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美しき異形達

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第二十七話 光の力その十一

「技を出すわ」
「まあそれが普通だよな」
「ええ、けれどね」
「その発想を変えてか」
「あえて動かずにね」
 そうして、というのだ。
「技を出してみたのよ」
「つまり力を使ったんだな」
「そうよ」
 まさにその通りだというのだ。
「それが上手くいったわね」
「雷なあ」
「おそらく他の力でもね」
「つまりあたしでもだな」
「ええ、身体を動かさずともね」 
 鈴蘭は薊に微笑みと共に話した。
「力を使えるわ」
「そうか、けれどな」
「薊さんの性格としてはというのね」
「ちょっと難しいかもな」
 薊は笑って自分の性格からも話したのだった。
「あたしってやっぱりな」
「動的な性格だからというのね」
「それもかなりさ」
 だからだというのだ。
「それが出来るかな」
「私もそこまではね」
「言えないよな」
「薊さんのことだから」
 それで、というのだ。
「申し訳ないけれど」
「申し訳なくはないさ」
 そうではないとも返した薊だった、それも笑顔で。
「そのことはさ」
「そう言ってくれるのね」
「実際だからさ、まあとにかくさ」
「動かずに力を使うこともね」
「戦術だな」
 こう言うのだった。
「やっぱり」
「その通りよ」
「闘いは本当に頭だな」
「薊さんも頭がいいわね、そういえば」
「いやいや、あたしは馬鹿だよ」
 薊は鈴蘭に笑ってこう返した。
「勉強しないとわからないしさ」
「誰でもそれは同じよ」
「勉強しないとわからないっていうのか」
「そう、何も学ばないで知っている人はいないわ」
 それこそ一人も、というのだ。
「だからね」
「あたしもそれでいいんだな」
「ええ、人は誰でも最初はね」
 それこそだ、鈴蘭でもだというのだ。
「白紙よね」
「産まれた時はそうだよな」
「ただの器よ」
 こうも言うのだった。
「だからね」
「そこに入れていくんだな」
「色々なものをね」
「だからか」
「そう、誰でも勉強しないとね」
「わからないし知らないんだな」
「後は努力次第よ」
 その人のそれによる、というのだ。
「本当にね」
「そういうものか」
「そうよ、貴方も学んだのね」
「まあ拳法やっててな」
 薊が物心ついた時からしているそれで、というのだ。
「そういうのわかったよ」
「個人の技や素早さ、力も大事だけれど」
「頭使わないとな」
 それこそ、というのだ。
「勝てないってことをさ」
「咄嗟の機転や読みでね」
「そうそう、相手の目を見るとかさ」
 そうしたこともして、というのだ。
「目っていうのは喋るからさ」
「口程にっていうのは確かね」
「そうなんだよな、とにかくな」
「とにかくよね」
「あたしも帰らないといけないしさ」
 笑って言う薊だった、もう夕暮れも深くなろうとしていた。戦いが終わっても日常の生活があるのだ。
「だからな」
「そうね、私達もね」
 鈴蘭は黒蘭を見て言った。
「お家に帰らないといけないから」
「また明日な」
「ええ、明日ね」
「会おうな」
 薊はにこりと笑って鈴蘭に言ってランニングを再開した、そしてそのまま二人の前から姿を消したのだった。
 そうしてだ、鈴蘭はというと。
 双子の妹である黒蘭に顔を向けてだ、そのうえでこう彼女に言ったのだった。
「帰りましょう」
「ええ、そしてお家に帰って」
「晩御飯を食べてね」
「後は食器を洗ってお風呂に入ってね」
「そうしてね」
 そのうえで、というのだ。
「予習と復習もして」
「寝ましょう」
 こう話して二人で学園を後にするのだった、二人も今は日常に戻るのだった。


第二十七話   完


                              2014・8・6 
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