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妹みたいで

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第四章


第四章

「それは」
「全く。ちょっと遥」
「何?お母さん」
「ちょっとは幸平君に感謝しなさい」
 酔っている娘に対しての言葉だ。顔を真っ赤にしてべろべろになっているその姿はかなりみっともない。少なくとも年頃の娘のものではない。
「本当にいつもいつも」
「いつもいつもじゃないわよ」
「いつもいつもよ」
 怒った顔で娘に告げる。
「全く。とにかくね」
「とにかく?」
「家に入りなさい」
 こう娘に言うのである。
「いいわね」
「はあい」
「幸平君もね」
 ここで遥の母は彼にも声をかけた。
「あがったらいいわ」
「いえ、俺は」
「もう帰るの?」
「ええ。家すぐそこですし」
 実は二人は住んでいる場所もすぐ近くなのである。
「ですから」
「そうなの。それじゃあ」
「これで」
「悪いわね。御礼はするからね」
「それはいいですよ」
「そういうわけにはいかないわよ」
 この辺りは近所付き合いだった。見知った同士でもである。
「だからね。今度お家に窺うから」
「そうですか」
「ほら、遥」
 前に出て娘の左肩を持って行くのであった。
 そうして娘を家の中に担ぎ入れる。幸平はそれを見届けてから自分の家に帰る。そして次の日。遥は彼の前に申し訳なさそうな顔で出て来た。
「あのさ、昨日だけれど」
「いいよ」
 こう返すだけの幸平だった。
「そんなことはな」
「いいの?本当に」
「いつものことじゃないか」
 だからだというのである。
「気にすることはないさ」
「何かそれって私が駄目みたいじゃない」
「別にそうは言ってないさ」
 それは否定するのだった。
「ただな」
「ただ?」
「御前お酒弱いんだからな」
 遥に言う言葉はこれであった。
「だから控えた方がいいぞ」
「わかったわよ。何かね」
「何か?」
「言い訳になるけれど」
 バツの悪い顔で言う遥だった。
「それでもよ」
「それでも?」
「昨日は何か特にお酒にやられたみたいね」
「ビールだけ飲んでたわけじゃなかったからな」
「日本酒飲んだのがまずかったかしら」
 自分で分析はした。
「やっぱり」
「そうだな。まあわかったらな」
「日本酒は控えるわ」
 こう言うのであった。
「本当にね」
「飲むなとは言わないが量は控えろ」
 これが幸平の彼女への言葉だった。
「わかったな」
「わかったわ。まあお酒は残ってないし」
「みたいだな」
「朝起きてお風呂に入ったから」
 それで酒を抜いたというのである。二日酔いの解消方としてはオーソドックスであると言えるものであった。少なくとも今彼女は問題なかった。
 
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