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戦国†恋姫~黒衣の人間宿神~

作者:黒鐡
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十七章
  加賀から越中と越後の国境

分け入っても分け入っても、目の前は山ばかり。

「ふーん。葵たちは先に後退したのか」

加賀の山中をゆっくりと北東へ進みながら、俺は葵の使いでこちらに顔を出してた歌夜の話を聞いた。

「全く。松平衆の皆さんは薄情ですわね」

「・・・・申し訳ありません」

梅の言葉に、歌夜は見て分かるほどしゅんとしていたので。

「アホ。歌夜の前で愚痴なんか言うな」

ハリセンで軽くはたいた。振り返れば、一真隊のはるか後ろに小さく見えるのは、厭離穢土の旗印。
俺が、越後へ向かう事を知った松平たちは、疑問の声を上げたが、ついて来てくれる。それに松平衆だけじゃ、美濃までが帰れないだろうしな。あと美空の言う事ではなく俺が行くと言った。

「そんなに気にするな。歌夜と綾那は、最後まで俺達を助けたのだからな」

「ですが・・・・」

歌夜から聞いた葵たちの話は、鬼との戦いで受けた打撃が大きくて、あそこで踏ん張っていても足手まといになるからだと。それは間違っていないだろうな。指揮官がそう判断するなら、越後に行くのは俺が決めたことだ。美空である長尾が決めたわけじゃないし、人質になっていない。いつでも逃げれるが、俺は勘で動いてることが多いが今回もそうかもしれない。

「とにかく、この件は過ぎたことだ。梅も歌夜ももういいだろに」

「・・・・申し訳ありません」

「ハニーがお許しであるのならば、私もこれ以上は言いませんけれど・・・・。それでも、納得いきませんわ」

「葵には葵の考えがあるからそれでいいのでは?」

「・・・・・はい」

「そこー!何をちんたらしてるっすか!もっと早足で歩くっすよー!」

不満そうな梅を撫でながら歩いていると、前から文句が聞こえたので。俺は銃を抜いてあの少女に向かって発砲した。音は3回鳴ったけど。

「やかましい!それと忘れてないか?主導権はこちらが握っていることをな!また文句言ったらこいつらが容赦しないぞっ!」

銃で発砲したあと、あの少女は避けたが当たった。今の弾はゴム弾だから、痛いけど。あと、俺の周りには半透明だけど帝釈天と四天王がいる。

「す、すみませんっすー!」

と言って、こちらの文句を飛ばさなくなった。梅は俺がそう言ってやったのと、周りにいる帝釈天たちがいるからか、安心していた。まあ、もっと先にいるのは長尾景虎だけど、その名を恐れ成したのか加賀の国人衆は俺達に手を出してくる気配はない。最も敗走だけど、そんな気はしない。しかし、越後への道のりは距離はトレミーから聞いていたがこんなにとはな。

「さいわいこちらには怪我人がいないのが幸いですわ。あと、こちらは主導権を握ったハニーがいるんですもの」

俺の近くにいる者は、怪我人はいない。もしいたとしても俺が回復させているし。それに、神界に戻らなくても神の力を回復するドリンクを飲んだおかげで何とかなった。それにしても、あの長尾という奴は、主導権はこちらが握っているけど越後までの道のりを知らないから黙ってついて来てください、久遠とは繋ぎをしないでください。というふうに敬語で、言ってきたからな。疲れてはいないから、こちらは元気いっぱいだし。それに上には船がいる。あと長尾勢はたった3人で、さっきの少女とあと1人
のお付の者と美空だけだ。美空は鬼の群れを一瞬で滅ぼす技があるが、あれはあくまで帝釈天たちが仕方がなく力を貸していることだ。俺の全力だったら、一瞬にして滅びると思うしな。今の状況で変な動きをしても、大丈夫だろう。人質ならともかく俺は自由だし。

「一真様ー!」

「一真隊全員の告知、終わりました」

「ご苦労であった。ひよにころ」

「どうしたんですか?」

「風邪の対策。この先は船だって言うが、それで体調を崩されたら話にならない」

今は俺が回復をしたからいいけど、船で体調を崩されたら、医療班を出すが。美空にはまだ黒鮫隊の存在を隠した方がいいと思ってな。

「ハニー・・・・」

「今は出来ることをする。あと黒鮫隊については内緒だ」

黒鮫隊の力欲しさに、俺を倒すとか言っても無理な話だけどな。その前に夜叉たちが俺を守ってくれる。

「その方がよさそうですね。黒鮫隊の力は隠した方がいいですわね」

「歌夜。幾つかの注意すれば有効だから、この事、葵や松平衆にも伝えてあげてくれる?」

「はい。お任せください!」

そんなことがあってしばらくしたあとだった。

「ぁぅ・・・・まだ足元がゆらゆらしてる気がするの」

「固い地面とは、かくも素晴らしいものなのですね・・・・」

日本海の荒波に対して、俺は結界を張り船酔いしないようにしていた。なので、船酔いはしなかったが、無事に越中と越後の国境にある魚津の湊に着いたのであった。

「ここからはまた歩きになるそうだ」

船酔いを避けるべく、力を使ったから疲れてはいない。船旅のおかげで休めたという兵もいる。それと防寒と水分の取り方をレクチャーしたお陰か、体調を崩す者はいなかった。体力は自然と回復したそうな。とそんなことを考えていると、何やら湊の入り口の方が騒がしくなってきた。帝釈天たちは人の目には見えない程度にしていた。 
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