アテネ
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第二章
アテナもポセイドンもだ、それぞれそのポリスに降り立ってだ。そのうえでそこの人間達に対して言うのだった。
「私を選ぶのなら素晴らしい富を授けましょう」
「わしの海はそなた達のものになるのだ」
「学問、より多くのことを知りたいですね」
「海の富を欲しいと思わないのか」
「選んでくれたならです」
「それがそなた達のものになるのだ」
こうそれぞれ街の人間達に言う、そして。
人間達はだ、神々の言葉を聞いてから顔を見合わせてそのうえでだ、彼等人間の中でも話をするのだった。
「どっちがいいだろうな」
「ポセイドン様かアテナ様か」
「どちらかだな」
「どちらの方がいいかだな」
「それだ」
どちらかというのだ。
「ポセイドン様は海の神でだ」
「確かに海の富は魅力的だ」
「この街は実際海に面している」
「我々も海の富が欲しい」
「それは確かだ」
彼等はポセイドンの言葉に魅力を感じていた、しかし。
それと共にだ、アテナの言葉を思い出しこうも言うのだった。
「しかしな」
「ああ、そうだな」
「アテナ様の学問もな」
「やはりものは知っていた方がいい」
「頭はいいに限る」
「知っていることはそれだけで武器だ」
「魅力があるぞ」
アテナの誘いにも魅力を感じていた、それでだ。
彼等は彼等の中でもどちらがいいのか話した、しかし。
どちらがいいのか決めかねていた、その彼等を見てだ。
ポセイドンは彼の眷属である海の神々にだ、ところどころ青い水が流れる青の大理石の宮殿、珊瑚や真珠で飾られたその中において彼等に問うた。
「人間達は決めかねているな」
「はい、どちらがいいか」
「ポセイドン様かアテナ様か」
「どちらがいいかですね」
「決めかねていますね」
海の神々もポセイドンに答える。
「どうにも」
「その様ですね」
「そうだな、ではどうすべきか」
海の主神の玉座からだ、彼は言った。
「ここは」
「そうですね、ここは」
「贈りものでしょうか」
海の神々はここでポセイドンに提案した。
「人間達に」
「ポセイドン様が思われる最高のものを」
「わかった、ではだ」
ポセイドンは眷属達の言葉を受け入れた、そうしてだった。
人間達に贈りものをした、それを見てだった。
アテナもだ、オリンポスにある自身の宮殿の中でだ、自身に仕えるニンフ達に考えている顔で尋ねたのだった。
「叔父上は人間達に贈りものをしていますね」
「はい、そうですね」
「何かと」
「そうして人間達の関心を買って」
「自分を守護神に選んでもらおうとしていますね」
「そうしようと」
「それならです」
アテナはすぐにだ、ニンフ達に言った。彼女は自分から言った。
「私も人間達にです」
「贈りものをして、ですね」
「そのうえで、ですね」
「彼等に選んでもらいます」
そうしようというのだ。
「ここは」
「そうですか、それでは」
「アテナ様が思われるものをですね」
「素晴らしいと思うものを」
「あの街の人間達に選んでもらいますね」
「そうしてです」
アテナは一歩も引かない顔でまた言った。
「必ずです」
「アテナ様が街の守護神になる」
「人間達に選ばれて」
「そうなります」
こう言ってだ、そしてだった。
アテナもまた人間達に贈りものをしていった、ポセイドンもアテナも人間達にそれをしていった。その中において。
人間達は次第に自分達に集まる贈りものを見て機嫌をよくしてはいた、だが彼等とて愚かではなくそれでだ。
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