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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Epos56輝ける希望を手に/明日への旅立ち~End of Destiny~

†††Sideはやて†††

王さまやみんなと協力して、システムU-Dことユーリを止めることに成功した。力を消耗して眠りついたユーリと、ユーリに付いて休みに入った王さまは今、個室で休憩中。そんでわたしらもアースラに戻った直後は、一撃貰うだけで撃墜確定な魔法を扱うユーリとの戦闘で心身ともに疲労困憊。そのこともあって、しばらくは動けへんかった。

「――よし。ようやく疲れも取れてきたな」

「本当にもうよろしいのですか? 主はやて。もうしばらく休んでいては・・・?」

そうは言いながらもわたしをベッドから車椅子に乗せてくれたリインフォースに「大丈夫やよ」って笑顔で答える。特別捜査官の研修生になってから生の現場を、その日のうちにいくつも回るようなことを繰り返したおかげかタフになったんかも。研修前やったら確実に今も寝込んでるはずや。
それからわたしはリインフォースにお願いして、部屋に連れ出してもらう。別々の個室で休んでるみんなのことが気になるし。もしかしたら、わたしのようにもう回復して動き回ってる子も居るかもしれへんし。

「あ、はやて。もう動いていいの?」

「リインフォース。お前も」

部屋を出てすぐ、廊下でばったりと会ったヴィータとシグナム、狼形態のザフィーラ。わたしとリインフォースは3人に「うん。問題あらへんよ」「ああ。もう大丈夫だ」って答える。今度は「そうゆうみんなはもう平気なん?」わたしの番や。

「はい。我々も問題はありません」

「はやてに出会うまで、あたしら結構ヤベェ奴らと戦ってきたかんな。ユーリに比べりゃまだマシな奴らだったけど。まぁそのおかげもあってこれくらいじゃ全然堪えないよ」

ザフィーラは無言やったけど、我も問題ありません、って目からその思いを読み取ることが出来たから、「それは何よりや♪」みんなに笑顔を向ける。わたしとリインフォース。そんでヴィータ達と廊下を進む。

「お? すずかちゃん達や。おーい!」

通路の先、わたしらと同じ方向に向かって歩いてたすずかちゃん、なのはちゃん、フェイトちゃん、アリサちゃんの4人に手を振る。すると、わたしらに振り向いてくれたすずかちゃん達も「おーい!」手を振り返してくれた。聴けばみんなもわたしと同じで、他のみんながどうしてるのかが気になって起きてきたとのこと。

「あの子、ヴィヴィオちゃんのことが特に気になっちゃって」

なのはちゃんがポツリと漏らす。未来組の1人、高町ヴィヴィオちゃん。未来への影響を考えて出来るだけ話さん方がええって、アミティエさんとキリエさんに言われてるからそんなに話してへん。

「未来でのなのはちゃんの娘、なんだよね・・・?」

「はじめてそれ聞いたときは混乱したわ」

すずかちゃんが右人差し指を顎に当て呟いて、アリサちゃんがそう言って肩をすくめた。わたしだって驚いた。フェイトちゃんが「私もー。混乱のあまり、アリシアと一緒にお祝いしちゃったし」恥ずかしながら、って風にそう苦笑い。

「つか、はやてとルシルにも子供が居るっつうのにも驚いたんだけどな」

わたしの右隣を歩くヴィータがそう言うてわたしを見ると、「八神フォルセティ、だったか」左隣を歩くシグナムが、わたしとルシル君の未来の子供ってゆう子の名前を言うた。それを思いだして、わたしはまた顔が熱くなるのを自覚する。

「ということは、ルシルははやてを選んで、・・・シャルはフラれたんだね」

通路の先のT字路の陰から「アリシア」「アリシアちゃん」がそう言いながら出て来た。うん。つまりはそうゆうことになる。未来のルシル君は、シャルちゃんやなくてわたしを選んでくれた。嬉しい反面、やっぱりシャルちゃんに申し訳ない気持ちも少なからずあるわけで。

「ふわぁ。てゆうか、みんなどうしたの? まだ休んでた方が良くない?」

大きなあくびをしてそう訊いてきたアリシアちゃんに、「私は、私たちはもう大丈夫。アリシアこそどうしたの?」フェイトちゃんがそう訊き返した。アリシアちゃんが言うには、たった今まで事件の後片付けをしてた、とのことやった。

「てっきり、みんなもまだ寝てるかなぁ、って思ってたけど。起きちゃったんならしょうがない」

もう一度大きなあくびをしたアリシアちゃんがフラフラとフェイトちゃんに寄り添うと、「わたしも起きてよ~っと。ふわぁぁ~~~」右腕に抱きついて、頭を肩に寄り添わせた。するとフェイトちゃんが「いやいや。眠いなら寝ないとダメだよ、アリシア」って注意。

「だぁ~い~じょぉ~ぶ~~」

そうは言うもののアリシアちゃんはホンマに眠そう。そんなアリシアちゃんに「なあよ。なんでお前、そこまでして手伝ってんだ?」ってヴィータがそう訊いた。続けて「ただの手伝いで体壊しちゃ元も子もないわよ?」アリサちゃん。

「・・・わたしね、決めたんだ。わたし、管理局に入る!」

さっきまでフラフラやったアリシアちゃんが元気よくステップしながらわたしらの先頭に立つと、そう言うてクルっとわたしらに振り返った。嘘や冗談やなくて、本気でそう言うてるって解る。

「で、でも、普通の生活をしたいって、アリシア言ってたよね・・・?」

「むむ? ひょっとしてうちの妹は、お姉ちゃんの管理局入りに反対なのかな?」

「あぅ。ち、違うよ。どちらかと言えば、すごく嬉しいよ! でもそうじゃなくて・・・!」

覗き込まれるように顔を近付いてきたアリシアちゃんに、わたわた手を振って否定するフェイトちゃん。すると「ごめん、冗談、冗談♪」アリシアちゃんはからかったことを謝りつつフェイトちゃんからぴょんぴょん跳ねて遠ざかった。

「普通の暮らしがしたい。それも半分本音。もう半分は、せっかく一緒になれたフェイトの側にもっと居たい。だけど、わたしの魔力ランクは恥ずかしながらEランク。お姉ちゃんなのに、フェイトと一緒に飛べない・戦えない・守れない。そう思ったら、なんだか情けなくなっちゃって、普通の暮らし、とか言い出しちゃった」

後ろ向きで歩くアリシアちゃんが寂しげに微笑んでペロッと小さく舌を出した。フェイトちゃんが「アリシア・・・!」アリシアちゃんに駆け寄って抱きしめた。わたしらは2人の邪魔をせんようにその場で止まる。

「逃げてたんだね、わたし。でも、もう逃げないよ。自分のやりたいこと、見つけたから。一緒に戦えないけど、フェイトを支えることが出来る仕事を見つけた・・・。スタッフ。わたし、スタッフになって、フェイトを、みんなを支える!」

満面の笑顔とピースサインをわたしらに向けてくれたアリシアちゃん。わたしらもアリシアちゃんの決めた夢を応援するために笑顔とピースサインを返す。これで晴れて全員が管理局入りが決定した。
そんで話題が戻る。ヴィヴィオちゃんとフォルセティ君?のことについて。リインフォースが「ヴィヴィオは、聖王女オリヴィエの身体特徴を色濃く受け継いでいましたが、なのはの夫となる者は、聖王家の縁者なのでしょうか?」むぅって唸った。

「そ、そうだよね! 子供が居るなら、やっぱりお父さんが居るわけで、私の旦那さまが居るってことに・・・!」

「しかし聖王家は途絶えたのではなかったか?」

「そこん所は、シャルやルミナに聞きゃあいいんじゃね? オーディンとエリーゼの子孫や、クラウスの子孫のアインハルトだって居るくらいだし、ひょっとしたらってことも」

当時のベルカを知るリインフォース達だけで話を弾ませてる。こうゆう時はちょう疎外感のようなものが・・・。結局、未来のことはその時になってみないと判らない、って結論が出た。それやのに、「もう1個、気になるんだけど。トーマがあたしを師匠って呼んだんだよな」ヴィータが話を続ける。

「ふむ。私のことは、姐さん、だったな」

シグナムもノったから、「わたしは、八神司令、やったな。とゆうか、なんでトーマ君とリリィさんにあんなに恐れられてるんかが解らへんのやけど・・・」わたしも話に交じった。トーマ君とリリィさんの態度からして、よっぽど恐いんやって思う、未来のわたし。でもなんでか解らへん。と、「私は、すずか主任、ってヴィヴィオちゃんに呼ばれたよ」すずかちゃんも入った。

「はやてちゃんは、海上警備部捜査司令で・・・」

「すずかは、第零技術部主任、だったわよね」

「結構な出世だよね、2人とも」

なのはちゃん、アリサちゃん、フェイトちゃんの目がわたしらに向けられる。トーマ君とリリィさんは16年後、ヴィヴィオちゃんとアインハルトちゃんは13年後の未来からって話やし、わたしやすずかちゃんだけやなくて、なのはちゃん達もきっと大出世してるやろなぁ。その頃はやっぱりみんな別々の道を歩んでるんやろうか。そう思うと寂しいな。

「こうなると、あたしも将来の自分の階級とか役職とか知りたくなってくるわね。訊いてみようかしら」

「ダ~メ~よ❤」

背後から聞こえてきた陽気な声。振り返ってみるとそこには「アミタさん、キリエさん!」の2人が居った。

――どうぞ、アミタ、と呼んでください。親しい人にはそう呼ばれるんです。皆さんとは共に危機を乗り越えた友人ですから、ぜひともそう呼んでほしいんです!――

数時間前の戦闘後、アミティエさん、ってわたしらが呼ぶと、アミタさん直々にそう呼んでほしいってことで、わたしらは親愛を籠めて、アミタさん、って呼ぶことにした。

「ダメよ~、アリサちゃん♪ あんまり未来のことを聴かない方が良いわよん♪」

「はい。小さなキッカケが後に大きな問題になるかもしれませんから」

「はーい」

アリサちゃんが残念がって返事をすると「よしよし、良い子良い子♪」キリエさんがアリサちゃんの頭をなでなで。アリサちゃんは「うぅ~」抵抗もせずに受け入れた。大所帯になったわたしらは通路を進んで、レクリエーションルームに向かうことにした。そこが一応の集合場所やからな。
その道中で、「――あぁ、やっぱ納得いかな~い」シャルちゃんの不満そうな声が、次の角の奥から聞こえてきた。遅れて「君なぁ。いい加減諦めたらどうだ?」ルシル君の軽い叱責が含まれた声が聞こえてきた。2人ももう起きてたんやな。

「だってさぁ~。もしかすると、あなたとはやてじゃなくて、わたしとあなた、ってこともありえるんでしょ?」

(わたしに関係あること?)

わたしの名前が出されたことで、リインフォースに車椅子の速度を落としてもらう。と、みんなもわたしに続いて遅足。唯一「どうしたの~ん?」キリエさんがそのままの速さで行こうとしたら、「待ちなさい、キリエ」ってアミタさんがキリエさんの襟首を掴んで止めた。

「だがそうはならなかった。それで終わりだ」

「だから、それが納得いかないっていうか悔しいの。八神フォルセティ。ルシルの推測通りなら、その子もヴィヴィオも、プロジェクトFの遺児。・・・で、ルシル、あなたは別として、はやてとフォルセティには血の繋がりが無い」

アミタさんとキリエさんを除くわたしらは一斉に息を呑んだ。特にフェイトちゃんとアリシアちゃんの顔色があんまり良うないし、なのはちゃんも俯いた。そうゆうわたしも、ルシル君と結ばれたんやないってことを知ってちょうショックを受けた。

「やはり、か。23歳の頃に居る10歳の子供。となれば、主はやてとなのはは、13歳の頃に2人を生んでいる計算になる。普通に考えれば、それはあまりにも早すぎる。まだ成熟しきっていない体だ。それで出産を行えるとは思えなかった・・・」

リインフォースがポツリと漏らす。シグナムとヴィータもザフィーラも、ホンマはそのことにはついて気が付いてたみたいで浅く俯いた。

「フォルセティを引き取ったのがはやてたち八神家だった。だから八神フォルセティ。もし、わたし――フライハイト家が引き取っていれば、フォルセティ・フライハイトになってたかもしれない」

「シュテルンベルク家に引き取られる可能性もあっただろうけどな。どっちかと言うと、その方が自然だ。フォルセティ・フォン・シュテルンベルク・・・」

「そう。つまりわたしはまだ負けてないってこと!」

「・・・フォルセティ・フライハイト、か。・・・言い難いな。まだ八神フォルセティの方が言い易い」

「そこで決めないでよっ!」

あくまで静かに受け応えるルシル君と、感情のままに声を張り上げるシャルちゃん。と、「はい、この話はここまで。くれぐれもはやて達に話さないようにな。ヴィヴィオとアインハルトを見る限り、高町家も八神家も家庭円満らしい。この話は邪魔になる。プロジェクトFについてはフェイトとアリシアに不安を与える」話を切り上げようとするルシル君。

「判ってる・・・ふふ」

「・・・絶対に解ってないな、君は。未来を書き換えるような真似だけはするな」

2人の声が遠ざかってくのが判って、「はぁ」無意識に止めてた息を吐いた。盗み聞きしてもうたってゆう罪悪感と、わたしらのことを気遣ってくれたルシル君への感謝、いろいろな感情が胸の内に渦巻いてる。

「そっか・・・。ヴィヴィオちゃんとフォルセティ君は、私とはやてちゃんの本当の子供じゃないんだね・・・」

「で、でもさ! ルシルも言ってたけど、ヴィヴィオの様子からして仲が良いって感じだったじゃない!」

「フォルセティ君は、どうなんやろ・・・?」

「き、きっとヴィヴィオちゃんのように明るくて元気な子だよ! 幼馴染で、同じ学校に通ってるみたいだし!」

落ち込むわたしとなのはちゃんを慰めてくれるのはアリサちゃんとすずかちゃん。と、「家族とは、なんでしょう?」アミタさんが人差し指1本立てて、そう問題を出した。いきなりのことにわたしらはみんなして小首を傾げる。

「家族に必要なのは血の繋がりだけですか? 私とキリエは、人間の博士に造ってもらったギアーズですけど、私たちは博士と家族ですよ?」

「そうね。博士とお姉ちゃんとわたしで、フローリアン家。そのことについてだけは絶対に誰にも否定させないわ」

わたしはリインフォース達を見た。血の繋がりやないけど、わたしらは家族や。そうや、血の繋がりなんかなくても、絆が繋がってればそれが家族や。さっきまで在った不安は綺麗に消えた。見ればなのはちゃんの顔からも不安が消えてた。この件に関しては、また後でルシル君たちに聞いてみよう。
改めてわたしらもレクリエーションルームへ向かう。そんでレクリエーションルームに入ると、出入り口から一番遠い一画にはすでに未来組の高町ヴィヴィオちゃん、ハイディ・アインハルト・ストラトス・イングヴァルトちゃん、トーマ・アヴェニール君、リリィ・シュトロゼックさん。
そんでヴィヴィオちゃんとアインハルトちゃんのデバイス、“クリス”と“ティオ”、トーマ君とリリィさんの間に浮かぶ“銀十字の書”が居った。そやけど、ルシル君とシャルちゃんの姿がなかった。どこ行ったんやろ。

「くはぁ・・・、ちゃんと休んだのにまだ体のあちこちが悲鳴を上げてる・・・」

「あぅぅ、張り切って、頑張った分、その反動がキツイぃ~~」

「ですね・・・。ティオ、クリスさん、大丈夫ですか・・・?」

トーマ君はソファの背もたれに体重を預けて、ヴィヴィオちゃんはテーブルに突っ伏して、アインハルトちゃんは、両手の平に乗せたぐったりとしてる“ティオ”や、テーブルの上に寝そべってる“クリス”を気遣ってる。

「はぅぅ・・・。しっかり、トーマ・・・って、そういう私もすでにくらくらで限界だったり・・・。銀十字、周辺魔力吸収モード。回復促進」

≪回復促進開始≫

リリィさんがそう指示を出すと、“銀十字の書”はそう答えた。そんなことも出来るんやな。そんな未来組の子らを見たヴィータが「なんだ、割と未熟者が多いな、未来組は。特にトーマは、あたしの弟子なんだろ? しっかりしろよ、未来のあたし」って、トーマ君や未来の自分に注意。

「まあでも、あの子たちのおかげで助かったところもあるし」

「うん。ヴィヴィオとアインハルトは魔法を扱えても一般人らしいしさ」

「そこのところは大目に見てやったら?」

「そうやなぁ。ユーリと最後まで戦いきったところはホンマにすごいよ」

なのはちゃん、フェイトちゃん、アリサちゃん、そんでわたしと未来組の子らの健闘を称える。と、「あー! ちっちゃいママだー♪」ヴィヴィオちゃんがわたしらに、とゆうかなのはちゃんに気付いて満面の笑顔で大手を振った。すると「はぁーい♪」なのはちゃんも満面笑顔で手を振り返した。

「あまり接触してはいけなかったのではないか?」

リインフォースがそう言うてアミタさんとキリエさんを見たら、「ええ、まぁ」アミタさんが困惑して、「そうなんだけどね~」キリエさんは肩をすくめた。で、「あぅ、ごめんなさい。で、でも、やっぱり無視とか出来ないんですよぉ~」なのはちゃんは、申し訳なさそうにそう言うた。逆はどうやろ。試しにわたしはトーマ君とリリィさんに手を振ってみる。

「「おはようございます、八神司令!」」

すると2人は慌ててソファから立ち上がってビシッと敬礼。うん、すまんことをしたって罪悪感。疲れで休んでるところを邪魔してもうた。合掌して「休んでるとこごめんなー!」謝る。ソファに座り直した2人にもう一度謝っとこ。

「あ、みんな、揃ってるね」

「俺たちが最後だったか」

「おはようございます、はやてちゃん、みんな」

わたしらも席に着いてすぐ。ルシル君、シャマル、シャルちゃん、クロノ君がやって来た。ルシル君とシャルちゃん、シャマルとクロノ君を迎えに行ってたんやな。4人もわたしらの近い席に着いたところで、「皆さんに大事なお話があります」アミタさんが1人立ち上って、話を切り出した。

「博士から私たちに厳命されていることがあります。現地の人が未来の情報を知ってしまった場合、出来る限り未来に関わってくる記憶を封鎖するように、と」

なんとなく感づいてたわたしらからは反対意見は出えへんかった。

「ま、寂しいかも知れないけど、知ってしまったことで未来が変わる――タイムパラドックスが起きるのはみんなも嫌でしょ? なのはちゃんで言うと、未来を知っている所為で、ヴィヴィオちゃんと親子にならない可能性も生まれちゃうし」

キリエさんがそう言うと、「そんなの嫌ですぅー!」なのはちゃんとヴィヴィオちゃんの声がハモった。

「はやてさんも、フォルセティ君と親子にならない可能性も生まれるかもしれません」

「う~ん、なのはちゃん達みたくフォルセティ君とは会うてないから実感は湧かへんけど、やっぱり嫌やな~」

未来の家族が居らんくなるのは寂しい。シャルちゃんをチラッと見ると、ただ無言で紅茶を飲んでた。余裕・・・とゆうよりはフォルセティ君は諦めたけど、ルシル君は諦めてへんって感じやな、って感じ取れる。

「トーマ君やリリィちゃんもそうね。かなりの奇跡的確率で生き残れたってことみたいだし、ちょっとしたことがきっかけで、2人ともバッドエンド~、みたいな?」

「軽っ!? なんて軽い言い方! 言い方の反面それ、本気で困りますから!」

「私もそんなの絶対に嫌ですー!」

キリエさんの発言にトーマ君とリリィさんが叫んだ。わたしらと違って生死に関わってくることみたいやから、それはもう必死や。

「はい。ですから皆さんから、時間移動という出来事が存在した、という箇所だけど、封鎖させて頂きます」

「わたし達や王様たちと出会って、戦いがあったこと、その辺りについて消しちゃうといろいろ問題が起きちゃうかもしれないから、時間移動に関しての事だけね」

とゆうことは、「事件そのもののことについては忘れないってことでええんですか?」って確認すると、「はい。そこまで封鎖してしまうと、逆に思い出しやすくなるかもしれませんので」ってアミタさんが答えてくれた。記憶の封鎖後、アミタさんとキリエさんは、未来からやのうて管理外世界から来た、ってことになるそうや。

「そういうわけで、同じく未来組の皆さん、過去の記憶封鎖を行った方が良いかと。この先の未来に影響を与えてしまうかもしれないので」

「うぅ。残念だけど、歴史が変わらないために・・・」

「はい。記憶の封鎖、お受けします」

「俺も。死にたくないし」

「私も受けます。トーマに会えないなんて辛いもん」

ヴィヴィオちゃん達も納得した。と、「それならドクターやティファレト先生の治療データも残してはダメなんじゃないか?」ってルシル君が言うた。そんでクロノ君が「そうなるか。まぁ、どうせ持っていてもロストロギア扱いになるだろうから、書類作業の手間が増えるんだ。破棄しよう」ってルシル君に同意した。

「そんじゃわたしから連絡を入れるよ。でもなー、ティファは素直に応じてくれそうだけど、ドクターはどうだろう・・・?」

シャルちゃんが苦笑しながら、まずは医務室に居るティファ先生に連絡。事情を説明すると、『判りました。記憶封鎖とデータ破棄に了承します』って頷いてくれた。次にドクターや。第零技術部に通信を入れると・・・

『はい、こちら第零技術部。まあ騎士イリス。少し振りです』

ドクターの秘書のウーノさんが出てくれた。そんでウーノさんにも事情を話してると、『嫌だ』そんな声がモニター画面外から聞こえた。ウーノさんの隣に姿を見せるドクター、ジェイル・スカリエッティさん。すると視界の端のヴィヴィオちゃんが「っ!」息を呑んだんが判った。そんでなんでかドクターに頭を下げた。なんか未来であったんやろか。

『アミティエ・フリーリアン、キリエ・フローリアン両嬢のデータと、彼女たちに関する記憶の封鎖? すまないがお断りする。彼女たちのデータは必ず今後に役立てられる! それを破棄? 一科学者としてそんな冒涜など――』

『アミティエちゃんとキリエちゃんのデータ、消したわよん♪』

『なぬっ!?』

『ナイス働きです、クアットロ』

画面外から聞こえてきたクアットロさんとドゥーエさんの声。ドクターが画面外に出てって『クアットロ!? ドゥーエ!? いつの間に! いや、それより本当にデータを・・・ああ! 本当に消えているじゃないか!』そんな悲鳴を上げた。

『記憶封鎖の件もお受けします。これよりアースラにお伺いしますので、リンディ提督に乗艦許可を』

「ああ、僕が伝えておく」

クロノ君が席を立って、離れたところでブリッジに居るリンディさんに通信を繋げて、「オーケーだ。いつでも来てほしい」ウーノさんにOKサインを出した。そやけど『私は嫌だ、受けないぞ』ドクターはあくまで反対のようや。ウーノさんが指をパチンと鳴らすと、ドクターが『くぺっ?』そんな奇妙な声を画面外で漏らした。

『一瞬で意識を落とせたな。流石トーレだ』

『・・・気は引けたが、歴史改変などあってはならないからな。ドクターには申し訳ないが、記憶封鎖が終わるまで眠っていてもらおう』

チンクとトーレさんのやり取りが聞こえてきた。どうやらトーレさんが何かしらの方法でドクターを眠らせたようや。なんや申し訳ない気持ちが。元々はこちらの事情で巻き込んだようなものやのに。まぁとにかく、ドクター達も記憶封鎖を受けてくれるってことで安心や。

「ところでみんなは、元に時代にちゃんと帰ることが出来るの?」

シャルちゃんがそう確認すると、「はい。間違いなくですよ。私たちが帰る際、必ずお連れします」アミタさんが安心できる答えを言うてくれた。続けて「王様とユーリが、手伝ってくれることになったから。ちゃんと戻れるわよ、きっと」キリエさんがそう言うたその時。

「オイッスー! 戻ってきたぞ、オリジナルー!」

「レヴィ!」

「ご無沙汰です、なのは、みなさん」

「シュテル!」

「戻ってきたであります!」

「フラム!」

「室内とは言え、やはり外の解放感は素晴らしいですわね」

「アイルちゃん!」

「ふん。子鴉共の顔を見た途端、気分は急降下だがな」

「んで、王さまは相変わらず毒舌と・・・」

レクリエーションルームにやって来たのはマテリアル達と、「どうも・・・」小さくお辞儀して挨拶したユーリやった。わたしらはそんなユーリ達のところへ集合する。と、「ええい、集まるでない、暑苦しい!」王さまが怒鳴ってきたから、「まあまあ」わたしは落ち着くよう宥める。

「良かった、みんな戻って来られたんだね」

「ちょーヨユーOK!」

「ユーリが力を貸してくれましたから」

「盟主のおかげで、予想以上に速く再起動を果たせましたわ」

「流石、我らの紫天の盟主でありますな!」

シャルちゃんにそう返すシュテル達。そんで最後に、「あの、改めて、ユーリ・エーベルヴァイン、です」ユーリがちょうおどおどした感じで自己紹介。なんやろ、人見知りなんかな。今までのユーリとは正反対な感じや。

「本当にありがとうございました、皆さん。私を止めていただいて、本当に・・・」

深々と頭を下げるユーリに、わたしらは気にせんように、って返す。泣いてる子を助けるのも管理局員として、人として当然やからな。ほのぼの空気の中「さて」王さまがコホンと咳払いを1つ。

「状況もひと段落したところで、ぼちぼちうぬらを皆殺し、この世界の塵芥どもに我が、我らが恐怖を撒き散らして恐れ戦かせようと思っておったが・・・」

またそんな物騒なことを言い始める王さま。でも雰囲気からそんなことをしようなんてこれっぽちも思ってへんことくらいは判る。そやから変に言い返さんと「うん」みんな揃って頷く。

「うぬらの居るこの世界は、我らにとって暴れ甲斐の無い、あまりに窮屈な箱庭だ。よって我らは、赤毛と桃色の世界へと侵攻することにした」

王さまの発言に少し呆けたわたしら。つまりそれって「なんだ、エルトリアに引っ越すのか?」ルシル君の言う通りこの時代から未来の世界へ旅立つってことになるわけで・・・。

「違う! 侵攻だ、侵攻! 引っ越しなど気の抜ける言い方をするな、うつけ者!」

「ルシリオンの言葉はあながち間違いではないかと」

「確かに引っ越しですわね」

シュテルとアイルがルシル君に同意を示すように頷いた。ここで「そういうことなんです。私たちの世界に、王様たちも一緒に来てくれることになりました」アミタさんがそう言うた。

「エルトリアって、エキサイティングな世界なんだって!」

「危険なモンスターや、ダンジョンなどもあるとのこと! モンスター狩りにダンジョン制覇!」

「ボク好みの環境だよ!」「腕が鳴りますな!」

「エルトリアってかなり古い遺跡がたくさんあるし、死蝕地帯には危険生物もうじゃうじゃ居るのよ。わたしもお姉ちゃんもね、実戦訓練はそこで積んだのよ。本当に強いモンスターばかりだから、退屈はしないと思うわ」

「「おお!」」

レヴィとフラムが目をキラキラさせて、そんなトンデモ世界やったらしいエルトリアへ思いを馳せてる。ダンジョンとかモンスターとか、テレビゲームや小説の世界みたいや。わたしも行ってみたいなぁ。

「私たちの暮らす場所としても良物件なのですわ、エルトリアは。もちろんそれだけではなく・・・」

「ユーリと私たち――無限連環(エターナルリング)の力が、エルトリアの復旧に役立つかもしれない。ユーリはその話を聴いて・・・」

「はい。壊すばかりだった私のこの力を、壊すんじゃなくて――世界の復興という役立たせることが出来るかもしれない・・・。それを聴いたら私は、エルトリアへ行こうって思って。ディアーチェ達に我が儘を・・・」

「我が儘の内には入らんわ。我ら全員、2つ返事で了承したからな」

「ええ。ユーリにやりたいことが見つかったのは良いことですから」

「応援するのが臣下の務めですわ」

シュテルとアイルが、ユーリのフワフワな頭を優しく撫でた。気持ち良さそうに、そんで照れくさそうに目を細めるユーリ。そやけど、「もう会えんくなるんやな」わたしはそうポツリと漏らした。最初は敵で、今は友達やって思えるマテリアル達。せっかくこうして話が出来るほどに仲良うなれたのにな・・・。

「私、もっとシュテルとお話ししたかった。それに、また闘うって約束もあったし・・・」

「私もですよ、なのは。約束は、そうですね・・・。またいつかきっと。そういうことで取って置きましょう。永遠に会えない、というわけでもないでしょうから」

「レヴィ、寂しくなるね」

「ちょっとはな。でもま、こっちに居る間も、それなりに楽しかったから、ボクはそれでオーケーにしとこうって思う。こっちに残っても、窮屈か退屈かの二択になりそうだし。それだとつまらないから!」

「・・・うん。そうだね。レヴィは、元気に翔け回ってる方がらしいもんね」

「アリサ。私との引き分けた決闘、いずれ決着を付けてやるであります! それまでさらに強くなっているでありますよ! それに、そこでふんぞり返ってる紅の鉄騎! 次に会ったら、今度こそ私が勝つであります!」

「上等よ。あんたも腕を磨いておきなさいよ。今度は逃がさないんだから」

「おう! 待っていてやるよ。そんでまたボコにしてやるからな!」

「アイルちゃん・・・」

「私はディアーチェと同じで、オリジナルと仲良し小好しするつもりはありませんわよ。・・・でも、これが最後であると言うのであれば、握手に応じるのもやぶさかではありませんわ」

「我としてはもう貴様と会うことがないと思うだけで清々するがな」

「王さま、ひどいぃ~。もうちょっと優しくしてくれてもバチは当たらへんと思うよ?」

「当たる当たらんではない。我から話すことなど何もないぞ。貴様のその阿呆面と、気の抜けた喋り方が気に食わん。ゆえに、話したくない」

「やっぱひどいなぁ。ええやん、そんなツンケンせんで。姉妹みたいなもんなんやし」

「ぶはっ!? だ、だだ、誰が姉妹か! 不良小僧にも言われて腹が立ったが、貴様から言われると余計に不愉快だ!」

「なんか俺にも怒りの矛先が向いてね?」

「シッ。トーマ。首を突っ込むと危ないよ」

「ほらほら、お姉ちゃんって呼んで~♪」

「よーし、いいだろう。表に出ろ。貴様の緩み切った脳みそに、ジャガーノートかエクスカリバーの直撃を食らわしてやるわッ!!」

「おやめください、王」

「無暗に王が暴れると、他の皆さんに多大な迷惑をお掛けしますので」

「そーだよ、王様」

「ここは懐の広さを見せるでありますよ、陛下」

「うぬぬぅぅ・・・ふん! 命拾いしたな!」

他のマテリアル達に止められた王さまは、鼻を鳴らしてわたしに背を向けた。もうこんな漫才みたいなやり取りも出来んくなるんやね。

「あの、改めましてお礼を。皆さん。本当にありがとうございました」

こうして、ほんの少しの間、レクリエーションルームでわたしらは一緒に過ごした後、別れの準備は・・・なんの問題なく進んでった。日を跨いで早朝。わたしらはアースラを降りて海鳴臨海公園へとやって来た。
そこで、現代組と未来組に分かれて記憶封鎖を受ける。記憶封鎖の効果は、アミタさん達が時間移動を終えた直後からって話で。そうそう。ドクター達もちゃんと記憶封鎖を受けたんや。

――放すんだ、ドゥーエ、トーレ、クワットロ、チンク! お父さんの言うことが聴けないのかい!?――

記憶封鎖を受ける直前で目を覚ましたドクターは、最後まで抵抗してたんやけど、娘のドゥーエさん達に体を押さえつけられて強制的に記憶封鎖を受けた。思い出した後が怖いってことで、ウーノさん達からの進言でアミタさん達のことも忘れることになった。
そうしてわたしらも記憶封鎖を受けた。この時代からアミタさん達が居なくなった瞬間、わたしらは時間移動に関しての記憶をすべて忘れることになるんやな。記憶封鎖に続いて、時間移動のセッティングも終えて・・・。帰還組が集まってるところに、「ユーリ」ルシル君が、ユーリの側へ歩み寄った。

「あ、あの、なにか・・・?」

緊張の面持ちで身構えるユーリにに、「新たな旅路だ。それなのにゴミを髪に引っ付けていたら格好がつかないぞ」ルシル君はそう言うてユーリの髪に触れて・・・そんで手を引っ込めた。手にはゴミ――小さな紙片が握られてた。

「ありがとうございます」

「どういたしまして。元気でな」

「あ、はいっ」

ルシル君がユーリの頭をそっと撫でてから戻って来た。ルシル君の背後には不機嫌そうに睨に目の王さまと、ルシル君に撫でられた箇所に両手を置いて嬉しそうにしてるユーリの姿。

「じゃあ、そろそろ行きましょうか。・・・それでは皆さん! 本当にありがとうございました! この御恩、決して忘れません!」

「お邪魔しました~❤」

「「「「お世話になりました!」」」」

「さようなら、またいつか・・・!」

「バイバーイ♪ ほら、ユーリも手を振って! バイバーイ!」

「バ、バイバーイ・・・!・・・あぅ、恥ずかしいですぅ・・・」

「さらばっ!であります!」

「御機嫌よう」

「ふん。・・・さらばだ」

ホンマにあっさりと、拍子抜けするくらい簡単に・・・、そやけどまたいつでも逢えるって雰囲気でお別れした。そのおかげもあって、わたしらにはお別れの悲しみなんてなくて、また逢おうって前向きなお別れが出来た。そう思う。
こうして、砕け得ぬ闇事件、って名づけられた事件は・・・終わりを迎えることが出来ました。

 
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