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戦国異伝

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第百八十三話 和議が終わりその二

「毛利ではなく我等につく素振りを見せている様です」
「左様か」
「どうされますか」
「いや、それはもう答えが出ておろう」
 ここでだ、柴田が秀長に顔を顰めさせて言ってきた。
「宇喜多直家じゃな」
「そうです」
「あの者、とんでもない悪党ではないか」
 こう言うのだった、その髭だらけの顔を顰めさせたまま。
「何人も毒だの闇討ちで殺し今の地位を築いたな」
「ほぼ一戦もせず」
「一体どれだけの者を殺したかわからぬ位ではないか」
 そこまでの悪事をしてきた者だからだというのだ。
「その様な者を入れれば」
「織田家でも何をするかわからぬと」
「そうじゃ、宇喜多直家も悪党じゃ」
 何気にだ、柴田だけでなく秀長もだった。ここで松永を見てそのうえで話すのだった。
「それではな」
「とてもですな」
「織田家には入れられぬ」
「それでは」
「あ奴は入れるべきではない」
 織田家には、というのだ。
「絶対にな」
「権六はそう思うのじゃな」
 信長はあくまで言う柴田に述べた。
「宇喜多直家が織田家に入ろうとしても入れてはならぬと」
「その通りです」
 まさにその通りだとだ、柴田は信長にも答えた。
「あの者は」
「左様か」
「御言葉ですが殿の寝首もです」
 それもというのだ。
「何時狙ってくるか」
「その時はです」
「我等が」
 すぐに毛利と服部が出て来た。
「むしろすぐにでも」
「宇喜多は」
 そしてこの二人もこう言うのだった。
「除くべきかと」
「こちらに来れば」
「あ奴の弟はそうした者ではないというのう」
 佐久間も言ってきた。
「それならな」
「うむ、弟に家督を継がせてな」
 柴田はその佐久間にも応えて言った。
「それで宇喜多家は続けられるが」
「宇喜多直家だけはのう」
 佐久間もだ、松永を剣呑な目でちらりと見てから述べる。
「殿のお傍に置けぬな」
「その通りじゃ」
「殿、それがしも宇喜多殿は剣呑な方と見受けます」
 明智もだ、警戒する顔で信長に話した。
「ですからあの方が織田家に来ても」
「除くべきか」
「そうすべきかと」
「他の者も同じか」 
 柴田達の言葉を受けたうえでだ、信長は他の主立った家臣達に宇喜多が織田家になびいた場合に除くべきかどうかを問うた。
「除くか、若しくは隠居させるべきか」
「はい、そう思いまする」
 最初に答えたのは蒲生だった、今や織田家の若き俊英である彼も言うのだった。
「あの御仁は」
「それがしも同じでございます」
 滝川もこう信長に真剣な顔で言う、蒲生もそうだが彼も松永をちらりと見てから信長に話す。
「あの者は奸賊、ですから」
「それがしもそう思います」
「それがしもです」
 他の家臣達も信長に口々に言う。
「決してです」
「家中に入れるべきではありませぬ」
「何があろうとも」
「そう思いまする」
「ふむ、皆そう言うか」
 信長も彼等の言葉を受けてだ、袖の中で腕を組んで述べた。 
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