本気になっていく恋
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第二章
第二章
「わかりました」
「ああ、それで頼むな」
「お部屋はここでいいでしょうか」
女の子は憮然とした顔で部屋も決めていく。そうしてだった。
暫くして店に二人の女の子が来た。一人はだ。
明るい顔をした小柄な女の子だ。胸の小ささが目立つが顔立ちは可愛い。眉は小さく大きな目をしていて長い髪を左でくくっている。そして左右に垂らしている髪をカールにしている。
その娘は青いジーンズに黒いタンクトップというラフな格好だ。その格好の娘がまず挨拶をしてきた。
「やっほーーー、来たよ」
「ああ、来たか」
「うん。あんたも一人連れて来たのね」
「ああ、こいつな」
友人は笑顔で右手の親指で隣にいる匠馬を指差した。カウンターの前で明るく話す。BGMは野球中継の解説である。そこでまた一点入った。
するとだ。女の子の顔がさらに不機嫌になった。目が怒っている。
その女の子はそれを見てだ。困った顔で言った。
「あちゃーーーー、横浜今日もまずいわね」
「あのさ、気持ちはわかるけれどさ」
「はい、わかってます」
カウンターの女の子は友人とその小柄な女の子の言葉に応える。憮然なままでだ。
「勝つこともありますから」
「ええ、だからね」
「部屋案内してくれよ」
「わかりました」
その憮然とした女の子に案内されて明るい白いカウンターからあえて暗くさせたカラオケボックスに入った。テレビもあればマイクもある。テーブルの上には曲のリストもある。
そこに四人で座る。それからだった。
「とりあえずな」
「ああ」
「お楽しみメニューは頼まないようにしような」
友人はこう自分の隣に座っている匠馬に言った。向かい側には女の子達がいる。
「今日はな」
「そうだな。ベイスターズが負けてるからな」
「絶対に酒に合わないものが出て来るからな」
だからだというのである。
「それはいいな」
「ああ、わかってるさ」
匠馬も頷いてだ。それで決まったこうしてその合コンとなった。
彼の前にいるのはだ。背はあまり高くなく黒い髪を伸ばした女の子だ。すらりとした身体で顔ははっきりとした少しアーモンド型の目にはっきりとした顔をしている。額は切り揃えた前髪で覆っている。
彼女は白いブラウスと青いズボンだ。その彼女が彼の前にいた。
その彼女がだ。こう名乗ってきた。
「朝倉麻美っていうの」
「朝倉さんっていうんだ」
「麻美でいいわよ」
笑ってこう言うのだった。
「麻美でね」
「私は麻美ぽんって呼んでるけれどね」
彼女の友人のあの派手な娘が笑って言ってきた。
「ああ、私は如月地和っていうの」
「へえ、地和っていうのか」
「そうよ、あんたの名前は?」
「俺は見剣仁ってんだ」
友人は笑ってこう名乗った。紛れもなくその本名である。
「どうだよ、いい名前だよ」
「見剣っていうのね」
「ああ、どうだよこの名前」
「何か物騒にも聞こえるけれどね」
こう返す地和だった。
「あんたの名前は下の名前しか知らなかったけれどね」
「だよな。俺もちいのこと仇名でしか知らなかったしな」
「わたしも。仁ちゃんだしね」
明るく返す地和だった。どうやら二人はそうした仲のいい友人同士らしい。それは横で話を聞いていた匠馬にもよくわかることだった。
そしてだ。話しているうちに色々とメニューが来た。点心にラーメンである。それと酒だ。
「はい、どうぞ」
「ああ、どうも」
あのベイスターズの帽子の女の子だ。相変わらず憮然とした顔でだ。そのうえで台車に乗せたメニューを持って来た。そうして次々とそのメニューをテーブルの上に運んできたのである。
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