魔法少女リリカルなのは~結界使いの転生者~
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聖杯大戦編
動き出す影
闇の書事件から一か月が過ぎ、その間に様々なことが起こる忙しい日々を過ごしていた。
龍一は無事に治療を終え、リンカーコアの大きさも元の戻り、今まで通りの日常を送っている。
クロノや零課は闇の書事件の報告のための資料整理に追われ、剛は近松が作った義手のリハビリを続けている。
フェイトは今回事件の捜査を手伝ったためにある程度減刑されてプレシアと一緒に暮れせるようになり、翠屋の近くのマンション(原作でハラオウン一家が暮らしていた家)に暮らしている。
はやては魔力封印処置を施された守護騎士共々零課の保護観察に入り、現在剛が保護者としてはやての家で暮らしている(人数の多さとバリアフリーの環境のため)。
ちなみに、剛と龍一もはやての家に引っ越した。
アリサやすずかも気功術の訓練を続けながらそれぞれの家から支援してもらっている。
ユーノはあの後、報酬として一週間の無限書庫無条件利用を許可され大喜びで無限書庫に潜り込んだのだが、それ以降三日も行方知れずになったためなのはたちが様子を見に行ったところ、三日も不眠不休で調べものをしており、アリサに強制休養させられてようやく死んだように眠ったのである。
血走った眼で『たったの168時間しかないんだから邪魔しないで!!』と叫んだ時にはさすがに恐怖を覚えたそうだが、怒り心頭のアリサと泣きながら懇願するなのはによってようやく休んだのだ。
その後、ユーノは無限書庫の司書にスカウトされ本格的に管理局の業務に関わることとなった。
管理局の寮に入ることも考えられていたが、なのはたちの強い提案によって高町家に居候することとなった。
家族がいない天涯孤独な身であることを知った高町家の皆にまるで弟のように可愛がられ、特に弟が欲しかった美由紀や桃子の溺愛ぶりは半端ではなかった。まあ時々フェレットになってと懇願してきてユーノを困らせていたが、なのはが黒い笑みを浮かべてユーノをひったくって行ったため無害であろう。
そして、現在。
「もう!!お父さんの分からず屋!!」
「そうだよ!!あの人はどうして認めてあげられないのかな!?」
なのはと美由紀はお互いに愚痴りあっていた。
今、高町家では男性陣と女性陣による軽い冷戦状態に陥っていたのだ(ユーノと桃子は除く)。
切っ掛けは闇の書事件が片付いてから一週間くらいたったある日のこと。
レティ提督により、なのはが管理局へとスカウトされたことに始まる。
なのはの稀有な才能は管理局にとっても非常に喉から手が出るほど欲しいものであり、またなのはも自分にようやく認められた才能とそれで多くの人を救うことができると言われて今回の事件を通じてより管理局の一員として働きたくなったのだ。
そしてなのはは管理局で働く意思を家族に報告したのだ。
みんなが祝福してくれることを信じて疑っていなかった。
実際、美由紀は大喜びで祝福してくれた。
彼女らにとって夢のような存在である魔法や異世界。
そこで働くことができることや愛する家族の才能が認められた事、なによりこの末妹が進むべき指針を持つことができたのことに反対する理由など無かったのだ。
しかし・・・。
「駄目だ!!今すぐ管理局に就職するなんてとんでもない!!」
「俺も反対だ!!」
士郎と恭也はなのはに猛反対した。
「・・・・え?」
反対されるとも思ってみなかったなのはは信じられない表情でみんなを見る。
「どうして!?何が駄目なの!?」
美由紀も信じられない表情で聞いてきた。
「士郎さん?なのはさんの才能があれば多くの人が救われるのですよ?」
レティ提督も士郎を説得する。
「そうですね・・・ですが、せめてなのはが18歳になってからお願いします」
「魔法の教育は幼いころから始めるのが最も効率がいいのです。慢性的に人手不足な管理局に8年も無駄にする時間はありません」
「一人の英雄に全ての責任を押し付けるのが管理局のやり方ですか?大局的に考えるなら始めから才能のある人材を使い潰すのではなく、組織だった効率のいい部隊運用とそのマニュアル化の教育を徹底するべきでしょう」
「・・・レジアス少将のようなことをおっしゃるのですね?・・・貴方は自分の娘さんの素晴らしい才能をみすみす潰すおつもりですか?」
「戦いにしか役に立たん才能など虚しいだけだ・・・・・・・いや、そんな才能を持って生まれてきたのも、また私の娘ゆえか・・・」
「いい加減にしてよ!!」
レティと士郎の水掛け論に美由紀が口を挟む。
「どうしてなのはが自分で決めたことを素直に祝福してあげられないの!?」
「親だからだ・・・」
「え?」
「親だからこそ、娘に自分と同じ道を歩んでほしくないだけだ・・・」
「何言ってるのかわけ分かんないよ・・・・ただ娘の才能に嫉妬してるだけじゃないの!?」
「美由紀!!」
「恭ちゃん!!」
「俺にも父さんに言いたいことは良く分かる。俺もなのはにそんな道を歩んでほしくない」
「もういいもん!!」
「「「なのは!?」」」
今まで黙って聞いていたなのはが泣きながら立ち上がる。
「私は管理局に入る!?お父さんもお兄ちゃんも大嫌い!!」
「「なのは!?」」
その日は結局そのまま話は打ちきりとなり、なのはは管理局の嘱託魔導師となることで話は落ち着いたのである。
あれから一か月たった今も、士郎と恭也は反対の態度を崩すことはなく、なのはや美由紀と大喧嘩したばかりである。
これが最近の高町家の日常であった。
一方、中立派であった桃子とユーノは今二人でスーパーに買い物に来ていた。
実は今日はなのはの友達を翠屋に呼んでパーティーを開く予定なのである。
闇の書事件の影響で結局クリスマスも大晦日も正月も何もお祝いできなかったので、今回で一気にやってしまおうと言う意図や、はやての退院祝い、そして家族の仲を修復しようと企んでいるのである。
「ユーノくんが荷物持ちしてくれて助かるわ」
「いえ。居候なんですからこれくらいは・・・」
「ユーノ君・・・駄目よ。高町家はあなたの家でもあるんだからそんな他人行儀じゃなくても・・・・」
「スクライアの集落にいる時もこんな感じでしたので別に無理をしているわけじゃありません」
「そう・・・それじゃあ、今回手伝ってくれたお礼に何かお菓子買ってあげるから、好きなの選んでおいで・・」
「・・・いいんですか?」
「遠慮しないの・・・」
そしてあたりを見回すユーノだが、不意にその視線がある場所で止まる。
「・・それが欲しいの?」
「・・・ええっと・・・まあ・・・・・・・はい・・・・・」
「どれどれ・・・」
しかし、桃子はユーノの視線の先にある物を見て固まってしまった。
『高級ペットフード(小動物用)』
「そ、それが欲しいの?」
「ああ、はい・・・・とてもおいしそうでしたので・・・」
『もしかしてこれが異世界の常識の違いか?』と戦慄仕掛けた桃子であったが『いやいや・・・』と考え直す。
ユーノは日本語をちゃんと読めるし、これが人間が食すものではないと知っているはずである。
なのになぜこれをおいしそうなどと言うのか・・・。
理由を考えていた桃子はふとある記憶が甦る。
それはまだユーノが言葉を話すフェレットだと思っていた時のこと。
『なのは~~。ユーノくんの餌買ってきたわよ~~』
『は~~い!!』
そのことを思い出した桃子はだらだらと冷や汗を流す。
(原因私じゃない!!)
そして桃子は目尻に涙をためながらユーノを抱きしめた。
「ごめんね!!ユーノ君!!今日はユーノくんの好きなものなんでも作ってあげるからね!!」
「い、一体どうしたんですか、桃子さん!?」
「ごめんね!!ごめんね!!こんな母親だけど許して・・・」
その後しばらく桃子はユーノを抱きしめていた。
時間は過ぎ、夜になった。
高町家ではパーティが盛大に催されており、子供たちは大いに盛り上がっている。
そこにパーティに招待されていた剛も向かっていた。
「ちょっとよろしいですかな?」
「!?」
剛に気配を全く感じさせない何ものかが剛の後ろに立っていた。
「何者だ?」
「何、あなたには恨みはないのですが・・・今宵は私の血が騒ぐのでね。私も相棒も強者の血を欲している。少し付き合ってはくれませんか?」
「血の匂いに群がる狂犬といったところか・・・悪いが私はすでに引退した身。強者との死闘を望むらな他を当たって欲しい」
「隠しても無駄です。あなたからは私と同じ『人斬り』の匂いがする。その上足運びだけでもその武練の程が窺える。あなたほどの武人はこの時代はおろか私がいた時代でも珍しい」
そして謎の人物は刀の少し引き抜いた。
その音に剛は振り向くが・・・・。
「っ!?貴様、その顔・・・・」
気が付けばその人物は横を通り過ぎていた。
「あらあら・・・意外とあっけない・・・」
そして・・・。
ズシャッ!!
剛は体を袈裟懸けに切り裂かれ、その場に倒れた。
「父さん!!」
龍一は病院の部屋に慌てて駆け込んだ。
そこには・・・・。
「「「「あっ!!」」」」
「・・・お邪魔しました・・・・」
剛を看病するさくら、プレシア、リンディ、禊を目撃した龍一はそそくさと扉を閉める。
「ちょっと待て!!龍一、君は自分の父親をなんだと・・・「父さん」・・・!?」
「新しい母さんができるのは別に構いませんが、母さんが複数いるのはやめてくださいね?」
「だから違う!!」
「く~~ん」
「あん!!」
剛のベッドの中からアルフと久遠も出てくる。
女性陣はそれを恨めしそうにまた羨ましそうに睨みつけていた。
・・・いやさくらさん?
『私も獣耳があるのに・・・』とかぶつぶつ言わないでください。バックから見えている首輪は何ですか?
プレシアも『駄犬には鞭で教育しなければね・・・』とか昔の鞭を取り出さない!!
『やっぱりあの人はロリがいいのかしら・・・』とか一児の母に見えないリンディさんが言ってもそんなに説得力ないですから!!
『お兄ちゃんに撫でてもらえるのは僕だけだ・・・』って禊さん・・・あなた妹ですよね?
「僕と同じ年の見た目の母さんもノーサンキューです」
「だから違うと言っているだろう!!」
必死になって言い訳する剛だが久遠とアルフの頭を撫でながら言われても説得力がない。
久遠の人間フォームは基本幼女だし、アルフも最近消費を抑えるために人間形態でも子供フォームで過ごしているため洒落にならない。
死んだ母さんもロリ体型だったしなあ・・・。
とまあ、冗談はさておき・・・。
「一体誰にやられたの?」
禊が光のない目で剛を見る。
「禊・・・怖いからその目はやめなさい」
「でも剛さんを倒すなんて。よっぽどの実力者ね」
プレシアが剛に聞いてきた。
「一応顔はみたが・・・シグナムに非常によく似ていた」
「シグナムに?」
「ああ・・・だがあれはシグナム本人ではないと断言できる」
「ええ、その時間帯ならシグナムは翠屋にいたのは私やクロノが確認済みです。それに動機もありませんし・・・」
「いや・・・そうではなくて・・・・決定的に違うものがあったんだが・・・・」
「?」
「その話詳しく聞かせ下さい!!」
病室にレティ提督が入ってきた。
「レティ!?」
「すみません。でも最近同じような襲撃事件が多発しているんです」
「襲撃事件?」
「狙われているのは管理局の魔導師ランクが高い者ばかり。それに被害者はみんな『シグナムだがシグナムではない』と証言していて現場は混乱しています。この証言を意図的に捻じ曲げてシグナムを捕えようとする勢力もあってその処理にてんてこ舞いですよ」
「そのような事件が?」
「ええ、一体何が起こっているんでしょうか?」
レティのその言葉に応える者はいなかった。
剛の襲撃から一日たった。
「ふーん。そんなことが起こってたの?」
「ほんまや・・・昨日龍一君から聞いた情報や・・・」
「なんだか怖いね」
なのはたち(龍一は先に病院に行っている)は小学校の帰路についていた。
ちなみに、はやてもようやく小学校に通い始めた。
まだリハビリ中で足が完全に動かない為、保健室通学ではあるが、なのはたちを通じて順調に友達もできている。
「なのはやフェイトも気を着けなさいよ?あんたたち管理局の魔導師ランク高いんでしょ?」
「にゃはは・・・まあないと思うけど、実際に出会ったらお話聞いてもらわないとね・・・」
「やめた方がいいよ、なのは。剛でも敵わなかったんでしょ?」
「フェイトちゃんと力を合わせれば何とかなるよ・・・」
多少楽観的に考えているなのはであった。
「あれ?はやてちゃん・・・その痣はなに?」
なのはがはやての手の甲に紅い痣があることに気が付いた。
「ああ、これ?何か知らんけど今朝からあってな・・・」
「大丈夫、はやてちゃん・・・・どこかにぶつけたりしなかった?」
「すずかちゃん・・・それがぶつけた覚えがないんよ・・・」
「何か不吉ね・・・・痣にしちゃなんかの模様に見えるし・・・」
アリサが不思議そうに首を捻っていると。
「ほう・・・紅い痣。君が紅陣営のマスターか・・・」
「「「「「「!?」」」」」」
突如聞こえた声に全員が振り向く。
電柱の上に着物に近い簡素な服を着た甲冑姿の女性が立っていた。
燃えるような真っ赤な長髪を持つ美しい女性。
それはまるで・・・。
「「「シグナム(さん)?」」」
シグナムそっくりであっ「違う!!」・・・た?
「シグナムはあんなぱったんこやあらへん!!」
そう。
彼女らが知るシグナムの胸部がマスクメロンのような双丘なのに対し、目の前の女性は・・・ぺったんこであった。
絶壁であった。
何がって、それ以上聞いてやるな。
「あなたは何ものですか?」
フェイトがシグナムそっくり(一部除く)の女性に尋ねる。
「これから死ぬものに名乗る意味はないが、まあ『アサシン』とでも名乗っておこう」
「『暗殺者』?」
「悪いが、恨みはないがマスターの命令でね・・・『紅い痣を持つ者を呼び出す前に始末しろ』とな・・・」
「「!?」」
その言葉になのはとフェイトはデバイスを展開して臨戦態勢に入るが・・・・。
「遅い」
女性の居合による一撃で吹き飛ばされる。
それはまるでバリアジャケットを無視したかの様に衝撃が体内に浸透し、二人の動きを封じた。
「はやてちゃん!!」
「にげて、はやて!!」
なのはとフェイトは叫ぶも、はやての車いすはすでに破壊され、アリサとすずかも恐怖で逃げることは出来ない。
「・・・・死ね」
今まさにはやてに刀が振り下ろされようとした。
「いやや・・・・誰か・・・・・誰か助けてええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!」
はやての叫びに応えるようにはやての前に魔法陣が現れる。
それは彼女が使うベルカ式でもましてやミッド式のそれとも違う。
「何!?」
そこから現れた全身をローブで覆い、仮面をかぶった男によって女性の刃は防がれる。
「ちっ!!」
女性は男から距離を取った。
「あ・・・助けてくれた・・・?」
はやては呆然と男を見つめる。
「やれやれ・・・このようなタイミングで呼び出してくれるとは、まったく大した人だよ・・・」
そして男ははやてに振り返る。
「サーヴァント、キャスター。聖杯の導きにより馳せ参じた。問おう。貴女が私のマスターか?」
それは新たな戦いの幕開けの合図であった。
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