SWORD ART ONLINE ―穿つ浸食の双刀―
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
06:終息に近付く宴
「「おおぉいいぃっ、ハリンっ、お前も持てえぇぇっ!!」」
「えー、だって僕重たいの持てないし······」
ライト、リンの悲痛な叫びに、ハリンは必死に笑いを堪えながら応対する。パーティー参加者御一行は、ショッピングもとい地獄へと誘われていた。スケジュールにショッピングを突っ込んでいたのは、これまたハリン。何をするにしても主犯はハリンだ。
「そう言う問題じゃないと思うが······まぁ、良いか」
これ以上とやかく言うのも面倒だ、といった表情で女子軍の荷物を持つアツヤ。彼は二本の大剣を駆使して戦うため、筋力値に自信があると見られて一番荷物を持たされている。8/10はヒメカの物だが。
「てか、何気に俺等も多いよな······持ってる荷物」
「流石に腕が痛いですけどね······」
愚痴を溢すリオンに、主に腕の痛みの事で賛同するルスティグ。彼等もまた大量の荷物を持たされている。ただ、ルスティグに関してはユニークスキル《調合》を駆使してカートを創っているため負担は軽い。
「俺はあんまし関係ないと思うんだけどなぁ······何でこんなに荷物を持たされてるんだ······?」
これまた大量の荷物を持たされている少年――――《神話剣》セモンがぼやく。彼に至ってはオウカとナギがセツナに合うという理由で買い漁った衣服やアクセサリーの類いを全て持たされている。
「ねぇ、ナギちゃん、これって可愛くない?」
「あ······確かに可愛い······」
きゃっきゃとはしゃいでショッピングを満喫するオウカに、若干ついて行けていないナギ。決してナギが面倒くさい思っている訳ではない。
「ね、ねぇ······そろそろさ、別の事しない······?」
困り顔でそう提案するナギは、ストレージに入り切らなくなった少量の荷物を手に下げる。後ろではセツナがコーディネート――もといコスプレ用――という名目で押し付けられた衣装を抱えて苦笑いしている。
「流石にショッピングも限界だろうしね······そうしないか、オウカ?」
「むぅ······分かりました。じゃあ、会場でトランプでもして遊びますか」
ハリンに頼まれれば断る訳にはいかないだろう。その場にいる全員がそう考えたそうな――――
* * * * *
「また負けた!?何で!?何で僕はこんなに負けるの!?」
全員参加のババ抜きで、一勝するどころか連敗記録更新中のハリンは嘆く。
「ポーカーフェイスが家出状態だからだろ」
トランプを切りつつ冷静に呟くアツヤは心底どうでもよさそうだ。隣ではヒメカが苦笑いしつつカードの分配を手伝っている。
「つ、次こそはっ······負けないよ!!」
愉快な宴も永遠ではない。宴は終息に近付くのであった――――
* * * * *
「結局、一勝も出来なかった······はぁ······」
項垂れるハリンの肩を、オウカが叩く。その光景に全て一抜けのライト、それに次ぐリンが哀れんだ視線を送る。
「あー、面白かったぁ······また呼んでくれよ、ハリン」
セモンは無垢な笑顔を迎えつつ、ハリンに言う。宴は終わりを迎えている。現在ははじまりの街転移門前に集まっている。ここで自分の元いた世界の事を思い浮かべれば、帰れると言うのだ。
何とも不思議な現象が起こるものだと、最初ハリンは思った。
「勿論······機会があればまた、是非」
ハリンはセモンと握手を交わす。途中参加ではあるものの、彼はこの場にいるメンバー全員と打ち解けている。カリスマ性は優れている。
「にしたってボスはやばかったよなぁ」
「まったくだ、奥の手のタイミングが可笑し過ぎるだろ」
ライト、リンコンビは未だにボスの会話で盛り上がっている。頭の中では常に戦闘の事ばかりだが、それが彼らの長所でもあるだろう。
「皆······今日は本当にありがとう。また、いつでも来て下さい、楽しみにしてるから」
ハリンはそう告げると、全員と握手を交わす。敬意を表して、だろうか。
「何だかんだ言って楽しかったしな······ありがとよ、ハリン」
「だね、アツヤ。本当に楽しかったぁっ!」
口許を綻ばせるアツヤと、大きく伸びをするヒメカ。直後、二人の体が薄く輝き出す。
「っと、そうか······帰りたいって思ったらこうなるんだったな······んじゃ、またな」
「皆またねっ!」
二対大剣世界の英雄と女神は姿を消した。今頃は自身の世界に戻っているだろう。
「んじゃ、次は俺等の番な······帰るぞ、ルーグ」
「はい、リオンさん。皆さんお元気で、では」
二人の英雄もまた輝き、姿を消す。別れとはいつも寂しいものだ。
「リン、俺等もそろそろ行こうぜ。長居は無用とか言うじゃん?」
「捉える意味変えたらアウトだぞそれ。······じゃ、また会おうぜ、ハリン、皆!」
そう言い残し、漆黒の勇者と純白の英雄は姿を消した。
「じゃあ、私もそろそろ行くね?今日は本当にありがとう。絶対忘れないよ、今日の事」
少女――ナギは、笑顔を見せると姿を消した。
「じゃあ、俺達もそろそろ行くか、セツナ。シャノンにハザード、コハク······皆が待ってるだろうしな」
「ええ······そうしましょう。お兄様を待たせる訳にはいきません。ハリンさん、今日はありがとうございました」
丁寧にお辞儀まで繰り出すセツナに、苦笑いするセモン。神話剣世界の登場人物もまた、姿を消した。
「ふぅ······やっぱり、静かになると少し寂しいね······けど、これが今までの日常だ。彼等に負けないよう、僕も精進しないと」
少年はそう呟くのだった。
ページ上へ戻る