラスト本が置いてある。他にも建築で使用してそうな長い定規などがある。入って左側には黒板があり、そこには、ようこそと書かれている。右側には衣装の入っていそうな箱が積み重ねてあり、天井近くまで積み重ねてある。
『どう? いろいろ見慣れないものがあるでしょ』
 心を見透かされたのか、それとも顔に出ていたのか。どちらかわからないが先輩は顔を見ながら満足そうに言う。またも頷く。
『じゃあ、部室を案内するわね。先ず、これは私たちが獲得した全国での優秀賞! っていったものの一番じゃないんだけどね』
 などと、部室を案内されて最後に隣の空き教室で演技の練習風景を見学させられた。
『どうだった? 少しは興味を持ってくれたかな? ここの人ほとんどが高校から始めた人ばかりだから気負いなんてしなくていいんだよ』
 正直言って興味さえはあったものの実際自分がするといったら答えはNOだよな。それに全国クラスなら練習時間も相当だろうし、バイトを疎かにする可能性もあるしな……。でも、ここまで丁寧に案内にしてもらったのに断るのも……。どうすればいいんだろうな。
『うーん……。案内しておいて言うのもダメかもだけど。君はやめた方がいいかもしれないね』
 さっきからずっと笑っていた先輩が真剣な表情で考える。そして周りの人目を気に掛ける。
『ここだけの話しさ。ここの部長がさ、中学から狙っていた娘がいてアタックしたらしくて、振られたらしいの』
 耳元でこっそりと言う。えっ。と聞き返そうとすると先輩は後ろから来た、また別の人を見つけると勧誘を始めた。そんな先輩を見ながら本日二回目のため息を吐く。するとそれを横目で見ていた先輩が軽くウィンクをする。それを見てその場を後にする。
 それから文化部を回ることを止め、運動部をある程度回った後。お手洗いで手を洗おうとしたときにもらったチラシが2枚あったことに気が付いた。枚数を間違えて渡したなと思ったが違った。もらったチラシには、演劇部用とまた違う部活のチラシだった。
「あれ? こんな部活、パンフレットに載っていたかな?」
 確認のために生徒会からの部活紹介パンフレットを見る。一ページずつ丁寧に確認するが同じものはなかった。不思議になり、もう一度チラシを確認してみる。毎週金曜日に会議をするだけ! 時間がない人におすすめ。と書いてある。一応、今日も部活見学をしているらしい。気になり、チラシに掛かれている教室に向かう。


「ここだ! チラシの書いてある教室と教室番号は……。オッケー、当てる」
 にしても、不思議なところだ。3階の奥の方にある理科室の隣で今は物品倉庫として扱われているみたいだ。大きさは縦長6畳ほどに見える。ドアは教室のような引き戸とは違い、折れ戸だ。ドアガラスの淵には埃がある。如何にも使われていないように思わせる。しかし、取っ手の部分だけは埃が他に比べたらない。それに微かに扉の向こうにから人の気配が一人……。いや、二人かな? それぐらいする。それに向こうもこちらのことに感づいているみたいだ。
 躊躇したが取っ手に手を掛ける。取り敢えず押してみる。ガチャと鈍い音がして扉が開く。そして、目の前に映った光景は!
「やあ、君が幸谷大地君かな。お待ちしていましたよ、今度のゲームプレイヤー様」
 目の前には長机が並んでいる。周りには丸椅子がいくつかある。その中心的な位置に座っている眼鏡の胡散臭い人がいる。
 目の前にいる先輩らしき奴から窺えることはこいつ……。快と同じ穴の狢か!
「あははは、先輩もう幸谷君に警戒されていますよ。そんな中学二年生がかかる病気のようなことを言うからですよ。あはは」
 露骨に怪訝な表情をしたためと近くにいる女性の先輩に笑われる、阿呆な先輩。女性の先輩は背を向けているためこちらからは顔が見えない。でも、聞き覚えのある声な気がする。
「取り敢えず、帰っていいですか? 僕、このような厨二的な集団に興味なんてないんで」
「まあまあ、そんなこと言わないでよ、あはは。くすくす、幸谷君とはなにかの縁があるともって誘ったのにな」
 女性の先輩は、先輩を笑いながらこちらに向く。その瞬間目を見開く。
「なんで先輩が!? えっ、もしかしてこれを渡したのも先輩ですか? てか、なんですか? この秘密結社ごっこみたいな部活は! パンフレットにも載っていませんでしたし、非公式すぎますよ!」
 そこに立っていたのは、ついさっき俺に演劇部を案内してくれた人だった。
「一言で言うと……。ボランティア活動を目的としているわ。この阿呆で厨二な先輩的に言うと。無償の人助け、遊戯への干渉と言えば、幸谷君は喜んでくれるかな?」
 さり気なく罵倒されている先輩が少し涙目になっているのは、無視して。なんで、俺を阿呆な先輩と同じ扱いなのかが不満だ。
「全然、納得できないです。……特に俺も厨二病患者みたいに扱われていることです」
「ごめん、幸谷君はもうそう言うお年頃じゃなくて大人に背伸びしたいのかな? なら」
 先輩は胸元のボタンを一つずつ、見られているかを確認しながら外す。谷間が————。慌てて阿呆な先輩の方に助けを求める。が、さっき涙目を無視した成果、イヤホンに小説と完全に自分の世界に入っている。あれきっとラノベだ。
 なんてしているうちに女性の先輩はブラウスのボタンをすべて外し、上を脱ぎブラだけになる。目線を逸らしてはまた、無意識のうちに目線がその大きな胸に引き込まれそうになる。そんな人の葛藤をお構いなしに先輩が近づく。恐怖か、恥じらいか、それ以外の感情かわからないが目をつぶってしまう。
「……ぷっ。あはははは。幸谷君可愛い! 反応が初心すぎるよ。あははは、犯すわけがないのにね。あなたには可愛い凜ちゃんがいるものね」
 目を開けると先輩がブラウスを着なおしている。からかわれた……。この人苦手だ。これが藤原先輩に思った初めの印象だった。まあ、後々変わるのだが
「って言うか!? なんで先輩は俺のこともそうですけど、凜のことも知っているんですか?」
「それはこの僕が説明しよう! 先ず君は、今のゲームのメインプレイヤーなのさ!」
 ここぞとばかりに阿呆の先輩が意味深い眼鏡をくいっと中指で立てて、会話に入る。この先輩、さっきからわかっていて無視していたのか……。嫌な人これがこの黒米先輩に思った印象だ。これは今後でも良くも悪くも変わらなかった印象だった。
「ゲーム? プレイヤー? 本当に現実と非現実の区別がつかないんですか?」
「そう、あいつらは本当に現実との区別がついていない。それは僕よりも遥かにだ。命の重みを知ろうともしないし……。えっ?」
 そのあと、黒米先輩の、僕は違うぞ! みたいな哀れな弁解を無視した後。しっかりとした説明を受けた。ゲームのこと。プレイヤーのこと。この学校のこと。にわかに信じがたいことを聞かされたので、藤原先輩を見ると無言で頷いていたので動揺が隠せなかった。
 背景説明や自己紹介が終わり、今日は解散となった。その際に連絡先を交換したので今度の金曜日の会議の場所は追々連絡が来るらしい。解散直後から一人ずつ準備室を出て帰った。
 帰り道の足取りは重かった。俺の高校生活波乱万丈編が幕を切ったように思えた。途中気分が悪すぎて吐くかとさえ思った。暗い雰囲気を纏いながら玄関の扉を開ける。中に入ると台所から今日の夕飯の良い香りがする。そんなどうでもいい香りをお構いなしに自室に籠る。

 
 

 
後書き
書き溜めしないとやばいです。
1ヵ月1回投稿ですらできない現状……。

次回は12月3日になると思います。 
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