テイルズオブザワールド レディアントマイソロジー3 ―そして、僕の伝説―
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第七十話
「──ん……っ」
──窓から差し込んできた日の光を閉じていた目に感じて、僕は目を覚ました。目を覚ましたばかりと言うこともあって、視界が安定せず僕は上半身を起こして目をこすると……徐々に慣れてきた視界に入った光景に思わず固まってしまった。
「すぅ……すぅ……」
「……ぁー……」
目に映った光景……同じベッドで僕の隣でいつもは髪を纏めている紅葉のような髪留めを外して桃色の髪をおろして一糸纏わぬ生まれたままの姿で無防備で眠る少女──カノンノの姿と、そのカノンノと同じように服を着ていない僕の姿を見て、僕は昨夜の事を思い出し思わず両手が顔を覆った。
昨夜……彼女と最終決戦に向けての覚悟を決めて、そのまま流れ流されるようにしてしまった営み。別に僕自身、彼女と『そういう事』をした事に後悔も何も無いのだけど……お互い『初めて』という事もあってか行為中、僕は思い出すとかなり恥ずかしい事を言いまくってた気がする……。
「『好き』はまだ良い。『愛してる』も……まぁ、まだ良い。……『恥ずかしがってるカノンノ、可愛い』ってなんだよ……変態かよ……」
昨夜の行為中での自分の発言を思い出しつつ、自分の言ったことをツッコミながら思わず恥ずかしくなってきて顔が熱くなるのを感じた。
暫く自分自身に悶えた後、一度溜め息を吐いて気持ちを落ち着かせるといまだに隣で眠り続けているカノンノを見てそっと手を伸ばして彼女の頭を撫でた。
「んぅ……えへへ……衛、司ぃ~……♪」
「全く……可愛いなぁ。……約束、しちゃったな……」
頭を撫でた事でカノンノは少し声を漏らすが、幸せそうな表情でいまだに眠りながら僕の名前を寝言で呼んでいた。そのなんとも幸せそうな様子に思わずどんな夢を見ているのか気になりつつ、カノンノの寝顔を見つめて僕は自然と言葉を漏らした。
約束……『皆で笑って、生きてかえってくる』事。
今の僕の身体……ドクメントの約九割を破損し、一度の戦闘すら危険に近い状態である僕が、この最終決戦で生きてかえることは……正直かなり低いだろう。
……でも、それでも……。
「……大切な、大好きな子との約束なんだ。出来る限り……ううん、きっと……約束を守れように頑張ってみるよ」
幸せそうに眠り続ける彼女に聞こえているかは分からないけど、優しくカノンノの頭を撫でながら僕はそう自分に言い聞かせるように、彼女を安心させるかのようにそう言うと、そのままカノンノに顔を近付けてそっと静かに……口付けをした。
──────────────────────
「──昨日はおたのしみでしたね♪」
「「え……なっ!?」」
──あの後カノンノを起こし、準備を整えて二人でホールへと来てアンジュにこれからの事を聞こうとした瞬間、アンジュが僕とカノンノを見てにっこりとした笑顔を作るとそう言葉を出した。僕とカノンノはその言葉の意味が上手く分からなかったが、少ししてその意味を理解して思わず二人で声を出して顔が熱くなるのを感じた。
というか……バレてたっ!?
「二人が同じ部屋で寝るって聞いた時から何か起こると思ってたけど……まさかあそこまで一気に進展するとはねぇ~♪」
「な、な、なんでそ、その……バレちゃってるの……っ!?」
「全く……ウチの船だって一室一室に防音がついている訳じゃないからね~」
「ぇ……ま、まさか……」
「えぇ、バッチリ聞こえてました♪」
「「ぁ……うぁあぁぁぁぁ……っ!?」」
『にっこり』とした笑顔を『ニヤニヤ』としたものに変えて、顔を赤くしてあたふたとしている僕達にそう淡々と言っていくアンジュ。そのアンジュの言葉に僕とカノンノは更に顔に熱が入っていくのを感じて思わず揃ってその場で顔を手で覆って声を上げてしまう。
聞こえてたって……クソっ……ホールに来るまでの道で会う皆が僕達を見て顔を赤くして顔を逸らしたり、嫌に顔をニヤニヤさせて『おめでとう』とか言ってきたりしたのはこういう事だったのか……っ!
……ていうかソレも考えたら思いっきりバレてるじゃんっ!?
「全く……二人でお互いの名前を呼び合いながら愛し合うのは構わないけど、ウチにはまだ小さい純情な子達もいるんだから程ほどにしなさいね」
「ぅ……ぁ、はい。……努力、してみます……」
「ぁぅぁぅぁぅぁぅ~……」
「……アナタ達が無事に帰ってきたら、前向きに部屋の防音制をあげることを考えてあげるわ」
恥ずかしさで真っ赤になってアンジュの言葉に答えにくそうに頷く僕と、その場で顔を手で覆ったまま悶えるカノンノ。そんな僕達を見ながらアンジュはそう言葉を出すと、ニヤニヤとした表情を溜め息一つの後、真剣なものへと変えた。
「さて……これからの事だけど、私達アドリビトムは昨日言ったとおり皆の準備が整い次第、『エラン・ヴィタール』に突入します。そこで私達がやるべき目的は……ラザリスがいるであろう場所に向かうディセンダーであるメリアを主にした『決戦組』とそこに向かうまでの道を確保する『補助組』に分かれて行動をします」
「『決戦組』と『補助組』……?」
「えぇ……エラン・ヴィタールは遠目から見ただけでも大きな場所と分かるわ。だから突入次第、研究組とセルシウスが協力してエラン・ヴィタールを解析してラザリスの居場所を捜すから、主戦力であるメリアは出来る限り無傷でラザリスの居場所に向かわせたいの。行って何が起こるか分からない以上、こうやってメンバーを分断してそれぞれ行動させようと考えてるわ」
アンジュの淡々と出していく説明を僕は頭の中で出来る限り理解していく。…確かにあのエラン・ヴィタールは下から見ただけでも結構な大きさだった。特殊な状態で今まで近付けず、あの場所が一体どんな場所なのか探索できてもいないので初めて行く場所である以上、何が起こり、何が居るのかも全く分からない。それなら出来る限り、ディセンダーであるメリアは確かに無傷でラザリスの元へと届けたい。
「それでその……『決戦組』と『補助組』はどう分けるの?」
「それならもうある程度決まっているわ。……『決戦組』はメリアを主にして衛司、カノンノ、ニアタ…それとヴェイグよ。他の皆は『補助組』に回ってもらうつもりよ」
「私と衛司が……決戦組に……!?」
僕の問いにアンジュは小さく頷くとそう静かに言葉を出し、カノンノは驚いた様子で声を出した。彼女が驚くのは何となく分かる。
世界を賭けた最終決戦……決戦組には出来る限り戦闘力の高いメンバーを入れるべきだ。それをまさか、僕とカノンノが任命されるとは少なからず思わなかっただろう。僕とカノンノにアンジュは真剣な表情で再び小さく頷くと口を開いた。
「私もそれなりに考えたんだけど……今多分、このアドリビトムで高い戦闘力を持っていて、尚且つメリアを最後まで支えていけると思った時、アナタ達しか考えられなかったの。ラザリスとの闘いは力だけじゃなく、精神力だって必要になるはずだから……その時はきっとアナタ達二人じゃないとメリアを支えてあげられないわ」
アンジュのその言葉を聞いて、僕は暫く考えるとなんとなく納得する。このラザリスとの闘いは……あくまで『ルミナシアを救う』事であって『ラザリス、ジルディアを倒す』という事ではない。単純に闘う力よりも、メリアを支えて補助する事が重要になるかもしれない。それなら少なくとも他の人がついていくよりも僕とカノンノがつき、メリアを安心させた方がいいだろう。
「うん……分かった。ニアタはリタ達と同様に解析を兼ねた道案内と考えて……ヴェイグはやっぱり……?」
「えぇ……まだ残っているサレとの決着の為よ。これはヴェイグ本人からの意志よ」
ニアタとヴェイグの同行の理由を考えて、ニアタはリタ達とエラン・ヴィタールの内部を解析しての道案内、そしてこの最後のルミナシアとジルディアの運命を見守る同行と分かり、ヴェイグの方を頭で認識しつつ確認するようにアンジュに問うと、アンジュはそれに小さく頷いて答えてくれた。
いまだに決着のついていない男──サレ。僕達の浄化で弱体化はさせたが、サレはその直後に撤退している。この最終決戦……サレのラザリスへの忠誠心から考えると、彼はきっとラザリスを守るべくラザリスの居場所の近くにいるだろう。
そして……そのサレとの最後の決着をつけるべく、ヴェイグが決戦組への参加を申し出たんだろう。
「……もうすぐ皆の準備も終わるわ。終わり次第声をかけるから……二人とも宜しく頼むわよ」
「「……うんっ!」」
真剣な表情でアンジュはまっすぐと僕達を見て言うと、僕とカノンノはそれに大きく頷いて答えた。
最終決戦に向けて……決意を込めて。
後書き
──以上、第七十話、如何だったでしょうか?
【最終決戦の朝】
完全に朝チュンです、本当にありがとうございます←←
因みに関係ないですが衛司君の『夜の戦闘スタイル』は『相手に愛の言葉を囁き尽くす』です←
【昨日はおたのしみでしたね!】
あんな事あったら誰かにこれを言わせるしかないじゃないっ!(使命感)
という訳でアンジュに言ってもらいました、やったぜ←
因みに小さい純情な子達は皆寝てたりして衛司君とカノンノの営みは聞こえてない……はず←←
【最終決戦に向けて】
という訳で最終決戦は皆で突撃です←←
と、いっても説明通り漫画版のように『皆で手分けして』みたいな感じになりますがね。
ヴェイグ参加はやっぱりサレとの決着です。
と、いってもラストのサレ戦は描写する気は今のところないですけどね☆
サレ様「!?」
次回はエラン・ヴィタールへ突入、そしてラザリス戦前までです+
皆様良ければ感想、ご意見等宜しくお願いします+
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