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『自分:第1章』

作者:零那
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『新生児感染症』

授乳時間以外は保育器に入れなあかんらしい。
いろんな機械付けられて痛々しかった...
でも元気に手足動いてる。

医者に、零那が悪いんか聞いたら違うって。
大したことは無いから安心してって。
理解できてないままは、さすがに不安やったけど、信頼してるから...
他の医者なら今回の妊娠出産は有り得んかったかもしれんけど...。

母乳やから鎮痛剤は飲めん。
でも痛みは酷い。
隣がうるさくてストレスもハンパない。
寝れんし迷惑。
悪露(おろ)も異常に多くて、塊もあって...
てかアソコ自体が激痛で、トイレ行くのが辛かった。

授乳時間、凄く楽しみだった。
逢える、抱ける、御飯(母乳)をあげれる...温かさを感じれる...

部屋から授乳室迄、端から端。
杖ついて腰の曲がった老婆より遥かに遅く、一歩一歩が必死だった。
痛みが走る。
辛い。
泣きたい。
こんな痛み知ってたら、一生Sexなんかしてない。
恋人すら作らんかった。
誰かに好意を抱く事すら無かったやろうな。
そぉ思うくらい、今迄のどんなイタミよりイタかった...

子供を産む事...
新しい命を此の世界に迎える事の、責任の重大さ...イタミ...

既に心折れそうなほど、育児や愛、家族というモノに、自信は皆無...。


こんな自分が、人間ひとりの人格成形に携わるなんか怖い。
若いからとか関係ない。
自分やから、こんな自分やからこそ、妊娠出産はあかんかったんちゃうかって。
今更怖くなった...
産まれながらにして罪人の娘になってしまった我が子...
公になろうがならまいが事実は事実で在る...

そんな、どうしようもないことばっか考えてた。
それでも、娘に会える授乳時間だけは、何も考えれんくらい至福の時間だった。
おっぱい探す手つきが可愛くて愛しくてたまらんくて...
一生懸命おっぱい吸うのが可愛くて守りたくなって...
ウトウトしてて、くわえてるおっぱいが口から離れた瞬間、また吸い出すのがおもしろくて...
そんな当たり前のこと、ほんの些細なことが凄く幸せで...
こんな自分でも、穏やかな気持ちになれるんやなって気づいた。


新生児感染症、不安がないわけじゃ無い。
でも、施設に居た自分を知ってる。
とにかく安心して任せてって言葉を信じるしかない。

当時の産後入院期間は1週間。
帝王切開の人は10日。
それが通常だった。
無事、娘と同日に退院出来ることが決まった。

自分は裂傷箇所の抜糸が終わると痛みが和らいだ。
若いと子宮収縮が早い為、痛みが強い。

授乳後なら鎮痛剤飲んで良しと言われた。
子宮の痛みと共にお腹もぺったんこになっていった。

出産が、こんなに命懸けって事、初めて知った。
母さんは、弟の時ポンッて産んだらしい。
兄も姉も自分も、超安産であっけなく簡単な出産だったと。
やから愛情なんかもてんかったんやなって改めて感じた。


医者に言われた。
零那の強い意志があったから娘はチャント産まれてくれたんやって。
もし、零那が意識飛んだままだったら母子共に死んでたかも知れんって。
こうして元気に無事に退院できること自体が奇跡だと...。
まさに、お産は命懸け。
何が起きるかは医者も想定できんくらい、お産にはリスクが伴う。
無事に出産を終えること自体、すばらしい奇跡だと...。


今、此処に生きてること、感謝しよう...。


 
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