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美しき異形達

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第二十六話 姉妹の日々その五

「女の子だけで行く旅行に男の人一人ってのもな」
「周りからのイメージはよくないわね」
「それもあるしな」
 だからだとも言う薊だった。
「あたし達の中でもどうしようかって話してるんだよ」
「そこが難しいところね」
「本当にね、けれど関西全域を回ることは」
「いいことだよな」
「私も旅行は好きよ。ただ」
「ただ?」
「薊ちゃん関東には戻らないのかしら」
 彼女の故郷と言っていいそこにというのだ。
「横須賀には」
「横須賀なあ、そういえばな」
「戻るつもりはなかったのね」
「黒蘭ちゃんに今言われるまで考えてなかったよ」
 全く、というのだ。
「そういうことはな」
「そうだったの」
「けれど、たまには帰らないとな」
「孤児院の院長さんにお顔を見せることもいいことよ」
「そうそう、それも親孝行だよな」
 薊にとって孤児院の院長は親と言ってもいい存在だ、だからこう言うのだ。
「やっぱり」
「それも忘れては駄目よね」
「その通りだよな、考えておくな」
「そうしておいてね」
「関東のこともな」
 こう答えてだ、黒蘭の言葉に頷いてだった。
 薊は黒蘭の前から去った、二人の話は終わった。そうしてその話が終わったところで授業がはじまるのだった。
 授業がはじまるとだ、黒蘭は普通に授業を受けた。こちらもそつがなかった。
 そして新体操部の部活に出る、部活の練習の時はジャージでありマットの上で新体操の道具を操っていた。
 その彼女にだ、三年生の先輩が声をかけた。
「少しいい?」
「はい、何でしょうか」
「最近貴女足の動きがね」
 先輩は黒蘭のその足元を見つつ言うのだった。
「前よりリズミカルになってるわね」
「よくなってますか」
「ええ、最近自分でもしているの?」
 練習を、というのだ。
「そうしているのかしら」
「そうですね、そうなりますね」
 戦いのことは伏せてだ、それを自己練として話すのだった。
「練習といえば」
「そうなのね、自分でもしているのね」
「時々ですが」
「その時々でかなりの練習をしているわね」
 先輩は黒蘭の言葉に微笑んで答えた。
「それが出ているのよ」
「そうなりますか」
「ええ、新体操も足だからね」
 その動きが第一だというのだ。
「いいことよ」
「そうですか、じゃあ」
「これからも頑張ってね。ただあまり疲れていると」
「その足の動きも」
「疲れが出て乱れるから」
「そうした時は、ですよね」
「新体操自体の練習は謹んでね」 
 先輩は黒蘭にこのことを言うのも忘れなかった。
「新体操は少しの油断、乱れが怪我につながるから」
「先輩いつも仰ってますね」
「そう、怪我が一番怖いから」
「だから怪我をしない為に」
「極端に疲れてる時は新体操自体の練習はしないことよ」
 その実技に関わることは、というのだ。 
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