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美しき異形達

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第二十五話 幻と現実その九

「奈良市とかね」
「それで北の方はか」
「憧れよ」
 そうなるというのだ。
「行ったことがあることはあるけれどね」
「ホームグラウンドじゃないんだな」
「同じ奈良県でもね」
 裕香のそれはあくまで南だというのだ。
「そうなのよ」
「成程な」
「けれど奈良行ったら任せてね」
「そうさせてもらうな」
「じゃあ夏休みは皆で行きましょう」
 ここでこう提案したのは菫だった。
「関西中をね」
「いいわね、八条鉄道使えば何処にも行けるから」
 それで、と言う裕香だった。菫に対しても。
「移動も楽だし」
「そう、だからいいと思うわ」
「それじゃあね」
「他の皆はどうかしら」
 菫は菖蒲に菊、向日葵と桜にも尋ねた。
「それで」
「いいと思うわ」
「面白いんじゃない?」
「夏休みは時間あるしね」
「旅行は大好きです」
 四人も笑顔で答える、こうしてだった。
 七人での旅行のことが決まった、そしてここで菫はさらに言った。
「黒蘭ちゃんと白蘭ちゃんにも声をかける?」
「あの娘達にもかよ」
「そう、どうかしら」
 こう薊に言うのだった。
「二人にもね」
「いいんじゃね?」
 あっさりとだ、薊は菫に答えた。
「旅は多い方が面白いしな」
「そうよね、それじゃあね」
「九人になるかな」
「智和先輩は?」
 裕香は彼の名前を出した。
「駄目かしら」
「先輩男だしなあ、男一人だけってまずくね?」
 女の子ばかりの旅の中でというのだ。
「それって」
「ううん、そうなるかしら」
「先輩に聞いてみないとわからないけれどな」
「学校的にはあまりいいことじゃないわよね」
「いい筈がないよな」
 男女の泊りがけの旅行、それ自体がだ。
「やっぱり」
「それじゃあ」
「先輩はいないことになるかしら」
「そうなるだろうな」
 彼についてはそうなると話された、そしてだった。
 そうした話をしつつ映画を観てハンバーガーを食べてカラオケを皆で楽しんだ、そしてその後でだった。解散の時に。
 菫は皆にだ、あらためて言った。
「夏休みはね」
「ああ、その時はな」
 ここでも薊が笑顔で答える、夕刻の駅前において。
「楽しく旅行しような」
「まず計画を立ててね」
「何処に行くか、か」
「その順番をね」
 考えていこうというのだ。
「そうしましょう」
「だよな、行く順番をな」
「奈良も京都も他の場所も行くから」
 まさに関西全域をだ。 
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