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第六章

 春奈と向かい合って座ってだ、真剣な顔で言った。この時彼は確かに緊張していたが臆することなく言った。
「俺、君のこと好きやから」
「知ってるで」
 にこりと笑ってだ、春奈は賢枢に答えた。
「それでここに呼んでくれたことも」
「あれっ、わかってたんかいな」
「そらわかるで」
 明るく笑ってだ、春奈は賢枢に答えた。
 そしてだ、彼にこうも言うのだった。
「二人で喫茶店で会うとなったら」
「そやねんな」
「賢枢君が私に告白するって」
「全部お見通しやねんな」
「お見通しもお見通し、そやったらな」
「ああ、そやったら」
「返事させてもらうわ」
 笑顔のままでだ、春奈は賢枢に言った。
「今から」
「うん、ほな」
 賢枢はここで最も緊張した、何しろ告白の返答だ。これで緊張しない人間はいない。まさに息を飲んだ。そして。
 春奈の告白に身構えた、一瞬の筈が永遠に感じられた。春奈の口は彼から見ればゆっくりと開かれた。その口から出された言葉は。
「ええで」
「ええんやな」
「女に二言はないで」
 にこりと笑ってだ、春奈は賢枢にこうも言った。
「言ったままや」
「そやねんな」
「そらあれだけ見せてもらったわ」
「俺のことかいな」
「私のこと好きってわかるから」
 それもかなり強くだ。
「賢枢君悪い人やないし」
「そやからええんか」
「そう思ってここに来たんや」
「ほな最初から」
「告白してきたらな」
 そうしてくるとわかったうえで、というのだ。
「この返事しか用意してなかったわ」
「そやったんか」
「よろしゅうな、あらためて」
「彼女として」
「これまでは友達やったけれど」
 これからはというのだ。
「彼女としてな」
「仲良くやろな」
 春奈も笑顔で応える、そしてだった。
 二人は交際をはじめた、賢枢にとっては最高の結末でありはじまりになった。そして居酒屋で友人達に満面の笑顔で言った。
「最高やわ、今」
「春奈ちゃんと付き合えてか」
「幸せか」
「ああ、めっちゃ幸せや」
 ビールを飲みつつの言葉だった。
「ほんまにな」
「よかったな、そこは」
「ほんまな」
「春奈ちゃんも最初からまんざらやなかったみたいやし」
「ほんまよかったな」
「俺もそう思うわ、やっぱりあれやな」
 ビールの次はつまみだった、彼はそのつまみの焼き鳥、タレがかなり効いているそれを食べつつ言った。
「俺の作戦勝ちやな、ええとこ見せまくったからな」
「ああ、それちゃうで」
「俺もそう思うわ」
「俺もや」
 友人達は口々に賢枢に返した。
「そこはな」
「残念やけどちゃうで」
「御前の作戦勝ちちゃう」
「それとはまた別や」
「?じゃあ何で俺春奈ちゃんと交際出来る様になってん」
 友人達の言葉にだ、賢枢は目を瞬かせて怪訝な顔になってだ。そのうえで彼等に問うた。 
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