戦国異伝
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第百八十五話 義昭の挙兵その六
「ここで山城一国を手に入れ」
「そこに毛利、武田、上杉も来ますので」
「間違いなくです」
「この挙兵は成功します」
「公方様のご英断でした」
「そうじゃな、余がじゃ」
義昭は二人に言われながら上機嫌で述べた。
「幕府を立て直すのじゃ」
「これを機に」
「今よりですな」
「そういうことじゃな、国人や寺社が立ち上がればな」
その時にというのだ。
「余の勝ちじゃ」
「織田信長は来ませぬので」
「ご安心を」
二人は義昭にまた言った、しかし真意は隠したままだった。
それでだ、二人だけになった時にだった。彼等の後ろに来た者にはこう問うた。
「さて、摂津じゃが」
「どうなっておる」
「毛利水軍は勝ったか」
「どうなったのじゃ」
「負けました」
影はこう二人に述べた。
「残念ですが」
「負けたか」
「あの毛利水軍が」
「左様です、砲を多く載せた鉄の船を出し」
「鉄の船とな」
「南蛮にあるという」
「あれを作ってです」
そうしてだったというのだ、影は二人に摂津での戦のことをありのまま話す。その話を最後まで聞いてからだった。
二人は眉を曇らせてだ、影にこう言った。
「我等もそれはな」
「予想しておらんかった」
「織田家が勝つ可能性は考えていたが」
「それでもな」
こう述べるのだった。
「南蛮の鉄の船を出すとか」
「しかもそれだけの数をか」
「織田信長、やはり侮れぬな」
「恐るべき男じゃ」
「そしてです」
影は二人にさらに話す。
「幕府の挙兵もまた」
「既にか」
「知っておるのか」
「そして今都に自ら兵を率いて来ております」
「そうか、それではな」
「都における策は上手くいかぬな」
到底とだ、二人はすぐに見切りをつけた、そのうえで言うのだった。
「ではもうな」
「ここは去ろうぞ」
「丁渡よい見切り時じゃ」
「ではな」
「では今後は」
影は幕府を去ることを決めた二人にさらに問うた。
「お二人はどうされますか」
「暫しの間闇に潜む」
「そうして次の策を練る」
そうするとだ、二人は影に答えた。
「長老様のお傍に戻りな」
「そうする」
「そうされますか」
「織田信長、やはり動きが早い」
「もう動くとは尋常ではないわ」
都に兵を向けたことがというのだ。
「これでは本願寺もな」
「すぐに降るわ」
「少なくとも毛利との戦まではじゃ」
「織田家のものじゃ」
毛利との戦の流れのことも言うのだった。
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