November Rain
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第一章
November Rain
「十一月になったわね」
「何か嫌そうな言い方だね」
一緒に登校している彼が私の言葉にこう「返してきた。
「何か」
「寒くなってくるからね」
「ああ、それでなんだ」
「冬嫌いなのよ」
私は困った顔で彼にこうも言った。
「寒いから」
「牧子ちゃんって寒がりだったんだ」
「冷え性なのよ、私」
女の子によくあることだけれど私もそうだ、それでなのだ。
「だから冬はね」
「嫌いなんだ」
「だから十一月になってきたら」
寒くなってくるこの月になるとだ。
「気が滅入るのよ」
「それでなんだ」
「十一月になったからね」
本当に段々寒くなってくるからだ。
「嫌なのよ」
「嫌って言ってもね」
「仕方ないわよね」
「冬は来るよ」
本当にだ、こればかりは絶対のことだ。季節のことは何がどうなっても移り変わりがあるものだ。秋が深まって冬になることも。
それでだ、彼も言うのだった。
「僕はそう思うけれど」
「俊朗君の言う通りよ」
「そうだよね、季節のことはね」
「どうしようもないから」
また私に言ってきた。
「もう諦めて」
「十一月を受け入れるしかないわね」
「それしかないよ。それで寒くなったら」
「厚着をしてね」
それでだった。
「中にカイロも入れて」
「カイロもなんだ」
「冬はいつもそうしてるの」
使い捨てカイロが本当に有り難くなる、冬になると。
「お風呂もじっくりと入ってね」
「身体を温めて」
「熱いお茶や食べものね」
「色々だね」
「そうそう、お鍋が特にいいわね」
私は熱い食べもののことを自分から言ってこうも思った。
「身体が温まって」
「それじゃあ今度ね」
「今度?」
「チーズフォンデュの美味しいお店見付けたんだ」
「あのスイスのお料理の」
「そう、そのお店に行ってみる?」
「そうね、チーズをワインと一緒にお鍋の中で煮てそこにパンとか入れて食べるのよね」
「そうだよ」
「確かに温まるわね」
「だからどうかな」
俊朗君は穏やかな笑顔で私に提案してきた。
「今度ね」
「いいわね、チーズは温まるし」
「しかも熱くしてるから」
「余計にいいわね」
「それじゃあね」
「ええ、じゃあね」
こう話してだ、私達はそのチーズフォンデュのお店に行くことにした。それでお互いにバイト料が入った後で大学の講義が終わってからだった。
二人でそのお店に行った、そこはスイスをイメージしたのか木造のダークブラウンの重厚なログハウス調のお店だった。そのお店を見てだ。
私は俊朗君隣にいる彼に尋ねた。その背は高いけれどまだあどけなさの残る同じ歳なのに年下に見える彼に。
「あの、このお店って」
「ログハウスみたいだよね」
「スイスの山奥にあるね」
「例えて言うのならアルプスの少女の」
「お爺さんのお家ね」
「そんな感じだよね」
「そうよね、このお店って」
本当にそうした感じの外装と内装だった。
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