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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十一章
  鬼退治前

一方武田家がいる躑躅ヶ崎館ではざわついていた。今は夜だけど、分身体である俺は静かに目を覚ました。喋るのは本体の俺からの口のみだけど、今頃は鬼は全て殲滅しているのかもな。外から聞こえるのは多くの人たちの走る音だな。俺は起き上がると聞きなれた声が聞こえた。

「一真様一真様。何だか周りが騒がしいです」

「おはよう。綾那。だけど俺は俺ではない、所謂分身体だ。本体は今頃船で仕事をしているんじゃないのかな。それより良く眠れたかな」

「はいです!たくさん寝れたです!ですけど、一真様の分身体ですか?どこかからどう見ても一真様しか見えないです」

「しーっ。綾那、声が大きいわよ」

「歌夜も起きたのか。おはようとでも言っておこうか」

「おはようございます。といっても分身体ですよね。この事は内緒にした方がいいですか?」

「その方がいいだろう。幸い武田家にはバレテないし。で、今の状況はどうなっている?」

「分かりませんが、騒々しいのは確かな様子です。何かあったのでしょうか?」

どうだろうな。まあ俺の本体は今頃鬼を殲滅して、武田の力を見てみたく夜叉たちを召喚したと思うな。それを見た人間は鬼としか見えない様に幻術をしたのだろう。

「ご主人様」

「小波か。といっても俺は分身体だ。ある程度は話せるが屋敷内が騒がしいようだな」

「はっ。それが・・・・・」

その瞬間だった。

「たのもー!」

勢いよく障子が開かれて、一人の女の子が、何かあったかのような顔をして入ってきた。小波の方を見ればもういなかった。さすがだな、反応速度がいい。

「織斑一真!お屋形様がお召しら!」

おっかない顔に、完全武装のはずだが、第一声は意外だった。

「は?ら?」

「お召しら!」

「おしめら・・・・?その前にこれを喰らえ!」

と言ってからハリセン一発。いくら分身体でも俺は俺だからな。呼び捨てにされるのは何か苛つく。

「うぅぅ・・・・・。何するのら!お召しら!と言っているのら」

ハリセンはたいた後にこれだからなのか。完全武装で怒っているが逆に俺が怒りたい方だ。

「あの・・・・お召しだ、と言っているのでは?」

「あ、そう言う事か」

言われてようやく気付いたけど。

「むにゃむにゃ・・・・何れすか・・・・」

「ふぁああ・・・・・」

そして、謎の女の子の堂々とした声に、脇で寝ていた軍師二人もようやく起きる。

「とりあえずお召しには従うが、どうすればいい?」

「嫁達を連れてついてくるのら!」

「・・・・了解。ついて行けばいいのだな?」

「うむ!急ぐのら」

分身体だけど武器は使えるから何とかなるかな。綾那をチラリと見ると無言ではあるが頷いている。まあ何かあれば俺や綾那が何とかすればいいことだし。で、そんな女の子に連れられて時計を見るとまだ夜の9時までではなかったし、月を見ればそこまで高くない時間帯だった。俺は通信機をつけていて喋るのは本体だからな。今頃鬼を殲滅中か殲滅後に武田の力を見るべく待ち伏せでもしてるのかな。俺と本体はリンクしているし、トレミーからの情報も来る。短い時間ではあるが良く寝れた方だ。そしてこの感覚はというと。

「・・・・一真様」

「うむ。この空気は間違いないな」

この独特のピリピリした空気。部屋の中でもそう感じたが、外に出るとさらにピリピリ感がするな。それに軍師二人はさっき蒸しタオルで顔を拭かせたから大丈夫だけど。

「それで、この空気から察して倉にある俺達の武器を取りに行くのか?そして戦の準備をしているんだろ?」

「そうなのら」

まあ誰と戦うのは想像が付く。鬼はすでに本体である俺が殲滅している最中だ。そして鬼の格好をさせた夜叉たちに襲わせる。武田の兵の力を見るためにな。その時は俺は戦うフリをする。いくら分身体でも俺は俺だ。

「そういえば君の名前を聞いていなかったが、何て名だ?」

「兎々は高坂弾正昌信!通称は兎々ら!」

「兎々、ね。うむ。覚えたが俺の事は呼び捨てすんな。またはたくぞ」

「一真様のあれは畏怖ですが、なるほど。あなたが武田にその人ありと言われ始めた、逃げ弾正・高坂殿ですね」

原作ではここでエンジンがかかるけど、まあいいか。武田家の者は俺の事は本体だと思っていると思う。分身体と本体との違いはほとんどないが、喋れない事だ。なので、喋るときは本体である俺が通信機越しで喋るんだけどね。こちらの会話も聞いているし。

「そうなのら!えっへん!」

「・・・・それほど有名なのか?」

「はい。武田に四天王あり、不死身の馬場美濃、天下の副将・内藤昌秀、赤備え・山県政景・・・・。そして四天王の最後の一人が、今、目の前におられます、逃げ弾正、高坂昌信殿なのです」

「むふー!」

「逃げ弾正?何か意味でもあるのか?雫」

「はい。本来、異名で逃げるなどと呼ばれるのは、大変に不名誉な事なのですが・・・・こと高坂殿に関しては、違う意味を持つのです。正確な情報収集と分析力。そして慎重かつ明晰な判断力を備え、無謀な戦はせずに退く。ただしひとたび戦えば必ず勝つ・・・・まだお若いですが、既に名将の風格ありと」

「ふむ」

「れも、春日様たちは兎々よりももっと凄いのら」

「逃げ知らずの弾正の兎々で四天王の末席って、上はどれだけなのやら」

名将ばかりだな。まあ黒鮫隊でもベテランの者で精鋭部隊の一員だけどな。

「棟梁である晴信さま、そして御妹君の典厩様、武田四天王。武田が日の本一の強国とまで噂される理由は、まさにそこにあるのでしょう」

武田の強さは力以外にあると言っていたが、まあ黒鮫隊は別次元に強いからな。力もそうだが情報も更新しているし。

「ふむふむふむー。おまえたちなかなか見所があるものたちら。人は石垣、人は城。お屋形様のこの言葉を、皆れ守って力を合わせているからこその武田軍団なのら!」

「そういえばそれ、春日も言っていたな」

「そうですね。国を守るのは兵や軍ですが、突き詰めて言えば、その兵や軍を司る人物もみな人。人こそ国を支える石垣であり、城であり。・・・・財と思え」

「・・・・鎌倉以来の名家・・・・と言えば聞こえは良いですが、ぼんくら揃いの古ぼけた棟梁が多いなか、武田晴信殿のこの言葉は、やはり尋常ではなく思いますね」

尋常ではないけど、俺らにとってはどうなんだろうな。俺達は軍人であり独立部隊であり、それを仕切っているのがこの俺である。それと同時に神の頂点とも言われている創造神だ。まあ偉いかどうかは俺には分からないが、他の神々には偉いらしい。

「そうなのら!われら武田は、光璃様という稀代の名君を擁す、日の本一の国なのら!」

よほど自分の国に誇りがあるのか、兎々は小さな胸を一杯に張っているが、創ったのは俺なんだけどな。

「・・・・らのに、お屋形様はろうしてこんな、れくのぼうを・・・・」

そこから俺を見た瞬間テンションが下がる。本来ならハリセン一発だが、まあしょうがないのかもしれない。

「お屋形様には、我らには伺い知れぬ深いお考えがあるのですよ」

「そうそう。お屋形様が決めて間違ってた事なんて、一度もないんだぜ?」

そんな話をしている俺達に声を掛けたのは、兎々と同じく完全武装した、二人の女の子だった。一人は大人しそうな感じで、もう一人は見るからに武闘派と言う感じだ。

「心!粉雪!」

「それより、兎々ちゃん。春日さんがお待ちでしたよ」

「ななななな・・・・・・春日様が!?」

春日って、確か最初に俺達を案内してくれた人だったよな。四天王の一人だったか。兎々のビビりようでは、兎々から見れば相当格上なんだろうが。俺から見れば格上という感じはしないな。

「それじゃ、先に行くんだぜー」

「ああ、待ってよこなちゃん!」

そう言って、心と粉雪の二人は廊下を先に行ってしまった。兎々の態度的にあの二人が四天王の残りの二人なのだろう。

「ちゃんとついてくるのら!」

「ああ、おい。ちょい待てや」

慌てて駆け出す兎々について、俺達も廊下を走るが、案内するように言われて俺達を置いて行ったら、それこそ春日に怒られると思うが。お、今最新の情報が入ったが鬼は殲滅したようだ。今はIS部隊を鬼に見立ててコスプレをしているそうだ。まあ全身装甲だから見た目を少し変えれば分からないだろう。あと八大夜叉大将を呼んで夜叉を鬼風にしているそうだ。

「ちゃんと鬼と戦える奴らなのか、兎々がちゃんと見定めてやるのら!」

「・・・・・・(ああ。やっぱりか)」

戦う相手は鬼、か。でも残念。鬼は俺達が殲滅してるから、その情報は古いな。今夜叉とIS部隊が鬼に変装をしているらしいな。本体である俺はトレミーの格納庫にいる。ドウターゲートの反応があったからな。倉に保管してあった装備を受け取り・・・・辿り着いたのは、篝火の灯る庭の一角だったけど。

「遅いぞお主ら!典厩様やお屋形様を待たせるとは何事だ!」

「ご、ごめんなさいなのら!こいつらが・・・・・・」

「構いません。急ぎ軍議を始めましょう」

「お屋形様という事は、君が・・・・?」

こいつが武田晴信・・・・・なわけないか。確か情報によると赤い髪をした恋似の子だと聞いている。

「・・・・名乗りは後でやがります。大まかな事は聞いてやがりますか?」

「まあな。鬼が出たという事のようだ。それを退治しろという事なんだろう?」

「いいでやがりますか?」

「相手は鬼だし、手伝う理由がないさ」

「ですが、どうしてこのような地に鬼が・・・・・」

「それを道すがら説明を。まずは方策を決めましょう。春日」

「はっ。・・・・敵の鬼は隊伍を作っております。下山からの早馬の話では、山狩りで採り逃した集団がそのまま北上、近くの集落を目指しているとのこと」

俺達にそう説明しながら、春日は敵の位置を示す将棋の駒をいくつか地図の上へと並べていく。見た感じだと甲斐の南・・・・駿河方面から山を越えてきているようだ。

「今回は心と粉雪が遠方の東側、典厩様率いる一門衆が後詰めですゆえ、我々は手近な西を叩きます」

「我々に任された集団はどこまでですか?」

卓の上に乗せられた駒の数は、5つ。うちの西側の2つがある程度近い距離にある。残る東側の3つは距離が離れている。

「我々は西の2つを叩く。2つとは言うものの、双方の動きに協調はなく、ばらばらに人里を目指しておる様子ですな」

「一応聞くが、策はあるのか?」

「奥の部隊の近くに、集落があるのら。そこに近寄られる前に叩いて、返す刀れ手前を叩くのら」

「手前の部隊の周りに人里はないのですか?」

「ないとは言わんが、少々距離があるゆえ、我らの機動力なら引き返して叩いても十分間に合う。奥の部隊の方が近いぶん、そちらが恐い」

ふむ。そう言うが鬼は全て殲滅済みである。東側はすでに駆逐してあるから、今は夜叉を配置している。西はIS部隊が鬼のように特殊メイクみたいに変装をしている。それと本体の俺が倒した鬼を死者蘇生させて支配の力で、言う事を聞かせているようだ。

「そう。で、鬼の大きさはどのくらい?あそこにある小屋くらいあるの?」

俺が指したのは、庭の隅に建てられていた小屋があった。俺達の知る鬼で言うなら中級クラスの大きい奴だ。

「所謂雑兵に分類される連中ですからな。そこまで大きくはありませぬ。我らであれば一人で十分戦える相手でしょうが・・・・」

まあ、力のない者にとっては脅威だな。

「一真様にお聞きしますが、今鬼の数はどれほどですか?あと大きさは?」

「何を言っているのら。情報はこちらが持っているからそっちは知らないはずなのら!」

俺はしばらく無言になり、通信機を聞いていた。どうやら準備完了のようだ。たぶん俺達が行くところには本物の鬼がいるんだろうよ。あとは武田四天王が当たるところには、夜叉とIS部隊と支配された鬼が配置している。

「確認した。鬼は十から数十匹。東でも西でも多いだろう。あと中級の鬼がいるらしいがそこはまだ未確認情報だ」

「なぜ我らが知っている情報をお主は知っているんでござるか?」

「あとで教えてやるが、手前のは俺達に任せてほしい」

「・・・・兵を貸せと?」

「そこまでは言わんし兵はいらん。俺と綾那と歌夜だけで十分だ。道案内だけ欲しいな」

「五匹を三人なのら?」

「ちっこい鬼五匹なんて綾那だけで十分なのです!」

「頼もしいな。・・・・ですが、客人の一真様らを単独で動かすわけにも参りませぬ。今回は兎々の策を取らせていただいても宜しいか?」

「ほう。後悔しても知らねえぞ。それほど自信があるならな、なら今回だけはそうさせてもらう」

「すまんでやがりますな。あと後悔とはどういうことでやがれですかな」

だってさ、鬼は既に殲滅済み何だぜ。それに一部は蘇らした鬼を強化させたし、俺がやれば浄化の炎で燃やすことが出来る。まあ今回は武田家の力を見る事が目的。あんまりにも弱かったら話にならないからな。なのでそこらへんは細かく調整されているし、夜叉とIS部隊は飛ぶなとも言ってあるそうで。手前の鬼は俺達の支配された鬼で奥の鬼ではなく夜叉とIS部隊を倒すのはスピード勝負だが、簡単に倒れたら話にならないからな。

「ご心配はもっともですが、護るべきは拙らの国の民。こちらが捉えた以上、指一本とて触れさせはしませぬよ。よろしいですかな?お屋形様」

「ええ。それで動きましょう」

「・・・・それとでやがりますな、一真様。手伝えと言っておきながら、大変申し訳にくいでやがりますが・・・・」

「私たちは残れという事でしょう?」

「・・・・人質です?」

「綾那。そんな事言わないの」

「とはいえ、そう言われても仕方がないでやがります」

まあそれも予想通りの話だな。一応俺らの真上には桜花、結衣、沙紀が空から監視をしている。俺の合図で地上に降りてくるようだけど。

「本陣には夕霧が詰めるでやがります。お二人に非礼を働くような事はしやがりません」

「一真様」

「ああ。夕霧なら信用できるだろう。と思ったが一応なので俺の部隊の人間を本陣に置く。それでいいかな?」

「一真様の部隊?もしや我ら武田でも知らぬ謎の部隊でやがりますか?」

「そうだ。桜花、結衣、沙紀!光学迷彩を解除して姿を現せ!」

と言ったら俺の前に一瞬にして3人が現れたことに驚く武田家の者たち。今回は顔を見せられないので3人とも全身装甲にしてある。桜花はジャスティス、結衣はエクシアRII、沙紀はサバーニャだ。今は武装は展開していないが、量子変換ですぐに出せるだろう。

「これはいったい?」

「こいつらが纏っているのは俺達の技術のもんでな。普通の鎧とは大違いで空も飛べる代物。赤が桜花、青と白が結衣、緑が沙紀だ。この3人は詩乃と雫とは仲がいい者達だ。まあ許可無しでもこいつらはいるけどな」

「桜花さんたちがいれば安心できますし、通信もできます。それに我々2人は足手纏いですから、残るつもりでおりました」

「無事なお帰りをお待ちしています」

「というわけでいいだろうか?こいつらがいても。言っとくが普通の武器では歯が立たないからな」

「夕霧はいいと思うでやがる。お屋形様はよろしいでやがりますか?」

「いいでしょう。許可します」

と許可が出た所で俺はポケットに手を突っ込む。

「(小波。一応黒鮫隊の3人を護衛させておくが一応頼んだぞ)」

「(承知しております。あの姿の強さは知っておりますゆえ)」

「(・・・・頼んだぞ)」

黒鮫隊を配置させたけど、武田を信用しているわけでもない。それに武田が鬼を殲滅と思っているが、ただの鬼ではなく素早さもあり力もある鬼たちを揃えた。それと夜叉とIS部隊もね。夜叉たちも人間の力を見定めたいらしく、うずうずしていたそうだ。 
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