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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十九章
  救出作戦による策

「力をお借りしたい。春日山城内に囚われている二人の娘、空と愛菜を取り戻して頂きたい。成功の暁には、この私の全てをかけて、あなたが満足する恩賞を授けましょう」

「了解。トレミー、聞いての通りだ。作戦行動に入るぞ!」

で、神社に戻ってきた俺たちは早々に作戦会議を開いた。

「それで、結局人質を救出に行く事になりましたの?」

「うむ。予定通りだ」

「なら話は早いが詩乃と鞠はどこに行ったのだ?」

「そういえば見えないなー。母」

「詩乃と鞠はそのまま向こうに残ってもらっている」

「残って・・・・・?」

「向こうには作戦を立てられるのが、実質秋子のみ。なので応援と・・・・」

「・・・・連絡役ですか」

「その通り。美空には美空の思惑があるみたいだが、今回の合流が早ければ今頃はもう人質救出作戦をやっているからな」

美空はたぶん俺達一真隊を試していたのだろうな。そうでもない限り連絡に出ない理由がない。まあ、俺達には丸分かりだけどな。

「状況を考えれば長く時間をかけていられません。必要な情報はすでに手に入ったと聞きます。あとは救出するのみです」

「時間がかけられないのは分かるけどー。でもそんなんでホントに大丈夫なのー?」

「大丈夫にするのさ」

余裕ない時間ではあるが、ちゃんとした連携がないと救出ができない。その繋ぎや作戦参謀として詩乃、護衛として鞠に残ってもらう事にした。

「申し訳ございません、自分が・・・・」

「小波は何も悪くないからいいんだよ。今回も小波のお家流を頼っているし、これをお前らに渡しても使えないだろ?」

俺は耳にはめている通信機を指差した。トレミーでは男性隊員3名と女性隊員3名でやることになっている。

「まあというわけで、一真隊の作戦立案は俺と雫が仕切るんでよろしくな」

「私も仕切りますが、黒鮫隊の者が主に動くそうなので、今回は黒鮫隊が動くことになります」

「つまりどういうことだー?」

「小夜叉。一真隊でやると美空には言ってあるが、それはあくまで表の場合だ。実際に救出に向かうのは裏である黒鮫隊が動くことになる」

「一真の言う通りだぞ、ガキ。で、実際のところはもう決まっておるのか?」

「作戦は簡単だ。美空たちが陽動をしている間に、俺達と黒鮫隊の者で春日山城に潜入及び人質を救出する。以上だ」

「口で言うとホントに簡単ですね」

「言うは易し、行うは難しの典型ですな」

「でもそれは一真隊のみで行ったらの場合だ。黒鮫隊の実力はお前らは知っているはずだ。実際難攻不落の城を落としたのは黒鮫隊だしな」

「お二人の特徴は?」

「これを見れば分かると思うが、空はおかっぱの女の子で人見知りが激しいと聞いた」

「双葉様みたいな感じですか?」

「あれは別に人見知りという訳ではないが、見かけとしてはそのようなものであろうな」

「で、もう一人の愛菜はどうです?」

「んー。何と言えばいいのか」

と言いながら、もう一枚の写真を見せた。

「この子が愛菜ですか。特徴は分かりましたが、なぜ唸るのですの?」

「秋子曰く変な子なんだとさ」

「変な子って、お姉ちゃんみたいなの?」

「・・・・・・」

「烏さん、雀さんを指差していらっしゃいますけど?」

「ええーっ。雀、変な子なんかじゃないよー!?」

「俺達もこれで見ても変な子なのかまでは分からないが、見ればすぐ分かるとの事だそうだ」

「秋子さん直々に、『扱いが面倒なら無視して良い』と言われたくらいですしね・・・・」

正直偵察機で見た感じでは変な子なのかは不明だったが。まともな秋子の娘いや養女だからか、秋子基準にはならないか。その変な子を養女にした秋子もどうなんだろうな。

「そういうのは普通ほっとくが、人質救出のためならしょうがないな。一真。ワシらならほっとくがな」

「美空からの頼みなんだし、人質を解放した方がやりやすいだろうしな。それと愛菜は空の側近や世話役のような役目をしていると聞いた」

「私の聞いた話でも、二人は同じ所に捕まっているそうでしたから、侵入するのは一箇所で構わないと思います」

「して、場所は?」

「ころ。預かってきた地図を。俺達のと比べてみよう」

「はいっ」

俺の言葉に、ころは預かってきた地図を広げた。その横には正確な地図が置いた。

「まさか、春日山の縄張り図ですの・・・・?・・・・長尾の皆さん、本当に本気なのですわね。あとハニーが持ってきて地図もより正確ですわ」

梅が驚くのは無理はない。縄張り・・・・城の配置図なんていうものは、極秘中の極秘だ。軍師なら、これ一枚でいくらでも城を落とす策を立てられる代物。長点から弱点まで記された虎の巻を、美空たちは俺達に預けてくれた。それだけこの作戦に賭けたのであろう。まあ俺のは小型偵察機で、データ化したものを印刷したものだ。こちらの方が分かりやすい。

「俺が用意したのは、城からの真上から撮ったものだ。ころが用意したらしいが、こんな物を用意してくれるとは思わなかったがな」

ころの記憶と俺らの偵察機で作った配置図もあるけど、長尾家公式のだから精度は抜群だな。

「・・・・ほう。春日山とはこのようになっているのか。攻め応えはありそうだな、ガキ」

「ああ。こういうのは面白そうだな、母」

森親子の言う通り、春日山城は中規模な曲輪が本丸や天守を守るようにいくつも連なっている。全体を見ればかなり複雑な構造になっているが関係ないな。

「観音寺城に似てますね」

「うむ。俺もそう思った」

観音寺城も曲輪の数がやたら多かったけど、俺達からすればあまり関係がなかった。空からの降下してくるなんて思わないだろうな。

「ですが、無秩序に曲輪の増やされた観音寺と違って、春日山の曲輪はもっと洗練されているというか・・・・整然と作られているように見えますわ」

「連郭式山城という型ですね。播州でも何度か修繕や改修を手掛けたことがあります」

連郭式山城・・・・いくつもの曲輪が連結し、防御力が高くなっている山城の総称。

「春日山を天然の要害しつつ、要所に曲輪を配置することで、本丸に至る道を守っている。・・・・守るに易く、攻めるに難い城ですな」

「エーリカさんがこの地図を見たら、ヨダレを垂らして見入りそう」

「確かにそうだな」

観音寺城のときもそうだったが、城好きのエーリカなら、延々その魅力を語るだろうな。まあエーリカ=明智光秀だから警戒はしている。

「ころ。この城のどの辺りに二人がいたんだ?」

「ええっと、ここから入って行ったから・・・・。あったここですね」

まあ黒鮫隊は人質がどこにいるかまではインプットしてあるが、表は一真隊でやるからな。人質救出のときだけ黒鮫隊が活躍するんで、ころが記憶を頼りにしたのだった。で、図面を伝わっていた指が止まったのは、俺らが調べた結果のところだった。老中屋敷などが並ぶ曲輪の群れのはるか奥、それこそ春日山の最上段に近い場所である。

「三連曲輪の一番後ろ・・・・秋子さんの話では、秋子さんのお屋敷だった場所だそうです」

「情報通りだな。こちらで作成した地図と同じだ」

正面から突入するなら、最深部に位置する場所だな。力押しで攻めるには、十や十五の曲輪を抜けるくらいじゃ済みそうでは無さそうだが。黒鮫隊なら可能だな。

「これはまた・・・・崖と急斜面に挟まれた、難儀な場所にある屋敷じゃの・・・・」

「千貫門と呼ばれた門を抜けたあと、さらにいくつかの曲輪を抜けて、ようやく辿り着けるとは・・・・いやはや、難儀どころの話ではありませんなぁ」

「私が調査した時は春日山の兵でしたから、近くまでは行けましたけど・・・・。どこの警戒も士気が低いとはいえ、それなりに厳重ですよ?」

「近くまでしか行けなかったの?」

「御蔵入り同心だったから、部署が違うしね。ここは管轄じゃないからって、追い返されちゃったんだ」

「へぇ・・・・」

でまあ、強行しようとしたら見つかったわけなんだが。

「どうなさいますか?一真様」

「そうだな。俺も黒鮫隊からの情報を合わせたら・・・・」

これは行けそうだな。こちらには空を飛べるISがあるからな。それと撤退用のバイクを用意すれば。

「情報を集めた結果、大丈夫だと判断されたのですか?」

「ああ。こちらの情報と今見る地図を見てもだな。・・・・これは楽勝だな」

「へっ?」

「お頭、さすがにそれはないでしょう?」

「いや、いけるぞ。お前らでは想定外の考えを俺達黒鮫隊が持っていることを。崖の方から侵入すれば見つからし、直行できる。稲葉山城や観音寺城もだけど、俺達だけで進軍したら、すぐに落とせる自信はある」

地図を見ても直江屋敷の裏に曲輪はないし、こりゃ直通だな。山のデータから見ても、普通の土の山だろうし。ちょうどロッククライミングしたい者もいるしな。

「「「・・・・・」」」

「ん?どうした」

「いえ、あの・・・・さすがにこの崖を登っていくとは思わなかったもので」

「小波までそう言うほどの崖、どうやって登るつもりなのだ?主様よ」

「見た感じヤバそうなところはないし、山や崖を登る道具ならこちらにあるからな。どうやって登るかは現地に行ってからだけどな」

こういうのもありそうだから、一応用意してある。軍人でも用意はしないと思うけど、趣味でロッククライミングをやる奴がいてな。登るときは俺が空を飛んで頂上まで飛んでからボルトを打ち込んでロープを結び地面に降ろしている。

「分かりました。それでは、方針はそれとして・・・・今回の配置はどうします?」

「表での一真隊としては、前回と同じように俺と小波は外せない。実際に登るのと降りるのは黒鮫隊だからな。でも一真隊からも何人か動かないと一真隊が救出したのか疑われるから」

「私も同行した方がいいですか?」

「城内の情報よりも、表の救出部隊の一人として入ってくれ。あとひよもな」

「「はいっ!」」

「なら、後は・・・・」

「・・・・・」

「え、今日は別にいいよお姉ちゃん。別に雀、崖登りとか得意でも何でもないし。町に行くわけでもないし」

「今回は烏も雀も待機な。一葉もだ」

「またか。余にも暴れさせよ」

「そういう訳でもありませんぞ、公方様」

「ん?」

「人攫いが成功した後は、追っ手の一つも掛かりましょう。その時には、今度こそ・・・・」

「そうは言うが、前の時もいつの間にやら主様は帰ってきておったではないか」

「あの時は秘密行動だったからな」

「とはいえ、今回は少々事情が異なります。一真隊・・・・いや、織田勢の名前も広める必要もありますから、今回は追っ手の迎撃は派手にして頂いた方が良いかと。美空様は突入も反対側で陽動をして頂かなければなりませんし、脱出した一真様をお助けするには、一葉様の差配が肝要になります」

「なるほど。存分に暴れて良いなら、引き受けよう」

「そういうことだ。頼りにしているぞ、一葉」

「ふふ、任せておけ、主様よ」

一葉が暴れるなら、八咫烏隊も付けといた方がいいからな。本隊に鉄砲を入れといた方がいいし。脱出するときはバイクと考えたが、一葉が暴れるならバイク案はやめておこう。

「なら、残りは誰になさいますか?」

「そうだな。綾那と歌夜にもお願いしようかな」

手の空いているメンツはこの二人だろうし、森のは力を温存した方がいい。それに人質救出より先陣の方が向いている。

「分かったです!綾那、頑張るですよ!」

「私もですか?崖登りなんてした事ありませんよ?」

「全員が崖を登るんじゃない。崖の下で突入組を支援してもらう役がある。表では俺と一真隊の突入班でやるが、裏では俺は空を飛んで、崖を登る専門家がうちの隊にはいるんでな。今後役に立つと思うから、基本的な訓練を受けてもらう。後詰も兼ねてだけど」

突入組である俺と少数の者で登るが、戦闘はあるかもしれない。それに崖登りも今後役に立つと思うし、訓練だと思えばの事。実際やるのは黒鮫隊だしな。

「分かりました。でしたら、お任せ下さい」

「梅は槍隊を任せる。雫は軍師兼鉄砲隊を。雀と烏は雫の鉄砲指揮の補助をしてくれ」

「分かりましたわ!」

「承知しました。お二人とも、お願いします」

「まかせてー!ね、お姉ちゃん!」

「・・・・・・」

「で、その追っ手とやらはぶっ殺しゃいーのか」

「いいわけないだろ、ガキ。織田の噂を伝えるためにも殺してはダメだ。一真もそう思っているだろうよ。ワシも追っ手を殺したいがそうなれば噂は広がらんしな」

「そういうことかー」

桐琴が言ってくれたので助かった。まあ、殺したら噂は広がらないからな。森のは、人質を救出したあとに暴れてもらう予定だ。

「それにしても、今回も私はハニーと行動できませんのね・・・・」

「それはまぁ・・・・得意とする分野が違うのですから、仕方がないですよ。私も一真様と一緒に動くの、久しぶりですし」

「そうですわね・・・・。ああ、規模の大きくなった一真隊が恨めしいですわ!そして!己の将才がこれほど優秀だったことを悔やんだのは初めてですわ!」

「それは一真隊の皆が、心密かに思っている事。・・・・我慢してください」

「そうですわね・・・・」

「・・・・ふふっ」

「どうかなさいましたの?ハニー。私の顔に何か付いていまして?」

「ああ。観音寺城で初めて会ったときは、色々と言われたということを思い出してな」

あの時言われたことは、ほぼ罵倒だったな。俺の部下たちが怒りそうだったのを覚えている。

「何かあったのか?ひよ」

「はい。梅ちゃん、一真様と初めてお会いした時は、一真様じゃなくて久遠様に憧れて・・・・」

「もぅ。そんな昔の事、おっしゃらないでくださいまし!」

「別に悪い意味で言ったわけではない。今はこうやって慕ってくれているから、凄く嬉しいってこと」

「ま、まあ・・・・っ。ハニーったら!」

「梅や皆がいてくれるから、俺は安心して背中を任せられる。・・・・一真隊の事を頼んだぞ」

「・・・・!!ふふふっ、お任せ下さいまし!」

さっきまで恥ずかしがっていた顔を真っ赤にしていたが、今は嬉しそうに笑っている。そんな様子なのか、周りも自然と笑顔になる。

「さてと、細かい所を詰めてから作戦を開始するぞ!」

「はいっ!」

「・・・・・・」 
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