| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ソードアート・オンライン ~白の剣士~

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

本選前

 
前書き
60話突破!! 

 
決勝から翌日、俺と雫と一緒に朝食を摂っていた。何故一緒にいるかって?
事の発端は数日前に遡る。母さんが急遽海外からの依頼が入ったのだ。そこで俺の世話役を誰にするかという話になったのだ。
親父は仕事もとい、アクアの調整が忙しくそれどころではない、なら残りは?ということで雫に白羽の矢が立ったのだ。俺は大丈夫だと言ったのだが、もしもの事を考えての事だった。
そんなわけで、今は雫が家に準居候という形で俺の世話役をしている。

「「ご馳走さま」」

世話役といっても、基本的には一人でできるので高いものを取ったりする程度なのでそれほどの負担にはなっていない。

「さて、これからどうしようかな・・・アクアは親父にギミックの追加ってことで改修に出しちゃったし・・・」

「ねぇ雪羅、コレ・・・」

「ん?」

雫がさしだしたのは昨日のBOBの予選トーナメントの結果が載った記事だった。

「予選トーナメントEブロック優勝者《Shion》、準優勝者《Alia》ねぇ・・・。キャラネーム出るんだな」

「このアリアって、強かったの?」

「ああ、かなり、っと・・・」

俺がアリアについて話そうとした時、丁度着信が入った。

「噂をすれば影、だな」

「・・・?」

俺はスマホをテレビ電話に切り替えて応答した。

「よう、昨日ぶりだな」

「ハーイ、雪羅♪それと雫ちゃんもいるのか、こんにちは♪」

「シエルちゃん!」

「さっき言おうとしたんだが、そのアリアがシエルなんだ」

「えっ!?そうなの?」

画面越しにシエルはあの独特のVサインを見せると

「そうなんだよね~♪」

「で、一体何の用だ?まさか『優勝おめでとう』なんて冷やかしに来たんじゃないだろうな?」

「もしそうだったら?」

「今すぐこの電話を切る」

「それは勘弁かな・・・」

俺の真顔の返答にシエルは冷や汗が出る。どうやら冷やかしじゃないことを理解し再び尋ねる。

「それで?何の用だ?」

「死銃の事なんだけど・・・」

死銃、その言葉に俺は眉間にしわがよる。

「私も実はそのことで調べてるんだ、なにか情報はある?」

「あるにはあるが・・・」

シエルは画面越しに何かを感じ取ったらしく、今は追及しなかった。

「わかった、情報は向こう(GGO)で聞くよ」

「ああ、すまないな」

「いいよ、それじゃあ向こうでね♪雫ちゃんもバイバーイ♪」

「あ、うん・・・」

その後電話は切れ、通話終了の文字が画面に残る。
俺は頬杖を着いてはため息をつく。

『まさかシエルまで死銃を調べていたとは・・・。まぁ、画面から突然胸を押さえて消えればそりゃ誰だって気になるか・・・』

俺は雫に渡された記事にもう一度視線を落とす。
予選Fブロック 優勝者《Kirito》 準優勝者《Sinon》───
あの二人が予選を突破したことに安堵しながらも、俺は思う。

『この中に、死銃おぼしきプレイヤーがいるのはほぼ間違いない・・・。あれだけ気配を消せるものが予選敗退なんてまず考えにくい・・・』

「雪羅・・・?」

『俺とキリト、シオンを除いたこの27人の内誰かが死銃ということになる。フィールドの広さは直径10km、スタートは最低でもプレイヤー同士の距離は1km。いきなりでくわすことはないが・・・』

「おーい・・・」

『それでも、いつかは戦うことになる。誰かが倒してくれるような生半可な相手じゃない、だったら・・・』

「雪羅ッ!」

「うおッ!どうしたんだよ!?」

俺の反応に対して雫は呆れた顔をしていた。

「どうしたじゃないよ、ずっと難しい顔してるから心配だったのに・・・」

「ああ、そうか。悪い、そんな顔してたなんて・・・」

「してました。もう、君がそういう顔するときは判を押したように決まってる・・・」

「えっ・・・?」

雫は俺から目をそらすように言った。

「“自分を犠牲にしてまで他人を救おうとするとき”」

「ッ・・・!!」

「別に止める気はないよ、“雪羅”が、“シオン”がそういう人間なんだってこと、分かってるから・・・」

「雫・・・」

「だから、改めて約束して。“必ず、無事で帰ってきて”、そして・・・“その手で救ってきて”・・・!!」

雫の瞳には僅かだが潤みがあった。この目は知っている、SAOでも、ALOでも、俺を送り出したり、止めようとしたときの目、そんな時でもこんなバカ()を信じて待ってくれた目だ。

『まったく、俺は本当に・・・』

幸福者(しあわせもの)だよ───

「ああ、任せろ・・・!」

その後、俺は雫との“約束”を胸にGGOへとダイブしていった。

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

シオンはGGOの総督府の近くにある酒場でアリアを待っていた。

「おまたせ」

アリアはシオンが来てから数分後に来て、彼の向かいの席に座った。

「それじゃあ、情報交換をしますか」

「ああ、まず俺からだ」

シオンは今知っている限りの情報をアリアに伝えた。死銃がSAO生還者で《ラフコフ》のメンバーであることも含めて・・・。
その事を知った後、アリアは表情を曇らせた。

「SAO生還者・・・」

「コレに関しては少なくとも確証がある。奴は俺を知っていた、名前も、動きも・・・」

「誰かは分からないの?」

「ラフコフなだけあってまだ絞りようがある。それにあの気配の消し方、おそらくは幹部クラスだ。そしてあのしゃべり方となると、かなり絞られる・・・」

「確証は?」

「わからん、願わくば外れてほしい。俺の予想が正しければ・・・」

シオンはギリッと歯を鳴らす。今、彼の頭のなかにいる死銃の素顔は不愉快なものだった。

「かなり手強い・・・」

「ッ・・・!」

アリアの頬に冷や汗が流れる。彼女にしては珍しく、動揺している。

「それは笑えないね・・・」

その後集合の時間が近くなったのでシオンとアリアは総督府へと向かった。
待機エリアは昨日よりは賑わっており、誰が優勝するかを賭けたりなどしていた。

「ようキリト、調子はどうだ?」

「シオンか、お前死銃には・・・」

「ああ、遭遇した」

「俺もだ・・・」

キリトは少し思い詰めた顔をしてきた。こいつも考えていることは一緒なのだとシオンが理解すると、キリトの背中を思いきりぶっ叩いた。

「痛ッた!!なんだよ!?」

「いや、なんか辛気臭い顔してるからイラッときた」

「はぁ!?」

「今さらグチグチ考えてもしょうがないだろ?いつかは戦うことになるんだ真相は本人に直接聞くしかないだろ?」

シオンはいつもの笑みを浮かべて言った。

「拳、剣ではなく“銃”でな!」

「・・・まったく、お前は本当に行き当たりばったりだな」

「今更、だろ?」

「そうだな」

キリトは苦笑するとシオンと拳を合わせた。その光景を端から見守っていたアリアは温かい視線を送っていた。

「いいね~、男の子って」

「そういえばシオン、この人は?」

「ん?決勝戦で戦ったアリアだ。ちなみに俺のもう一人の剣の師だ」

「こんにちは♪」

「は、はぁ・・・」

「さぁ、挨拶はこのくらいにして・・・」

「シオン」

「ん?」

「迷うなよ?」

キリトの言葉にシオンはニヤッとした。

「当然だ、そんじゃいっちょ・・・」

シオンは拳をパンッと自分の手に合わせた。

「行くか!」

「ああ!」

本選開始まで残り数分───

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

「よっ、調子はどうだシノン?」

シオンは空いている時間にシノンに会っていた。声をかけられたシノンは無表情で答えた。

「なんだ、君か・・・」

「キリトに負けたんだって?」

その言葉にシノンはムッとした。

「何?笑いにでもいたの?」

「そうじゃない、お前に少し聞きたいことがあってな」

「・・・いいわ、何?」

「今回出場している30人の中で知らない奴はいるか?」

その質問に対してシノンはため息をついた。

「どうした?」

「どっかのムカつく光剣使いに同じことを聞かれたから・・・」

「ウチの身内が迷惑をかけました・・・」

わりと本気で謝るシオンに対してシノンは冷静に対応した。

「別にいいわよ、それでさっきの事なんだけど・・・」

シノンが挙げたのはシオンとキリト以外に、《銃士X》、《ペイルライダー》、そして《Sterben》の三人だった。

「《Sterben》・・・」

「どうしたの?」

「いや、この《Sterben》、スペルをミスってるのかな?スティーブンなら本当は《Steven》なのに・・・」

「そのわりには随分と考え込んでるじゃない?」

「《Sterben》、どっかで見たような聞いたような気がするんだよなぁ・・・」

「何それ・・・?」

「まあ、とにかくその三人のうち誰かが死銃である可能性があるってことだな・・・」

シオンがそう言うとシノンは問いかけた。

「私の事は疑わないの?」

「疑う?なんで?」

「あんた出会って一日の相手を信用するの?」

「俺は自慢じゃないが人を見る目はあると思ってる。お前はそんな人じゃねーよ」

「どうしてそこまで信用できるの?」

「だってお前・・・」

シオンは彼女の心の中枢を視るように言った。

「この前のバギーの時以外で本気で笑ったことないだろ?」

「ッ・・・!」

「それだけじゃない、お前の挙動全てにおいて何処かに振り払いたい思いがある・・・。
違うか?」

「・・・違う」

「少し間があったな、図星か?」

「私を動揺させて本選でミスらせる作戦のつもり?」

シノンの言葉にシオンは静かに首を横に振る。彼女を見つめるシオンの目は本物だった。

「まあ、深入りはしねーよ。お前の心を害したなら謝る、すまない」

シオンはシノンに謝罪をするとその場から去ろうとした。

「待って」

しかし、シオンが背を向けたところでシノンに呼び止められた。

「生き残りなさい、最後まで・・・」

「・・・当たり前だ。その言葉、そっくりそのまま返してやる」

「ふん、上等よ」

二人は僅かに笑みを浮かべながら互いに背を向けながら去っていった───

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

「さて、残り一分か・・・」

俺は一人待機エリアの端の柱にもたれ掛かって開始の時を待っていた。

「“生き残りなさい”、か。また約束が増えちまったな・・・」

開始まで残り30秒、モニターに映るMCはテンション高めに開始前の実況をしている。
俺は装備を整え、時を待つ。残り15秒───

15・・・

14・・・

13・・・

『生き残りなさい、最後まで・・・』
その胸の内に彼女は何を隠すのか───

12・・・

11・・・

10・・・

『迷うなよ?』
彼の守るべきものは何なのか───

9・・・

8・・・

7・・・

『もし、あの世界に憎しみ以外のものが存在するなら・・・』
かつて世界を支配した者は未来へ生きる者たちにすべてを託した───

6・・・

5・・・

4・・・

『必ず、帰ってきて、そして・・・』
彼女は約束した───

3・・・

2・・・

1・・・

『“その手で救ってきて・・・!!”』
愛する人を待つために───

「ああ、任せろ」
彼は再び(おもむ)く、“命をかけた戦場”へ───

0・・・

第三回 BOB(バレット・オブ・バレッツ) 本大会───開幕 
 

 
後書き
遂に始まります、BOB本選!
最速のガンバトルをお楽しみに!!

コメント待ってます!!
ではでは~三( ゜∀゜)ノシ 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧