魔法科高校~黒衣の人間主神~
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九校戦編〈上〉
九重寺での特訓
交通集中管制技術の進歩は、電車の形態が根本的に変化させた。キャビネットを都市内公共交通機関の主役に据えた、百年前は人間で動かしていた電車も今だと全て管制室で集中制御されている。安全性と利便性と輸送量を同時に成立させたので、百年前よりかは便利にはなった時代となっている。一方、公道上の交通管制は、百年前とあまり変化はしていない。都市間を結ぶ高速道路では自動運行システムも導入されているけど、一般道及び都市高速において個別自走車両をコントロールシステムは、一部の大都市で試験的に導入されているだけで、全国的に普及してはいない。
代わりにドライバーをアシストする車載頭脳の開発が進んでいるが、俺らにとっては自立支援型AIゼロのような感じである。現代の自走車は違法な改造をしない限り、交通事故を起こしたくとも起こせない。俺らの車は、スナイプ・ゼロという金属生命体なので、色んな乗り物に変身できるのは俺らしか持っていない。輸出されている自走車両も同じ車載頭脳を搭載しているから、大規模な交通管制システムを導入する余力の無い小国も交通事故撲滅の恩恵を受けている。世界的に見れば集中管制技術より個別管制技術の方が評価されている傾向であるが、俺達はそのどっちとは言えない。送迎車は金属生命体で、運転者は結衣でいつテロリストと遭遇したとしても戦闘態勢になれる。運転が下手な者は交通事故の代わりに交通渋滞を起こしたり玉突き事故ではなく玉突き急ブレーキがかかるので、渋滞が起こるのも当然かもしれないが俺らの送迎車は一度も渋滞やら事故は起こしていない。
「今日もお疲れ様でした。一真様に深雪様」
「深雪はいつも通りだと思うが、俺と蒼太はずっと事務作業してたぞ。全て丸投げ状態だった」
「それは大変でしたねお兄様。こちらは九校戦の準備で手一杯でした」
「九校戦の準備もですが、深雪様の練習はいつ頃しますか?」
「俺も一真様と喋ってたけど、練習する時間はないはずですね」
俺らは送迎車が来てからの喋りである。今日は何をしたかを特に互いの情報交換していたが、やはりというか九校戦についてだった。そして俺と蒼太はずっとキーボード叩いていたから、指と目が疲れたと言いながら目薬を差したけどね。俺らの車は電気自動車だけど、エンジン音鳴るようにしてある。そんで俺らの家に到着したらいつも通り深夜と穂波さんが迎えてくれた。
「お帰りなさい、今日はいつもよりもとても疲れているわね」
「ただいま帰ったよ深夜。俺らは事務作業ばかりで、深雪達は九校戦の準備を主にやってたらしいからな」
そう言いながら各自室に行ってから、俺は思い出したかのように普段着に着替えてからリビング兼ダイニングルームに行った。
「そういえば九校戦の練習を今夜アイツのところに行かないか?」
「アイツって八雲のところ?それならちょうどよかったわ、ちょうど私と穂波のISを外で起動したいと思ってたから」
「ISか、確かに最近はずっと地下アリーナで訓練してたけどたまには外の方がいいよな。深雪はミラージュ・バットの特訓兼IS訓練で夕食を食べたら九重寺に向かおうか」
「アポは取っていますか?『こちらに来るのかい?だったら待っているよ』おやおや脳量子波でアイツからお呼ばれされましたね」
そう言った後に、俺らは早めの夕食を摂った後に全員で九重寺に行く事にした。俺と深雪はライダースーツでの電動二輪で、深夜、穂波さん、蒼太、沙紀は送迎車を普通車にしてから運転手を結衣にしてもらってから行く事にした。電動二輪は普通に見えるが、スナイプ・ゼロの量産機なのでバイクからロボモードにできるだけのもんだ。スナイプ・ゼロはどんな乗り物でも変身できるが、量産型のスナイプ・ゼロワンはビークルモードからロボモードに変形可能だけのだ。俺と深雪はヘルメットを被ってからバイクに跨る俺と深雪。腰に回された手を確認してから、後ろから来る深夜達の準備完了なので俺らのバイクと普通車は静かに発進したのだった。
行き先はバカ弟子のいる寺だ。さっき脳量子波で来ていいとの事でアポなしでもさっきの事で行く事となった。今夜の目的は深夜と穂波さんのISでの訓練と深雪のミラージュ・バットの練習だ。選手内定したので、その為の準備といつでもIS起動できるように練習をする深夜と穂波さん。魔法競技の中でも魔法技能のウェイトが高いものがセレクトされているが、肉体の運動能力が不必要という訳ではない。
バトル・ボードは身体的な反応速度とバランス能力が高い方が有利だし、クラウド・ボールは戦術の選択によっては高い運動能力が必要となる。減速魔法と冷却魔法を得意とする深雪は、アイス・ピラーズ・ブレイクは深雪のための競技であるが、ミラージュ・バットは空中に浮かぶ立体映像の光球をバトンで叩き割るというアクションが必要な競技だ。俺と深雪も武術を受けているが、飛行する事が出来るというのは隠している。飛行魔法はまだどこの企業でも公表されていないからか、俺達ソレスタルビーイングが使われる装備であるISも公表していない。という事で九重寺に向かっている俺達は車両用の通用口前で、車両を止めてから敷地内の中にある駐車場と駐輪場まで車両で進むのだった。車両を置いてから、俺達は織斑家族はバカ弟子のところに挨拶に向かった。この時間は、バカ弟子は門下生に暗闇稽古をしているが今回ISとミラージュ・バットの練習のためにいないようだった。
「松明が訓練する場か、アイツにしては随分と分かりやすいところだ」
「やあやあいらっしゃい、深夜も久しぶりだね。今回は互いが一真君をバックアップする側だね」
「うるさいわね八雲。今回はこういう役なんだからしょうがないでしょ、それに本来なら私はもう死んでいるはずなんだから」
「だから話すと疲れると言ったろ深夜。こいつは前回の外史でもやかましいほどに歴史を語る奴だった」
そう言いながら、俺のエレメンツである氷を放ってみた。これは本来ならドライ・ブリザードだがその前と言った方が良さそうだな、俺と深雪はそれぞれのを準備しながら俺の鋼球を暗闇から出しては回避するという事をしていたり、深雪は水を鎌鼬のように風と水での凍り斬撃を放ってきた。今は深夜と穂波さんのIS展開からの訓練をしていたところだ。今いるところは、護摩焚きに使われる場所だったが今は上空にいる深夜と穂波さんのデータ取りをしていた結衣と沙紀だった。この寺は一応比叡山の末寺を標榜しているが、バカ弟子が題目や念仏の修法を行っているところを俺らは見た事がない。
「深雪にバカ弟子よ、これを避けてみろ!ハードプラント!」
地面から出てくる根っこみたいなのが出てきてそれを避ける深雪とバカ弟子。避けたと思わせれば花びらの舞で、止まらせてからラスターカノンを放った。それを喰らったと見せかけて深雪も凍りの塊をこっちに向けるがそれを瞬時に消滅させたのだった。神の力の一つである消滅は目線を向かせるだけで、消滅してしまうというチートな力でもある。その後バカ弟子は近接格闘術で、徒手空拳となるが空からミサイルが来たために双方とも離れたのだった。
「ごめんなさい、ミサイルがそっちへ行ってしまったわ!」
「大丈夫さ、それより結衣達は深夜のISについてはどうなっている?」
「オールクリアです、双方ともエヴォルトシステムを起動してますが問題なく使っています。穂波も自分の手足のように使われております」
「だいぶ慣れてきました、次はお嬢様の練習のために降りましょうか。深夜様」
そうして降りた後に普段着に戻った深夜と穂波さんは結衣がパネルを見ている間に沙紀がタオルと飲み物を準備済みだった。さてと、今度はこっちの練習だ。そう言いながら俺とバカ弟子で火の球を、上空から出現させた。バカ弟子の方は古式魔法の鬼火で俺の方はエレメンツの一つである火を使った鬼火と念力を使っていた。どっちも同じそうだが、俺はエレメンツでバカ弟子は古式魔法の幻術を使っている。場所が場所だけに人魂が浮いていると勘違いされがちだが、深雪の練習を始めたので光球が消えたりとしていた。俺とバカ弟子の作りだしたフィールドの中で、深雪は光球をバトンで叩き割っていた様子を見る俺達。やがて三十となったので深雪に休憩の合図を施す。場内に11m四方正方形を描いただけの中で、深雪はジャンプ中に何度も光球を叩く姿を見てまるで妖精のようだと語っていた俺達。
「ふむ、これだとただジャンプしているだけだから妖精には見えないね」
「そうだろうな、ちなみに俺と深雪が飛ぶとはこの事だけどな」
深雪にアイコンタクトを送ってから、互いの翼だけを出してから飛んでいく姿を見る深夜達。とここでバカ弟子がまた鬼火を使ったので、俺達はバトンを出して次々と叩き割る姿は妖精のように見えたと言った深夜達だった。そんで三十以上のを叩き割ると地上に降り立つ俺達に飲み物を渡してくる深夜だった。
「やはり飛行魔法を開発しないと、ミラージュ・バットでは難しいと思うわ。深雪はあまり身体を動かさない方だから、まあその内開発でもするんでしょうけど」
「私と一真君がやるのは、実体を打つとのと幻影を打つのでは随分勝手が違うからね。深雪君は僕の可愛い生徒だけど・・・・これ以上言うと深夜から何か飛んできそうだからこれ以上は言わないよ」
「萌えオタクに開花したからな、こいつは」
幻影魔法は「忍術」の得意分野であり、投影速度、映像のリアルに動きの滑らかさ、全ての面において現代魔法以上の洗練度を誇る。俺のエレメンツの場合は火球を念力で浮かしている状態だからなのか、たまに深雪が叩き割ると火の粉が飛んでくるがそれをしないように微妙な調整をしている。現代魔法は多種類の異能を高速・精確に発動可能だけど、限定された得意分野では古式魔法に及ばない部分も少なくない。俺らの家地下にあるアリーナでもホログラム投影機やさっきの火の球を念力で浮かす事も可能だけど、たまには外でやった方がいいとの事だ。中と外じゃ違うし、風の抵抗をモロに受けるからな。
「深雪、今夜はここまでにするか?」
「もう一度やってもよろしいでしょうか?お兄様に先生」
「僕は構わないけど、一真君は『やるに決まってるだろ』だろうねー」
そう始めようとしたら、ISの索敵レーダーからここ周辺に誰かいると感知したのと俺の気配と直感で人の気配を感じたのだった。
「誰ですか?男女どちらかといえば女性の方ようですね」
人の気配と直感で言った一真に対して深雪達ISを持っている者はすぐさま索敵システムに引っかかった者に対して攻撃をしようとしていたが、俺の手により攻撃をやめた。俺らは訓練中や休憩時に人の気配を感じるように、頭にアンテナを張った状態となる。それと俺もISを持っているので、自然と索敵システムの反応において武器を構えようとしたけど。
「おや、遥クン」
その気配が現実になったのは、覗き見していた方から出てきた。その名に俺らは覚えがある、空間から出てきたシルエットは深夜達大人で魔法大学付属第一高校カウンセラーである小野遥だった。深雪と同じような服装だったのか、胸や腰辺りが強調されていたが今ここには俺の妻=母親である深夜がいるのでその視線を避けた。
「一真君達、そんなに警戒しなくても大丈夫だよ。遥クンも僕の教え子だ」
「深雪さんのように親しく教えて頂いた訳ではありませんけど、それに織斑君は先生の師範ですものね。それにしても先生や織斑君はともかく、深雪さん達に気付かれるとはとは思いませんでした。もしかして私の技が衰えているのですか?」
「自分を誤魔化すのは良くないなぁ、遥クン。まあそれは置いておいて、遥クンの隠形は完璧に近かったから余計な心配はいらないよ?もし本心から衰えた何て思っているんならね。深雪君達は気配に気付いた訳じゃないよ。僕たちとは次元が違う物を持っているだけだからね、いくら僕や遥クンのように隠れようとしてもすぐに見つかってしまう。深雪君達はISという技術で反応した訳さ」
「なるほど・・・・ISというとソレスタルビーイングのメンバーなのかしら?それだったら納得いくかも」
「そろそろ私達の疑問にも答えてくれますでしょうか?」
俺達を出汁にして師弟ごっこに飽き飽きしたのか、深夜は不機嫌になりながらの声で二人に割って入ってきた。
「フム・・・・遥クン、構わないかな?」
わざと間を取って聞いてきたが、小野先生は肩をすくめて答えた。
「ダメだと言っても、私がいないところで話しちゃうんでしょう?それにそこにいるのは蒼い翼関連の人達だから、すぐに正体が割れてしまうわ」
仕草はさばさばしたもので、小野先生は既に諦めた境地に至っていたが深夜達の事を蒼い翼関連だと言ったので何者かを調べる前にバカ弟子の口から答えたのだった。
「本人の許可が取れたという事で・・・・遥クンは公安の捜査官だよ」
短い答えだったが、俺達はそれだけで情報が伝わったかのように見えたのかあまり驚いた様子ではないバカ弟子だった。
「やはりあまり驚かない様子だね」
「最初に俺らの事の正体を明かしましたしね、俺達もそれだけで情報分析できます。小野先生が軍関係ではない事は最初から分かってましたし、残った答えは公安(警察省公安庁)か内情(内閣府情報管理局)かどこかのスパイかと思いましたから」
「私達蒼い翼を舐めないでくださいね八雲。小野遥の内情くらいは知っています、カウンセラー資格を持ってから今の上司さんが接触して来て第一高校に配属後に公安の秘密捜査官になったという事ですよね。諜報の世界で『ミズ・ファントム』というコードネームで呼ばれている正体不明の女スパイの正体でもあります。先天性スキルの「隠形」に特化したBS魔法師という事ですよね?」
「さすがは蒼い翼ですと言いたいけど、その肩書きは好きではない」
BS魔法師のBSはBorn Specializedの略称で、魔法としての技術化が困難な異能に特化した超能力者の事。BS能力者、或いは先天的特異能力者、先天的特異魔法技能者とも呼ばれる。「BSの一つ覚え」などと陰口をからも分かるように、普通の魔法師からは一段落下に見られているが、その特異能力は他者に真似できないものが多く、例え真似の出来るものだったとしても、技術的に極めて高いレベルを示している。例えば俺の魔法無効化もこれに値するが、他人から見たらそう見える。特性が要求任務と合致すれば通常の魔法師よりも優れた功績を残す者が多い。
「何もかも中途半端であるより、何か一つを極めている方が優れていると思いますけど。まあこれに関しては小野先生の価値観の問題ですけどね」
そう言った後、生徒とカウンセラーの役割が逆になった感じとなったが、ここは学外で今は放課後よりも静かな夜明けであるから気にする必要性はない。
「織斑君、今日のところは仕方ないけど、秘密捜査官の身分は本来極秘だから。他人にはオフレコで頼むわよ。もちろんこちらもあなた達全員がソレスタルビーイングの者達だと言うのはこちらもオフレコだと言いたいのでしょう」
公安のスパイというのは第一高校に入る前から分かっていたし、実家が警察と太いパイプを持つエリカにも既に分かっているかもしれない。俺自身も自らを偽っているからなのか、さすがの小野先生でも俺が蒼い翼本社社長兼CEOである零達也とソレスタルビーイング総司令官だと言うのは知らないだろう。正体がバレていないのは小野先生だけだと思っていたけど、こちらも時間の問題だなと思っていた。
「こちらも他言は致しません、ブランシュのような出来事に関してはこちらも調査しますが、そちらの情報に関して早めにもらえせんか?出来る限り公安とは連携したいところですので」
「・・・・こちらも随分と分かっているようだけど、ギブアンドテイクで行きましょうか」
と俺と小野先生は互いに握手をした後に、深雪の特訓をしばらく見ていた小野先生。たまに女性同士と諜報に長けている者同士なのか、話が長くなっていたけどまあいいとしよう。俺とバカ弟子の息の合った光球を出し続けた後に俺達は家に帰ったのだった、深夜達もたまには外でのIS訓練をしたいと言うのでたまにはここに来てやろうかと言ったらバカ弟子の萌えオタクに火が付いたのだった。
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