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聖魔弾の銃剣龍神皇帝と戦姫

作者:黒鐡
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第1巻
  神国攻撃命令

ブリューヌ王国にて、唯一プトレマイオス神国と親しいマスハスは国内の状況を見るために動き回っていた。知り合いの貴族達からの助力するためでもあるが、自分たちの安心のためならば神国と手を借りる事にもなっていた。テナルディエ公爵の耳に届いたのは親しい貴族からである。豪壮な造りの公爵の館に、客として訪れたその貴族と食事を共にした後、酒を飲みながら話をしているとその話題となったのである。特にディナントというキーワードを聞いた直後に、公爵は顔をしかめたらしい。

「あれは酷い戦であった。他の者達がことごとく愚かで不甲斐ないために、我が子までが敗戦の将の烙印を押される事になったわ」

公爵に今年で42になる、見事なヒゲを生やし豪奢な服装に包まれた大柄な体躯はよく鍛えられている証拠である。30代の頃に隣国ザクスタンとの戦でも武勲をもらい、才能は宮廷でも発揮されてテナルディエ家が国王を黙らせるほどの力をという権勢を手に入れた。

「それで?そのディナントが、どうかしたのか?」

「ディナント平原で戦をする時に、プトレマイオス神国からの者がブリューヌの味方をしていたそうなのです。今は神国には不在であると聞いております、確かヴォルン大公と言っておりましたな」

「ヴォルン大公?聞いたことがない名前だな、しかも大公というのは王の側近ではないか!」

プトレマイオス神国という名だけでも聞くのはとても嫌な国である、我が国がプトレマイオス神国を潰そうとした時には神の鉄槌を受けたと歴史書には書いてあったな。五万の兵達が一瞬して葬られたと。

「マスハス卿は、唯一神国の者と仲が良いと聞きますし、ブリューヌ国内の民や貴族達はプトレマイオス神国に頼ろうとしていると聞いております」

テナルディエ公爵とガヌロン公爵の戦は避けられないのが分かっているが、その間にプトレマイオス神国に頼って来る民たちもいるからなのか国内の貴族達もどちらにつこうか迷っている状態。テナルディエの妻は国王の姪であり、ガヌロンの姉の夫は国王の甥だ。姉を挟んでいる分、ガヌロンの方が権勢から遠いように見えるがブリューヌの王位継承権は男性を優先するので互角である。が、中立国のプトレマイオス神国がブリューヌを治めるために領土を広げてくるかもしれないとも思っているけど、今の所野心はないと聞く。

一撃で葬った国を二度と潰すなと散々言われてきたが、今は王が不在と聞く。それとヴォルン大公も不在で、国主が不在なら神国を潰せると考えたテナルディエ公爵だった。客人が帰ったあとも、召使から地図を用意されて見ると隣接にはジスタートの国境があって見逃せない点でもあった。しばらく考えた公爵は息子を呼んだのだった。

「お呼びでしょうか、父上」

父の前に現れたザイアンは、容姿と服装も凛々しい貴公子のようだったが、顔はあまりにも無様だった。

「お前に一つやってほしい事があってな」

公爵は息子を招きよせて、テーブルに置いた地図の一点を差す。

「プトレマイオス神国は知っていると思うが、今は国主も大公も不在だと聞く。なので一万ばかりの兵士を率いて、今度こそプトレマイオス神国を滅ぼせ」

ザイアンは顔をしかめた。父の非道とも言う命令に驚くが、神国の大公と言われたヴォルンの顔を思い出す。それと同時に苛立ちを浮かび遠い国に行くのが面倒であった。

「父上のご命令とあらば、何事であれ拒みなど致しませんが、宜しければ理由をお聞かせいただけますか?」

公爵は先ほど客人から聞いた情報から話を振ったのだった。

「今現在プトレマイオス神国に王や大公は不在だ、今はブリューヌとジスタートも中立を保った国だがいつジスタートと手を組んでもおかしくない状況だ。それに神の国と言えども創造神がいなければただの国だ。従わせるのではなく、滅ぼさせた方がいいと私は思うのだ」

「なるほど。確かにプトレマイオス神国は中立ですが、いつ牙を剥くかどうかは不明です。しかし王も大公も不在である国を一万の兵を送るのは大袈裟ではないのでしょうか?」

「国とはいえ用心した事に越した事はない、五万の兵を一撃したのなら兎も角今は創造神も不在だ。国民がいるだろうし、傭兵の国とも聞く。その傭兵を我が国に取り込めば、ガヌロンに一泡できる。あとはお前と兵で好きなようにせよ」

父親のセリフに、ザイアンは喜んだのだった。ザイアン自身を侮辱したヴォルンごと滅ぼせるかもしれないからだ。騎士は一万揃えるのに時間はかかるが、相手は中立国のプトレマイオス神国だ。武器も一通り揃えてから出撃せよと言われたあとに、国王の事を聞いたが相変わらず部屋から出てこない事と良い時に王子が死んでよかったと喜んでいた父の姿。一礼した後に、早速騎士一万を揃えるための準備をしていた時に声がかかった。

「ザイアン様」

黒いローブに身を包み、フードをかぶった小柄な老人が立っていた。

「何の用だ、ドレカヴァク」

ドレカヴァクと呼ばれた老人は、腰をかがめて深々と一礼をする。何でも一万の兵を揃えてプトレマイオス神国を滅ぼすために贈り物を用意したと言う。ザイアンはドレカヴァクは占い師として数年前からテナルディエ家に仕えているがザイアンにとっては嫌っていた存在である。その嫌われた存在からザイアンに贈り物があると言われたから付いて行く、館から出て厩舎の方向へと誘導する。厩舎を迂回して裏手に回ったところで止まった。

「これでございます」

ドレカヴァクが皺だらけの手を持ち上げ、ザイアンに恭しく頭を垂れる。そこには、十頭の竜がいた。地竜(スロー)が八頭に飛竜(ヴィーフル)火竜(ブラーニ)が一頭ずつ。いずれも体長が八十チュートはある成竜だ。

地竜は短い手足とした巨体を誇る竜で、全身を覆う強靭な鱗は剣や槍を粉々にする武器破壊できるくらい硬く、突進力は城壁を軽く破壊するだけの攻撃力を持つ。体力・生命力も高い。飛竜は小柄ながら巨大な翼を持ち、人間を乗せて空を飛ぶのが可能であり鱗も地竜ほどではないが硬い。火竜は飛竜と同じぐらいあるが、この中では唯一息吹を吹く竜である。常に灰や炭、鉱物を食っている。

「・・・・おお」

ザイアンは生まれて初めて見る竜に、圧倒されていた。神話や御伽噺などで存在や外見と知識も頭に入っていないザイアンだったが、目にしたのはこれまでなかった事のようだ。

「調教はほぼ終えております。火竜に食べさせる物も準備済みでございますし、今日戦場に投入しても立派に働いてくれるでしょう。相手がブリューヌ領土だったら二頭くらいでしたが、相手がプトレマイオス神国と聞いて調教して来た次第でございます」

「だ、大丈夫、なのだろうな?」

「もちろんです。触れて頂ければ、お分かりになるかと」

ザイアンは躊躇ったが、初めて見る竜への好奇心と意地により恐怖に打ち勝ったので、飛竜に歩み寄る。飛竜がすっと頭を下げてきた時に、手を伸ばすと飛竜に触れた事で他の竜も触れると頭を下げてきた竜達を見て興奮し、これで勝てると思ったザイアンであった。

「・・・・気に入って頂けましたようで」

「ああ、でかしたぞ、ドレカヴァク。俺はこの飛竜を駆るとしよう、火竜は最後の最後で使わせてもらう!」

さっきまでの不機嫌が飛んだのか、ザイアンは老人に労いの言葉をかけたのだった。いったいこの竜達をどこで捕まえたのか、どうやって調教したのか、と言った事は一切思いつかなかった馬鹿であった。普通なら考えるが、ザイアンにとっては竜がいれば神国を滅ぼす事が可能だと思いこんだのだろう。

「・・・・ただ一つだけ、ご注意を」

「なんだ?」

「敵国は竜を殺せる武器を持っているかもしれませんので、竜を使う時は最大限にご注意をしてくださいませ。それと竜達は町の匂いに慣れておりませんので、町の中に留めさせるのはおやめくださいますようお願い致します」

ザイアンは、竜が山奥にいるのを知っているので、人間の放つ匂いが好みではない。それが事実かは知らないが納得は出来たが、最初に言った事が気になった。竜を殺せる武器を持っているというのは聞いたことがない、それは真実なのかは分からないが神国に行けば分かる事だろうと思い兵一万を集めながらこの戦は勝ったと思ったザイアンであった。 
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