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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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ニ十章 幕間劇
  別れの夜

俺はあの後に一度船に戻りメディカルチェックをした。さっきエリクサーを飲んだから大丈夫だとは思うけど、一応な。結果は大丈夫とのことで今は屋敷でノーパソを出してからある書状を打っていた。久遠の繋ぎについて打っていた。けど、俺が打っていたのは現代文なので打ち終わった後にゼロがこの時代の文章にしてくれる。で、それを印刷して隣にいる雫に見せたけど。

「こんなもんか?」

「そうですね。それで長尾家の検閲があっても、問題ないと思います。それよりお体の方は大丈夫ですか?」

「ああ。もう大丈夫だ。色々と心配をかけたな。久遠との連絡についてはこれでいいと」

美空からやっと許可が出たので、ようやく出せる久遠の手紙。本当なら越後が落ち着いてから出したかったが、武田の使いが来た今現在、この後の事を考えたら今書いとかねばいかんし。

「それならいいが、返事は受け取れんの」

「俺達の無事を伝えるだけでいい。・・・・今はな」

本来なら返事を待ちたいが、今の状況を考えたらそういう訳にもいかんから。甲斐に返事を出せなんて論外だし。俺らが使っているケータイや通信機で電話、メールが出来れば1分もかからないが、この時代にはまだそういう技術がない。この技術を持っているのは俺達黒鮫隊だけ。あとこの世界では返事を待つのにどれだけ時間がかかるのやら。たまにはこうやって手紙を書くのも新鮮なわけなんだよな。文章を考えて打つのは、あまりないことだ。

「ですが、ちゃんと連絡を取ってくださるでしょうか?」

「それなら心配いらん。一度約束を破るような子ではないと思うが、美空は」

「その自信が一体どこから来るのか、私にはいつも不思議なのですが」

「まさに天の授かり物なのであろうよ」

「神の勘だ。それに俺の勘はよく当たる。それに手紙を渡すだけなんだからな、それに美空はこの先の事を分かっているだろうし。それに久遠もな」

見据えるゴールは一緒だが、果たしてこの外史はどうなるのかな。考える道のりは違うとしても利害が一緒なら、話し合えるだろうし。例えその場に俺がいなくても。

「女性に対しては些か甘いような気がします。ですが心配はしますよ」

「男でも女でも仲間に対しては優しくも厳しくもしている。それにこの手紙、俺の自筆の方がいいんじゃないのかなと思うんだが」

本当なら俺の字でもよかったが、こっちの方が俺だと分かるらしいからワードで打ってみた。で、今は皆に確認をしてもらっているが問題はなさそうだ。あと美空は字がきれいだとか。俺はキーボードで慣れちゃったからか、あまり字は書かないんだが。サインとかは自筆だけど。

「たのもー。たのもーっす!」

「開いてるから入っていいよ」

開けたのはやっぱり柘榴だった。

「ああ、いたいた。一真さん」

「どうした?柘榴」

「身体の方は大丈夫っすか?あと一真さんはホントに甲斐に行っちゃうんすかー?」

「ああその事か。身体なら問題はないよ。一応見てもらったけどな、それに俺達がここにいても越後の火種になるだけだ」

身体の方は問題ないが、俺があの部屋から出たあとから長尾勢の者たちを見ていないからか。まあ美空や越後も気がかりだが、俺が何とか出来る問題もないが俺たち黒鮫隊が武力介入はしないつもりだ。しちゃったらもっと悪化するだろうし。

「んー。柘榴は一真さんが火種になるのは大歓迎なんすけど。川中島、むしろ望む所っす!今度こそ勘助と決着つけてやるっすよ!」

「柘榴個人は良くても、それで兵や将を失うだろ。武芸の試合ならともかく、戦争は起きない方がいいだろ?」

「まあ、それはそうっすよねぇ・・・・。でも、一真さんや梅や幽がいなくなると寂しくなるっすよ」

「あれ。梅ならともかく、柘榴と幽はそんなに仲が良かったのか?」

梅と仲良くしてるのは知っているが、幽とはそんなところは見ていないが。

「あいつらとは、和歌と茶の湯けっこうやるっすよ」

「和歌に茶の湯!?」

おいおい。

「柘榴が、和歌に茶の湯だと?」

幽は何でもこなす事は良く知っているし、梅は牡丹なところもあるけど基本的には万能タイプと言っていいのかは知らんが、柘榴が和歌!茶の湯!絶対合わねぇーと思ったのは俺だけだろうか。

「なんかものすごく馬鹿にされた気がするっす!」

「じゃが、おぬしが和歌を嗜むとは知らなんだ。幽の奴、面白そうな事に限って余に内緒にしおる・・・・」

「和歌や茶の湯くらい武士の嗜みっすよ。ねー、一真さん?」

「俺は武士ではないから、そんなのなくてもいけるが。まあ嗜む程度ならな」

「一真様は武士ではなく神様ですからね。ですが、武士としてはその程度の心得はありませんと。ねえ雫」

「そうですね。一葉様もお得意でしたよね、確か」

「嗜み程度にはの。じゃが主様もいけるクチじゃなかったかの」

まあな。あのときはスマホで見たらいいのがあったから、和歌を言ってみただけで。和歌の知識は全然だ。あと茶の湯も作法はある程度知っているが、ほとんどしていない。

「・・・・たのもー」

「あれ。松葉っすね。どうしたっすかー?」

「柘榴もいた。丁度良かった」

「何かあったのか?」

「秋子が宴を開くから出ろって」

「一真さん達の別れの宴っすか?」

「違う」

「まさかとは思うが、戦の前に宴をするんじゃ?」

あの場では俺が武田のとこに行く事を納得していても、後でやっぱりという可能性もある。

「さ、さすがにそれはないと思いますが・・・・」

「やっぱり川中島っすか!」

「それも違う。一真さんたち、甲斐には自分の意志で行くだけ。だから、これは出発のお祝い」

「それは秋子殿のお考えですか?」

確かそういうの考えるのは家老である秋子が担当だったな。松葉の基準だけど。でも松葉は珍しく詩乃の問いにふるふると首を横に振ってみせて・・・・。

「・・・・松葉が思っただけ」

「よう言うた。余らは向こうの誘いのこちらの意思で乗るのじゃ。唯々諾々と従うわけではない。・・・・そうよの?主様」

「まあ・・・・。そうだな」

松葉の言う通り。俺達は俺達の目的を果たすために甲斐に行く羽目になったんだから。これも晴信の書状内容を聞いてから、一瞬甲斐を滅ぼそうかなーと考えていたけど。結局のところ暴走して俺に慕われている神々に止められたけど。それに開くなら出発の宴だろうな。

「すぐ帰ってくる・・・・よね?」

「まああちら側によってだが。その宴には美空は出るのか?」

「・・・・御大将は、出ない」

「美空様不在で宴ですか?それはまた・・・・」

「という事は・・・・まさか美空の奴!」

ストレスが限界域に入ると、悪い癖で出家するんだっけな。今回の件もそれが発動したのか?

「今は空がいるからいるもんな?」

空が居れば出家癖はないと言っていたけど、空でも抑えられないのだったら・・・・。

「それはまだ。でも宴、一真さんも参加禁止」

「それも松葉さんのお考えですか?」

「これは秋子」

「なるほどな。という事で、俺は出ないからお前らだけで楽しんでこい」

「任せておけ。宴は主様の分まで楽しんできてやろうぞ」

「松葉。一真隊の他の連中は呼んでいいっすか?」

「将は皆呼べって。兵にはお振る舞い、ある」

「・・・・詩乃、雫」

「はい。皆が羽目を外しすぎないよう、ひよ達に言い含めておきます」

「うむ。余らに任せておくがよい」

どっちかといえば一葉の方を心配するんだが、まあみんな居れば何とかなるだろう。

「じゃ、俺は行ってくるわ」

「はい。お気をつけて」

「ああ。行ってくる」

言い方はこれで良かったかは知らんが、まあいいと思い俺は美空のところに向かった。美空のところに行ったが、部屋には気配がない。間違えたのか?そういえば柘榴たちに美空が部屋にいるだなんて一言も言っていなかったな。でも今更戻るわけにもいかないし。とりあえず、気配があるところに行ってみるかと思ったら。

「一真様?」

「あ、空」

「おっと近寄るのはそこまでなのですよ!どーん!」

「ここは通さないのです!どやーっ!」

「・・・・・・はっ?」

あの特徴がある口調が二人いるだと!?

「って、そんなわけあるか。何してんだ、綾那」

「や。こいつ、よく話してみると、なかなか話の分かる奴なのです!どや!」

「ふふん。この越後一番の義侠人、樋口愛菜兼続様に付いてくるなど、三河にもなかなか出来る奴がいたものなのですぞ!どーん!」

「どーん!」

「どーん!」

綾那はただそれが言いたいだけだろうに。愛菜について行けるとは、さすが本多忠勝なのか?とりあえず愛菜の相手をしてくれるからハリセン叩かずに済むな。

「空。美空を探しているんだが、どこにいるか知らんか?」

「美空お姉様なら、多分庭の方にいらっしゃるかと」

「そうか。ありがと」

「あの・・・・一真様」

「ん?」

「一真様は・・・・甲斐に行かれるのですか?」

「うむ。そのつもりだ」

「そうですか・・・・」

俺がそう言ったらしゅんとして俯いた小さな頭に、俺は手を伸ばした。

「・・・・あ」

「美空の事、頼むな。空」

こんな小さな子に頼みごとをするのは、普通の男なら情けないと思われるが、拠点には空ぐらいの小さな子はいるにはいる。ちょうど璃々ちゃんくらいか。あとは大人だけど鈴々や真留、はじめがいるし。それに今の越後で一番美空の心の支えになるのは、空ぐらいであろう。

「・・・・はい。一真様も、道中お気をつけて。でもあの時みたいにはならないでくださいね」

「わかっているさ。もう甲斐には滅ぼすという気もない」

小さな頭を撫でていたら、空は先ほどの心配をしてきた。そして心配ないと言ったら優しい微笑みを見せてくれる。

「そうだ、一真様。もう一つ、伺ってもよろしいですか?」

「俺に答えられる範囲なら答えよう。何かな?」

「一真様は・・・・美空お姉様の妾、恋人になられたのですよね?」

「まあそうだな。今の所、祝言もまだだし形式的には妻になるけど恋人だな。この先の未来では妻になっているのかな」

「でしたら・・・・もし、空が正式に美空お姉様の娘になったら、一真様は・・・・」

「ああ・・・・。そうなるのかな」

「はい。もしそうなったら一真様の事をお父さまと呼ぶ事になります」

空が本当の娘になったら、そう呼ばれるとは思っていたが。そう呼ばれるのは慣れないな。主やご主人様やお兄ちゃんとかは呼び慣れていたけど。まあ優斗も父さんと呼んで来るから自然だったけど、空から呼ばれると慣れないな。

「もうしばらくは名前で呼んでくれると嬉しい」

「では、一真様とお呼び致します」

璃々ちゃんはお兄ちゃんって呼んでくるから、自然的だったけどよくよく考えれば俺は璃々ちゃんのお父さん何だよなー。紫苑とは妻だし。

「あれ?そうういえば義侠人は黙るの?」

愛菜が珍しく黙っている。まあ邪魔してきたら俺のハリセンで一発なんだけど。綾那が何かしてる様子もない。

「愛菜は愛の守護者である以前に空様の忠実な臣!空様が喜んでらっしゃる所に無粋を働くなど、天が許してもこの愛菜が許さないのですぞ!どやーっ!」

「どやーっ!」

「それなら別にかまわんが」

といって俺は二人の頭に手を置く。

「おお・・・・っ?」

「うにゅぅ・・・・。ん、一真様ぁ」

「こうやられるのは、愛菜は嫌だったかな?」

「ん・・・・なかなか、悪い気分ではありませんぞ。いつもは叩かれるから頭を押さえるですが、これはこれで良いのです。もっとやるのです。どやぁ・・・・」

よくよく考えると、この独特の口調もしばらく聞けないのか。それはスッキリしたような寂しいような、微妙な感じだな。

「そうだ。一真様は今日の宴には出られるのですか?どーん!」

「いんや。俺と美空は欠席だ。他のみんなは参加すると言ってたから、綾那たちは楽しんでこい」

「うぅ・・・・。一真様がいないとつまらないのです。どーん」

おいおい。マジで愛菜の口調が移っているぞ、綾那。

「一真様。今日の美空お姉様は、だいぶお疲れのようでした・・・・。お姉様を、よろしくお願いします」

「うむ。俺の未来の妻だし、未来の空のお母さんだもんな」

「はいっ」

空の頭をもう一度撫でておいて、俺は空の教えてくれた庭に向かった。

「何だ、こんな所にいたのか」

空たちと別れて、庭に向かったけどそこにはもういなかったので、残された美空の気を探知して辿り着いたところは、庭の隅にある小さな庵らしき場所だった。

「一真・・・・」

「隣、いいか?」

「ええ。それより身体の方はもう平気なの?あれだけ吐血しておいて」

「ああ。もう平気だ。現代で使っている万能薬があるからな、それを飲んだら回復したよ。それより松葉たちが心配をしていた。また出家するんじゃないか、とな」

「そう。それならよかったわ。それにするわけないでしょ。春日山に典厩がいるのに、わざわざこっちの弱みを見せるような事が出来ると思う?」

「典厩がいなかったら、出家してるわけか」

「そういうことよ」

自由奔放でやりたい放題のお嬢様タイプだが、ワガママ一つ言うにも色々と考えているようだ。

「大変なんだな、国の主というのも」

「一国どころか日の本の棟梁の恋人が言っていい台詞じゃないわよ、それ。それにあなたは神の頂点なんでしょ?」

「まあよく言われるが、俺には権力があっても使うときはあまりないからな。それに神仏の頂点と言っても神々を創っただけだけだし。俺はただその報告を聞くだけだよ」

「権力者を自由に動かせる立場なんだから。昔の藤原や北条とあまり変わらない気がするわ」

藤原・北条・・・・藤原鎌足から続く、朝廷の実力者・藤原氏と、鎌倉幕府設立に尽力した、北条時政から続く北条氏のこと。

さすがにそこまで言われるとそうなんだが、拠点での俺の立ち位置は兵藤一誠なら黒神眷属の『王』で、織斑一真なら次元パトロール隊のリーダーでもあるし、財閥の社長でもあるからな。創業者でもあり社長=代表取締役でもある。

「将軍家の後ろ盾があれば、やろうと思えば出来るけど。それ以前にあなたは神様であり、私たち人間をも創った創造神。ならば神の力を使い放題じゃないの?」

「後ろ盾があろうがなかろうが俺には出来る事だけどあえてそれはしなかったな。まあしたといえば雫を小寺家から引っ張ってきたくらいかな。それに鬼のときだって神の力より俺達の兵器で十分だったからな」

「確かにそうよね。あなたは人間相手には神の力を一切使っていないと聞くわ。でも一度は使ったのでしょ?」

使ったといえば使ったな。あのとき春日山で諜報活動してたときには大閻魔化を使って死神を召喚した。無礼打ちをした武士の魂を刈ったけど。その代りその女の子の魂はもう一度生まれ変わりでその母親に生まれようと輪廻転生システムにそうしたんだったな。

「ああそういえば、これ。話してた書状。美濃の久遠に使いを出しても構わんか?」

「分かったわ。・・・・でもいいの?恋人になったとはいえ、この間までは信用できないなんて言った相手にこんな手紙を渡して」

「構わんさ。別に見られてもいいようにしてあるから。あの時はあの時さ、今は十分信用できる相手だ。それに盗み見してもいいように、見られてもいいように確認済みさ。読むんだったら読んで、後は綺麗に畳んでおいてあると助かる」

そこまで先の先を読んでいるのか、ため息を吐いてから、見る事もなく脇の文机に手紙を置いた。

「・・・・お茶、飲む?」

「ああ」

「・・・あ、ごめんなさい。碗一つしかなかったわ。いつもここで飲むときは、一人だから」

「皆で飲んだりはしないのか?柘榴もあんなだけど、茶の湯や礼法にも通じてるんだろ」

「あんなって・・・・随分と酷い言い方ね」

「さっき同じような事を柘榴にも言われたよ」

「一真にもあるでしょ。どうしても一人でいたい時って」

「ああ。あるな。でも一人になるときは仕事をしているときか一人で鍛錬をしてるかのどちらかだな。常に誰かはいたな」

奏に優斗。拠点にいる妻たちに、黒神眷属。リアスやソーナたちにミカエル、サーゼクス、アザゼルたち三大勢力に他の神話体系の神たち。それに創造して創った地球には『アース』に『ナイトメア』、『PMW』、『魔』。『アース』には戦争で死んだ天使、悪魔、堕天使、人間を蘇らせて共存させた地球。大陸は三つあって中央エリア、サイバトロンエリア、ゾイドエリアがあるけど。『ナイトメア』は旧魔王派のために創った地球で魔王はカテレア・レヴィアタン、クルゼレイ・アスモデウス、シャルバ・ベルゼブブの三人。三大魔王だけど、その上は創造神である俺。『PMW』はポケットモンスターワールドの略でそれぞれの頭文字からとった。現実世界で新たなソフトが発売されると自動的に更新されて増える仕組みだ。そのシステムやプログラムを構築したのは、月中基地本部の者達。そして『魔』は人間と魔族が住んでいる地球だ。大陸は一つだけだがな。主にwaffleで発売されたゲームのキャラたちが住んでいる。また新たに増えたらしいが。そして今はこの世界での者たちといるからな。無論ブラック・シャーク隊の者たちも一緒だけど。

「・・・・恵まれているのね」

「まあな。でも本当に一人になりたいという時はあるよ。一人旅とかで」

この世界に降り立ったときにもし田楽狭間じゃなかったら、一人旅してるだろうな。それにもし久遠の目の前ではなかったらどうなっていたのやら。

「この世界の降り立ち俺の使命を果たすために降り立ったけど、おかげさまで優秀な部下や今は恋人だけど、生きてこれた。ここにはたくさんの神や僕もいるけど。それにこんなに可愛い恋人ができた」

無数の縁で構築されたような気がするが、今はそう思っておこうと思い碗に手を伸ばす。

「あ・・・・」

「・・・・ん?おっといけね。これは美空のだったな」

気付いたのは飲み干してからだったけど。

「い・・・・いいわよ別に。その・・・・未来では夫婦になっているんでしょ」

「そうだな。俺なんかと妾になってもよかったのか?」

「・・・・また首を締められたい?」

「それは遠慮しとく。といっても首締められても俺は死なんよ」

不老不死だからな。俺は。傷とかあっても回復の力で何とかなるし、ああでもエリクサーがなかったら俺死ぬときがあったんだったな。神殺しの毒で。

「前に一真は言ったわよね。松平みたいに、あなたを恋人に迎えなくても同盟に加わる事が出来るって」

「言ったな」

「なら・・・・察しなさいよ」

「まあそうするけどな。それに一緒になれる時間がないのは、少し残念だが。だが、俺は必ず戻ってくるからな。ここにいる帝釈天たちにどう言えばいいのか」

今はいないけど、夫婦になったら俺と美空の娘感覚になるな。でも帝釈天たちも俺の妻になったから恋敵になるけど。

「それに前にも言ったが、この同盟で可愛い彼女が増える事なんだと」

「あれ・・・・本気だったんだ」

「本気に決まっているだろうに。あんなので嘘ついてどうするんだか」

「てっきり、他に何か目的があるんだとばかり・・・・」

「あると思うか?」

「・・・・ないわね」

即答されたが、それはそれでいい。

「公方様を恋人にして、女の子手に入れる事しか考えてないと思うわよ。それに野望があったらもう少し上手くいっているでしょうし」

「妾な。それに手に入れる事だけを考えているわけでもないしな」

空になった碗にお茶を注ぎ、美空はそれに静かに口を付ける。あと俺が言った事には反論がなさそうだ。ただ女の子を手に入れるような男ではないとでも思ったのであろうな。半分ほど飲み干してから言った。

「・・・・ね、一真」

「何だ?」

「もう一回、川中島を起こしちゃダメ?」

ゆったりとした雰囲気の中で呟かれたのは、そんな言葉だった。

「あなたを光璃に渡すくらいなら、典厩の申し出なんか蹴っ飛ばして、川中島で戦っても良いのよ。柘榴や秋子だって分かってくれるはずだし・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「美空・・・・・」

「一真・・・・・。・・・・・あいたっ!な、何するのよ!?」

「アホか。美空自身だって分かっているだろう。今の越後の状況で川中島なんか起こしたらどうなることぐらい」

「分かっているわよ。私を誰だと思っているの?」

「美空だ。越後の覇者、関東管領長尾景虎。そして俺の大事な彼女だ」

「じゃ、じゃあ・・・・・一緒に出家しましょうよ。どこか誰も知らない山の奥に小さな寺を構えて、私と一真、それと空の三人で・・・・静かに・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・」

「・・・・・・・美空」

「・・・・分かっているわよ。分かってるけど・・・・。だって、他にどうしたらいいか分からないんだもの・・・・。母様には物心ついた時からお寺に預けられて、姉様が頼りにならないと分かったら還俗させられて・・・・越後を平和にするためにずっと戦ってきて・・・・」

「美空・・・・」

「お寺に帰りたいって言う以外に・・・・どうしろって、言うのよ・・・・」

そういうことか。美空が出家したい理由は、それ以外に逃げ道が分からないからだったのか。京や越前にいたのは、越後のために何かを背負っての遠征に過ぎない。

「あなた、天下一の妾状を持つ者なんでしょ。私以外にも数えきれないくらい恋人がいるんでしょ。だったら・・・・こういう時にどうしたらいいか・・・・教えなさいよ・・・・!・・・・ふぇ?」

そんな美空を俺は優しく抱き寄せた。まったく、やっと素直が出たなと思った。細い体を両手で抱いて、小さな頭を優しく撫でる。

「美空・・・・」

「一・・・・真・・・・?」

「どうしたって・・・・いいんだよ」

「え・・・・?」

「未来の奥さんは、未来の旦那に甘えていいんだから」

「・・・・・・・」

「・・・・美空?」

「どうすれば・・・・いいのよ」

「何がだ?」

「あなたは知っているんでしょうけど・・・・甘え方なんて、私は知らないって言っているでしょ」

「美空のしたいようにすればいいだけの事だ」

「・・・・嫌がらない?」

俺の腕の中、俺を見上げる美空は、どこか不安そうで・・・・。いつもの自信も力強さも、どこかに行ってしまったようだ。

「嫌がるわけないだろう。殺される以外なら、何をされても平気さ」

それ以前に人の手では殺せない存在だけど。

「なら・・・・・・・一真」

寄せられた美空の吐息がそれ以上近付いて来ないのは、美空がそれ以上の距離感を計りかねているので、最後の一歩を踏み込んだのは俺だった。

「ん・・・・・っ」

どこか甘い吐息を抜けて、その先で触れたのは柔らかな唇の感触である。美空にとってはファーストキス何だと思って優しくした。

「ちゅ・・・・・・んふ・・・・・・」

もちろん力は入れてない。ほんの少し力を込めれば振り解けるほどの牢獄、その中で美空がしたのは・・・・俺のキスに、もっとじゃれつくような感じだった。

「・・・・ちゅぱ、ん・・・・ちゅ・・・・・っ。ちゅ・・・・んふ・・・・・一真、ぁ・・・・」

触れ合う程度だったのが、いつしか美空から求めるように力が籠ってきた。俺もそれを合わせるように、美空を少しずつ強く抱きしめていく。

「んぅ・・・・っ。ちゅ、んふ・・・・これ、ぇ・・・・・ちゅ・・・・」

そして。ゆっくりと唇を離せば・・・・俺と美空の間を繋ぐ月光を弾く細い糸。

「ふぁぁ・・・・・・。一真・・・ぁ・・・・・」

「どうかしたか?」

まだどこか夢心地なのだろう。ほんのりと顔を上気させた美空は、俺の方を見上げながら・・・・途切れ途切れの言葉で問いかけてくる。

「あなた・・・・何かした・・・・?」

「何をとは?口づけ以外に」

「だって、ただの口づけで・・・・何で、こんな・・・・気持ちよく・・・・・」

「気持ち良かったんだ?」

「ううううるさい・・・・。こんなの・・・・こんなの・・・・・」

「・・・・・・・・」

「・・・・か、一真は・・・・。気持ち、よかった?」

「もちろんだ」

「だったら、その・・・・。・・・・もう一回」

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・だめ?」

「まさか。だめなわけないだろう」

「なら、黙ってすればいいのよ。・・・ん・・・・っ」

これだけで気持ち良くなるのは序章だけどな。先程よりももっと甘くなった美空の吐息を掻き分けるようにして、俺は美空の唇をそっと唇を重ね合せる。そしてこの部屋全体に防音結界を張ってから情事を開始した。最初は抵抗されたが、これも夫婦の営みになると言ったら抵抗しなくなった。胸を揉み前戯をしてからの挿入。処女をもらった後に中出しをした。そして浄化をしたあとに双方とも服を着始めた。着終えるとまたキスしたときと同じように抱きしめていた。防音結界を解除したら、遠くから宴の喧噪が聞こえてくる。今頃一真隊のお別れ・・・・・違った、壮行会も最高潮を迎えているのだろうな。

「・・・・・一真」

「なんだい?」

「向こうは随分賑やかみたいね」

「そのようだな。行ってみるか?」

俺のその問いに、美空からの答えはない。ただ寄り添った小さな頭が、ふるふると横に振られるだけ。

「そうか」

「一真は行きたい?」

「俺は未来の奥さんの側にいたい」

「あそこにもたくさんいるんじゃないの?彼女」

「それはそうだが・・・・今は、美空だけの彼氏でいたいんだよ」

「他の彼女を抱いてるときも、同じ事を言ってそうね」

「・・・・見下すかい?」

「・・・・いいえ。今は私だけで十分わよ」

「そうか・・・・」

寄せ合った温もりは、情事後なのに暖かい。それを俺は優しく抱きしめる。

「一真」

「何?」

「前にあなた、好きの反対は何かって聞いたわよね。・・・・覚えている?」

「忘れるわけないだろう」

この事については十七章幕間劇だったかな。そこで語られるはずが、カットにしたところだ。カットしたが、俺と美空との記憶にはある事だし。

「一真は好きの反対は無関心だって言ったけど・・・・。やっぱり、好きの反対は嫌いだって思うわ」

「そう?」

「この気持ちが嫌いと同じ所から生まれてるだなんて・・・・思いたくないもの」

「・・・・そうか」

愛も、憎しみも、強く深い。それが長尾景虎・・・・美空だと、前に誰かが言っていたな。そんな彼女だからこそ、根源を同じくする二つの想いはどちらも等しく強いんだと思うが。それを認めたくないのも美空であろうな。でも今の美空なら姉とも仲良くはできそうだけど、今はよそう。この話をすると不機嫌になるからな。それに家族は空と俺って言いそうだ。

「結局私も、妾になっちゃったのね」

「今更だなそれは。不満なのか?」

「不満なわけじゃないけど・・・・何でこんなのと、は思うわ」

「こんなのとは失礼だな」

「厳しい判断をしたとか言ってたけど、あれでしてるつもりなの?何か捨てなきゃいけない所を、何も捨てないで繋ぎとめようとしている。衆生全てを救うなんて、神か仏の所行じゃない。そしてそんな事・・・・本当は神や仏にだって出来やしない」

「帝釈天を呼べるのに?それに神や仏にだって出来ないことを俺は出来る。まあ日の本全域までは無理だが、目の前に起こっている事は対処できる。それに俺は創造神だからな」

と言いながら翼を出して美空を包み込んだ。しばらく静かになったが、天秤に乗せる事時点でおかしいと言ってきた。本当なら春日山も空と愛菜も天秤にかけるつもりだったようだ。そしてもう一度キスしたあとにこう言ってきた。

「・・・・好きよ、一真」

とね。その後一緒にいたが、明日は早いので美空は部屋に戻った。俺も部屋に戻ろうとしたら、俺のケータイにメールが入っていた。なのでトレミーに戻ってから通信を入れると月中基地本部からだった。なんと奏に新たな命がお腹にあって生まれたらしい。生まれたのはこっちの世界で言うと先月生まれたそうだが、今はもう15歳らしい。まあ月中基地本部で生活してると、こちらで1日経つと月中基地本部では1年経つ事になるからだ。今度は女の子なんだと。なので、トレミー1番艦は月中基地本部にて入港させて奏と優斗が英才教育をさせてるとか。そして二十歳になったら正式に次元パトロール隊の隊員になる。そして名前は既に決まっていた。何個か候補があったが、結果名前は深雪になったそうだ。俺はテレビ電話で初めて俺の娘と会ったが、さすが俺の子なのかもう俺が父親だと認識してるそうで、すぐにお父さんと呼んでくれたことに感動したのか泣いてしまったけど。通信を終えたあとに艦内ニュースで俺の娘が誕生したとのことで、終始食堂でお祝いをしてくれた俺の部下たち。そして深夜まで飲みまくってから、春日山城にある俺の部屋に戻った。 
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