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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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ニ十章
  二択の選択×この先への道

「・・・・・・・・」

それから美空はゆっくりと深呼吸。たっぷりとしてから言われた。

「もう出てきていいわよ」

と言ってくれたので、開けてから俺たちは出たけど。最後に一葉が出てきたときにはひよところもいたけど。

「あれ?一真は」

「ここじゃ」

一葉は俺を指差していた。一葉の肩に、俺は暗視ゴーグルをしまってから、一葉の手に乗っかり床に降ろしてもらってから、元の身長に戻った。

「一真って小さくなれるのね」

「大きくなったり小さくできるからな」

「さすが神様と言っておくのかしらね。越後を救ってもらったのもそのおかげなのかしら」

中は蒸し風呂状態のはずが、汗一つしていない状態だったから、のぼせることはなかったけど。

「・・・・して、甲斐の虎は何と言うてきた?」

「ああ。何か凄く機嫌が悪い状態だったが、何か無理難題でも突き付けられた?」

「・・・・無理難題ってほどじゃないわね。けど、どちらかを選ばないと、まずい状況をうまく作り出されちゃったわ。見る?」

「ふむ」

無造作に差し出された書状を、一葉はひょいと受け取ると、斜めに目を通し始めた。

「・・・・なるほど。王手飛車狙いと来たか。確かに機を見るに敏といったところじゃな」

「どれどれ・・・・」

そんな一葉から書状を抜き出したのは、幽だ。美空も見られることは特に気にしていないようなのか、何も言う気配はない。いったい何を書かれているのやら。

「ふむふむ・・・・・ふむふむ・・・・・。なるほど・・・・」

「自分らだけで納得しないで、俺達にも教えてほしいのだが」

「そのまま読めば宜しいですかな?」

「・・・・そのままだとたぶん他の皆は分かるが、俺は分からんから、分かりやすくで頼む」

そのまま文章を読まれても俺だけは分からない状態になってしまうだろう。

「左様ですか。・・・・こほん。ええと・・・・越後のみんなー。内乱鎮圧おっ疲れー!たぶんへーきな顔して読んでると思うけど~、ほんとはチョー大変だったでしょ?こっちが調べた限りじゃ思った以上に被害も出てるみたいだし、疲弊してるよね?っていうか、姉妹で内輪もめってどんな感じ?ねえねえ、どんな感じ?でもざーんねん♪別に光璃そういうの興味ないしー。私たち天下一の仲良し三姉妹だしー!でさ、今から越後を攻めよーと思っちゃってるの♪きゃるーん♪けどぉ~。弱っている美空ちゃん
を倒してもあんまり意味ないしぃ~♪決着は正面から付けたいな~って思ってるしぃ~。今なら見逃してあげてもいいかなーって♪だからさ。その代り、そっちにいる阿弥陀如来の化身とやらをくれないかなーっていうかよこせ。春日山攻めでも助けてもらったのでしょ?興味あるのよねー。そうすれば今回だけは疲弊しまくっている美空ちゃんと越後を見逃してあげてもいいかな~って。ね?お得な取引でしょ?光璃ってばやっさしーぃ♪じゃ、お返事待っているね~。でも、明日までにお返事くれないと、すぐに典厩と勘助に春日山を包囲させちゃうからね☆じゃあね~。・・・・意訳すればこんな感じですかな?」

「うむ。あっぱれである」

「光栄の至り!」

「あんたら天守の外に吊るしてあげましょうか!」

これはひどい。美空がキレる訳だが俺は頭の中が真っ黒になって、怒りと負のオーラを纏うようになる。まだ気付かれていなかったけど、もうすぐ気付くだろう。

「本当の事であろうが」

「王手飛車狙いとはそういう・・・・・。一葉様、一真様のご様子が!」

「どうした?かず・・・・ま・・・・?」

俺の姿が変わっていた。全身が負のオーラになり、黒い感じになっていた。大天使化や大閻魔化とは違う何かにより、俺は今からでも遅くはないと窓から飛びたとうとしていたが、いつの間にかいた護法五神である帝釈天たちに止められている。

「どけ!帝釈天、あの野郎!俺をなめているんじゃねえぞ!オラァァァ!!!!」

「創造神様!いえ一真様!お怒りをお沈め下さいませ。今行ったら間違いなく甲斐は滅びますぞ!」

「お兄ちゃん!落ち着いてってばー!帝釈天の言った通り今行けば越後を包囲している武田の軍が春日山を乗っ取るから、今は落ち着いて!そこにいるあなたたちもお兄ちゃんを止めてってばー!」

「え?でも一真様の怒りの衝撃波で掴めないはずでは?」

「今は負のオーラ、気とでも言いましょうか。それが全開になって怒りと負のオーラによってお兄ちゃんは今、人と神の中間にいるの。それに今のお兄ちゃんは甲斐の武田による怒りと負のオーラだから、怒りを鎮める気持ちを持っておけば取り押さえるはずよ」

「皆の者、主様を取り押さえるぞ!」

と言って、全員が前と後ろになって押さえつけようとしたが、怒りと負が強すぎて弾かれてしまう。だけど今行ったら間違いなく甲斐は滅ぶどころか、包囲されている越後も危うい。そして全員でも押さえられないということで、神界から力強い者たちを帝釈天が呼んだらしい。俺は前へ進もうとしたが、金剛力士や我を慕う女神の力を借りて押さえつけるのが精いっぱい。

「美空様、三昧耶曼荼羅をやってください。そしたら怒りと負のオーラを無くして癒しになるはずです」

「え、でもあれは強力な技よ。ここでやったら全員塵になってしまうわ!」

「大丈夫です。我ら護法善神の力を合わせてやれば、力を最小限にして放つことが出来ます。その時は怒りと負のオーラを解き放つような気持ちを強くしてやってください。そうすれば一真様は元の姿に戻るでしょう」

「分かったわ!一真、目を覚まして!行くわよー、三昧耶曼荼羅!」

護法五神が一真を縛り付けるようにしてからの、五芒星を一真を中心になった。それで護法善神や慕っている女神の力を合わせてからの三昧耶曼荼羅。技発動中に黒いオーラが無くなり消えていった。代わりにいたのは元に戻った創造神である一真が立っていた。取り押さえていた者たちは、三昧耶曼荼羅発動前に離れたから無事だった。倒れた一真を帝釈天が優しく受け止めて腕の中で眠る一真。力を貸してくれた護法善神や他の女神たちは、神界に帰っていった。いるのは護法五神である帝釈天たち。

「ふう。やっと暴走はなくなりました。あとは目を覚ませば大丈夫です。おそらく一真様のプライドと言いましょうか、誇りともいいますけど、おそらく書状の『阿弥陀如来の化身とやらをくれないかなーっていうかよこせ』というのが神の誇りに傷が付いた事であのような姿になったのでしょう」

「やっと落ち着きましたか。ですが、一真様も手紙の意味を分かって甲斐に行き滅ぼそうとしたわけですか。一真様を武田に引き渡せば、内乱は平定したばかりでいまだ混乱している越後には手を出さない」

「逆に言うと、引き渡さなければ攻め込むという事。玉を取るか、飛車を渡すか・・・・ですね」

「越後としては、かなり魅力的な案っすねー」

「普通なら悩む必要のないこと」

「・・・・うっさい。ちょっと黙ってなさい。帝釈、一真の容態はどう?」

「今の所は。もうすぐ目を覚ますと思いますが、創造神様にとってはまだお怒りのようですが、さっきのようには暴れないでしょ」

帝釈天はそう言うと、腕の中で眠っている一真を見て、考えていた。王手飛車狙いとは、要求を断れば、内乱で疲弊している越後に攻め入る大義名分を得るからだ。要求を呑んだとすれば・・・・武田は、今この日の本で起こっている大きなうねりの中心にいる、一真を手元に置くことができる。

「鍵を握る人物である一真様を見抜くとは・・・・やはり甲斐の虎は相当な人物のようですね」

「書状を見た限り、春日山城落城の際の主様の活躍も書かれておった。・・・・どこから見ておったのやら」

「その活躍を書状にしたため、なおかつ、落城してすぐに届ける。恐らくは幾つかの状況を想定しておいて、その状況にあった手紙を選んだだけでしょうが・・・・。一歩間違えば、一真様が甲斐ごと滅ぼす要因になる書状でもありますね」

「・・・・それだけ越後の事は把握しているのだぞ、という裏返しでもありますね」

「だからこそ美空殿は悩んでおられる。・・・・そういうことでしょうな」

「相手が何もかも知っているってのは、黒鮫隊と同じかもしれないの。味方なら嬉しいけど敵になってたら怖いの」

「全くですわ。こちらがどう動くのか分かっていながら、選択を迫るなど・・・・性悪も良い所ですわ」

「そういうことのようですね。親を追放し、甲斐の実権を握り、有力豪族の多い信濃を制する事が出来るということでしょうね」

第三者の声が聞こえたので振り向くとそこには沙紀がいた。なんでも典厩との会談のときからずっとそこにいたらしい。そして帝釈天の代わりに膝枕をして一真の様子を見にきたらしい。あと怒る理由もすでに黒鮫隊の者たちは全員知っていると言った。あと帝釈天によると他の神もさぞお怒りのようだ、冥界にいる神や僕とかも。

「それはありますな。晴信殿は、理知に富み、仁義を備えてはいるものの、敵対者には冷酷で容赦しない、苛烈なお方だと聞いております」

「つまり頭が良くて、優しくはあるが、厳しいときはとても厳しいということですか」

「人の上に立つ者としては理想的な人物像じゃな。まあここにいる主様もそれに当てはまるが」

「で、その人がお頭を欲しがっている・・・・」

「何でまた・・・・?」

「それは俺が聞きたいくらいだ・・・・」

「主様、気が付いたようだな」

「ああ。すまない。俺のプライドに傷が入り、怒りにあふれてたようだ。それより武田の間者なら俺達が調査したときにはもういたようだが」

俺達が調査したときにいたあいつは典厩と言ってたしな。あとは俺を欲しがる理由までは分からない。あとまだ沙紀の膝枕で横になっている。先ほどの怒りと負のオーラで相当力を使ったそうだ。たく、俺も黙っていられないかったけど。結局暴走をしてしまった。

「それだけ一真様を重く見ているという事でしょう」

「ああ。そうだな」

「少なくとも、一真がいなかったらまだ春日山はおろか、空や愛菜も取り返せていなかったと思うわ。あの性悪足長の事だから、その隙に根知か魚津くらいはかすめ取ろうと狙ってたんじゃないかしら」

根知・・・・越後から仁科口を経由して信濃に通じる道を守る城。

「恐らくは。しかし領を狙うどころか、長尾勢は空様と愛菜さんを取り返し、あまつさえ春日山まで陥落寸前」

「・・・・それで、ハニーに気付いたという事ですの?」

「想像ですが。・・・・さらに調べれば、美空様をお助けする謎の勢力は、どうやら織田勢とも関係があるらしいと分かってきた」

「あんたたちが自分たちの名を名乗って、空たちを攫ってきたりするからよ」

「それはお互い様だろうが」

美空の許可なしでは繋ぎが取れない状態だったのだから。

「もう過ぎた事っすよ。言い合っても仕方がないっす」

「ざ、柘榴に仲裁されるなんて・・・・」

「柘榴に仲裁されるようじゃ、おしまい」

「え、いや、ちょ・・・・なんかバカにされたっす!?」

「いずれにしても、田楽狭間の天人の噂や此度の活躍、そして織田の縁者なら、上洛する上で、織田との交渉材料にも使えますし・・・・」

「武田が上洛するなら、美濃や尾張を通らないといけない道があるからな。あと天人じゃなくて神な」

例え天人の正体が神様でバレなくとも、交渉のカードにはなるからな。

「そう言う事です。あと神様だというのは、あくまで噂しかないですから」

「そう考えると捨てる所がないの」

「俺はアンコウじゃねえよ」

久遠も俺を恋人にしたワケは、他の勢力には渡せないからという理由だったし、武田も似たような感じなのかもな。ひよもころもあまり分かっていないようだが、一つ分かっている事は俺が狙われているということだ、人間に狙われるとはな。

「で、美空の判断は?」

「・・・・分からない」

「それはそうだ。だけど、俺は武田に行くぜ。その方がいいに決まっていると思うが」

「え・・・・」

「美空のことだから、越後も俺も護らなければいけないと考えているだろう?」

「・・・・・・」

「それはとても嬉しい事だ。でも今は越後が大事だ。そうだろ?」

「それはまあそうっすけど・・・・」

「・・・・・・」

せめて例の噂が広まる時間があればよかったのだが、今はその時間もない。だとしたら、出来ることはただ一つだ。

「やる事はただ一つだ。俺を差し出し時間を稼ぐ、その間に体制を立て直すのが最上策だな。違うか?」

「・・・・分かってるわよ。そんなの。でも・・・・。また自分一人で全てを背負い込むつもりじゃないわよね?九頭竜川のときに聞いたけど、あんたは仲間を逃がすのに一人で殿をしたって。また犠牲みたいに仲間を守る気なの?」

「犠牲ではない。あの時は俺のいや我の仲間もいたからな。それにだ、今回俺を差し出すことが良い機会なのではと思っている」

「ふむ・・・・主様は武田をも鬼の戦力にすると?」

「そうだ。鬼との戦いは激しさを増す。例え今の戦力でも勝てるかどうかは分からない。俺の力を使えばすぐ終わるけど、それじゃここにいる日の本の将たちは不満を出すであろうな。そうだと思い今まで力を隠していて、力を結集するのが俺の役目なのかなと最近思い始めた。武田が力を貸してくれるかは知らんが」

「越後勢だけでも不満なわけなの!」

「不満なわけじゃないだろう!ゴハッ!」

大声で喋ったら吐血をしてしまった。たぶんさっき身体を無理させた結果だろうな。

「だ、大丈夫なの?沙紀さん」

「おそらく先ほどので、身体を強引に負荷がかかったのでしょう。隊長、今は喋らない方がいいかと」

「い、いや俺はゴホゴホッ。俺の意志で喋っているのだ、あとで治療するんで。なあ、美空。俺たちはな、一度負けてしまったんだよ。もう二度と負ける事はもう出来ないのだ。前回は相手が地面からの登場によって大勢の犠牲が出た。もう負けられないのだ。それにもし武田も仲間になってくれたら、尾張、美濃、近江、山城、大和、遠江、三河の他に、越後、多分越中も。ゴホゴホッ、そこに甲斐と信濃も入るととても大きな同盟圏が出来上がる。日の本の戦乱を治めるには充分な勢力になるし鬼の事がなくなれば、戦わずになると思う」

「戦わずにねえ。・・・・人の欲望は果てしないものよ」

「それは承知している。では一つ聞くが、何のために天下を取るんだ?将軍になりたいのか?」

「そんな事か?将軍職など欲しければいくらでも譲ってやるぞ?」

「今の将軍の座を欲しがる物好きはいないでしょうな」

「・・・・私もいらない」

一葉はつまらなそうな顔をしていたけど。

「ではもう一度聞く。美空は何で天下を取りたいのだ?」

「そりゃ、天下を統一しなければ戦いが・・・・・」

「そういうことだ。戦いが無くならない。戦が長引くほど、力無き者たちは死んでいく末路だ。だから、一時も早く平和な世にしたいと国持ちの者たちはそう考えるだろうな。そういう考え方ではなく、手を取り合えばいいのだ。今はもう一歩進めるかどうかな感じだけど」

久遠に一葉、眞琴、そして美空。国持ちの者は今まで見てきたが、皆それを目標にして天下を目指している。久遠が美濃を手に入れたのは国を預けていた利政との約束を果たすため。一葉や眞琴も鬼の脅威として全力で戦っていた。

「・・・・そういうのは鬼を倒した、ゴホゴホッ、その後だ『隊長、後の事は私にお任せを。隊長が何を言いたいのかは、プライベートチャネルで言ってください。私が代わりに発言しますから』そうか」

俺は口を閉じてから、沙紀は口周りにある血を拭いていた。ひよやころは床にあった血を拭いていた。そして何を言いたいのかをプライベートチャネルで言う。

「簡単に言うが、案はあるのか?」

「そうですね。同盟した同士で商圏を作るとか、技術共有させるとかですね」

「商圏ですか・・・・ふむ・・・・」

それが出来れば、どこかで足りない物、どこかで多いものの融通が利くようになる。

「例えばそうですね。沼を田んぼに切り開く技術をどこかで教えてもらえば、越後は天下一の米所になります」

「越後が天下一の米所・・・・夢みたいな話っすねぇ」

「天下取りだって夢ではありませんか。それの現実にするのために皆さんは頑張っているのでしょ?なら、隊長が考えている事も現実にすることが出来ます」

「・・・・・・・」

「だからそれを見つけるために隊長は武田に行きますが、詩乃さんはどう思いますか?」

と沙紀は詩乃に問うた。するとすぐに答えが返ってきた。

「私はどこまでもあなた様に付いて行きます」

「詩乃さんはついて行くと、では他の皆さんは?どうなんです?」

「・・・・主様の好きにすれば良い。余らは後ろを付いて行くのみ」

「公方様の仰る通りですわ!」

「はい。一真隊は一心同体ですから」

「あいやまたれい!」

と第三者の声が聞こえたので、振り向くとそこには綾那、歌夜、小波がいた。俺を見るや何かあったようだと感じ取ったようだったけど、俺の代わりに沙紀が答えてくれた。

「隊長の事はあとでお話しますが、皆さんはどうされましたか?」

葵の所に戻ったはずなんだが。

「典厩殿をお部屋に送った後、本丸の入り口で揉めていましたので、独断ではありますがお通し致しました」

「・・・・秋子。迷惑をかける」

「しかし歌夜さん。今日は松平衆の陣所に泊まる予定だったのでは?」

「あはは・・・・色々ありまして・・・・」

歌夜の様子から見て、何かあったのであろうな。本音を言えば葵のところに戻らせたくなかった。主筋ってのもあるし。

「ワシらはこいつらに一大事だと聞いたのでなぁー。来てみたが何かあったらしいの」

「一真!大丈夫か!『大丈夫です。吐血しただけですから詳細は後程お話致しますので』あ、ああ。一真が無事でよかったぜ」

「一大事はどこですかー!」

来たのは桐琴に小夜叉、烏、雀、それとさっきの三人。全員来なくてもいいのにな。

「一大事は一大事ですけど、皆さんが出張って来なくてもよかったのでは?」

「それよりも沙紀様にご主人様。事情は概ね聞いております」

「・・・・誰から?」

「そ、それはその・・・・・・」

「盗み聞きとは、あまり良い趣味とは言えませんなぁ」

「ち、違いますっ!ご主人様はどうしておられるかなと思っただけで・・・・そうしたら、偶然・・・・。それに・・・・自分は草ですし・・・・情報収集に耳をそばたてるのは・・・・その・・・・習慣と言いますか・・・・うぅぅ」

「というわけで、綾那達も一真様とまた一緒なのですよ!」

「はい。引き続き、小波共々よろしくお願い致します」

「まー、八咫烏隊は一真隊って訳じゃないですけれど、お給金と契約が続く限りは付き合ってやるって、お姉ちゃんが言っています」

「・・・・・!」

「全力で否定していらっしゃるようですが?」

「ワシらは一真の夜叉だ。どこでも付いて行ってやるぞ。なあ、ガキ」

「ああ。オレら森一家は一真を護る弁慶だ。地獄だろうが修羅道だろうが、どこへでもついて行ってやるぜー、母!」

「鞠もなの!」

「皆さん、隊長の代わりですがありがとうございます。ということで決まりましたね」

「・・・・やれやれ。今までの妾の意見は聞いて、新しい妾には聞かないのかしら」

「そ、それはだな。い、いや。だが・・・・」

「・・・・冗談だし無理しなくて喋らなくていいわよ。今の越後は、確かにあなたの提案を受け入れるしかない状況。・・・・ごめんなさい、一真」

「妾の為に身体を張るのは隊長の務めでもあり、未来の夫になるのですからね。あなた方は。それにこれは隊長が決めたことです。選択肢はたくさんありましたが、決めて来たのは全て隊長であり、私たち部下の支えでもあります。後悔などしておりませんし、何より美空様にごめんなどと言われる筋合いはありません」

「・・・・・・」

美空のセリフをそのまま返した事になるらしいがな、原作では。美空はしばらく黙っていたが。

「なら・・・・・・ありがとう」

「はい。出来るだけ時間はこちらで稼いでおきます。その間にしっかり立て直して下さい」

「・・・・任せなさい。私とて世に越後の龍と呼ばれる、ひとかどの武士。祝言も交わさず、初夜も迎えてない未来の夫を奪われたままで、黙ってなんているもんですか!」

「やれやれ」

「御大将も案外ノリ気だったんじゃないっすかー」

「ツンデレというと一真さんは言っていた」

「好きにおっしゃい!越後の今後は、あなたたちの働きに左右されるのよ!一真だっていないんだから、今まで以上に働かせるからね!」

「分かっていますよ」

「へーい」

「やる」

さてと。これにて、俺達の次にやる事は決まった。俺の勘は外れた事はないから、今回も外れないだろう。だけど、怒りだけは武田晴信に会ったらぶつけるつもりだ。神をなめるな!とな。 
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