Sopravvivere
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「E 'inutile, Silvana」
前書き
前回主人公視点でしたが今回からは、変えようと思います。
タイトルがイタリア語でわかんねえ!とかいうツッコミは、なしでお願いします。あの、舞台イタリアなんで・・・・はい。
(E 'inutile, Silvana=駄目だよ、シルヴァーナ)
シルヴァーナは、家を出て行く事を決意した。というか記憶の無いシルヴァーナにとってここに居ることは、かなりのストレスにもなる。それも含めてここ《バルチェリーニ家》を出る。
シルヴァーナの里親『シルヴァーノ=バルチェリーニ』にラファエーレ以外のことを素直に話してすんなり行くつもりだったが・・・・そう、すんなりは、いかなさそうだ。
「駄目に決まってるよ!それにまだ君の体は、治っていない!!」
「しかし、俺は・・・・行きたいんだ。わかってくれ。」
「わからないよ!それに君は、子供だ!14歳だよ?」
両者意見を長々と言い合う。さすがにラファエーレも呆れている。呆れすぎて居眠りをしている。・・・・シルヴァーナは、ラファエーレを頼りたくても頼れない。シルヴァーナは、ふと思った。なんでこんな悪魔(死神)と契約したのだろう、と。
「僕は、君の事が好きだ。もちろん、親だからさ。君にもしもの事とかあってほしくない。」
「・・・・あなたは、俺の本当の親ではないだろう?なぜ、そこまで心配できる?」
「血がつながっていてもいなくても・・・・僕は、君の親だ。そんな事、関係ない。」
「・・・・。」
バルチェリーニは、本当に優しい人だ。残念ながら心ないシルヴァーナには、あの感動的なセリフは、心に響かなかった。が!ただ・・・・一人、すすり泣きをしている奴がいた。
さっきまで寝ていた、でっかい体(?)をしていてそれに加え悪魔(死神)という奴だ。シルヴァーナは、驚いて奥の部屋へ走っていった。(ラファエーレを連れて。)
バタン
「おい!!ラファエーレ!!お前起きてたなら言え!ラファエーレが寝ていたから俺は・・・・」
「あいつ・・・・ヒック!なんていいやつなんだ!!ヒック!」
「・・・・お前もしゃっくりするんだな。」
「そんな事よりシルヴァーナ!あんな良い親もって幸せだな!」
「あのなぁ・・・・。悪いが俺は、親だと思っていない。なぜなら今日目覚めて今日初めて会ったからだ!!それ以前に名前すらわからない。」
「彼は、シルヴァーノ=バルチェリーニだ。」
「・・・・。」
「いやいや!!!言われても困るんですけど的な顔で俺を見んの止めてくれない?!!!」
シルヴァーナの顔は、本当にそれを言いたそうだった。
ラファエーレは、ため息をついて「わかった。」と言い、シルヴァーナの手伝いをすることになった。
「ラファエーレ、一体俺は何をすればいいんだ?」
「・・・・わからん。」
「はあ?」
「だからわかんねーっつってんだろ。それにこれは、お前の問題だ。自分でなんとかしろ。」
「・・・・役立たず悪魔」
本当にキレそうになるシルヴァーナ。しかしラファエーレの言っている事は、正しい。ラファエーレは、ただの悪魔だから、シルヴァーナの家庭の事情に関わることができない。
兎に角、夜までにバルチェリーニを説得する方法を考えなければこの家を出ることは、難しい。なんとかかんとか頭をひねって考えてみる。
「浮かばないんだが。」
「まだ一分も経ってねーぞ。」
「一分経ったぞ。」
こんな感じにくだらない会話をしているので全く方法が浮かばない。
「・・・・これだから人間は・・・・。」
「人のこと言えねえだろ、役立たず悪魔。」
「それは、傷つく。じゃなくて!!いい方法を思いついたんだよ。」
「?」
・・・・
「あっあの・・・・ちょっと話が・・・・。」
「いいよ。」
「俺が言ったとおりに、ちゃんとやれよ?シルヴァーナ。」
「・・・・。」コクッ
「どうしたんだい?」
シルヴァーナは、最後の切り札を出す。・・・・その作戦がバルチェリーニに効くかは、わからないがダメ元でやってみる。
「・・・・俺は、自分のことも、あなたの事もわからない。」
「・・・・つまり君は、僕に記憶を取り戻すために家をでると言いたいのかい?」
「シルヴァーナ、いいから続けろよ。」
「(わかっている。)付け加えると、記憶を取り戻してあなたと本当の家族になりたい。それに・・・・今の俺じゃあなたを愛せない。わかるでしょう?」
「君が言いたい事は、よくわかった。でも記憶ならここで取り戻せば・・・・」
「無理だ。知らない場所で記憶を取り戻すなんて俺には、出来ない。」
バルチェリーニに負けないぐらい話すシルヴァーナ。シルヴァーナにしては、よくやるなぁと悪魔は、他人事のように感心した。
「それでもだめだと言うなら俺は・・・・俺は・・・・死ぬしかなくなる。」
「?!!いきなり何を・・・・」
「記憶無しで生きていけ・・・・なんてそんな辛いこと俺には耐えられん。」
「・・・・そうか。」
「・・・・。」
「君がそんなに強い子だとは、思わなかったよ。シルヴァーナこっちに来てくれ。」
「?」
「・・・・シルヴァーナ。君は、僕の大切な子供だ。お願いだから命は・・・・命だけは、粗末にしないでくれよ。」
そう言いバルチェリーニは、優しくシルヴァーナを抱きしめた。シルヴァーナは、今日初めて人に抱かれたが、どこか懐かしい気持ちになった。・・・・これが愛する、そして幸せということなのか。
「さて、君の旅の手伝いをするか。」
「・・・・ありがとう。感謝するよ。」
「親だからね。」
パタン
部屋には、シルヴァーナとラファエーレの二人だけになった。
誰もいない事を確認して先ほどの話を始める。
「いやぁ~まさかシルヴァーナがあそこまで演技が上手いとはな。」
「そうか?途中心配だったんだが。」
「・・・・さすがシルヴァーナだな。」
「?どういう意味だ?」
「別に。今お前が知ることじゃない。」
「変な奴だな。」
セリフを考えたのは、ほとんどラファエーレだが、シルヴァーナの演技のうまさも加わってバルチェリーニに伝わったのだろう。
しかし・・・・バルチェリーニの言葉は、二人のセリフよりもっと伝わった。シルヴァーナの心に。・・・・バルチェリーニの思いをきちんと受け止めて・・・・彼らは、旅に出る支度をし始めた。
・・・・
バルチェリーニと過ごす初めてで、今度はいつ過ごせるかわからない夜。二人は、少しだけ話し合った。
「シルヴァーナ。今夜は、ゆっくり休んで明日準備万端で行くんだよ。」
「ありがとう。・・・・・・・・。」
「?どうしたの?」
「いいや、なんでもないよ。」
「そうか。あ、あとこれ、お金。大切に使うんだよ。」
バルチェリーニが渡した袋の中には、約五十万円ぐらいのお金が入っていた。
「?!こんなには、いらない!!もらうのが申し訳ないし!」
「お金が無くては、生きていけないから。もらってくれ。」
「・・・・もう一度聞いていいかな?」
「何をだい?」
「あなたは、俺の本当の親じゃない。なのに・・・・どうしてここまでしてくれるかが、俺には理解が出来ない。」
バルチェリーニは、にっこりと微笑んで迷うこと無く、話した。
「ちょっと長くなるけど・・・・君がまだ、多分9歳ぐらいの時。倒れている君を養子に貰ったんだ。・・・・僕は、結婚なんかしてないから子供もいないし家族もいないしだったから君が自分の子供になった時は、嬉しかった。今日の今日まで眠ったまんまだったけど。それでも良かった、生きていることには変わりないし、君が目覚める事が楽しみで仕方がなかったんだ。・・・・君にも家族がいないぶん僕が・・・・僕が沢山愛情を注いであげようって・・・・。そう思ったんだ。
僕は、血が繋がってるとか繋がってないとか関係ない。だから僕の大切な子供に尽くすのさ。・・・・わかってくれたかな?」
「・・・・。」
「まあ、今分からなくても君に大切な人が出来れば多分わかるよ。さて、明日は早いんだろう?もう寝よう。体を冷やさないようにしなよ?・・・・お休み。」
シルヴァーナのおでこにかるくキスをして彼は、部屋を出た。・・・・ランプだけの薄暗い部屋の中でシルヴァーナは一人、自分の記憶の事とバルチェリーニが話してくれた事を考えていた。
「愛情・・・・か。俺にもわかる日が来るのだろうか?」
今わからなくても・・・・バルチェリーニの言葉が頭の中でグルグルまわった。
「・・・・お休み。」
パタン
・・・・
チュンチュン・・・・
シルヴァーナとラファエーレが旅立つ朝がきた。シルヴァーナは、ラファエーレを起こし、荷物を持って外へ出た。バルチェリーニにお別れの挨拶をしようか悩んだけどバルチェリーニから来たので言う事にした。
「あの・・・・その・・・・なんて言えばいいのだろうか。」
「そんなに考えなくてもいいんだよ?そうそう、お弁当作ったから持って行ってね。お腹すいたら途中で食べなさい。」
「わざわざお弁当まで・・・・。」
「僕が作ってあげたかっただけだから。・・・・寂しくなるけどまたすぐに会える。元気で帰ってきてくれよ?」
「ああ、本当にありがとう。・・・・行ってきます・・・・『父さん』。」
「・・・・!うん。行ってらっしゃい。」
シルヴァーナは、バルチェリーニに手を振って進む道だけを見た。寂しいけど旅に出るドキドキもある。ラファエーレとシルヴァーナは、記憶を取り戻すために二人で歩み始めた。
「よし。俺は、バルチェリーニの変わりにお前を絶対に守ってやるからな。」
「・・・・ありがたいが・・・・鼻水拭いてくれないか?セリフが台無し。ほら。」
「ありがと。ジーン!!!!」
シルヴァーナは、記憶を取り戻すことが出来るのだろうか?そして二人の運命は、どうなるのだろうか?・・・・これからどうなるかわからないけどそこは、風にでも任せることにしよう。
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