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ストライク・ザ・ブラッド短編

作者:yusuke3232
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浅葱 夢

常夏の人工島、絃神島。
そこは本島から離れた位置にあり、近代工業と魔術が進歩している街である。その街を行き交うのは、普通の人間と異常の人外。


それぞれが境界を張って生活しているものの、治安が悪いのか度々事件が起きており民間人を困らせている。正直に言えば、イベント事以外では訪れたくない人工島である。


そんな街の中にある彩海学園。
常夏の熱量にやられて項垂れる男、明人は教室の片隅でぼやく。


「くそっ、さっさと終わってくれよ。」


彩海学園の教室。そこで彼は補講を受けていた。


本当ならば友人の暁古城も一緒なのだが、今日は何やら用事があるらしく欠席だそうだ。
その古城の場合は、単純に出席不足。世界最強の吸血鬼さまは、この日射を理由に寝坊しがち&事件に巻き込まれまくりで、授業を欠席する事が頻繁なのだ。
その理由は、転校生・姫柊雪菜が原因で。今回欠席の理由も、彼女と一緒に事件解決に向かっているのだから欠席なのだ。


あの二人は夫婦なのかと言わんばかりに何時も一緒で、ラブラブなので何も言うまい。


一方で、明人はそういった体質を持ち合わせていないサボり常習犯。授業自体がつまらないと思い、屋上に逃げ込んでいるのだ。
その悪さが目立って、こうして補講を受けている訳だ。


何時もなら逃げられるはずが、今回は渋々受けてしまっている。
その理由は、この視線の先に映る女性―――那月ちゃん先生のせいだ。彼女を前にすれば、自分達生徒は凡人の域と扱っていいほどに、彼女との実力差は歴然なのだ。


「なぁ那月ちゃん、まだ終わらないの? 今日は浅葱と待ち合わせがあって」


とりあえず言い訳をしてみても。


「教師をちゃん付けで呼ぶな馬鹿者。そんなに部下の姫柊雪菜が恋しいのなら、さっさと終わらせて追い掛けに行けばよいだろうに。」


教壇に立って自分を監視する存在が、断固拒否と阻んでくる。


明人は姫柊と同じく、古城を監視するために絃神島に来た人間。本来ならば彼らに同伴しなければいけないのだが。


後輩の姫柊曰く、『私と先輩で大丈夫ですから、明人さんは補講に集中してください。』―――二人きりが良いらしい。
それを偶然聞いた藍羽浅葱曰く、『だったら、この後暇でしょアンタ。ちょっと買い物に付き合って欲しいのよ。』―――ならばデートを優先していこう。


だがそれを阻む鬼教師曰く、『その前に、だ。お前はまだ私が出した課題が終わっていないだろう。付き合え、お前の大好きな二人きりシチュエーションだ。』―――合法ロリ相手はちょっとご遠慮したいですが、仕方がない。


ということで、こうして受けている。


「先生違いますよ、俺が好きなのは浅葱ですってば。先生が歳相応に成長していれば、ドストライクで先生でしたけども。」


「ほう。言ったな小僧。この私をお前如きが御しきれるかどうか、今度のデートに行ってエスコート内容を見せてもらおうか。」


「すみませんやっぱり浅葱が一番です。」


「それで良い。浅葱もきっとお前の事を好意的に思っているはずだ。」


「マジですか先生っ!!」


「まぁ、この後のデートの内容で幻滅されるのがオチだがな。」


「先生辛辣すぎます、夢や希望を持たせてくださいよ!」


そんな談笑も交えながら、那月先生との二人きり補講は―――始まりの九時から二時間かけて終わったのだった。

明人と浅葱の出会いは、高校に入学する時だった。


姫柊と同じ獅子王機関に所属していた彼は、姫柊よりも先に絃神島配属が決定していた。勿論内容は姫柊と一緒に『第四真祖を監視する』こと一点のみだ。


機関の手配でアパートの手続きも済ませてあり―――ここで古城の部屋の隣を陣取り、姫柊と同棲する事になる―――街中を隅々まで把握するために偵察を主旨とした散歩をしようと実行した。


そこで獣人にナンパされている綺麗な女性を見掛け、明人は獅子王機関で鍛えた魔術と体術を駆使して追い払う。


―――実を言うと、ナンパされた美少女が浅葱だったりする。


その事を当時はまだ気付かず、何も言わず追及もせずに颯爽とその場を後にした。


そして入学式の時に。


「貴方、この前あたしを助けてくれた……!」


クラスメートになった事を、知るのだった。


「この前はありがとう、助かったわ。」


その時の笑顔に、思わず見惚れてしまった。
これこそが恋、一目惚れなのだなと理解した。


だから。


「いや気にすんなよ。俺だってあん時苛々してて、ストレス発散したかっただけだし。」


と、軽く適当に流して。
彼女の感謝から来る微笑みから、目を逸らしてしまった。


その時に。
浅葱の表情に一瞬翳りが宿った事に、明人は気付く事もなく。


その日から、二人は友達になり。
浅葱のお陰で、古城にも接近する事が出来て、姫柊と『自然な流れで』知り合いとなったのだ。






























「以上回想終わり。さぁ浅葱、さっさと買い物行こうぜ。」


「ちょっと待って、今誰に向かって言ったのよ?」


「細かい事は気にするな。美人が台無しだぞ。」


「えっ、それってどういう……ちょ、待ちなさいよ明人!」


補講も終わり、解放的な気分を味わいながら商店街へと向かう二人。


商店街までの道程は明人が先導し、その後を浅葱が追っかける形に。
商店街に到着すれば、浅葱が誘ってきたので彼女が先導し、その傍らを明人が付き添う形に。


こうして二人のショッピングタイムが始まる。


「そういや何で俺と買い物なんだ? デートってな感じで緊張するんだが。」


「何言ってんのよ。デートじゃあなくて、材料を買いにここに来たのよ。」


明人のデート発言を気にすることもなく、浅葱は買い物籠に必要なモノを入れていく。
それを持つのは、女性よりも力のある男性―――荷物持ちの明人だ。


「材料?」


「そう。異性の友達の誕生日が近くてね、その人に手作りプレゼントする予定なの。」


「なるほど。……って異性!?」


荷物持ちでしかない明人の表情は憂鬱であったのだが。
浅葱の爆弾発言に、表情が一変して驚愕に色塗られる。


しかも、その内容が手作りプレゼントと来た。相手は男性らしい。
それを羞恥心無しに明人に打ち明けたのだ。好意を寄せる女性がそんなことを言えば、驚くのは仕方のないこと。


驚く明人とは対照的に。
嬉々として微笑みながら、買い物籠に必要なモノを入れていく浅葱は言葉を続ける。


「そう、異性。明人も知ってて、けれど一番思い当たらない人よ。」


その意味深な発言に、言われた本人は困惑を隠しきれない。


そもそも、明人は次第に浅葱の言葉の意味をネガティブに解釈していく。


異性の知り合いにプレゼントを贈るその行為は明らかに、同時に告白シチュエーションだろう。
それはつまり、この瞬間自分は失恋したのだ、ということ。それを薄らと理解していく。


相手に悪気はない。現に、彼女は微笑んでいる。
だから尚更、重たい衝撃が心に打ち込まれてくる。


恋とは、辛いものなのだな、と。

それから。
浅葱と会話をしながら買い物を進めていったのだが、自分がどんな表情でどんな話をして、どんな声色だったのか、まったく記憶にないまま。


「今日はありがとう明人、ここまでで良いわ。じゃあ、またね。本当に今日は助かったわ。」


終始彼女は微笑みを浮かべて、楽しそうにしていた事だけは覚えている。


「うん、またね。」


せめて、自分がここで笑って手振りをすることだけは覚えていよう。
そう内心訴えかけて、微笑みを浮かべて浅葱と別れ帰路へ足を運ぶ。


その道中、考えるのは浅葱との思い出だった。


―――小テストの時。


『ちょっとアンタ、全然出来て無いじゃあない。これじゃあ先が思いやられるわ、入学してきた時の知識を存分に使えば良いだけでしょう!』


その時、初めて二人きりになって付き添って勉強を手伝ってくれた。
彼女は気さくで、誰にでも優しくて、一緒にいて楽しくなれる女性なのだなとこの時理解した。


―――球技大会の時。


『ねぇ明人。この格好、おかしくないかな?』


照れくさそうに、頬を赤く染めながら笑う彼女の体操服姿が魅力的で。


バトミントンでコンビを組み、共に優勝目指そうと言って笑い合った。


―――夏休みの時。


『夏祭りの花火見に行かない?』


純粋にその誘いが嬉しくて。


『また一緒に見に行きましょ。今日みたいに、古城と凪沙と四人で。』


『……楽しかったわ、明人。だから、絶対に約束だからね。』


本当は二人きりが良かったのだが。そんな勇気が、恋愛ごととなると湧かなくて。


―――結局自分がヘタレていた結果


浅葱は、他の男を好きになったのだ。
自分が知っていて、けれど思い当たらない人物。好意の対象が意外性のある人物である、ということなのだろうが。


それだけではまったく見当つかない。


そもそも、考える必要性がないだろうに。
失恋したならば、ウジウジと苦悩していても仕方がない事だろうから。


なんて、言っても。
巡り巡って結局、浅葱との思い出や彼女の微笑みばかりが浮かび上がってくるのだから困ったものだ。


「……あっ。」


気付けば、明人は無意識に自分の部屋前に佇んでいた。


「……入るか。」


沈んだ声色と気分のまま、ドアノブに手を掛ける。


と、ドアノブを回した時点で鍵を取り出す事を忘れていた事実に気付く。
だが、その必要性は無く。閉まっていたはずのドアは引っ掛からず、そのまま開いてしまった。


「あれ?」


鍵は閉めっぱなしで補講に向かったはずだが。
そんな風に思った矢先、目に飛び込んだ光景に絶句する。


「あ……」
「あっ」


二人の声が重なって聞こえた。
その声の正体は、姫柊と古城のモノだった。


目に映る光景を丁寧に説明するならば、古城が姫柊を押し倒している、ということだ。
姫柊は古城を監視するために絃神島に来たのだが、何時の間にか本来の目的以外でも監視するようになり、互いに信頼し合う夫婦のような関係性に発展していたことは何となくで理解できた。


だが。相手は中学生で、古城は高校生だ。
まだ『その行為』は早いし、いやしかし姫柊の発育は高校生のそれと遜色ないし、いや年齢的にどうなのだろうか。
そもそも場所が玄関で、とは古城もなかなかの


「ちょっと明人さん見ていないで助けてください!!先輩は疲れてて身体が動かせない状態なんです。」


「そっ、そうなんだよ。今回の事は色々と問題があって死にかけてだな。で、疲弊が溜まりにたまって、脱力しちまって。」


「……俺が傷心中の時にイチャコラかこの野郎、俺は帰るぞ!」


「帰るぞって、明人さんの部屋はここじゃあないですかっ!!」


「待て明人俺たちを置いていくなっ!!」


「じゃあ俺に二人のあんな事やこんなことを間近で見ろって言うのかよふざけんな!!」


なんてやり取りが、暫く続いたのだった。

とりあえず―――あれから古城を凪沙に預けて(何事か心配していたが、何とか隠し通せた)、明人と姫柊は二人で夕飯を作る事にした。


任務のため同棲中。古城にはこの事を説明してあるが、事情を知らない凪沙や浅葱には『二人は兄妹です』という嘘で通している。
見た目はあまり似ていないものの、同じ綺麗な漆黒の髪ということで納得もしてくれている。


そんな二人が肩を並べて調理し、向かい合って完成品を食べ合うその姿は本当に兄妹のような感じで。
一緒にいた期間が長すぎたためか、信頼も連携もしっかりしている。勿論相手の事情も把握できている。


だからこそ、姫柊は明人の浮かない様子で食が進んでいない姿を見て簡単に察する事が出来た。


姫柊は箸を置き、睨むように見つめて明人に尋ねる。


「明人さん。」


「ん?」


「藍羽先輩と何かありましたか?」


その言葉に、明人の肩が揺れる。
それだけの指摘で、焦りや動揺を一瞬でも浮き彫りにさせたのだ。戦闘訓練を受けている者としては、情けない事だろう。


それが姫柊よりも年上で、少しだけだとしても人生経験が豊富な男がするのだから尚更だ。
けれど姫柊はそれを恥だと思わず、密かに嘆息するだけだった。


「私が見てきた明人さんは、誰に対してもおちゃらかすように接していくのに、時には真剣になって物事を考えるメリハリがしっかりとした男性。少なくとも、私の知る貴方はそういう方でした。」


「姫柊……。」


その嘆息の意味は、恐らく落胆。
自分の知る獅子王機関の上司は、浮ついた事のみで動揺したり不安がったりするのかと。


それでは監視役の任務に足を引っ張るのではないか、と。姫柊は注意を促すように続ける。


「一目ぼれした相手への思い。その想いを私は何度も聞きましたし、年相応のアドバイスもしたつもりです。けれど明人さんは、肝心な一歩が踏み込めておらず、男らしくありません。」


「反対に姫柊。お前が古城にアプローチするために身体張り過ぎなんだよ。」


と、軽くジョークのように吐き捨てる明人の表情に笑みが戻る。


それに羞恥&焦燥で赤面するが、咳払いして心情を落ち着かせる。


「ごほんっ。ともかくですね、明人さん。貴方に足りないものは、臆さない事です。任務実行時の、普段の勢いの良さを恋愛面でも発揮すればよいんですよ。何でこう、私生活では弛んでいるんですか?」


「姫柊、俺はな。ヘタレなんだよ。惚れた相手にはな、どうしても怖くて一歩踏み込めないんだ。敵ならな、大丈夫なんだけど。」


弱弱しく吐き捨てる少年は、声色通り諦念の呟きを漏らしていた。


「相手に向けたこの感情が一方通行でしか無くて、迷惑だと陰で思われていたら。そう思うようになったのは幼少期からだ。まだ獅子王機関に預けられるまでの俺は、餓鬼の頃から両親の喧嘩の光景ばかりを見て育ってきたんだ。」


愛を育めば、いずれ破綻するのだろうか。
結婚しても、永遠に思いあう事は出来ないのだろうか。


恋をしても。
ぶつかり合ってしまうのか。傷つけあうのか。


だったら自分は、恋愛なんか恐くできない。


「そんな思いが、今の俺の恋愛観なんだ。だから姫柊、お前は……俺みたいにヘタレず、今まで通り頑張れや。」


「明人さん……。でも、もしかしたら。」


―――それ以上は言えなかった。


姫柊は、口を噛み締めるように噤んで明人を心配そうに見詰める。


もしかしたら、藍羽先輩だって貴方の事を好きなのかもしれないのに。
そんな無責任な発言が、出来る訳が無かったのだから。


確かに彼らの事情も心情も、総てを把握できるわけではない。
そんな瞳があるのなら、姫柊はもっと早く色々な事に行使している。


だから。
第三者はただ、助言したり、見守ったりすることだけしか出来ないのだ。
余計な手出し口出しして、相手の気持ちを考えずに勝手な行動すれば、それこそ迷惑な話だ。


だから、せめて。
応援したい気持ちだけでも。姫柊はそう思って。


「……先輩。ご飯、早く食べましょう。冷えますよ。」


「……そう、だな。」


―――こうして、明人にとっての衝撃の一日が終わりを遂げた。

翌朝、朝五時。


ブーッ、と。携帯電話の振動で明人は目を覚ます。
姫柊は別の部屋で眠っているため、おそらくはまだ起きていないだろう。


静かに起きて、呻きつつ携帯電話を見やる。
どうやらメールの様だ。


それを理解した明人は頭を掻きつつ携帯電話に手を伸ばす。


「誰だこんな時間に。迷惑メールか?」


なんてぼやきながら、着信相手を確認する。


その画面には、『藍羽浅葱』と記されていた。


「っ!?」


思わず目を見開かせて、驚愕のあまり飛び上がり眠気が吹き飛んだ。


何でこんな朝早くに彼女からのメールが、なんて考えが過ったが。
そんな思考よりも感情が先行し、メールの文面を確認する。


そこには、こう記されていた。


『今からそっち行っても良い?』
































何の思惑があって来るのか分からないが、それを確認するためにも了承の返事を出した明人は身支度をする。


寝癖をなおして、洗顔と歯磨きもして、寝間着から普段着に着替えて。
後用意すべきものは、浅葱を迎え入れるための度量。気持ちの問題だけ。


昨日の発言をそのまま解釈するならば。
浅葱には好きな男が居る。しかもそれは、自分には思いつかない人間らしい。


異性の目を惹くほどの美人とスタイルの浅葱と釣り合う程の男。
強いのか、優しいのか、それとも別の要因があって。分からないまま時間が過ぎていき―――30分後。


浅葱が来訪する報せが音となって響き、即座に玄関へ向かう。


「来たか、浅葱。」


「悪いわね朝早くに。」


こんな時間に来たことに対する謝罪を述べる浅葱を迎え入れようとドアを開けっ放しにしているのだが、彼女は一向に入ってこない。


否、入室する代わりに彼女は何かを差し出してきた。


「これを渡したかったのよ、誰よりも早くに。」


それは、可愛らしい小包。
誰かにプレゼントする時用の、赤を基調とし白の斑点模様が散りばめられた小包だ。


何故自分に、それを向けているのだろうか。
なんて疑問は、湧かなかった。


古城のように、呆れ果てるような鈍感さを、明人は持っていない。
けれどその行為を信じきれずに、戸惑っていた。


「……待て浅葱。このプレゼントって。」


だから、確信が欲しくて彼女に問い掛けた。


「言ったでしょう?」


その問いに、浅葱は微笑みながら即答した。


「貴方は知っているけれど、思い当たらない人間だって。それは本人、明人のことよ。」


にわかには、信じ難い事だ。
正直これは、夢なのではないかと疑っている自分が居る。


疑心に揺れる明人は困惑の色を隠せずにいた。
しかし彼女は彼の手を引き、小包を強引に持たせる。


「……ほら、自分の事って一番分からないもんでしょう。」


「そりゃ、そうだろうさ。嬉しいよ、俺にプレゼントだなんて。」


「ふふっ、良かった。……ねぇ明人。」


「なんだよ、あ―――」


彼女の呼び掛けに、応じようとした言葉は出なかった。


それは彼女によって、唇を塞がれたから。
彼女とキスをしているから。


見開いた瞳が、ほんのりと赤く染まった彼女の表情を見る。
そんな彼女を見て、昨日の発言を思い出していく。


唇が離され、距離を取る浅葱。
解放された自身の口から出るのは、自分の素性。


「今日、誕生日……。」


誕生日が近い、つまり今日この時に誰よりも早くプレゼントを贈られた。
好きな女性からの、中身の知らないプレゼントとキスを。


浅葱もそうだが、同様に明人まで顔が真っ赤になる。


そんな彼に、とびっきりのプレゼントと言わんばかりに。


駄目押しの一言が、言い放たれた。


「好きよ、明人。大好きっ。」


その笑顔が。プレゼントよりも、キスよりも。


最高のプレゼントだった。
正直それは反則だと思った。


隙も生じぬ三段構え。そのトドメが愛の告白だなんて、予想外だった。


しかし、ここで返さないならば男ではない。


勿論、返す言葉は決まっている。
彼女にここまでさせたのだから、真正面からその思いを。


「俺も、浅葱の事が好きだっ!」


その思いを、受け止めるだけだ。  
 

 
後書き
疲れた 
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