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お姉ちゃんになる

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第四章

 結婚式に出た、それから。
 結婚式はつつがなく終わった。愛は夫となる相手と生涯を誓い合った。そうしてからだった。
 愛は夫と一緒になる前に新婦の部屋に戻った、そこでウェディングから着替える時にだ。
 衣吹がまた部屋に来た、そうしてだった。
 愛に対してだ、微笑んでこう言って来た。
「おめでとう、お姉ちゃん」
「そう呼んでくれるのね」
「だってうちの兄貴の奥さんになったから」
 それでだというのだ。
「これからはね」
「私をお姉ちゃんって呼んでくれるのね」
「同じ歳だけれどね」
 それでもというのだ。
「こう呼ばせてね」
「わかったわ、じゃあ私もね」
 愛もだ、衣吹のその言葉を受けて言った。
「これからはね」
「何て呼んでくれるの?」
「妹って呼ぶのも何だから」 
 それで、と言ってだった。愛は考えてあったその呼び名でだ。自分の目の前にいる衣吹をこう呼んだのだった。
「衣吹ちゃんってね」
「そう呼んでくれるのね」
「名前でそのまま呼ぶとね」
 呼び捨て、それはというのだ。
「何か駄目って思うから」
「これまでみたいな友達関係じゃないからね」
「そう、だからね」
 それでだというのだ。
「こう呼ばせてね」
「わかったわ、それじゃあね」
 衣吹も愛に笑顔で応える、そしてだった。
 お互いに笑顔で両手を握り合った、そうして。
 二人はそれからも友情を誓い合うのだった、姉と妹の関係になった。だが二人の仲はそのままであることを確認して。
 そしてだった、新婚旅行の後で。
 愛は衣吹の部屋に行ってだ、こんなことを言ったのだった。
「ひょっとしたら私ね」
「どうしたの?」
「いや、ちょっと早いけれど」
 少し気恥ずかしい顔での言葉だった。
「出来たかも知れないから」
「あら、おめでとう」
「だから衣吹ちゃんひょっとしたらだけれど」
「お姉ちゃんに子供が出来たから」
「叔母さんになったかもね」
「えっ、じゃあ私お姉ちゃんの妹から」
「叔母さんになるかも知れないわよ」
 二人きりになってだ、こっそりと言った言葉だった。
「すぐにだけれど」
「じゃあ私これからは叔母さんって言われるの?」
「私とうちの人の子供にね」
「やれやれね、じゃあ私もね」
「衣吹ちゃんも?」
「結婚してそうしてね」
 それから、というのだ。
「早くお姉ちゃんが叔母さんって言われる様にするわ」
「その時も楽しみにしてるわね」
「ええ、そうしておいてね」
 二人で笑顔で話したのだった、そして十ヶ月後衣吹は実際に叔母さんと言われる様になってだ。その一年後に結婚してだ、今度は愛を叔母さんと呼ぶのだった。


お姉ちゃんになる   完


                          2014・7・16 
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