バカとテストと白銀(ぎん)の姫君
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第二章 彼と彼女の事情
第十四話 恨みと破壊と大革命 下
前書き
これでついにBC連合との戦いが終わります。
友香さんがほとんど主役です 彼女こそが……
ところで、原題の写真集に関してだけは次の話に持ち越します。
第十四話
『友香も喜ぶといいよ。妃宮が捕虜になったんだからもう心配することは無くなったよね。』
!!!!
「今なんて言ったの!?」
じゃあ、私の目の前にいる千早さんは一体何よ!?
『だーかーら、階段から急襲掛けた奴らの内、何人かは本当に裏切ってくれたみたいなんだけどさ。降伏した振りをして油断していた妃宮を捕まえてくれた奴も居てな。策士策に溺れるって言うけどホントだね、ねぇ妃宮さん?』
何でそんな所に妃宮さんがいるの?
じゃあここにいる貴女は一体誰なの?
『疑う必要はないから。召喚獣も一緒に捕まえているんだから、他のFのやつが変装している可能性はゼロ。もし妃宮さんが友香の戦線に出てきたならそれは影武者だろうよ。じゃあ、Fクラス代表の坂本をぱっぱと殺ってくれたまえ。』
それだけを残してプツリと通信は切れた。
「友香さん?どうしたのですか?」
心配そうに声をかけてくれるあなたは妃宮さんじゃない?
そういえば、この妃宮さんは召喚獣を呼び出していない。
Fエースとしての威圧をする為にも召喚獣は呼び出しておいた方が戦況を動かすには、つまり私の抵抗を諦めさせるには合理的な判断だろう。
召喚獣、それは私たち生徒一人に一匹だけ与えられる自分のテストの点数に比例した能力値を持つものであり、召還フィールド内でのみ存在することが可能。
この定義に従った場合、根本のもとに捕らえられている妃宮さんは間違いなく本物。
なら消去法的に決まってしまうじゃない。
「友香さ……」
「黙りなさい偽物!!あなたに馴れ馴れしく名前を呼ばれる筋合いなんて無いわ!」
私の言葉に絶句する偽物、いい気味だ。
「友香さん、どうして私のことを偽物呼ばわりなどするのですか?」
些か気分を害された振りをする偽物に対して、沸き上がる感情は憎悪ばかりで情け容赦だなんてこれっぽっちもない。
偽物に偽物だと言って何が悪い。
「じゃあ、召喚獣を出して見せなさいよ。それで白黒付くよね?千早さん」
今度こそ二の句が継げないでいる偽物に私は心の中で勝利を宣言する。
「千早さんに勝負を挑みます!」
これで絶対に偽物は私に対して勝負を挑まなければならなくなった。
逃げれば敵前逃亡として失格になるのだから、そして私の行動に対して他の奴が介入してくるならば…
「妃宮さんが相手をするまでもない、俺が相手をしてやる!」
偽物確定。
「ねぇ、どうだった。あんたの素晴らしい演技で踊らされていた私は、あんたの言葉一つで心を動かされていた私は……私はあぁあぁ!!」
恥も外聞もなく叫んでいる自分は、もうだいぶ狂っているのだろう。
「旗下の全員に通達、金本班は監視で保健体育フィールドを見ておきなさい!それ以外の奴らはこの羊の皮を被った狼から潰すのよ!!」
「「「はっ!!」」」
___13:23 Dクラス____
MF、平賀の協力の下、吉井明久の活躍でBDの間の壁をぶち抜く。
___13:23 渡り廊下____
「小山!今から俺たちも援護するんだから、こっちを敵だと間違えて攻撃しないでくれよ!」
「援軍感謝するわ。でも、私を裏切ったら承知しないから!」
「「御意、我らBクラス近衛部隊、獅子奮迅の活躍をして見せましょう!」」
Bクラスの近衛部隊が渡り廊下戦線に参戦。
「なぜ近衛がこの戦線に出刃ってきている……」
「それ以上に、あの妃宮さんが妃宮さん本人じゃ無いだなんて信じられなかったよ……」
Fクラスの士気低下
S2、小山率いる主力と近衛に挟まれ壊滅状態に。
S2は浅井を始め何人かは保健体育フィールドに逃げ込むことに成功するも被害甚大。
「さぁ偽物さん、大人しく正体を見せなさい!」
{日本史 Cクラス 小山友香 298点}
S2の掃討を100点以内に完了した小山は、危機とした表情で妃宮の格好をした生徒を睨みつける。
「っく……ここまでかのぉ… 召喚!」
{日本史 Fクラス 木下秀吉 88点}
声帯模写をやめ、地のしゃべり方に戻った秀吉の姿は、妃宮の姿とはあまりにもミスマッチすぎる。
「へぇ……木下秀吉っていうの。」
「そうじゃ、お主を騙しておったのはワシじゃ、覚悟は出来ておる。」
そんなことを想いながら召喚獣を操る小山
「潔いのね、あんたは!」
{日本史 Cクラス 小山友香 298点 VS Fクラス 木下秀吉 DEAD}
その鉄出来た扇子の一振りで木下の召喚獣は消えてしまった。
「お前等!よく聞け!!お前等のやる気が著しく下がったせいで、秀吉が死んだんだぞ!いいな、この事は俺たちにとってとんでもないことだっつぅこと分かってんだろうな!!」
「「代表……」」
「敵討ちだ、野郎ども!!」
「「応よ!!」」
Fクラスの士気回復、しかしこれ以降戦線は押され気味になる。
___13:24 Bクラス_____
「今のFの戦力では今回の戦いは拙速すぎました。それが……このざまです。」
顔を俯け、掴まれている腕を振り払おうともしていない妃宮さんはもう諦めきってしまったように見えた。
そんな妃宮さんの姿に僕は沸々と怒りが生まれてきた。
だって、おかしいじゃないか
「何で妃宮さんがそんなことを言うんだよ!『例え何があったとしても諦めないでください。』って言ったの妃宮さんじゃないか、それなのにどうしてそんなことを言うんだよ!!」
僕の言葉に驚く味方に、何を青臭いことをほざいているんだ、と言った呆れ果てた顔の根本君と相変わらず無表情なBクラスのみんな。
いやな沈黙がしばらくの間、僕の周りを取り囲んでいたように感じる。
「………っっふふふ」
そんな空気を破ったのは笑い声だった
「そうですね、それが満点の回答ですよ。吉井君。」
にっこりと、いつも顔に浮かべている微笑みの何倍も可愛らしい顔で僕に笑い掛けてくれる妃宮さん。
一瞬きゅんと来てしまったがそうじゃない、どうして?
妃宮さんに一体何があったの?
もしかして気が触れたんじゃ……
「皆さん、こんな茶番は終わりにしますよ。」
「「「はっ!!」」」
宣言に答えたの僕らではなくBクラスに陣取っていた連中、というより妃宮さんをさっきまでつかんでいた奴らまで応えるの!?
僕らに向けていたあらゆる武器が根本君の召喚獣に向けなおされたのに慌てるのは根本の番だった。
「お前らもか!おまえらも裏切っていたのか!」
「そうだよ!お前の独断にはもうこりごりだ、何だって今年も付き合わされないといけないんだ!!」
「そうだ、お前へからの数々の嫌がらせ。今日という今日に倍以上にして返しやる!!」
そんなBクラス内のいざこざを背に、妃宮さんは僕らのところに戻ってくる。
「吉井君、あなたには脱帽です。すこしみなさんにドキドキを味わっていただこうと思ったのですが。全く効かなかったようですね。」
「いやいや、何も僕はしていないって……というより。あれは何があったの?」
「根本君のやり方に賛同できない人たちが結集して、反乱を起こした。っていうのが概要です。」
どことなく、心の底から楽しそうにしている妃宮さんが一瞬、真っ黒に見えたのは僕の気のせいだろうか?
真面目な顔に戻って僕らを見回した妃宮さんはそして深々と頭を下げた。
「しかし、私の作戦で皆さんに不快な想いをさせてしまったこと、深くお詫びいたします。本当に申し訳ありませんでした。」
ロングスカートにその長く美しい銀の髪が滑る。
こんな一挙一動さえ優雅に振る舞われたら、僕らのクラス相手だとたぶん……
「「そんな、滅相もありません!!」」
僕の予想を超えた大合唱が起こったのは言うまでもないかな。
「ではBの皆さん、我がクラスからあなた方に求めるのは宣戦布告の権利の三ヶ月剥奪と根本君に重罰を与えて戴きたく存じます。ご了承いただけますか?」
「俺だけなのか!!……って離せ!!離せよ、おい!!」
「「「勿論です!妃宮様!!」」」
「くそっ、離せっ!」
「すみません、直ぐに静かにさせますから!」
そういって首元ににこやかに手刀を振り降ろした男子生徒の笑顔が心の底からのものだとしたら根本君はどれほどのことをしてきたのかが解るというものだ。
あの根本君が少し可哀想に見えるほどだが、まぁ当然の報いなんだろう。
「榊原先生、協定の介添えを頼めますでしょうか?」
「えぇ、勿論よ。」
英語科の榊先生は展開させていたフィールドを消し、あらかじめ用意していたのであろうプリントをバインダーの中から取り出した。
停戦規約とタイトルかかれているプリントに条件をさらさらと書き付け、Fクラス代表代理としてサインを入れた妃宮さんはBの人にプリントを渡した。
こちらもまたサインをして、最後に榊原先生の元に渡る。
先生がさらに何かを書き加えて、それをバインダーの中に再び仕舞った。
「はい、これで承認手続きは完了です。」
「ありがとうございます。」
「いえいえ、一流の演技を見させていただいたのですから私は大満足です。宜しければ我が演劇部にいらっしゃいませんか?きっと秀吉君に続くスターとなりますよ?」
「……演劇は…そうですね、考えておきます……」
顔をひきつらせる妃宮さんと、笑顔を深める榊原先生。
どうしてそんなに困った顔をしているんだろう、さっきのだって迫真の演技って奴だったんだろうし……ってあれ?
僕の体はどうして浮いているんだろう。
あれ?あれどうして僕は十字架に縛り付けられているの?
あれ?どうして僕の目の前には黒覆面のみんながうようよ居るのかな?
「ちょっとみんな冗談が過ぎるって!」
「「「会長、処刑の用意が整いました!」」」
「宜しい、これより被告人、吉井明久を火炙りに処す。」
「ちょっと待って、裁判風なのにどうしていきなり処刑宣告がでるんだよ!」
「被告人は静粛に!」
「出来るか!!」
そんな風ないつも通りの軽い命のやりとりを楽しんでいた僕らを、微笑みを顔に浮かべた妃宮さんがやれやれといった感じで僕らを見つめていた。
そのときBクラスのドアが勢いよく開けられた。
「司令!渡り廊下の戦況が味方が圧倒的に……」
その言葉に血相を変える妃宮さん、何も言われていないのにどうしたんだろう。
「皆さん!」
つり上げられる僕も、つり上げているFFF団のみんなも妃宮さんの方に目線がいく。
「皆さん、直ぐに参りますよ。本隊が壊滅状態のようです。BCのみなさんも撮影会は一時中止です。根本君を見張る人数だけを残して後は私に続いてください!」
僕はこのとき初めて妃宮さんが叫んでいるのを目の当たりにした。
____13:30 四階渡り廊下___
「友香さん!」
Bクラスから走り通してきた僕は友香さんの背中に向かって呼び掛けていた。女声でこんなに大きな声を出すとは思っていなかったなどと意識の隅では思ったが、そんなこと今はどうでもいい。
ただ、中身が男だというのをバレるわけにはいかず、結果としては全力疾走とは行かなかった。
味方残存兵力は保健体育フィールドに残っている代表殿を含めた10名、BCから離反した方々の内、一部を僕に変装した秀吉君に指揮をとってもらい援軍に差し向けたのだがそちらもほぼ壊滅、秀吉君の変装はバレてしまったのだろ、この場に僕以外に銀の髪をした人がいないという点で確信する。
僕に変装させた秀吉君をこの戦線に投入するという判断は間違っていなかっただろう、戦略的には。
しかし僕は遙かに軽視していたものがあったのだ。
それが、今の事態を引き起こした。
「ねぇ、千早さん。今度の貴女は本当に千早さん?」
僕の方を振り返ったその顔は疲れはて、思考すらしたくないと言うような一種の死相が浮かび上がっていた。
何とも言えない罪悪感をひしひしと感じる
そう、僕は友香さんの心を考えることをしなかったのだ。
他人の心に触れたくないと逃げ回った挙げ句、他人の心を、それも優しい心をもった女性を傷つけてしまったのだ。
____13:30 四階渡り廊下___
「友香さん!」
偽物は私が討ち取ったんだもの、だから今度は本物だと思う。
本物がいいなと願望する。本当の貴女だったらどれだけいいだろう。
夢見心地な理性が、再びその寝ぼけ眼を擦りながらゆっくりと私を支配し始める。
うん、姿形はまさしく千早さんそのもの。
でも本当に貴女なのだろうか?確信など持てない。
だって千早さんは根本のところにいるんじゃなかったの?
あれ以来一本も私のところに連絡は入ってきていないからどちらとも言えない。連絡が来ていないのは私にFの代表を討ち取るまでは帰ってくるなという意思表示からか、それとも連絡できないようなアクシデント、たとえば千早さんに逃げられた、とかが起きたのだろうか。
うん、頭もきちんと動き始めたかな。
「ねぇ、千早さん。今度の貴女は本当に千早さん?」
振り向いた私の顔を見て唖然とする千早さん。
あぁ、きっと
私、きっとひどい顔をしているんだろうな。
____13:32 四階渡り廊下___
BCFの三クラスの連合軍を連れて僕は小山さんの率いている残存部隊の後ろに布陣した。呼応して代表殿が率いる本隊も再び正面から攻勢を掛ける準備を始めている。もしこの状態から再び戦闘が始まったとしたらほとんど虐めに近いことになるだろう。
「お願いです、降伏してください!」
ここで戦っても貴女には何も残らないのですから。
____13:33 四階渡り廊下___
彼女の言葉が凛と廊下に響きわたる。
鈴が打ち鳴らされるような、澄んだ声に私の頭は一気に冴え始める。
あぁ、そうか。
根本を踊らせるつもりだったのね、千早さんは。
振り向いたときに見えた光景を思い出す。だって今貴女の後ろには文月一の超問題児の吉井に、私のクラスの子とかBクラスの男子がいたりするのだもの。
そうとしか考えられない。
根本は妃宮さんによって倒され、戦争の大半は終わったのだろう。
「えぇ、みんな。戦闘終了よ。私の……負けよ」
そして、私が必死に隠したかったものがさらけ出され、私はみんなから蔑まれた目線を一杯に浴びないといけない少し先の明日しか考えられない。
「代表、今回の件はどうなさるおつもりですか?」
後ろから詰問口調で私を問いただしてきたのは、Cクラスのご意見番的存在の北原恵梨香だった。
そうか、この子が居たか。
「ごめん。北原さん、戦後の処理は貴女が取ってくれないかな?私は口出しするつもりは無い。私のしたことに弁解もしないわ。」
「代表………」
拍子抜けしてしまったような顔になる彼女にはもう一言添えておかないといけない。
「代表も貴女に譲るわ。私はもうその地位に居るべきじゃないから。お願いするね、代表。」
笑い掛けたつもりなんだけど、うまく微笑むことは出来ただろうか。
ふらふらとした足取りで、たぶんBCの他のみんなのことも目に入っていなかったんじゃないかな。私は一番近くの階段を通った。
上ったのか下ったのか、それさえ不確かなまま私は行く当てもなく、ただ他の人に今の自分は見られたくないとう思いだけが、今の私を突き動かすのだ。
____13:34_____
Cクラス代表、小山友香降伏 これによりFクラスの勝利が決まる。
戦後処理交渉の代表はBから浅井秀久、Cから北原恵梨香、Fからは坂本雄二。
後書き
トマトを英語で書き表しなさい
妃宮千早の答え・tomato
教師のコメント 正解です、簡単すぎましたでしょうか。
土屋康太の答え・tomaito
教師のコメント 変に発音っぽくしないようにしましょう。書き直し10回を申し渡します。
島田美波の答え・Tomate
教師のコメント ケアレスミスですね、ドイツ語訳になっていますよ。
申し訳ありませんが書き直しの10回をしてください。
吉井明久の答え・tomato
教師のコメント 君の名前を見て即座に罰を付けたことを謝ります。
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