ユキアンのネタ倉庫 ハイスクールD×D
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ハイスクールプリニーッス 2
「攻撃力高すぎッス!!インフレ反対ッス!!」
目の前に迫ってくるフェンリルの牙をヘッドスライディングで躱してお腹にナイフを突き刺す。跳躍されて躱され、毛が多少切れただけに終わる。
「イッセーもぼやっとしてないで突っ込むッスよ」
「いやいやいや、オレの力量であれを捌くのは無理だって!?」
「何事も慣れッス。プリニーに遅れを取ったら、オイラ達の世界じゃ一生引きこもりを覚悟するッスよ。突撃ッスよ!!お嬢をやらせるわけにはいかないんッスから!!」
牽制用のナイフを投げながらフェンリルに接近して足を狩りにいく。再び跳躍されて逃げられる。ああ、もう、速い。
「イッセー、突っ込まないならオイラの足を強化するッス。追い付けたらオイラがなんとかするッス」
「お、おう」
倍化の力を譲渡してもらい、何とか追い付ける様になる。
「往生するッス!!」
右前足に微かに傷を負わせ、続けて牙の一本を叩き折る。だが、同時にATK2500の愛用ナイフが砕け散った。
「ちょっ!?マジッスか!?」
転がって逃げながら予備のナイフを取り出す。強化途中のためATKは1700しかない。2500ですら傷をつけるのがやっとだと言うのに、かなり追い込まれた。これは最終手段を取らねばならないか?カバンを覗いてアレが入っているのを確認する。オレ達プリニーを神の兵器に改造する究極防具、宇宙筋肉。
「……ペンギンごときが息子に傷を負わせるだと?」
「ペンギンじゃないッス、プリニーッス!!これでも他の世界で前世は魔王やってたんッスよ!!フェンリルごときにビビってられないッス」
実際、前世のオレならこの程度のフェンリルごときに苦戦もせずに倒せたはずだ。ちくしょう、正月だからってもちなんて食うんじゃなかった。
「おもしろい存在だが、ここで狩っておかねばならないようだ」
ロキがオレを敵と認識した。ふぅ、やるしかないな。まあ、そこそこ楽しいプリニー生だったな。カバンから宇宙筋肉を取り出して装備する。
「イッセー、オイラを持ち上げるッス」
「何か秘策があるのか?」
「オイラの切り札を切るッス。確実にフェンリルだけはやってやるッス」
「どうすればいい」
「倍化の力で、ゲームで言うオイラのHPを強化するッス。そしてオイラをフェンリルに向かって投げつけるだけで良いッス。あとは、オイラがなんとかするッス」
「分かった。やってみる」
倍化の力でHPが増えたのが感覚的に分かる。僅かなSPを使ってギガヒールで完全にHPを回復させる。
「行くぞ、プリニー!!」
「逝くッスよ!!」
イッセーがオレを持ち上げて振りかぶる。そして、投げ出される直前に告げる。
「イッセー、お嬢の事、頼んだッスよ」
「えっ?」
投擲されたオレは片っ端の武器を取り出して投げつけてフェンリルとロキの動きを封じる。そして、フェンリルの牙を身をよじって、左手一本を犠牲にする。最初から左手を切り捨てるつもりだったのでHPはそこまで減っていない。そうだ、最後にちゃんと言っておかないとな。
「お嬢、今まで楽しかったッスよ。さよならッス!!」
そしてフェンリルとロキの中間地点に落ちたオレは、体内から大爆発を起こした。
side リアス
「お嬢、今まで楽しかったッスよ。さよならッス!!」
イッセーに投げられたプリニーがそう叫び、地面に落ちた途端大爆発を起こす。一体、何が起こったのか理解したくなかった。あのプリニーが、私の大切な家族が死んだのだ。
「がはっ、我が息子がバラバラになるとは!?」
爆煙が晴れた先には原型を留めていないフェンリルの死体とボロボロの姿で血を吐いているロキの姿が見える。
「くっ、ここは退かせてもらおう。次はこうはいかんぞ、あのペンギンはもういないのだからな!!」
そう言ってロキは転移で逃げていった。私の眷属達よりも強かったプリニーが居なくなり、次に襲われたらどうすることもできない。何より、プリニーは私達の戦闘の中心になっていた存在だ。戦場を走り回って、適切にフォローしてくれる存在で、戦闘以外でも世話になっていて。
考えれば考える程、プリニーは私達の事をいつも支えてくれていたのだと言う事を実感してしまう。初めて出会ったあの時から。プリニーはずっと私の傍に居てくれた。
そのプリニーが居なくなってしまった。そう理解してしまうと、自然と涙が零れる。
「うぅ、プリニー。傍に居なさいよ、プリニー!!」
「呼んだッスか?」
目の前に転移の魔法陣を潜ってプリニーが姿を現す。
「「「「「「えっ?」」」」」」
周りの皆もプリニーの事を悲しもうとしていたのだが、目の前に元気そうなプリニーが現れたおかげで、口をぽかんと開けている。私は無言でプリニーを触って確かめる。子供の頃にいたずらして破れて補修した部分もある。私が知っているプリニーだ。
とりあえず、持ち上げて遠くに投げる。
「ちょっ、お嬢、待つッス!?」
地面に落ちたプリニーは先程よりは小さい物の、爆発を起こして散っていく。
「来なさい、プリニー」
「酷いッスよ、お嬢。かなり痛いんッスから」
私が呼ぶとプリニーが再び魔法陣を潜って現れる。
「この、馬鹿!!あんな遺言みたいなことを言って、本当に死んだと思ったじゃない!!」
「いや、オイラも死ぬつもりだったんッスけどね、ちょっとオイラの出身世界の異次元っぽい所に流れ着いて治療して貰ったッス。ぼったくり価格ッスけど。お嬢に投げられた分を合わせてオイラの貯金が亡くなったッス」
カバンから財布を取り出して、逆さにして中身が無い事をアピールして涙を流すプリニーにちょっとだけ罪悪感が芽生える。
「まあ、生前の倉庫とか金庫とかの利用が出来たんで円はともかくHellは大量にあるんッスけどね」
そう言って別の財布から見た事もない硬貨を大量に取り出す。と言うかどんどん出て来て山を築き始めている。
「ちょっと、ストップストップ。分かったから片付けなさい」
「了解ッス」
財布に見た事もない硬貨を戻していくプリニーを待つ間に聞き出したい事をまとめていく。
「プリニー、色々とその倉庫とか金庫から引き出してきているみたいだけど、なんですぐに戻って来なかったのよ」
「最初はすぐに戻ろうとしたんッスけど、オイラが辿り着いた場所に次元の渡し人って言う他の世界に転移させてくれる人が居なかったんッス。おかげで半日程待ちぼうけッス。お嬢に呼んで貰ってようやく帰って来れたッス」
「それじゃあ、どうやって金庫とか倉庫とかを維持してるのよ」
「さあ?詳しい事は全然知らないッス。企業秘密らしいッス。オイラ達は安心して利用出来てたッスから余計な詮索はしなかったッス。利用出来なくなると色々と面倒ッスから」
「ふ〜ん、そうなの。あれ、確か貴方、盗賊魔王って名乗ってなかったかしら?」
「そうッスよ。戦闘中に相手の武器とか防具を盗んでとんずらするッス。格上程良いもの持ってるッスから毎回命がけッス」
「何やってんのよ」
「いや、歴史に名を残そうと頑張ってたんッスよ。もうちょっとで名前を残せそうだったんッスけど、正月にもちをのどに詰まらせてころっと逝っちゃったッス。プリニーになってから一番最初にやったことは笑い転がる事だったッス」
「もちをのどに詰まらせて死ぬ魔王って」
「魔王クラスが死ぬのなんて魔王クラスでの殺し合いか、窒息が基本ッス。クリチェフスコイなんて魔界温泉まんじゅうをのどに詰まらせて死んでるッス。他にもガムとか蜜柑とかをのどに詰まらせてるッス。魔王の死因の7割位がそんな感じッス」
「それで良いのかよ魔王!?」
「魔王クラスになると殆どの攻撃がかすり傷にもならないッス。フェンリルの牙も効かないのとかごろごろ居るッス。だから逆に窒息でよく死ぬッス。魔王も生物ッスから、食べ物と空気は必要ッス。やろうと思えば宇宙にも行けるッスけど。逆に餓死は聞いた事が無いッス」
「話がそれてきたわね。確認するけど、あとどれだけ自爆が出来るの?」
「ざっと5億ッス」
……ぼったくり価格で治療されるんじゃなかったのかしら?
「これでも盗賊稼業が長かったッスから。部下も定住地も持たずにあっちへふらふらこっちへふらふら、風の吹くまま気の向くまま、自由な一人旅ッス。たまに1年位街に滞在してる時もあるッスけど」
「盗賊稼業が長かったって、何歳なのよ」
「ええっと、確か20代後半で魔族化して、500年程は冒険者とかとレジャーハンターみたいな事をして、それから2000年程魔王カンダタ様の元に仕えてて、カンダタ様が超魔王バールに殺されてから盗賊稼業を始めて3000年程経って魔王を名乗り始めて、2500年程経った後にもちをのどに詰まらせて死んで、プリニー養成所でヴァルバトーゼ閣下の元で50年程研修を受けて、出荷待ちの所を異次元の狭間に落ちて、なんとか異次元の狭間から抜け出してお嬢の傍に落ちたッス」
「ざっと計算しても8000年は生きてるな。妙に戦闘経験が豊富だと思ったらその所為か」
「儂としては異世界の方に興味があるのう」
今まで会話に参加していなかったアザゼルとオーディン様がプリニーの話に興味を示す。
「暇になったら時間が許す限りは話しても良いッスよ。平日はお嬢も学校に行ってるッスから、一通りの仕事を済ませれば暇ッスから」
「それは良い。その仕事もこちらから人員を派遣すれば省けるな」
「まあ、そうなるッスけど、政治面で面倒な事になるッスから上には通しておいてくださいっす」
「それ位は任せておけ」
勝手に話が進んでいるけど、仕事が無ければ自由にして良いと言ってしまっているからどうする事も出来ないわね。まあそれで私が損をする訳でもないけど、私の知らないプリニーを知る事になるのね。
その後、解散する事になった私達は家に戻り、自室でプリニーを呼び出す。
「どうかしたッスか?」
私は何も言わずにプリニーを抱きしめてベッドに倒れ込む。
「お嬢?」
「本気で心配したんだから」
抱きしめる力を強くして呟く。
「あんな遺言みたいなことを言って、目の前で爆発して、本当に悲しかったんだから」
あの時の事を思い出して、また涙が零れる。
「申し訳ないッス。オイラの力不足が原因ッス。でも、もう自爆なんてしなくても大丈夫な様に色々と持って来たッス。安心するッスよ。お嬢は絶対に守るッス」
「本当に?」
「大丈夫ッスよ。オイラは絶対にお嬢を守るッスよ。お嬢が要らないって言う日まで、傍に居て守るッスよ」
「なら、ずっと傍に居なさい。私が死ぬまで」
「了解ッス。オイラの命、お嬢に全部預けるッス」
その言葉を聞いて安心出来たのか、急に睡魔が襲ってくる。久しぶりにこのまま寝る事にしましょう。
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