魔法少女リリカルなのは ~優しき仮面をつけし破壊者~
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StrikerS編
81話:翠屋で一服 あれ?何その表情?
前書き
皆様、お疲れ様です。十日ぶりの更新でようやく最新話です。
しかしまたもや学校の中間考査一週間前。今回は積分がヤバそうな感じなので、次回はいつになるやら……
「そいじゃあ、今回の任務の概要説明に入る」
「「「「はい!」」」」
場所を外からコテージの中に移して、それぞれ手荷物を置いて、今は広めのリビングに集合している。
「捜索範囲はここ、海鳴市の市街地全域。反応があったのが、こことここと…ここ」
「移動してますね…」
「そう。誰かが持って移動しているか、独立して動いているかはまだわからないけど…」
「ロストロギアなのは確かだが、その危険性は未だわからず。仮にレリックでも、魔力保有者がほとんどいない地球(ここ)じゃ、暴走する危険性はほぼゼロだ」
しかし仮にこの世界の誰かが保有している場合が、現状あまりよくない状況だ。「それ危険物ですよ」と言って、簡単に渡して貰えれば楽なんだが、世の中そう甘くはないのが現実だ。
「それでも、相手はロストロギア。場所も市街地。油断せずに、しっかり捜索していこう」
「それじゃ、それぞれの分隊に別れて出発。歩きながら、探索魔法で探しながらサーチャー設置を頼む」
「「「「はい」」」」
さて、これで俺は現場指揮から外れてコテージに残れば、完璧! なのはからの脅威はこれで去っ―――
『士君はスターズの方に入ってな』
「なっ!? はやて、んなご無体なことをなさるのか!? お主俺に死ねと申すのか!?」
『後でこちらに被害を受けないようにする為や、堪忍な』
「畜生! こうなればここから逃げおうせて―――」
「(グワシッ)どこに行こうって言うのかな?」
「ごめんなさいごめんなさい本当にごめんなさいだからアイアンクロー止めてぇぇぇ!!」
―――と、まぁあれやこれやで……
「リイン、久しぶりの海鳴の街はどう?」
「うーん……えへへ、やっぱり懐かしいです。なのはさんは?」
「私は懐かしいってより、『あれ? 仕事中なのに帰って来ちゃった』みたいな感じ」
「仕事のやり過ぎで仕事中毒になるんじゃねぇぞ?」
「それ士君が言う?」
それを言われると何も言い返せないです…… これ以上なのはと会話を続けると逆にツッコまれると判断した俺は、気晴らしにスバル達の方に念話を繋いでみた。
[スバル、ティアナ。そっちはどうだ?]
[あ、はい。クロスミラージュにはまだ反応はありません]
[了解した。で、街の様子を見た感想とか、どうだ?]
[そうですね…本当にミッドの外れと変わんない感じで……]
[服装とかもあんまり変わりがなくて、私は好きですよ!]
どこか感心したように言うティアナと嬉しそうなスバルに、そんなもんかと思う。
俺達がミッド住みになる前に何度かミッドを探索したり歩き回ったり、俺がバイクでツーリングしたりした際も、同じような感想を言い合ったのをよく覚えてる。馴染むのが早かったのも、そのおかげだろう。
[あっ、つ、士さん! アイス屋さんがあるんですが…!]
[ちょ、スバル止めなさいって…!]
[ん? あぁ、そんなに食べたきゃ後で奢ってやるよ]
[え、いいんですか!?]
[あぁ。その代わり給料からさっ引くぞ]
[えぇ~!?]
[冗談だ]
はっはっは、と笑い声を聞かせてから、小言を言われる前に念話を切った。
まぁ、どうせ翠屋に寄るんだろうし、甘いもんが食いたきゃその時奢ってやろう。
数時間後、依頼主である聖王教会本部から連絡があり、今探しているロストロギアは輸送中に落とした物で、危険性はないそうだ。
とりあえず一通りの探索を終え、サーチャーも設置した俺達は、分隊毎に集合してから、スターズと俺はフェイトに車で拾ってもらうことになった。
「うーん……でも、手ぶらで帰るのもあれかな…」
そう呟いたなのはは、携帯を取り出し番号を入力していく。おそらく翠屋か桃子さんの番号だろう。
全部入力し終えたのか、今度は画面から目を外してこちらを見てくる。もう逃げないよ、という意味を込め、俺は両手を挙げて降参の意を示す。
俺の行動の意をくんだのか、なのははにっこりと笑った後に通話ボタンを押した。
「……あ、お母さん? なのはです」
数秒した後、電話が繋がったのかなのはは会話を始めた。どうやら桃子さんが取ったようだ。
しかし側にいたスバルとティアナは「え…?」と声を漏らし、驚いた様子だった。そんなに驚くことだろうか。
ふとなのはの方に視線を移すと、ケーキの予約をしながらこっちをチラチラ見ていた。そんなに警戒せずとも、もう逃げねぇっていうのに……
すると突然なのはがこちらに向かって手招きをした。こっちにいるのは俺とスバル、ティアナの三人だけ。
当然手招きの対象は俺なんだろうが、とりあえず自分の顔指差して確認を取ると、なのはは頷いて近くまでやってきた。
残り数歩程の距離まで来ると、なのはは未だ通話中の携帯を差し出してきた。はぁ、やっぱりこうなるか。と思いつつ、素直に携帯を受け取って耳に当てた。
「もしm―――」
『士君!? 本当に士君よね!? 今までなんで帰って来なかったの!? 体調でも悪かったの!? 体大丈夫!? 大きな怪我とかしてない!? まさか、また攫われたり してないわよね!?』
携帯のスピーカーから聞こえてきたのは、確かに桃子さんの声だったのだが……その声が大きすぎた。その大きさにびっくりして思わず耳から離してしまった。
後ろからは「うわっ…」という声が聞こえた。おそらく桃子さんの声が聞こえたのだろう。小さいながら、なのはの笑い声も聞こえる。
とりあえず、もっかい携帯を耳につけて……
「今までのことは説明しますし、謝ります。ですから―――せめて『もしもし』だけでも最後まで言わせてくださいよ、桃子さん」
桃子さんに諸々の事情を簡潔に説明した後、とりあえず電話を切りなのは達と一緒に翠屋を目指した。
途中アイス屋が一軒あったのだが、スバルもティアナも騒ぐことなく静かにしていた。アイス食いたかったんじゃねぇのか?
そんなこんなで、早くも翠屋に着いてしまった。はぁ~…憂鬱だ。
「お母さん、ただいま~」
「なのは!おかえり!」
そんな俺の心境を知ってか知らずか、真っ先に翠屋に入っていくなのは。すぐに出迎えたのは勿論桃子さんだ。
横に並ぶスバルとティアナは、またも驚愕の表情を浮かべていた。多分桃子さんの見た目に驚いているのだろう。いつもながら、驚く若さだ。四年経ってもあまり変わってないのだから。
「桃子さん、お久しぶりです~!」
「わぁ、リインちゃん! 久しぶり~! それに……」
「…ただいまです、桃子さん」
「ふふ…おかえり、士君」
少し控えめに言うと、桃子さんは嬉しそうに笑って返してくれた。その笑顔に俺も思わず笑顔になる。
すると翠屋の厨房の方から、エプロン姿の人が二人現れた。なのはの父の士郎さんと、姉の美由希さんだ。
「お、なのは! それに士君も、帰ってきたな」
「おかえり、なのは、士君」
「お父さん、お姉ちゃん!」
「お久しぶりです。士郎さん、美由希さん」
なのはと二人して呼ぶと、二人共嬉しそうな表情で迎えてくれた。
そういえば、と後ろを振り返ると、そこには完全に呆けているスバルとティアナが。
「なのは、二人共ぼうっとしてる…」
「あ、そっか。この子達、私の生徒」
「おぉ。こんにちは、いらっしゃい」
「は、はい…!」
「お邪魔します…」
士郎さんの声でようやく我に返った二人は、慌てた様子で返事をする。
端ではなのはが桃子さんに席を借りていいか尋ねていた。周りを見ても客の姿は見当たらなく、どの席も空いていた。どうやらいいタイミングで来たみたいだ。
「お茶でも飲んで、休憩して行ってね。え~っと…」
「あ、スバル・ナカジマです!」
「ティアナ・ランスターです」
「スバルちゃんに、ティアナちゃん」
なのはとの会話の途中の桃子さんに視線を向けられ、すぐに自分の名前を言う二人。それを聞いた桃子さんは、なんだか楽しそうだ。
「二人共、コーヒーとか紅茶とか、いけるかい?」
「あ、はい…」
「どっちも好きです!」
「リインちゃんは、アーモンドココアよね~」
「はいです~♪」
士郎さんの言葉に答えるスバル達。その傍らでは、桃子さんとリインが楽しそうに話していた。
因みに、アーモンドココアとはリインが翠屋で決まって頼む、かなり甘めの飲み物だ。リインは基本苦いものは苦手だからな。
その後なのはがテーブル席を確保して俺達を呼んできた。俺達はすぐにそこへ向かい、テーブルに座る。
並びは奥からなのは、リイン、俺。向かいにスバル、ティアナの順だ。
「お仕事中だから、疲れの取れるミルクティーね」
「ありがとうございます」
「いただきます」
「それから、士君にはいつもの」
「どもです」
いつもの、というのは例の士郎さんお手製のコーヒーのことだ。以前カオルが飲んで「美味い」と称した、翠屋の知る人ぞ知る看板メニューだ。
桃子さんからコーヒーカップを受け取って、一口飲む。……うん、やっぱりこの味は変わらないな。多分俺がいれてもこの味は出ない。
コーヒーの味に懐かしさを覚えていると、あることに気づいたなのはが声をかけてきた。
「あれ? 士君、前は砂糖入れてなかった?」
「ん、そうだな。よく覚えてたな?」
あはは、まぁね。と言ってなのはは少し恥ずかしそうに頬をかいた。
まぁ、確かにミッドに来る前はだいたい一口目を飲んだ後、その日の好みで砂糖を入れていたりしていた。が、最近はもう必要なくなった。
「あっちで散々淹れたり淹れられたりすりゃぁ、嫌でも苦いのに慣れるさ」
六課に出向前の『特別対策部隊』では、仕事中にコーヒーを飲むことが主流だった。勿論その他の飲み物もOKだったが。
その時大体は自分で淹れたりしていたが、これがまた奥が深い。かのハードボイルドなおやっさんも、形から入る為とは言え淹れ方に拘っていた訳だ。
というか…時々来る〝あの人〟のコーヒーがめちゃくちゃマズいんだよ。だからなるべく自分で淹れるようにしているんだ。
……え? 〝あの人〟って誰かって? それは……本人の名誉の為に言わないでおこう。
「へぇ…士君も遂に、自分でコーヒーを淹れるようになったか……。なら、今度時間がある時に美味しいコーヒーの淹れ方のコツを教えてあげよう」
「ほ、ほんとですか!?」
「ただし、本当に時間がある時に帰って来た場合に限るけど」
「うぐっ…そ、それを言われたら……」
もう何も言い返せないです……
苦い表情でそう思っていることがバレたのか、士郎さんは「冗談だよ」と笑った。
その後なのはや俺のミッドでの評判をスバル達から聞かされたり、士郎さんの自慢の新作をいただいたり、翠屋で探査の疲れを大いに癒やした。
途中用を足しに席を立った。しかしなんと言うか……俺が陸戦魔導師の憧れになっていたとは、驚きだな。なんかちょっと複雑だ。
「あ、士君」
「ん? 何ですか、美由希さん」
翠屋のお手洗いから出た辺りで、丁度箱詰めまで終わったケーキを持った美由希さんと出会った。27歳となった現在も、彼氏はいないそうだ。
「今失礼なこと考えてなかった?」
「そんな滅相もない。相変わらず綺麗だな~って思っただけですよ」
勘がいいのも相変わらずで。
とりあえず美由希さんからケーキを受け取り、席へ向かおうとするが、美由希さんが何やら俺の顔を覗き込んできた。
「な、なんでしょう…?」
「う~ん……なんか士君、この四年ぐらい会わなかっただけで随分とカッコよくなったな~、なんて思ってさ」
「はぁ……」
そうだろうか。なのは達にはそんなこと言われた覚えはないし、アリサに会った時だって言われなかったから、なんか実感がないな……
そう思っていると、品定めが終わったのかうんうんと頷きながら美由希さんは顔を離した。
「これなら、私の旦那さん候補に入れるね」
「………はい…?」
この御人、今なんと仰りましたかな?ちょっと聞き間違えたかな?
旦那さん候補? え、どういうこと? なにそれ、怖い。
「美由希さん、冗談は止めてくださいよ?」
「あれ、バレちゃった? いや~、我ながら迫真の演技だと思ったんだけどな~」
「はぁ、ほんと止めてくださいよ」
若干本気かと思っちゃいましたよ。おぉ~、怖い怖い。
「というか、俺と美由希さんじゃ釣り合わないじゃないですか」
「……それは年齢的に、ってこと?」
「そんなバカな。ビジュアル的にですよ」
女性に対して年齢を絡めるのはタブーだってことは、とっくの昔に承知してますよ。って、なんですか? そんなむっとした表情しちゃって。
「えっと……俺、何か癇に障ること言いましたか?」
「べっつに~」
美由希さんに疑問を投げかけるが、彼女は表情を変えずにそのまま厨房の方へと行ってしまった。一体何だったのだろう? 考えてもわからんな。
「…………」
その時、ある双眸が俺の姿をじっと捉えていたのだが、俺はそれに気づくことができなかった。
後書き
いやはや、この十日……いや、最新話を上げるまでに1ヶ月はかかってるかな? そんな期間の間に色々なことがありましたね。
とりあえず『つぶやき』でも書いたように、作者の受験は終わりました。とりあえず一安心です。
そしてドライブですが、タイプワイルド遂に出ましたね。パワー重視の姿。フォームチェンジの感じはフォーゼと似ているような気がしますね。
そして劇場版。段々と内容が明らかになっていく中、話題になったのがメカ戦極さん。本人ではないようですが、さすが戦極さん。そんなんでも面白い。
ドライブでは何気にベルトさんが大ピンチですね。予告ラストのカーチェイスは久々に普通の紘太らしい感じが出てて面白そうですね。
今後の展開も気になりますが、リアルでは来年への準備が忙しくなりそうで不安な今日この頃。
とりあえずは更新を続けていきます。完結はさせたいですし。
ではでは、また次の機会に。
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