フェアリーテイルの終わり方
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終幕 拝啓、私の妹
1幕
前書き
妹 に 送る テガミ
フェイリオ・メル・マータ様
前略、お元気ですか……って聞くのも何だかおかしいね。
私は元気でやってます。最初は16歳の体の使い方が分からなくて、よく転んだりバランス崩したりしてたんだけど、それもやっと落ち着いて、今ではルドガーに介助してもらってだけど、まっすぐ歩けるようになったんだよ!
記念すべき初外出は服屋でした。レイアとエリーゼも来てくれたんだー。みんなでこの体に合う服探したの。何時間も試着試着でタイヘンだったよ~。
あ、そうそう服といえば! フェイ! あなたの部屋に行ったけど、クローゼットの中身制服と下着だけってどういうこと!? 軽く度肝抜かれたよ。あなた一体どんな私生活送ってたわけ? せめてパジャマと外出着くらいは一着でいいから持ってなさいよ。
フェイの部屋にお邪魔したついでに、荷物の整理させてもらったね。
断りもなくごめん。政府が用意した部屋だっていうからつつかないほうがいいかと思ったけど、そしたら部屋の中の物全部押収されるって『ルナ』さんからタレコミがあったから、超特急でいくつかの荷物は救い出したよ。ふう。
――今でもまだフェイの体には慣れないな。視線は高いし、手足は一気に伸びて自分でも縮尺が分かんないし、何より周りが私を大人として扱うし!
寝るのも一人、ルドガーもユリウスも平気で留守番任せるし。
自分でもつい幼児料金で切符買いかけて慌てて学生料金買い直したり。もー大変! 子ども扱いしないでー、って言えてた自分が懐かしいよ。今は思い切り子ども扱いされたい……
あ、これ、ルドガーにはオフレコね。この外見で甘やかされるとお互い変な気分になりかねないから。
……うん。分かってる。ルドガーはエルたちのパパと同じ人だって。体が変わって、トシが近づいても血の繋がりは変わんないって。
だから、ルドガーへのキモチ、きっとイケナイコトだって分かってる。
それでも、フェイがくれたこの体のおかげで、ルドガーにちょっとだけ近づけちゃったから。ルドガーに「女の子」として見てもらえるようになれたから。
やってみるよ。やれるとこまで。
何も分からないまま世界に飛び出すのは恥ずかしいから、せめて大学までは卒業しようと思います。せっかくのフェイの体なんだもん、勉強の続き、いっぱいしてあげる。青春の続きもね☆
卒業後の進路は具体的に決めてない。
学生時代にゆっくり考えなさい、ってユリウスも言ってくれたし、うん、ゆーっくり考える。私にとっては、大事な妹の体をどう使うかだもん。
あ、そろそろ時間だ。
実は今日、ほんっとーに久しぶりにルドガーとユリウスのお休みが重なってね。みんなで集まる約束してるんだ~♪
ルドガーも呼んでることだし、ちょっと行ってくるね。
追伸
私は、私の世界を創るよ。
あなたのたった一人のお姉ちゃん、エル・メル・マータより
「エル~。準備できたか?」
部屋の外から聞こえるルドガーの声。ああ愛しいな、と留意なく思えるのは、体が大人になったからか。
エルは書き上げた手紙を畳んで封筒に入れて封をし、デスクの抽斗を開け、今までの手紙でぎっしりのその中に手紙を放り込んだ。
そして、ドアの前に立つ。
リビングで待つルドガーが、新しい服をどう褒めてくれるか心弾ませながら。
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