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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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二十一章
  選抜メンツ

「夕霧のあの顔は見物だったわね。上出来よ、一真」

俺がドライグと話していたとき、典厩が出て行った後の広間では、よっぽど策がハマったのが嬉しいかったのであろう。美空が驚くほど上機嫌だった。

「まあな。しかし実際どうするかは考えもんだな」

連れて行けるのは四、五人と言っていたな。さすがにこの人数を全員連れて行くのは難しいのは承知済みだった。けどあの顔を見れただけでも俺にとっては上出来だ。しかし少ないなと思ったけど。

「とはいえ、向こうとしても最大限に気を使ってくれたかと思います。演技という様子でもありませんでしたし」

最初は堂々としていたが、美空との恋人発言や俺が本物の神であるという話が出てきたときは、結構顔に出ていたな。俺としてはもう少し楽しみたかったが。

「さてと、選抜は俺が決めた方がいいんだよな?詩乃」

「はい。これは一真様がお決めになった方がよろしいですが、一つ質問があります。黒鮫隊についてはどうされるのですか?」

「黒鮫隊がいる船は俺が移動すると自動的について来るようになる。つまり俺が甲斐に行こうとすると船がついて来る訳だ。ご理解できたかな、詩乃」

そういうとどうやら納得してくれたようだった。黒鮫隊も一真隊の影の部隊だしな。

「ハニーの決め事なら、皆、納得いたしますわよ」

「それは分かっている。今考え中だ」

皆の彼氏=未来の夫は俺だからな。俺が決めて彼女を引っ張らないといけない。

「まだ考えがまとまらない。俺の方で考えて理由もつけて決めるから、納得できないのなら言ってほしい」

「はいっ!」

まずは黒鮫隊は船でついて来るから一真隊の兵はいらない。一真隊を指揮する人物を残さないといけない。大局的な視野で物を見れて、行動もできる・・・・と言えば。

「一葉」

「うむ!」

「留守を頼む」

「何じゃとっ!?」

「驚きすぎです、公方様」

「驚きもするわ!何故じゃ、余も主様と甲斐に行くぞ!行くったら行くのじゃ!」

「その気持ちは嬉しいんだけどな~」

そっと頭を撫でてた手にイヤイヤを見せる一葉は、子供みたいで可愛らしいとは思ったが。深雪もこんな感じなのであろうか。

「な・・・・撫でられたからとて納得はせぬぞ・・・・。せめて、事情を説明せよ」

「ああ。一真隊の本隊を残すから大将の器を持っている者が必要だ。・・・・この大局を見据えて、どんな困難な選択肢でも選べる大将が」

「そのようなもの梅やひよで良かろうが!」

「えええええええっ!?私なんて論外じゃないですか!」

「分からぬぞ。これだけ下克上が成り立つ世の中なのじゃ。ひよが摂政や関白になってもおかしくはなかろう」

「そんなことあるわけないじゃないですかぁ!」

「か、一葉様・・・・」

「はてさて。梅殿もひよ殿も一真隊きっての逸材ではございますが、人脈や血統、立場もろもろを鑑みても、一葉様に及ぶものではございますまい」

「幽、貴様なぜ邪魔をする」

「邪魔などと。現状を鑑みた上での最良の人選でしょう。というか、これ以外に選択肢などありませぬ」

「そうですわ。私も蒲生の家には誇りを持っておりますが、関東管領の長尾殿とも歩みを共にして動く場がある以上、蒲生には荷が重すぎます。・・・・ですから、私はその分、一葉様の補佐をいたしますわ」

「梅・・・・・」

「近江の名門、蒲生家の一員として・・・・ハニーが私にお望みになるのは、そこですわよね?」

「梅ちゃん・・・・。でもホントは、一真様と」

「それは皆さん同じでしょう?もちろん、一番ハニーにご一緒したいと思っている気持ちまで、譲るつもりはございませんけれど」

「・・・・ありがとな」

そう言うと俺は梅に頭を撫でてやった。

「ふふっ。なら・・・・もう少し、撫でてくださいまし」

「うむ。一葉を支えてあげてくれ」

手の中には、梅の柔らかい巻き髪の感触を刻み付けるようにする。今はこれが精いっぱいだ。

「むぅ・・・・。梅にそう言われては、余もそうせざるをえぬではないか」

「・・・・それがしもお側におりますれば、今は我慢です」

「だったら、雀たちもですかねー。お姉ちゃん」

「・・・・・・・・」

「まあ、肝心のお給金は公方様からいただいてますしねー。金の切れ目が縁の切れ目だよね!」

「それを言われると、足利家としてもいつ縁が切れるか分かったものではありませんな」

「・・・・・・・!」

「何だか烏さん、全力で否定してらっしゃるみたいですけれど?」

「まあそういうことにしておくか。雀たち八咫烏隊も本隊の力となってくれ」

八咫烏隊の本領は、身軽さを生かした狙撃だ。もちろん黒鮫隊も狙撃には自信があるが、八咫烏隊無しだと本隊の力が失う。鉄砲隊は八咫烏隊とセットにした方が力は出ると思うし。それに甲斐に行っても補給はないと思うしな。

「やれやれ、おぬしらもか・・・・。仕方がないの」

「幽もありがとな」

「それがしは結構ですから、その分、公方様に構ってあげてくださいませ」

「そうするよ。一葉もそれでいいな」

「主様の期待を一番に受けるのは余じゃからな。忘れるでないぞ・・・・?」

「といっても愛妾だから序列は関係ないからな」

そう言ってあげてからまた頭を撫でてやった。正室だったら答えるが、正室は奏なんでな。

「桐琴たち森衆も残ってくれ。理由は分かるよな?桐琴」

「ああ。ワシらが離れると森一家の兵を仕切れるのはワシとガキ、それと各務もな。それに一真はワシらが認めた最強だ。ガキもそれでいいだろ?」

「ホントならついて行くけど、あいつらはオレ達がいないとダメになる。それが理由なんだろ?」

「まあな。あと森一家には久遠との繋ぎを頼みたい。美空にも頼んだが、こちらからも使いを出したい」

「・・・・それは大役だな。それもワシらしか出来ない大仕事だな」

桐琴の言った通り一真隊は動けない。別に黒鮫隊でもいいけどあれは俺の直属部隊だ。機動力があり戦力もあって久遠とも繋がりの深い相手ではないとこの条件が揃っているのは森一家だけだ。

「そうすると護衛はどうすんだ?いくら一真が強いと言ってもつけないとまずいだろ?鞠がついて行くのか?」

「鞠は残るよ」

「・・・・分かっていたのか?」

「うん。信虎おばさんの事もあるし、鞠はこっちに残った方がいいよね?」

「俺もそう思う」

追放した信虎が駿河を手中にしている以上、甲斐で鞠の存在が知れたら、駿河侵攻の大義名分に使われる可能性大だ。そしたら駿河は武田領になってしまうと、鞠の夢を叶える事ができなくなるし、最悪今川の残党として扱うのかもしれない。相手の考えが分からない以上は距離を置くのがいい手なんだろう。

「なら護衛はどーすんだよ。いくら古株のひよやころじゃ無理があるだろ」

「それについては問題ない。綾那に歌夜」

「はい・・・・?」

「護衛は二人にお願いしたい。いいかな?」

「ふぇーっ!?綾那、一真様についてっても良いのです!?」

「うむ。・・・・その辺りは大丈夫なのかな?葵とか」

「・・・・はい。先日、松平の陣に戻ったときも、我ら三人、何があっても一真様をお助けしろとのお言葉を頂いております」

「・・・・・なるほど」

沈み気味の歌夜の声で言われたら何か裏があるのでは、と考えてしまうが。彼女たちは松平衆と距離を置いた方がいいのだろう。その原因が俺ならなおさらだし。それに葵は武ではない方法で世を変えるだったかな。そうなると歌夜たちはリストラの可能性が高いな。

「歌夜たちには悪いが、俺は三人いてくれると助かる。いつもありがとな」

「いえ・・・・。一真隊の皆さんを差し置いてのお役目である以上、この一命に代えましても、きっと一真様をお守り致します。綾那もそれで良いわね?」

「ふ、ふ、ふ・・・・・」

「ふ?」

「ふにょーーーーーーーーーーーーーーーーっ!やったですーっ!歌夜、綾那、一命に代えてもこのお役目、果たしてみせるですよっ!」

「・・・・まあ、鹿のガキだけじゃ頼りないが、もう一人行くのであればそれでよい。貴様らしくじんなよ」

「綾那ちゃん、歌夜ちゃん。一真の事、よろしくね」

「綾那にお任せなのです!」

「はいっ」

「後は・・・・・・」

ひよ、ころ、詩乃、雫の4人が最後になってしまった。

「何かお悩みですか?」

「ああ。あと二人はどうしようとね」

双方の安定が必要なら、軍師と将を一組にして同行させればいいのだけど。さて、どうしようかな。

「でしたら、私が本隊に残りますから、軍師は詩乃で。それと・・・・将は、様々な事に対処の出来るころさんにお願いしてはどうでしょう」

「でしたら、同行は雫でも・・・・」

「軍師は優秀な方が主の傍にいるべきです。それに私なら詩乃の動きに合わせられますから」

「雫・・・・・」

「一真様。いかがでしょうか?」

まあ何が起こるかは不明な訳だし、詩乃がいてくれるのは心強い。ころもどんな状況でも対応できるからその組み合わせがいいのかもしれない。

「一真様」

「ん?ころたちも何か意見ある?」

「はい。・・・・あと二人なら、詩乃ちゃんと雫ちゃんがいいと思います」

「・・・・・えっ?」

「それだと手薄になるぞ」

一真隊は戦闘する予定はないと言っても、方針によっては戦うときもあるだろう。軍師なしだときついと思うし。

「・・・・いえ。その案があるなら、私もころとひよの意見に賛成です」

「詩乃もか・・・・」

「こちらでは戦闘になる可能性はさして高くありませんが、向こうでは何が起こるか分かりません。もし戦いとなれば、軍師二人は足手まといかもしれませんが・・・・」

「そんなの綾那が守るから任せるのです!」

「私もです」

まあそれはそうかもな。こちら側は戦闘はなくともあちらではあるのかもしれない。甲斐側の不測の事態が多いのかも。だとすれば軍師二人がいた方が対策や対処が可能になる。

「こちらの事は任せておけ。三人寄れば文殊の知恵とも言うしの。両兵衛の片方分ぐらいは何とかなろうて」

「そうですわ。詩乃さんや雫さんがいなくても、私たちで必ずや上手く進めてみせますわ!ですわよね、ひよさん。ころさん」

「ええ!」

「もちろんです!」

「一葉・・・・梅・・・・皆・・・・」

「それに実際はもう一人、お連れするつもりなのでしょう?」

「ああ。そこは一番で決めたところだ」

「でしたら、これが一番良い人選ですわ」

「それならひよところも留守番な。任せたぞ」

「はいっ!お任せください!」

「だけど絶対絶対、無事にお戻りくださいよ?」

「それは承知の上だ。約束する」

甲斐に行く六人、無事に帰って、また皆で過ごすのが、今できる一番の約束だ。二人の頭を撫でながら、そう思った。

「決まった?」

「ああ。悪いが、もう一度典厩を呼んでほしいんだが」

「了解。・・・・松葉!」

「・・・・(コクッ)」

「では、その間に私たちは出立の準備を整えてきます!」

「宜しく頼むよ、ひよ」

それからしばらくして、松葉に連れられた典厩が上段の間へと戻ってきた。 
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